● はっ、わかっちゃいるさ。 俺もオマエも悪党だ。世間様の言葉を借りれば外道のクソヤロウさ。 どんな死に方、どんな殺され方をしたって文句なんざ言えた義理じゃねぇ。 けどよ。 んなこた知った事じゃねぇんだよ。 あぁ、オマエが死んだのは弱かったからさ。馬鹿が油断しやがったんだ。 だからなんだ。オマエの死が自業自得だからって、俺の気持ちがおさまるわけじゃねぇんだよ。 あぁ、火吹。勘違いするなよ。 俺はテメェの為にこんな真似をするんじゃないぜ。 寧ろ逆だ。俺は、俺について来れなかった弱いテメェを許さねぇ。 だからよ。ンな顔して化けてデネェで寝とけ。 馬鹿な真似ってのは判ってるさ。でもな、死んでも忘れるんじゃねぇぞ。 悪党ってのは元々馬鹿なんだよ。こんな生き方しかデキネェから悪党なんだ。 自分だけはお綺麗ですって澄ました面してやがる蝮も、お利口さん風吹かせてやがる千堂も、一皮剥けば何もかわんねぇ。大馬鹿のクソヤロウさ。 でもな、だからこそ、俺達は強ぇんだ。いや、強くなくちゃいけねぇんだ。 光って奴を前にすりゃ、運命までもがそっぽを向きやがる。 けど関係ねぇよな。馬鹿な俺等が信じるのは力のみだ。 憎しみの、欲望の、怒りの熱が生み出す力だ! そうさ、俺もオマエも、そして匡だって、泥塗れで、泥を啜って、泥に潜って生きて来た。 それでもこの身を焦がす熱が泥を乾かし砂にした! なぁ、火吹。もう一度言うけど死んでも忘れるな。 俺は砂潜りの蛇、黄咬砂蛇だ! それを一番知ってるのはテメェだろ。 だから、心配とかくだらねぇ事してないでさっさと寝とけよ。 オマエの事は忘れねぇからよ。 「砂の兄弟、ウィウが手配した物持って来よったわ」 岩喰らいの匡の声に、熟睡していた砂蛇が目蓋を開く。 「お前よ。もう少し俺に気を使ってゆっくり連れて来るとかしろよ。俺が今日の為に何体の砂人形作ったと思ってんだ?」 寝起きで機嫌の悪そうな砂蛇の言葉にふとその数を思い出し、 「……めっさ創っとったの。正直はじめて兄弟の馬鹿さを怖いと思ったわ」 匡は呆れ顔になる。そして、その後何かを思い出した様に、 「まぁ兄弟の眠気とか体調とかは如何でも良いんじゃ。砂の兄弟はGoサインさえ出してくれればそれでええわい。後は俺が全部ぶっ潰したるけ、な」 何時か何処かであったやり取り。けれどあの時とは違い、瞳の底からは抑えきれぬ本気の殺意が滲み出ている。 組織に雪花を差し出さず、復讐の為に釣り餌とする事を選んだ砂蛇は、実は追い詰められている。 これは普段の彼なら、どんなに怒りがあろうと決して選ばぬ方法だ。組織の中で点数を稼ぎ、狡猾に立ち回れば、アークを潰すだけの戦力を確保する事は、容易くはないが不可能でもない。 問題は件のカレイドスコープのみだが、其れへの対処方法も存在すると言う話だ。けれどその対処方法こそが砂蛇を後先の無い道へと走らざるをえなくした原因であった。 砂蛇の聞いた噂が真実であるとすれば、3年後、否、1年後にはアークなんて組織は存在していないだろう。 アークへの復讐を目的とするならば、今を逃せばその機会は永遠に巡って来なくなる。今砂蛇の抱く憎悪は、他人の手で成された復讐で溜飲を下げれる程にぬるくは無い。 復讐はあくまで砂蛇自身の手で果たさねば意味が無い。 「けど匡よ、別にテメェやウィウまでこんな事に付き合う必要はねぇんだぜ?」 匡と、そして不意に背後に現れたウィウに対して砂蛇は僅かに表情を曇らせる。 利と力を持って繋がりとして来た彼等。けれど今回の一件にメリットと呼ぶべき物は存在しない。けれど匡と、口を覆う布をずらしたウィウは、 「はっ、萎えるわ。ええか、砂の兄弟。ワシは前回な、どっかの貧弱な兄弟がダウンしたせいで一人も殺しとらんのじゃ。ワシはやりとうてやる。無用な気遣いじゃ」 「貴様が失敗すれば貴様の首を手土産に組織へ帰る。成功すれば貴様に責任を押し付けて、その功績だけを持って組織に帰る。何時もの通りだ」 揺らがない。 「はっ、そうかよ。まあ良い。なぁ、どうせ万華鏡とやらで見てるんだろう? 早く来いよ。テメェ等の面も見飽きたんだ。そろそろマジで殺してやるからよ」 唇を笑みの形に歪め、夏栖斗や朱子、新田やイスカリオテ等、前回の戦いに参加したリベリスタ達の名前を一人ずつ呼ぶ砂蛇。 「あぁ、それとマリー・ゴールド。……テメェは死んで火吹の玩具になって来い。アイツも随分暇みたいだからなぁ」 最後にちらりと見えたのは、拘束を受けぐったりとした雪花の姿だ。そしてその頭には、少し汚れた赤い帽子が。 ● 「以上が砂潜りの蛇からの……伝言」 集まったリベリスタ達を、『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)が正面から見つめる。 「彼等は広い空き地の真ん中に建った、今は廃墟となったビルで皆を待っているわ」 そしてそのイヴの隣に並ぶのは、『戦略司令室長』時村沙織 (ID:nBNE000500)と、……『相模の蝮』蝮原 咬兵だ。 異様な緊張感の中、それでもイヴは表情を変えずに言葉を続ける。 「ビルは3階建てで、それぞれの階に敵が居るの。