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隠密御庭番衆、黒蜥蜴ノ刃

●因縁と威信
 『隠密御庭番衆』御頭――『黒蜥蜴』蒼乃宮静馬が刀を振るっていた。鋭い視線を何もない空間に向けてひたすら稽古を続ける。誰もいない道場で静馬の掛け声だけが響く。
 着物をはだけた背の高い男の上半身には無数の深い傷跡が広がっている。その裂傷はこれまで潜ってきた数々の修羅場を物語っていた。
「御頭、神鴨神社襲撃の手筈が整いましたのでご報告いたします」
 そのとき、静馬の背後に鬼夜叉の面を被った部下の男が現れた。先ほどまで誰もいなかった場所にいきなり現れた男は御頭の答えを待つ。
「『新撰組』の奴らが大きく動き出したようだ。奴らとは先祖代々からの因縁がある。とくにあの近藤とはいずれ決着をつけねばなるまい。だが、いまは我が拠点を制圧することが先決だ。皆の者には今宵の日没と同時に作戦を開始するよう伝えておけ」
「畏まりました。それではよしなに」
 鬼夜叉の男は影に隠れてすっとその場を消した。静馬は一度も振り返ることもなくそのまま前を見据えて刀を振るい続ける。
 静馬たちは幕末の江戸城を守る御庭番衆の末裔だった。先日、因縁があるフィクサード組織の『新撰組』が活動を開始したことによって、静馬率いる『隠密御庭番衆』も腰をあげた。目的はまず京都の制圧、『御庭番衆』を全国に知らしめることにある。
 静馬は幼い頃に両親を神鴨神社の賀茂家に殺され、各地を放浪とした。幼い頃から数々の修羅場を潜ってきた静馬にとって最初に狙うべき場所といえた。
「在野リベリスタたちが、『新撰組』と交戦している今がいい機会だ。我らが力を存分に発揮して拠点を落とし、御庭番衆の威信をここに取り戻す」

●守るべきもの
「暗殺集団のフィクサード組織『隠密御庭番衆』が京都で動き出した。奴らの今回の目的は神鴨神社の拠点の制圧だ。お前たちには何としても拠点を防衛して、蒼乃宮静馬たちを撃退してきてほしい」
 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。
 神鴨神社は京都の加茂川近くにある陰陽道の流れを汲む古い社だった。周りを山と川に囲まれて隠れ家としては絶好の場所といえる。静馬が狙うのも無理はない。
 奇しくも襲撃の日は神鴨神社の例祭にあたっていた。境内には村人たちが大勢集まって来ている。奴らはそれを利用して一般人に紛れて襲ってくることも考えられた。
「神社には娘の賀茂璃梨子と正春姉弟が二人で留守番をしている。璃梨子は在野リベリスタだが、とてもではないが一人では太刀打ちできない。いつもは近くに住む幼馴染のリベリスタが心配して来るそうだが、今回は宛てにできない。このままでは姉弟ともに、『隠密御庭番衆』に無残にも殺されてしまうだろう。とくに静馬は両親を殺して自らにも大きな傷を負わせた賀茂家を非常に恨んでいる。手加減は絶対にしない。くれぐれも用心して行ってきてほしい。無事に帰ってくることを切に祈っている」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2013年06月30日(日)23:00
こんにちは、凸一です。

にわかに京都が忙しくなってきました。
今回は、暗殺の忍者部隊との防衛戦になります。

それでは、以下は詳細となります。
よろしくお願いします。



●任務成功条件
・賀茂璃梨子と正春姉弟の無事
・神鴨神社の防衛
・『隠密御庭番衆』の撃退


●場所
周りを山と加茂川に挟まれた大きな神社。境内は祭で一般人がごったがえしており、さらに砂利で足場が悪く、夜なので視界が悪い。とくに周りは木々に囲まれているため、敵がどこから襲ってくるか解りづらい。


