●さんちぴんち! 何の変哲もない郊外の小学校にある、何の変哲もない25mプール。 それは今まで通り今年も、平凡に小学生達の歓声と水音とちょっとしたときめきが飛び交い、カナヅチの子達を憂鬱にする……はずだった。 はずだったのだが。 プール開き前日の日曜日。 突如としてプールの底が深淵となり、おぞましいとしか言えぬ開口部からは、名状し難き音と共に、まるで奔流のごとく触手が束となって噴出した。そして、プールを苗床とするかのごとく、みっしりと生えた恐るべき触手は、天を撫でるような嘲笑かのごとき動きでうねり、あるいはプールサイドを探るかのごとく這いずり回る様は、まさに地獄のようなのであった。 その忌まわしきユムシのような感触の触手共は、どれもぬらぬらとプールの水にも流されぬ粘度の液をまとわりつかせ、蛸を思わせる吸盤や、老木然とした瘤を無数に持ち、また恐るべきことにその先端には穴があり、穴は今にも冒涜的かつ背徳的な何かを生み出しそうな動きで、ひくひくと収縮していた。 ……万華鏡に映し出された、近日中に実現してしまう冒涜的な光景を一同に見せ、『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)は、小学生らが、一部を除き、心待ちにしていたプール授業が出来なくなることを告げる。 「偶然にもプールの底がディメンションホールとなり、異次元に繋がってしまったらしい。ホールはまだ小さく、触手の本体はつっかえていて、こちらには出てこれていない」 本体はおそらく『邪神』と呼ぶにふさわしい強大で絶望的な存在のアザーバイドである、とフォーチュナは言う。 「穴があったので、好奇心で腕を突っ込んでみた……という具合だろうな。こちらの世界をどうにかしようという気は今のところ無いようだ。ちょっと痛い目に合えばひっこんで、出てこないだろう」 こちらの攻撃など、人間の手を虫が這う程度の刺激しか与えられないだろうが、不快なことには変わりない。気まぐれの好奇心をへし折るには十分だ。 「向こうは攻撃を受けると、刺激してきているのが何なのか知るために、お前たちを捕まえて探るかもしれんが、毒などは無いから安心しろ。とはいえ、こちらとはサイズが違うから、痛手は覚悟しておけ」 触手に探られれば、いろんな意味で辛い目にあうのは予想の範囲内だ。 「……ちなみに、こいつは形状を観察するに産卵できるようだ。つまり女神……だな」 「え」 「……まぁ、大丈夫だろう。産んでも無精卵だ」 闇璃は、絶句するリベリスタから視線をそらした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月08日(月)23:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●畏怖と期待 うーねうーね、うーねうーね。小学校の白と水色だけで出来たような25mプールいっぱいに生えた触手が揺らめいている。そしてプールサイドを冒涜的に這いつくばっている。 「やだ……すごく気持ち悪い……うねうねして、ぬらぬらして………生理的に嫌悪する、あの動きと形状……」 眉をひそめ、口元を押さえ、『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は、触手の感想を呟いた。 が、口元の手は吐き気を抑えているのではない。にやけた顔を隠すためだ。 「でもあれがいいのよね……えへ、えへへ……」 今から繰り広げられるであろう触手との対決と言う名の遊戯への期待に、レイチェルは笑みをこぼす。 この名状しがたい触手共がプールの底に偶然開いたディメンションホールから飛び出してきた、邪神だ。しかも女神だ。 「女神って言ったら、やっぱり美人だよな? そんな女神と戯れる依頼だったらどんなに良かったか」 ジトッとプールの惨状を眺め、『Small discord』神代 楓(BNE002658)は悲しみを通り越し一蹴して、むしろ無表情の棒読みで呟く。 