空き地と一階に見えたのは多分砂人形が100体位。2階に見えたのは2つの棺桶と『夜駆け』のウィウ。そして3階には囚われた『相良・雪花』と、黄咬砂蛇に『岩喰らい』の匡」 けれど、そこまでは淡々と話していたイヴの口が急に止まる。 何か言い辛そうな彼女がちらりと視線を送ったのは、瞳を閉じたままに沈黙を守る蝮原 咬兵。 しかし彼女の使命はリベリスタ達に少しでも多くの情報を与える事。それだけが彼女に出来る戦い方。 「本当はもう一つ見えた物があるの。囚われの、相良雪花は、皆が到着すると同時に、砂蛇に手首を切られる……」 切られた手首より流れ落ちる鮮血。それがイヴの見た『確定された』未来。砂蛇の仕掛ける、相良雪花の命を賭けた復讐ゲーム。 拘束された雪花はその傷口を手で押さえる事も出来ずに、時間と共にやがて失血死するだろう。 ぎしり、と何かを擦り合わせる様な音が作戦室に響く。 ゆっくりと開かれた蝮原 咬兵の瞳は憤怒に燃えている。 「1Fは俺達が切り開く。……お嬢は、頼む」 搾り出された咬兵の懇願。本当は咬兵も自らの手で雪花を救い出したい。 けれど咬兵が3階に辿り着けば、恐らく砂蛇は雪花の命と引き換えにリベリスタ達を相手に戦えと要求してくるだろう。 そしてそうなれば、咬兵は断る事の出来ぬ自分を知っていた。砂蛇が約束を守らぬ事など承知の上でも。 故に咬兵は、 「俺達はお前達の作戦に口を出さない。俺達はお前達の作戦に聞き耳を立てない。ただ道を作るだけだ」 雪花の運命をリベリスタ達に託す。 「今回の件は凄く未来が揺らいでいて万華鏡も完全な未来は捉えれていないの。どんな事が起きるか判らないから充分に注意して」 「ん、まぁそう言う事だな。詳しくは今から配布する資料を読んでくれ。随分厄介な、手強い任務になると思うけど、まあお前等なら大丈夫。信頼してるさ」 ひらりと手を振り、張り詰めすぎた空気を切り裂いた沙織が、イヴと共にリベリスタ達を送り出した。 空き地と1F:砂人形100体以上。(砂人形に関しての詳細は『<相模の蝮>血染めの砂嵐』に記載) 2F:棺桶2つ。中身は『雷帝』(『<相模の蝮>朝に轟く稲妻の音』に登場)と八千代(『<相模の蝮>リベリスタとチョコレート工場』に登場)の思念が憑依した死体。 動き出した二人の死体の支配権を持つのは『夜駆け』のウィウ(『<相模の蝮>殺戮の砂嵐』に登場)です。死体を操作する『死繰り』の腕輪を新たに所持しています。 3F:『砂潜りの蛇』黄咬砂蛇(『<相模の蝮>血染めの砂嵐』と『<相模の蝮>殺戮の砂嵐』に登場)と『岩喰らい』の匡(『<相模の蝮>殺戮の砂嵐』に登場)、そして砂人形が3体居ます。 黄咬砂蛇は新たにナイフのアーティファクト『運命喰らい』を所持。 相良・雪花も3Fに囚われ拘束を受けている。一定時間経過で雪花は死亡予定。 3Fに居る砂人形はそれぞれミヤビ、刃金、火吹(『<相模の蝮>殺戮の砂嵐』に登場)を模して作られた特別品。力は彼等に遠く及ばないが、スキルは同じ物を使う。 アーティファクト:新規は2つ。以前から出ていたが、今回で判明したのが一つ。 『死繰り其の参』:しぐりそのさん、と読む。腕輪型アーティファクト。強い力と執着や心残りを持って死んだ者の思念を、他人の死体に憑依させて戦わせる事が出来る。ただし所有者が出来るのは戦闘対象を定めるだけで、基本は勝手に動く。ただし1つの思念を呼び出すためには、人間一人分の血液が必要(今回は既に必要量が棺桶に注がれている)で、憑依させる為の死体も別に必要。 『運命喰らい』:ナイフ型アーティファクト。刃金と言う名の鍛冶師がフェイトを得た革醒者を殺し続けて創った魔性の武器。この武器の所持者からの攻撃を受けた者は、残りフェイトと同じだけの追加ダメージを受ける。この攻撃が痛打(150%ヒット)もしくはクリティカルだった場合、ダメージを受けた者はフェイトを2点失う。※この武器の所持者は、1日に1度はフェイトを持つ者を攻撃しなければならない。それが成されなかった場合、所持者はフェイトを1点失う。 『生命の砂時計』:所持者に複数の能力を付与する強力なアーティファクト。中に入っている砂は、所持者の生命力から換算された残り寿命を表す。このアーティファクトが破壊されて中の砂が全て無くなった場合、所持者は死ぬ。また、砂蛇の操る砂人形達はこの砂時計の砂の一粒を核としており、文字通り砂蛇の命の一部である。この砂時計は現在砂蛇の体内に存在する。 EXスキル:新規は二つ。 『灼熱の砂嵐』:砂蛇が使用。敵全体に業炎と麻痺効果付きの強力な攻撃。 『爆砕装甲』:匡が使用。纏う装甲を爆発させ、破片で敵全体に強力な攻撃。ただしこの技を使用したターンは、再び装甲を纏う事ができない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年07月16日(土)23:33 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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