●敵詳細/フィクサード組織『隠密御庭番衆』×5
・御頭/『黒蜥蜴』蒼乃宮静馬(21)/ビーストハーフ(トカゲ)×ナイトクリーク/二刀流
十五歳で御頭になった天才肌。部下に慕われ、性格は冷徹で実直。非戦スキルは千里眼と物質透過。主な攻撃はブラッドエンドデッド/カジノロワイヤル
アーティファクト『無尽殺人奇剣』の二刀小太刀。伸縮自在に伸びる剣で、近接からも遠距離からも攻撃することができる。風刃を巻き起こし範囲攻撃する。
・鬼夜叉/フライエンジェ×ホーリーメイガス
静馬の一番の忠実な部下。非戦スキルは闇の世界。主な攻撃は、翼の加護/聖神の息吹。両手に鍵爪を装着。麻痺と出血を伴う。スピードが速く回避に優れる。
・達磨/ビーストハーフ(狸)×クロスイージス
達磨のように太った大男。性格は極めて残忍。一般人を巻き込むことを厭わない。非戦スキルはハイリーディング。敵の思考を読むのに長ける。主な攻撃はギガントスマッシュ/ブレイクイービル。味方を積極的にかばう。
・白虎/ビーストハーフ(虎)×デュランダル
気まぐれでいい加減な性格だが、仕事は早く忠実。非戦スキルは影潜み。主な攻撃はメガクラッシュ/戦鬼烈風陣。ハイスピードで敵の懐に迫る。
・蛇骨/ビーストハーフ(蛇)×ナイトクリーク。非戦スキルは百面相。主な攻撃はダンシングリッパー/ハイアンドロウ。百面相によって御頭の真似をして敵をかく乱する。

●保護対象
・賀茂璃梨子(20)/ジーニアス×インヤンマスター/初級スキルまで
 陰陽道を汲む神鴨神社の娘(近くの寺に従兄妹同士で幼馴染のリベリスタ安倍行哉が住んでいる)。正義感が強く弱い者の味方になろうとする。気が強い美人で巫女装束を纏う。
・賀茂正春/(14)一般人/梨璃子の弟。泣き虫で梨璃子にいつも世話を焼かれる。

●その他補足
賀茂姉弟は神社の本殿の中で隠れている。梨璃子は弟を守る程度の能力は使えるが、それ以上の支援は望めない。夜になると敵がどこからか襲ってくるが、すぐ建物の近くまで森が広がっているため視界が見づらい。本殿はそれなりに大きさがあるが、建物の構造は頑丈ではなく、敵はどこからでも簡単に侵入できる極めて危険な状況にある。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
ナイトクリーク
黒部 幸成(BNE002032)
ホーリーメイガス
鈴木 楽(BNE003657)
マグメイガス
レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096)
ソードミラージュ
殖 ぐるぐ(BNE004311)
■サポート参加者 2人■
クロスイージス
村上 真琴(BNE002654)
ホーリーメイガス
テテロ ミミミルノ(BNE004222)