その隣で、『布団妖怪』御布団 翁(BNE002526)は布団を背負って、プルプル震えている。ご老体だから震えているだけではなく、おぞましい現実に慄いているのだ。 「ご覧下さいなのじゃ……あのうねった触手を……! これ幻視じゃないよね、超幻影だったらどんなにいいかなっておもったけど、幻想殺し試しても触手が元気に活動中じゃし、現実じゃよね」 「僕の知っている邪神と違う」 遠い目で『DOOD ZOMER』夏郷 睡蓮(BNE003628)は言う。 用意した『深淵ヲ覗ク』……使っていいのだろうか。そもそも使って何になるというのか。 「オレさー。おばけ、苦手なんだよなぁ! なーんでこの依頼来ちゃったかなあ!」 邪神はおばけだろうか。ボヤく『悪銭』九段下 八郎(BNE003012)の格好は、ピンクロリータふりふり上等な甘いドレス。チンピラ上着で中和しているつもりだが、やっぱり甘甘ふりふりロリータはごまかしきれない。 ちなみに下着はブリーフ。特に今後その要素を描写することはないのだが、一応お伝えしておきたいので書いておく。 「女邪神ということで……男のほうが狙われやすいようだし、女である私にとってはそこそこ安全な敵だな」 とカメラを用意しながら『騎士道一直線』天音・ルナ・クォーツ(BNE002212)は余裕の表情だ。 「現実はとても、残酷なのじゃ。のう、楓少年」 と翁に肩を叩かれた楓は、 「なんだよ邪女神って!? 明らかに女神要素がどうでも良いおまけになってんじゃねーか!! しかもこれ、いあいあ言う系の存在じゃねーかっ!! 『卵は無精卵だから大丈夫』って何が大丈夫なんだよ貰った段階でアウトだよ!!」 プールサイドの隅っこで地団駄を踏み、エアちゃぶ台返しをしながら、絶叫した。 「ビデオカメラとかあるの? ゲスるのじゃ? 御爺ちゃん物凄く興味があるんじゃけど?」 天音のカメラ準備を覗きこみ、翁が話しかけるが、 「男性陣が触手の餌食になる貴重な案件だ。後のために残しておく資料は、大いに越したことはあるまい。撮影し、映像記録として保管しておこうと思ってな」 という彼女の返答に固まる。 「えええ~~……。御爺ちゃん、どっちかってーとお姉ちゃんの勇姿とかそーゆー系の方を……」 「すまないな、今回求められているのは、私たち女性陣の触手プレイではない。君たち男性陣が触手に弄ばれる姿なのだ」 ばっさり。 翁は布団にくるまって泣きたくなった。 このように、男性陣はほぼ邪神を前に怖気づいているというのに、一人やる気満々なのが『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)である。 彼の脳内は、触手にあんなことやこんなことをされてしまう期待でいっぱいだ。 だが詳細なことは一切書けない。なぜなら本リプレイは全年齢対象の健全なリプレイだからである。 「ほとんどアウトっていうか、これ大丈夫なのかしら……」 露出高めの忍装束に身を固め、『碧海の忍』瀬戸崎 沙霧(BNE004044)は懸念する。 本当に、大丈夫なのかしら……。 ●粘液触手 何を言おうが、とにかく依頼はおぞましい触手にお帰りいただかないと終わらない。 レイチェルの翼の加護を得て、沙霧が水の上を駆け出す。 「む……普通の水よりなんだか、もったりしてるわね……」 水に溶けだした邪神の粘液だろう。少し足を取られるような感覚だが、泥の上だと思えば、忍者の末裔たる彼女にとっては何ら問題ない。 「ビジュアル的に危ない女神さん、さっさとお帰り願いましょうかっ!」 沙霧が、水を踏み切り、無数にあるいやらしい外見の触手へと、無数の殴る蹴るを叩きこむ。 しかし、邪神にとっては欠片も痛手ではなかったようだ。全く動きが変わらない。 