●捕食 蒸し返す機械の放出熱に包まれ、騒がしいボイラーの稼働音を聞きながら、作業着に身を包んだ男が二人、埃にまみれた通路を歩いていた。 ここはとある製紙工場の地下。機器の稼働に欠かせないボイラーの冷却設備がうまく作動しなくなってしまった為、緊急メンテナンスとして二人はこの場所を訪れていた。 男たちは手慣れた様子で調査を進めてゆく。工場設備自体が古いのもあってメンテナンスは何度もこなしてきたが、しかしいくら調べようが、メーターの数値に不具合はなく、機械の故障なども見受けられない。 点在する懸念すべき箇所は隅々まで調べ尽くし、残る場所はここだけとなった。 『冷却水プール』、扉のプレートにもあるように、工場機器の駆動で使うボイラーを冷やすための冷却水で満たされた部屋である。 鍵はなく、ドアノブをひねって扉を開く。一歩足を踏み入れるとひんやりした湿気が頬を撫でる。すぐ目の前には、水底まで明瞭なほどに澄み渡った水が広がっていた。 「この部屋に不具合って……水しかないですよね、先輩?」 「あぁ……一応、水温だけ測っとくか……」 この部屋は冷却水を貯蔵する為だけの空間だ。調査の必要な機器などはほとんど存在しない。抽出するポンプや洗浄ろ過機は外のボイラー室に設置されていて、それらはすでにメンテナンスを終えている。 「16度、問題なし。とうとう原因が分からなかったな……」 「きっと何もかも古いんすよ、一度設備をまとめて交換したほうがいいんじゃないすかねぇ」 「違いない」 後輩の言うことに鼻で笑いながら答えた、その時。 ドプッ。 「え?」 大きく水が跳ねる音がして、ふと男は振り返った。 「? 何すか、先輩?」 「今……」 水の音がした。言おうとして、後輩のきょとんとした顔に言葉を飲み込む。 気のせいか。 「……いや、何でもない。工場に戻ろう」 「そうっすね、また熱いとこ通らないとな~」 ここは冷却水の温度を保つために冷房を聞かせてあるから心地よいが、ここに至るまでの通路には常時稼働中のボイラーが存在し、その排熱を送るパイプも張り巡らせてある。よって通路の温度は炎天下の真夏日よりも厳しい。 「仕方ないだろ、いいから」 男は語気を強める。ややさぼり癖の目立つ後輩を叱咤するつもりだった。 ドプッ。 「……先輩?」 先輩からの言葉が不自然に途絶えた。ドアノブに手をかけていた後輩の男は、その水の音を確かに聞いて、振り返った。 その瞬間。 (え?) 男は口を丸くした。視界に映ったのは、水。それから、その中でもがき苦しんでいる先輩。 プールから太く引き伸びた水が、アメーバのように先輩を絡め、飲み込んでいた。 「ぎ」 未知の怪奇に、断末魔を上げる暇もなかった。男は恐怖で屈折した表情のまま、冷却水の触手に飲み込まれた。 ●状況説明 事件の解決の為に集められたリべリスタたちへ、モニター越しの天原和泉(nBNE000024)が説明を開始する。 「とある製紙工場の地下にて、E・エレメントの出現が確認できました。至急対処を要請します」 聞いたリべリスタたちが神妙に頷くのを見て、天原もまた、落ち着いた声色で細かな状況説明に入る。 「ターゲットは粘着質な水で体成分を構築されたE・エレメント、工場で使われていた冷却水がエリューション化したものと推測できます。冷却水の重量はおおよそ150トン……目算で例えるならば、学校などで使われている25メートルプールの三分の一程度かと」 その水が全て襲い掛かってくるのだと想像すれば肝が冷えたが、一般人の被害者が二名出た以上は放置するわけにはいかず、寧ろ次の被害を抑えるよう早急な対策が必要となってくる。 「現場へは機器の熱がこもった通路を使って進むことになります。