●祭の前の静けさ
 境内に勇ましい太鼓が鳴り響く。家族や友人を連れた人々が楽しそうに屋台や見世物を見て回る。
 日没とともに境内はますます騒がしくなった。祭りも佳境に入っている。そのとき、境内の入り口から一人の大男がやってきた。
 目つきの鋭い男は背中に大きな刀の鞘を背負っている。真っ直ぐに本殿に向かって堂々と歩いてきた。ポケットに手を突っ込んでいる。人々はそいつが暗殺集団御庭番衆の御頭『黒蜥蜴』――蒼乃宮静馬であることを知らない。
「あいつが――蒼乃宮か? それとも罠か――」
 影潜みによって近くに隠れていた『影なる刃』黒部 幸成(BNE002032)は困惑した。異様な凄味のあるオーラーの持ち主は間違いなく敵の御頭に違いない。
 だが、堂々と侵入されて面食らった。もしかしたらこれは敵の罠かもしれないと思う。蛇骨の奴が変装しているとも限らない。それでも幸成はAFを使用して『ヴリルの魔導師』レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096)たちに静馬らしき敵が一人やってきたことを即座に伝えた。レオポルトは「畏まりました。敵が範囲に入り次第、陣地を作成いたします。どうかご無事で」と即座に返答する。
「櫻子たん隠れて! 奴らがやってくる」
 同時刻。『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)と『フリアエ』二階堂 櫻子(BNE000438)が潜む本殿の四方の森から御庭番衆が現れた。敵は異様な忍び装束に身を纏っている。敵は一般人を気にせずに真っ直ぐに本殿に向かってくる。
「竜一さん、どうしましょう?」
「オレが達磨の奴を相手する。櫻子たんは絶対にオレの後ろから離れないでくれ。それと万が一の時があればオレを置いて逃げろ――いいな?」
 櫻子の問いに竜一は間髪いれずに答えた。櫻子は「くれぐれも無茶はしないでくださいね」とやさしく微笑み返す。
 静馬は本殿の入り口に立つとすぐに千里眼を発動させて中の状況を探った。しばらくしてから物質透過で地面に潜って本殿の中に音もなく侵入する。
「此処から先は通行止めだ。お前達の思惑通りに事は運ばせる心算は……無い」
 『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)が一人で現れた静馬の前に立ちはだかった。双剣を抜いて勢いよく静馬に向かって突きつける。
 後ろには『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)と『奇術師』鈴木 楽(BNE003657)に守られた賀茂璃梨子と正春姉弟がいた。
「貴様ら何者だ?」
 静馬は冷たく言い放った。
「アークって知ってる? ボク達の仕事は賀茂姉弟とこの神社を護る事ら」
『ましゅまろぽっぷこーん』殖 ぐるぐ(BNE004311)が敵の静馬と賀茂姉弟両方に向かって説明した。
「この前『新撰組』と戦っていた奴らか。すでに誰かが守っている気配がしたから無用な小細工もせずにやってきたが――」
 静馬は後ろにいる『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)と『さぽーたーみならい』テテロ ミミミルノ(BNE004222)に目をやって溜め息をついた。だが、ミミミルノも意地でその隙に翼の加護を皆に施すことに成功する。
 そのとき、静馬の後ろから鬼夜叉と白虎が入り込んできた。すぐに白虎が「御頭、アークの連中なんか大したことはないっすよ」と進言した。
「リベリスタ、新城拓真──『黒蜥蜴』蒼乃宮静馬へ戦いを申し出る! 天才。そう呼ばれる男の剣に興味がある。それとも、我が双剣では不服か!」
 拓真が名乗り出た時、静馬の顔色が咄嗟に変わった。
「お前――もしかして新城弦真の孫か?」
「祖父を知っているのか!?」
 拓真がその瞬間、驚いて思わず声をあげた。あまりに突然の出来事に拓真は静馬に向かってはげしく詰め寄る。
「弦真さんは忘れもしない。俺の命の恩人だ。まだガキの頃、両親を失った時に助けてくれた人だ。自分にも同い年の孫が居る――とは聞いていたが、拓真。貴様のことだったとは、な」
 拓真はいきなり敵の御頭から衝撃の事実を聞かされて茫然とした。