「くっ、まるで効かないわ。弾力はあるけど、芯は固い感じ……瘤も吸盤もあるし……本当に危ない外見ね」 ヤケのように一発シメの殴打、沙霧は悔しげに呟く。 「さぁーて、準備体操も終わったし、つっこむでぇ~」 集中によってスターサジタリーとしての能力を底上げし、仁太は舌なめずりしてプールの邪神をうっとり眺め回した。 「はぁあ……動き止まるくらい気持ちよくさせてくれや……。力の限りつっこめぇ!」 と、プールへ仁太が飛び込んでいったのを見て、 「なんか、あの人マジ怖い」 楓は味方にも油断できないと怖気を振るう。 「さすがに数が多い触手の責めは人間とは比べもんにならんほどええな。程よく濡れとって滑りもええしな」 まだ触手が此方に興味を持っていない段階から、触手に抱きついて言っているのだから、おそろしい。 仁太の声を、男性陣は耳をふさいでそっぽを向いて防御した。彼のセリフを深く考えたら、発狂しそうだ。 天音のカメラは既に録画状態で、この異様な光景をメモリに書き込んでいく。あまりの光景に、レンズが割れないか心配だ。 「カメラに触るな」 とばかりに天音の刃は、カメラへ這い寄る混沌を断ち切っていく。 八郎は上空から淡々と仕込み杖で狙撃していた。 「触手に気に入られるとかマジ……マジ嫌だぁ……!」 いや、淡々ではない、精神的には大混乱で、しかし事務的に狙撃していた。 睡蓮のオーラで作った電撃は、水の中だからか邪神の腕によく通った。 ようやく邪神は、『何かされている』と気づいたらしい。 全ての触手が現状を把握するためにうねり出す! 「キ、来たか……っ!」 アークの務めを果たすため、歯車として囮をやりとげると決めていたものの、やはり冒涜的な触手が迫ってくると、睡蓮の表情もこわばる。 ちなみに、触手は戦場全体を襲った。 「く、あむっ……!?」 ねろねろと顔を撫でられた挙句、口をこじ開けられ、睡蓮は触手を味わうことになった。 「ぐ、げほっ。こ、こんなものが、飲めるか……!」 得も言われぬ味の粘液でえづき、苦しげな表情で、睡蓮は首を振る。 「うぅわっ! くんな! くんなってえ!」 迫り来る数本の触手が絡み合った極太の敵を、楓は必死にかいくぐるが、それでも微妙に体を這われ、普段着の隙間から素肌を舐められてしまった。 「うっうっ、きもちわるい……」 プールサイドにへたり込み、楓がうなだれている上空で絶叫が木霊す。 「ぎゃーーーー! アニキ! 助けてアニキィ! つーか俺、性別不明だから! 俺ひょっとしたらオンナノコ、カモって聞いてない! 腕だから聞こえるわけ無いよな! うんって、捕まったぁあああああ」 空中のドッグファイトレベルの攻防に負け、八郎は無残に巻かれてしまった。 全身を弄られ、甘いロリータドレスは粘液でぐちょぐちょ、文字通り乱暴をされた後のように乱されてしまう。 「い、意地でも負けねっ……ひっ、あっ、やだ、待って……ぐすっ、うぐっ。アニキィ……俺……おれぇ……ひぐっひぐっ」 とうとう八郎は泣き出してしまったが、愛らしいドレスを乱し、可憐な表情でしゃくりあげられると、八郎が女の子だろうが男の子だろうが、もうどうでもいいや、性別なんて! という気持ちにならざるをえない。 「ふふふ、いいぞ。ベストショットだ。気の毒だが、私たちの世界の平和は尊い犠牲のもとに成り立つのだ……」 天音は八郎にカメラのレンズを向け、満足気である。 「これは大事な映像記録だ。や、やましい気持ちなどこれっぽっちもないのだぞ。楽しみだとか、そんなことは」 誰も聞いていないのに、天音が言い訳するあたり、やましい気持ちでいっぱいだと思われる。 なお天音は、仁太を盾にして無傷だ。仁太はそれはもうお喜びだが、お喜びすぎて描写が出来ないので、割愛。 なぜなら本リプレイは全年齢対象の健全なリプレイだからである。 