敵E・エレメントの不気味な粘体もあり、何かと気分を害する業務にはなりますが、皆様のご武運をお祈りします」 その補足に何名か渋い顔をした若いリべリスタが現れたが、その苦労も分かるから、天原は真摯に説明を締めくくった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:toyota | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月30日(日)22:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 機械の放出熱とこもる湿気で蒸し返す地下施設。せわしないボイラーの稼働音と金属の床を踏む音を聞きながら、リべリスタ一同はその通路を歩く。 埃まみれの太いパイプを幼い足取りでまたぎ、聖星・水姫(BNE004579)がこの劣悪な環境にうんざりした様子で口を開いた。 「むぅ、暑い……こういう時には、思いっきりプールで泳ぎたくなるんだぜ……」 パーカーをパたパタとひらつかせて水姫はぼやく。その下には水泳の授業の時に着るようなスクール水着を纏っており、まさかE・エレメントの粘体の中で泳ぐつもりではないだろうが、それほどに暑いのだろうと周りの面々はなんとなしに得心していた。 「ほほ、よく似合っておりますぞ。任務の後はそのまま泳ぎに行かれるのですかな?」 唇を尖らせて先頭を切る水姫に、ハンカチで頬の汗を拭きながらレオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096)がしわの深い目尻を緩める。 「どうしようかな、とにかく帰ったらシャワーは浴びたいんだぜ!」 「同感だよ。本当に暑い……。あぁ、でも見えてきたね」 水姫同様に表情を若干歪め、柚木 キリエ(BNE002649)が帽子を被り直しながら呟いた。 しばらく歩いた通路だったが、いよいよ目の前に扉が見えてくる。張り付いたプレートには『冷却水プール』とあり、フォーチュナからの情報を記し合わせれば、この部屋に今回のターゲットが潜んでいるとみて間違いない。 「じゃあ、手筈通りにいくぞ。俺たちは一端ここで事故強化を行い」 「私が中の様子を見て、敵に一発キメてからその情報を送る。任せておけ」 扉の前で桃村 雪佳(BNE004233)が作戦を繰り返し、街多米 生佐目(BNE004013)がそれを取り次ぐように呟いた。万全な状態へと戦闘態勢を整えて、尚且つ中の様子を知るという意味では、生佐目のマスターテレパスは特に有効だった。 「くれぐれもお気を付け下さいね、もう犠牲者が出ているとのことですので……」 姿勢を正し、胸の前で手を組んで心配を口にするリコル・ツァーネ(BNE004260) に、生佐目は手を掲げて答えつつ、その扉をくぐった。 中に入ると、一転してひんやりした風が頬をそよぐ。部屋は静寂と青白い照明に満たされており、その中央に四角形のプールが存在した。 生佐目は一歩部屋に踏み出し、ひとしきり周囲を見渡した後、プールの水面に目を這わせる。これこそエリューション化した冷却水であろう。されとてプールには目に見えた異常など毛ほども感じさせず、透き通った綺麗な水でなみなみと満たされている。 「さて、先手はくれるようだから……」 生佐目は後ろ手で完全に部屋の扉を閉ざし、身構える。普通のプールに見えても、あれがとんでもない化け物であることなどすでに承知の事実だった。 味方はすべて扉の外。この部屋には生佐目と、中央のプールに満たされた冷却水しかない。 「たまには、このスキルを使わせてもらおうか?」 悪戯な笑みで生佐目が手をかざす。直後、その足元にどす黒い光の紋様が生じた。きわめて小規模だが、それは紛れもなくディメンションホール。異世界とこの場を限定的ながら繋いでいる。 間もなくして、紋様からいぶすように黒い気体がこみ上げる。部屋の中には間もなくして、疫病の霧が立ち込めた。 ● 「我が力、万物万象の根幹へと至れ…」 レオポルトが呪文を唱え、すれば足元から鮮烈な光の塊が浮き上がり、レオポルトに纏わってその力を強化する。 「これで皆、万全だな」 同様にスキルを用いて自己強化を終えた一同を見下ろし、首筋に垂らした汗を気にしないままでアーサー・レオンハート(BNE004077)が腕組みをして言った。 「そろそろ突入しなくてはな。いつまでも生佐目一人に任せてはおけない」 肌に汗をにじませた小鳥遊 麗(BNE000919)が、暑さのせいか、自身の狼の尻尾を大雑把に振りながら口を開く。 その艶のある尻尾が誘うようにゆらゆらと揺れるのに、背後にいたアーサーは、触ってみたい……と手をこまねいていたが、戦闘の前なのだと自信を叱咤し、下を向いてこらえておいた。 (うわ……気持ち悪っ! ……じゃなくて、いよいよ出てきたな、私の毒の霧は消えたし、入ってきても安全だ) 「生佐目様からのマスターテレパスですね」 「よし、突入しよう!」 生佐目の声が頭に響き渡る。耳に手を当てたリコルが扉へと向き直り、アーサーは一同に声を張った。 扉を開く。一同はなだれるように部屋に飛び込み、即座に周囲の状況や作りを己の目で視認し、各々の間合いをとった立ち位置に移動した。 「なるほど、ゼリー状の敵か。確かに涼しげではある」 剣を構え、雪佳がプールから生えるように現れ出たその巨体を見て吐き捨てた。生佐目の放ったスキル『黒死病』による三十重ねの毒が効いているのだろう、核に浮き出た血管が異様な速度で脈動し、全身を構成する冷却水の粘体も苦しみもがくようにくねっていた。 「けど、まだまだ元気みたいだな……」 「あっ、生佐目!」 一同が目の当たりにした水の怪物、E・エレメントの側に、少し息を荒らした生佐目がいて、キリエは颯爽と駆け寄った。 『黒死病』の反動は大きい。効力が強力な分、代償として生命力を吸い取られ、生佐目の足もとはややおぼつかなくなっていた。 「大丈夫? 今、回復するから」 「悪い、けど、あんな奴が相手なんて、シャワー浴びるまでは死ねないぜ……」 キリエは肩を貸しつつ、光の奔流を指先から放って生佐目を抱擁する。大天使の吐息。柔らかな光は、自分たちが突入する前に受けたであろうE・エレメントからのダメージを優しく癒した。 「その巨体、切り刻んでくれる……行くぞっ」 低い声で呟き、雪佳が斬りかかる。跳躍し、前方から迫る粘体の触手を宙を翻ってかわし、繰り出した幾つもの斬撃で触手を微塵に斬り落とした。分離した部分は間もなくして粘度を無くし、ただの水と化して床に散らばってゆく。 「やぁ、これでも食らうんだぜっ!」 雪佳が軽やかに着地し、怯んだE・エレメントに水姫が拳を振って躍りかかる。パーカーを脱ぎ捨て、握った小さな拳を勢い鋭くE・エレメントに放つ。その途端、粘体の体の表面がはじけ、飛び散ったそれらもまたただの水と化した。その見た目と実際の威力は決して比例していない。 ふと、E・エレメントが大きくのたうった。粘体の一部が突き出て、かと思えばそれは太い鞭となり、扉付近で身構えていた麗へと襲い掛かった。 「ぐ……俺を喰う気か? 悪趣味極まりない」 水の鞭がしなり、麗は突き出した腕を交差させてその衝撃を受け止める。床を転がるように受け身を取ると、体勢を整えつつE・エレメント目掛けて手をかざす。 一呼吸の後、麗の手のひらから暗黒の瘴気がE・エレメントに噴射された。毒々しい色の煙がE・エレメントの身体を蝕むたび、本体は自身の体をふるい、黒ずんだ粘体を引きちぎってはそこいらに散らかした。 「なるほど、ああやってダメージを受けた体を捨てているわけか。生佐目の仕込んだ毒はしっかり効いているようだが」 尚も不気味に蠢くE・エレメントを冷静に分析して、アーサーは床に手を付けて身構えた。すればその足元から伸びた黒い影が巨大な刃の格好を成し、断頭台のように粘体を切り落とす。 