●魂と魂のぶつかり合い
「忍びたる身でありながら己が存在を世に知らしめんとするなどと、滑稽なことを……忍びには不要たるその野望、自分が阻止して進ぜよう!!」
 幸成が本殿にまさに入ろうとしていた達磨たちの後ろから奇襲攻撃をしかけた。とつぜん後ろを取られた達磨は背中を幸成に無防備にさらしていた。容赦なくデッドリーギャロップで縛り上げられてしまう。
「迎え討ちます。璃梨子さん、正春さんの守りはお任せ致しますぞ!」
 レオポルトは威勢よく言い放つとすぐに魔陣を展開させた。さらにそこから力を溜めて攻撃の構えに入る。
「我が血を触媒と以って成さん…我紡ぎしは秘匿の粋、黒き血流に因る葬送曲!!」
 その場に居る敵全員に向かって血液の鎖できた濁流を放つ。呑みこまれた蛇骨と達磨がその場でもがき苦しんだ。
 だが、達磨も蛇骨も負けているばかりではない。蛇骨はダメージを食らいながらもダンシングリッパーで辺りにいた楽やレオポルトを巻き込む。
 白虎も仲間の危機に即座に刀を抜いた。
「ふむ……同類でござるかな? すまぬが恨みはないでござるが死んでもらうでござるよ!!」
 白虎に向かって虎鐵が渾身オーラーを纏った刀を振り下ろす。白虎は虎鐵の威力ある攻撃を受け止めきれずに壁に激突した。口から血を吐く。
「お前――やるじゃねぇか。甘く見ていたぜ。アークにも俺と同じような血に飢えた虎がいたとはな。久しぶりにこの腕が身震いする」
 白虎もメガクラッシュで虎鐡を吹き飛ばした。壁に激突した虎鐡が同じように血を吐いてむせ返る。即座に二人は刀を合わせて激しい戦闘に入った。
「全く、どいつもこいつも、京都の覇権だなんてよ……。何を考えてるんだ。幕末じゃあるまいし。……お前らの幕末は終わってないとでもいうのか? なら、俺が終わらせてやるぜ。御庭番も、新撰組も!」
 竜一は櫻子と連携して達磨を挟みうちにした。前から櫻子がアーリースナイプで釘づけにしているところを後ろから竜一が背中を刀で掻き切った。
「ぐふううう!!」
 血をシャワーのように流して達磨が倒れかかる。だが、頑丈さは他の仲間と比べても随一だった。そのまま反転して刀を竜一の腹に叩きこむ。
「竜一さん! 傷を癒し、その枷を外しましょう……。大丈夫、受け取って下さい。これでまだ戦えますわ」
 櫻子の微笑みに竜一が拳をあげて答える。
「ありがとう。オレは櫻子たんのお陰でまだ戦える。絶対に奴はオレが必ず仕留めてみせる。こんなところで負けるわけにはいかないからな!」
 回復を施された竜一は即座にまた達磨に向かって刀を振り上げて行った。
「隙だらけですね。そのような守りでは私の攻撃には耐えられませんよ?」
 その時だった。御頭の真似をした二刀流の蛇骨が後方にいるミミミルノや賀茂璃梨子にむかって攻め入る。真琴と楽が一緒になって間に入ってかばった。
「美しい女性と子供のピンチと聞いては、紳士として見過ごすわけにはいきませんね。それにお祭りの所を狙うというのも許せません。ここで事件を起こしてお祭りを楽しんでいる人達の笑顔を曇らせるような事にはさせませんよ」
 楽が歯を食いしばって蛇骨の剣先を身体で食い止める。その隙に真琴が魔落の鉄槌で蛇骨を上から仕留めに掛った。クリーンヒットした蛇骨は苦しみもがく。
「我紡ぎしは秘匿の粋、ヴリルの魔弾ッ!!」
 レオポルトが吠えた。オープンフィンガーグローブの拳を突きつける。勢いよく放たれた魔弾に蛇骨はなすすべもなく正面から攻撃を浴びた。
「ぐああああああああ――――」
 蛇骨はついに激しい攻撃を受けて地面に倒れ込んだ。
「くっそ! 蛇骨が殺されるとは!」
 鬼夜叉が急いで仲間を回復に行こうとしたときに、ぐるぐが間に割り込んだ。多重残幻剣で敵をかく乱して斬り込んでいく。
「これでは避けきれない」
 鬼夜叉は悲鳴を上げた。鬼爪で幻影を切り裂いて行くが、とてもすべてに対処することができない。
 ダメージを食らった鬼夜叉は堪らず達磨が居る方に向かった。そこで戦っていた達磨と合流して一緒になって戦おうとする。
「おっとこっちには絶対にこさせないでござる!!」
 幸成がやってきた鬼夜叉を可能な限り近づける。デッドリーギャロップで締めつけを狙いつつ、反対側から迫るぐるぐの支援をした。
「ボクぁ、あんたのそのユニークな爪が欲しいんら! 殺して奪い取る!」
 ぐるぐは竜一と櫻子と協力して後ろから鬼夜叉に向かって再び多重残幻剣で迫った。堪らず鬼夜叉は闇の世界で覆うがぐるぐはそれも動じない。
「ぐはあああっ!!」
 ぐるぐと鬼夜叉は相撃ちになって双方倒れ込む。横から達磨が庇ってギガントスマッシュを繰り出していた。ミミミルノが回復に向かう。
「みなさん、ふぁ、ファイトなのですっ!!」
 そのとき、白虎がミミミルノに向かって刀を振り上げていた。とっさに虎鐡が間に入ってミミミルノへの攻撃を身体で受け止める。
 だが、代わりに斬られた虎鐡は傷を負って後ろに吹き飛ばされた。
「いててて。ここらこそおぬしを甘く見ていたでござる。拙者の渾身の一撃を食らい続けてもまだ倒れないとはタフでござるな。だが、あの『新撰組』の近藤は元より、虎が百匹の百虎よりかは……全然手ぬるい攻撃でござる!」
 虎鐡は大きく刀を振りかぶった。すでに敵のメガクラッシュを何発も身体に叩きこまれている。さすがの虎鐡も限界が来ようとしていた。ミミミルノも大分消耗してしまっている。これ以上この白虎に手こずるわけにはいかない。
「らいおんに手を出す奴はこの拙者が許さぬでござる!!」
 虎鐡にはミミミルノは最愛の娘とダブって見えていた。同じらいおんという共通点があるからだろうか。これまでにない力で白虎に向かう。
「上等だ! さあ、どっちが最強の白虎か――そろそろ決着をつけようぜ」
 白虎も吠えた。体中に意気を漲らせて、渾身の刀と刀が真っ向からぶつかり合う。虎鐡と白虎のメガクラッシュがぶつかって大きな爆発が起きた。
「ぐあああああああああっ!!」
 どちらともつかない悲鳴が砂塵の間から響き渡った。