「うふふ、この先にいるのが女神だっていうなら、あたしが女の子に目覚めさせてあげる」 体を探る触手を優しく抱きしめ、レイチェルは慈愛の微笑みを浮かべた。 大きな胸と太ももで触手をはさみ、抱枕のようにすると、レイチェルはぬるつく触手を舐めた。 「ふふ、……ん、ちゅっ……先っぽいじめてあげるから、暴れちゃダメよ……あっ、だめっ、そ、そんなこすっちゃ……ああっ」 だめだ、これ以上はやっぱり描写できない。しつこいようだが、本リプレイは全年齢対象の健全なリプレイだからである。 沙霧の頭上から滝のごとく触手が落ちてくる。避けようもない現状に、沙霧は叫ぶ。 「ひゃうっ、ちょっと、男のほうが狙われるって話はガセだったの!?」 可能性は可能性、絶対ではない。 「やっ、あっ、だめ、なんで胸ばっかり……」 それはおそらく、彼女の体の中で最も目立つ、探るべき物体だと判断されたからではなかろうか。 「ひっ、吸い付かないで。ご、ごりごりもしないでえっ」 吸盤と瘤が存分に仕事をしているらしい。沙霧は真っ赤な顔で、ひくひく震えた。 「……あぁ。って、い、今の誰にも気づかれてないわよ、ね……?」 しかし無常にも、沙霧は翁とバッチリ目があってしまった。 「ひっ」 翁は、レイチェルと沙霧の中間地点で、どっちを見に行けばいいのかと、きょろっきょろしていたのだ。 「この歳になっても、眼福じゃ……ありがたや、ありがたや」 拝む。それが老人クオリティ。 ●反撃のリベリスタ 老体にも区別なくやってきた触手を、翁はむんずと掴んだ。 「……ほう、可愛い奴じゃのう。此処がええのんか? ふふ……」 触手の弱そうなところへピンポイントスペシャリティ。ビグッと震える触手に、翁はゾクッと背筋を震わせ、 「お爺ちゃん何か駄目な物に目覚めそうなのじゃ」 と聞き捨てならない言葉を漏らす。 翁は真顔で触手を撫で回し始めた。 「何やらこいつが可愛く見えて来たのじゃ……」 いけない、戻ってきてお爺ちゃん。とは、誰も言ってくれないのだった。 仁太は、卵を生みそうな触手のひくつく先端穴を見つめて、 「……すっぽりハマって、ぎゅうっと締め付けてくれそうやな……。わしがバウンティショットしてまいそうな……」 と不穏な言葉を漏らした。逃げて、触手超逃げて。 すっかり触手にハマってしまったレイチェルは、うっとりしながら触手と絡んでいた。 「はぁあ……、んっ、大丈夫……。これでも、支援はできる、からぁあ」 と甘えた声で聖神の息吹を現した。 「うわあぁ。なんかもう、地獄絵図……」 楓は、惨状を目の当たりにして、魔楽器のサックスで、冒涜的でおぞましい感じの聖神の息吹を奏でた。彼なりに空気を読んだつもりである。 飛んでいられなくなって、プールサイドでへたっている八郎が、その音楽でようやく気力を取り戻す。 そして、また迫ってきていた触手の先端へ仕込み杖を押し込んで、発射。 ボフンッと触手が爆ぜて、残骸が八郎の頭から降り注いだ。 「ギャーーーー! 肉が! 肉が!!」 深淵なんて覗かなくても、十分に深淵を見た気分になった睡蓮は、寒気を耐えつつ、エネルギーを溜めた光球を触手に放った。 「や、め、ないか! どうしてそうおかしな動きをするッ……」 バヒィンッと触手が弾き飛ばされた。 天音は、そんな大騒ぎを尻目にせっせと攻撃を続けている。切る度、粘液が彼女の頭から足までじっとりと濡らすので、天音の服の布地から下に来ている水着が透けて見える。 「くっ、くっ、もう、二度とあんな醜態は……! しかし、なんでこう、ヤバいのが視界に入るのかしらね!!」 ソニックエッジを八つ当たりのように撒き散らし、沙霧は涙目で叫ぶ。 「おほぉお、しゅごいぃ、ひゅごいのこりぇえー!!」 という仁太の雄叫びが聞こえたが、全員で必死に目をそらした。 まるで危険が迫った時に、穴に顔をつっこむダチョウのようだ。 さすがの天音も、それにはファインダーを向けない。 「……無理。