「先程よりも、切り離された粘体が多い……」 「叩くより、斬る方が効果的というわけだな」 多少の差といえばそれまでかもしれないが、それでも目に見えて分かるほどの違いはあった。口元を抑えて驚きを漏らすリコルの隣で、アーサーが低い声で答える。 「だが、物理攻撃が効かないわけではない」 アーサーの言はまさしくその通りで、それまで繰り出した攻撃は、すべて確実にダメージとなって敵に積み重なっている。明らかに減少している体積がそれを物語っていた。 「粘着質な不定形の敵というのは、中々に厄介でございますね……!」 今度はリコルが、メイド服のエプロンをつまみ上げて床を蹴る。華奢で穏やかなその容姿とは裏腹の身軽な駆動でE・エレメントとの距離を狭めると、発揮できる全力の膂力を集中した拳を打ち込む。分厚い粘体によりその衝撃は核には届かずとも、それを庇っていた粘体を大きく炸裂させた。 ● 生佐目の治癒をこなした後、E・エレメントから攻撃を受けていたキリエは立ち止まることを許されずに回避を続けていた。迫るように水の鞭が幾度も襲い掛かってきて、そのうちの一撃をよけきれず、頭を庇って防御しつつも壁にまで突き飛ばされてしまう。 「ぐ……まったく、水がこんな動きをするなんて、量子力学を無視してる」 壁を頼りに立ち上がり、水の滴る髪を軽く払ってキリエは呟いた。今にも追撃の様子を覗かせるE・エレメントだったが、ふと、その体表に光の粒が纏わりついた。 やがてそれらの光は烈なる攻撃となってE・エレメントを襲う。光の正体はキリエの気糸だ。指を動かし、気糸を手繰る。それだけの動作で粘体が効率よくバラバラになってゆく。 「少しは小さくなってるみたいだけど、まだまだ元気そうだ……」 「では、あやつが最後の一滴になるまで、続けて見せましょうぞ」 指先で気糸を巧みに操りつつ、壁にもたれてキリエが肩をすくめていると、一歩踏み出してきたレオポルトが朗らかに笑う。その足元には鮮やかな光を放つ魔方陣がすでに展開されていた。 「我紡ぎしは秘匿の粋、ヴリルの魔弾ッ!」 魔方陣から照射された光線がE・エレメントを穿つ。魔法弾は粘体を弾き飛ばし、その熱は分離した水すらも蒸発させた。 「すごい威力だ、今のは効いただろうか?」 「初歩の魔術とは言えど、使い手に確たる魔力の下地があれば、威力と命中に優れた一撃となり得るのです」 周囲にうっすらと霧が立ち込める中、攻撃を構えていた麗が呟くと、敵の姿を細い目で見定めながらレオポルトが言い放つ。 その時。 「わっ!」 発生した霧の奥から、素早く触手が伸びる。ミミズがくねるように進む先には、突然のことに目を見開いた水姫の姿。 そのまま、粘体の触手に足首を取られて宙を振り回される。水着の格好では多少緊張感には欠けるものの、水姫は瞳をぐるぐると回しながら悲鳴をあげた。 「うわぁ~っ、目が回るぜ~!」 「いけない! ……早く水の外へ!」 「俺がいく、麗さんはフォローを頼む!」 「あぁ、任せろ」 レオポルトの険しい声に、雪佳と麗が頷いて答える。麗は照準を合わせやすい場所まで颯爽と移動して、水姫を捕えていた触手に手を突きだし、攻撃の態勢を整える。 「悪く思うなよ、仲間をくれてやるわけにはいかない」 低い声色で呟き、手に平から再び黒い霧を噴射する。吹き付けられた瘴気の影響で黒ずんだ粘体は小刻みに震え、水姫を振り回すのを留まった。 「さっさと、その手を放せっ!」 剣を構えて跳躍し、宙にいた雪佳が大人しくなった触手を斬り落とす。粘体が水と化し、短い悲鳴と共に落下した水姫を、真下にいたアーサーが受け止める。 「大丈夫か?」 「びしょびしょ……、やっぱり水着でよかったぜ……」 愛らしく唇を尖らせて気持ち悪がる様子を見て、アーサーはそっと安堵した。 「そろそろ終わりが見えてきましたな、水遊びもこれまでにいたしましょうぞ」 残り少ない粘体は、自身の本体であろう核を完璧には包み切れていない。