●追い詰められた勇気
「虎鐡! 大丈夫か!?」
 拓真が隣で起きた大きな爆発に叫んだ。思わず助けに行こうとしたところをすかさず静馬が飛びかかった。長刀から抜かれた二刀小太刀によって作られた風刃に拓真はなすすべもなく身体を引き裂かれてしまう。
「ぐふっはっ――」
 血を吐いて拓真は膝をついた。
「どこをよそ見している? お前の相手はこの俺だぞ」
 静馬はまた無尽殺人奇剣を構える。隙のない攻撃態勢に拓真もやっと意を決した。自らも双剣を持って真っ向から挑んでかかる。
「相手が誰であろうと俺は容赦しない!!」
 一撃で仕留めるために渾身の力で拓真は双剣を構えた。ほぼそれと同時に静馬のほうも双剣を振りかぶってくる。
 お互いの双剣が空中で数度交錯した。激しい一瞬のやりとりで勝負がつく。お互いが向こう側の地面に着地したのと同時だった。
 拓真が突然、胸に傷を受けて倒れ込んだ。
「くそっ……ばかな……ぐはっ」
 速さはほとんど互角だった。威力も負けていたとは思えない。それなのになぜ勝負に負けてしまったのか?
 一瞬、拓真の眼には相手の双剣が直前で伸びたように見えた。自分の剣先が相手の喉を狙うよりも早く静馬の剣先に貫かれていた。
「気がついたようだな……俺の無尽殺人奇剣は伸縮自在。仮に同時に攻撃が放たれたとしても直前で俺の剣先が伸びる。もし避けたと思っても――それは回避したことにはならない。俺の双剣をこれまで完全に避けきれたものは誰もいない」
 静馬は倒れ込んだ拓真に向かって言い捨てた。拓真はすぐに傷ついた身体を引き起こそうともがく。
「ほら――立て。新城弦真の孫がその程度だと笑わされる。弦真さんはあの新撰組の先代たちをたった一人で壊滅させたほどの男だぞ。あの双剣の近藤も弦真を倒すために強くなった男だ。今頃あの世でお前の失態をあきれて悲しんでいるだろうな」
「くそっ!!」
 拓真は双剣を杖にようやく立ち上がろうとしていた。そこへ蛇骨を倒した楽とレオポルトたちが応援にかけつけてくる。
「大丈夫ですか? しっかりしてください。あとは私に任せてください」
 楽が拓真を背負って戦線を離脱する。すぐに回復を施した。
「これ以上は間がもちませんな。致し方ありません」
 レオポルトはマジックミサイルで静馬をけん制した。遠距離からの激しい攻撃にさすがの静馬もこれ以上拓真に向かって行くことができない。
 レオポルトはすぐに陣地作成を解除して姉弟だけでも先に避難させることにした。幸いに鬼夜叉を倒したぐるぐや、他に真琴やミミミルノたちがいる。
 先に陣地を逃れたぐるぐたちを追おうとして達磨は一気に決着を図った。
「おのれ……こぞかしいっ! これで終わりにしてくれる」
 達磨はしつこく迫る竜一に向かってギガントスマッシュを放った。櫻子を背後にした竜一は残った力で跳躍した。達磨に向かって上から刀を叩き下ろす。
 敵も刀を抜いて応戦しようとした。だが、竜一の気迫に押されて、ついに達磨の受け止めた剣が破壊された。
「くそお、俺の刀が――」
 達磨はその時後ろから迫っていた忍び装束の幸成に気づく。相手の挙動を見るに次でケリをつけるつもりでいるように読みとった。
 だが、思考を読み取っても、もはや達磨はどうすることもできない。
「思考を読まれようと自分の成すべき事はこれ一つなれば、淡々と仕掛けるのみ!」
 幸成は達磨の顔面に向かって刀を突き刺した。
「あああああああ――――」
 ついに幸成の攻撃によって達磨は倒された。