いろいろ」 ●終わりは唐突に 「ふふ、どうじゃ……我慢出来ぬなら、良いんじゃよ? お、んむぅっ、いたずらっこめ……そんなところで遊んではいかん」 すっかり触手を愛人のように扱う翁である。水着に覆われているところもいないところも、あちこち弄られているようだが、問題ないようだ。 「ほーれ、このお布団の上に卵産んでも良いのじゃよ!」 ふかふかの布団――上下布団、枕、上下布団カバー、枕カバーの豪華六点セット――を差し出し、翁は触手を撫でてやる。 触手はしばらくチョンチョンと布団をつついて考えていたようだが、ふるふる震えはじめた。 「え。いや、まさか、そんなことはねえよな、爺さん……な?」 楓が遠くから怯えながら尋ねる。いや、肯定を求めてくる。 しかし。にゅ、にゅにゅっと触手の先端の穴が、開いてきた。 「ええっ!!」 レイチェルが、抱きしめていた触手を取り落として、驚愕する。 「ま、まさかの!?」 沙霧も唖然と攻撃の手を止める。 天音は固唾を飲んで、カメラを布団へ向けた。 邪神の貴重な産卵シーンだ。本邦初公開だ。 「ぎゃあー、おばけが卵をををー!」 八郎はもう、何が起こっても叫べそうな気がしていた。 今なら箸が転がったって絶叫できる。 「なっ……なぜ、よくわからん異次元に卵を産もうと思えるんだ……女神の考えることは分か……分か……いや、分かるスキルを持っていても分かりたくない! い、いや、だが、無精卵でも何か分かるかもしれない。触手が再度現れないとも限らないからな……情報とは財産だ。ざ、財産のはず、だ……だがぁ!!」 睡蓮は頭を押さえて、苦悶する。 「なんやぁ。布団でええんかいな。体内に産み付けられたら、気絶するくらい気持ちええとか……」 「頼むからもう狐のおっさん黙ってて。マジックアロー撃つよ」 仁太を楓が必死で止める。いや、脅す。 「黙るんだ。生まれるぞ!」 天音が鋭い声を発すると、リベリスタは一斉に黙りこんで、翁の捧げる布団へ生まれようとする卵を注視した。 にゅる、にゅると触手の形すら歪めながら上がってきた卵は、ようやく先端から顔を出す。 蒼白い。 粘液にまみれた卵は、ぐぐっとせり上がってきて、先端の穴を裂かんとばかりに押し広げる。 「もうちょっとじゃ、がんばるんじゃよ!」 翁が触手の出産を励ます。 ぐっぽぉん……。 内圧で押し出されるように、布団の上に落ちるダチョウの卵大の邪神の無精卵。 どろどろっと粘液を最後に垂らし、産卵は終了した。 「ぎゃあーっ、あつうう!!!」 そう、産卵もリベリスタにとっては攻撃同様。灼熱で布団は炭化し、それを持っていた翁の手も焦げる。 思わず放り投げた卵はプールの中に沈み、プールの水を一瞬で蒸発させた。 噴き上がる水蒸気の中、 「なんちゅー威力だよ!」 慌てて楓とレイチェルが翁を集中的に癒す。なんとか翁の手は助かった。 「ひぃ、あんなもん中に産み付けられたら、中から焼け死ぬじゃん! 殺人じゃん!」 八郎が怖気を振るった。 「! 見て! 邪神が!」 沙霧が翁に集中していたリベリスタの注意を、プールへ向けた。 ずるるる……とみるみるうちに戻っていく邪神。 一分もたたぬうちに、邪神はディメンションホールの中へと消えていった。ついでに卵も巻き込んでいったらしい。 プールには何も残っておらず、ただホールだけがあった。 天音と楓で大急ぎでホールを閉じる。 あとには、粘液でドロドロになり、衣服を人前に出せないほど乱されたリベリスタが残った。 「あああ……わしのお布団が……なんか黒い残骸に……」 まぁまだまだあるし、ええんじゃけどね……と強がるも、翁は布団6点セットが『かわいそうな布団6点セット』になったことに寂しさを禁じ得ないのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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