間もなく訪れるであろう戦闘の終了を嗅ぎつけてレオポルトが声を張った。 ● 部屋の床や壁はすでに水浸しで、敵の本体である核を包む粘体は残り少ない。敵の大きさが変化したことに伴い、戦場はプールの内側にまで狭まっていた。 「これ以上犠牲が出る前に、早く終わらせてしまいましょう!」 滑る心配のない安全靴でプールの床を思い切り蹴り込み、リコルが著しく体積の減少したE・エレメントに接近する。残り少ない粘体を剥がしきるように拳を振るう。 今や粘体の防御が薄れている核はその衝撃に震え、粘体はさらにはじけ飛んだ。 「さっきはよくも振り回してくれたな、こんな奴に絡みつかれたって、嬉しくないんだぜっ!」 「ったく! 気持ち悪いからさっさと消えてもらうよっ!」 粘体が薄くなり、攻撃も防御もままならなくなった今がチャンスであった。水姫は核目掛けて拳を叩きこみ、生佐目が手の先から黒い瘴気を噴射してE・エレメントを追撃する。 粘体での防御が追いつかなくなるほどに攻撃を繰り返し、そしていよいよ、粘体から庇いきれなくなった核が露出した。 一同がその光景に気を緩めた、ほんの一瞬。 「ああっ!」 リコルが悲鳴を上げた。E・エレメントが防御を捨ててまで粘体を引き伸ばし、リコルの両足を絡め取っていたのだ。 体勢を崩されたリコルは目を見開いて地面を這う格好になり、滑らかなプールの床では何も掴むものもなく、次第にE・エレメントへと引き寄せられる。 「リコルッ! 耐えろっ!」 最後のあがきか、リコルを己の元へ引き寄せようとするE・エレメントを目の当たりに、すかさずそばにいた麗がリコルの手を掴み、そうはさせじと引っ張り返す。だがプールの床では踏ん張りが利かず、麗もまた、リコルに次いであの醜悪な核の元へゆっくりと引き寄せられてしまう。 「むうんっ!」 それでも抵抗をつづけ、すればアーサーが、リコルを捕える触手をその体重を乗せて踏みにじった。引き千切れた触手は水へと戻り、リコルは解放される。 「不覚でございました……ありがとうございます」 脈動する胸を押さえて、リコルは頭を下げつつゆっくりと立ち上がる。 「まだ、あんな力が残っていたなんて……」 「いや、もう終わりだ」 低い声でリコルに答えて、雪佳が駆けだす。目にもとまらぬ速攻でE・エレメントに接近し、掛け声と共に剣を振りかぶった。 すでに粘体の殆どが消滅し、丸出しになった核にそれは直撃した。 「レオパルトさん! 止めを!」 「我が血を触媒と以って成さん…我紡ぎしは秘匿の粋、黒き血流に因る葬送曲!!」 苦しげに体液を噴出した核のその真下に、レオパルトの展開した魔方陣が描かれる。黒い光と共に現れた黒鎖が濁流となってE・エレメントの全てを余すことなく呑み込み、荒れ狂い、押しつぶしてゆく。 黒鎖が消え、スキルが解けたときには、E・エレメントは跡形もなく消滅していた。 「皆様お疲れ様でございます! これをどうぞ!」 「ありがとう、喉乾いてたんだよね」 戦闘終了。ある者は床に座り、ある者はプールサイドに腰掛け、ある者は冷房の前で涼しい風を堪能している。 リコルは一同の全員を回って、飲料水とタオルを配り、プールサイドで足をぶらつかせていたキリエが礼を述べてそれを口にした。 「ったく、これからまたあの通路を通らなくちゃなんねぇなんてな」 「うぇ~、暑いのいやだぜ~」 渋い顔で言う生佐目の言葉に、水姫があからさまに嫌な顔でむくれる。 「だが、目的は達成したんだ、少し休んだら早めに撤退しよう」 あまり長居をして、一般人に出くわしてはたまらない。それを危惧した麗が提案すると、一同は頷き、それぞれアークへの帰路につくべくそれぞれ立ち上がった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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