●受け継がれし正義の遺志
「おのれ、達磨までもが――」
 静馬は舌打ちした。確実に仲間の戦力を減らされてこれ以上作戦を続けることが困難になっていた。それに仇打ちの賀茂璃梨子たちも逃げられては堪らない。
「……陣地は解除した。これ以上の戦いは互いの為にもならんと思うがな──そちらの本命は誠の旗だろう?」
 戦線に戻ってきた拓真が再び双剣を突きつけた。これ以上この場に戦うなら容赦はしないという気迫を見せる。
「お前の言うとおりだ。拓真。俺達の目的はあの宿敵――近藤を倒すことであってアークではない。だが、いずれはお前たちも抹殺対象に入ってくる」
 静馬は再び双剣を構えた。それを見て拓真も覚悟を決める。只、真っ直ぐに、目の前の同道の強敵と己の刃を競い、高め合いたい。
 正義──それを貫くには志だけでは足りぬ。それに伴った力もまた、必要になるのだから。
「いいだろう、弦真の孫よ。かかってこい!」
 拓真は双剣を持って静馬に襲い掛かった。相手と同じ速さではダメだ。前のように殺人奇剣の刃にかかってしまう。ならば相手より早く強く剣を振るうまで。
 強く在りたい、守るべきを守る為に。
例え、その道が血刀で切り拓かれた道であろうとも、俺は……!
 再び双剣同士が空中で激しくぶつかり合った。
 勝負は再び一瞬で決着がついた。
「拓真!!」
 白虎との死闘を繰り広げていた虎鐡が落ちてきた拓真を受けとめる。無残にも切り捨てられた拓真を虎鐡は必死に介抱した。
「大丈夫でござるか? しっかりするでござるよ」
「虎鐡……? 俺は――」
「心配無用でござる。それに蒼乃宮も――」
 向こう側では同じように白虎が傷を負った静馬を介抱していた。
「ばかな――俺よりも早く動くとは」
 血を吐きながら静馬も胸を抑えている。拓真ほどではないが、静馬も深手を胸に負っていた。すぐさま立ち上がろうとするが――白虎に庇われる。
「御頭、これ以上は無理です。潔く退散しましょうぜ」
 静馬と拓真は互いに相撃ちになっていた。どちらもこれ以上は戦闘できそうになかった。これ以上やればそれはどちらかの死を意味する。
「悪いが拓真――ここは一度退散するでござる」
 動けない拓真を背負って虎鐡は走った。周りを護衛しながら竜一や幸成が静馬達を威嚇する。それに対して静馬らも自ら後退するしか術がない。
「決着はこの次に持ち越そう。弦真の孫は必ず俺が倒して見せる。それまでくれぐれも腕を磨いておくんだな――拓真。俺を幻滅させるなよ」
 静馬はそれだけを言い残して白虎とともに森の奥へと消えて行った。ようやく敵が去ってリベリスタたちはほっと息をついた。
「はぅぅ、無事に終わって良かったですぅ……」
 気を張り詰めていた櫻子がその場にぺたんと座りこむ。
「お疲れさん、櫻子たんのお陰で助かったよ」
 竜一がねぎらいの言葉をかけて櫻子も笑顔を見せた。
「奴はまた襲ってくるでござろうな」
 幸成は同じ忍びの勘としてそう思わざるを得ない。横に居たレオポルトや楽たちも険しい表情で頷いた。
「とりあえず賀茂姉弟を守れただけでもよしと致しましょう」
 レオポルトの言葉に楽やぐるぐも同意した。だが、虎鐡と拓真だけはいつまでも厳しい表情を崩さない。
「拓真――」
「ああ、わかっている」
 新城弦真のことは詳しく聞くことはできなかった。奴はまだ祖父のことについてまだ情報をいくつか持っている。それにも増して同い年の双剣に勝負で負けたのが我慢ならなかった。自分の弱さにあきれてものが言えない。
 それでも拓真は虎鐡の手を振り切って自らの足で立ち上がった。
「俺は必ず京都にまた戻ってくる。祖父新城弦真の遺志を継ぐ者として――」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
みなさま、お疲れさまでした。

少なからず傷は負いましたが、なんとか敵を撃退させることに成功しました。
今回は陣地や回復が豊富だったということもあり、こちら側主導で戦いを進めて賀茂姉弟を守り切ることができたと思います。

ところで京都での戦いはこれからますます苛烈を帯びて行くことが予想されます。今回の御庭番衆もいずれ近いうちにまた何らかの動きを見せるでしょう。


それでは、またの機会に。