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月のウサギ。或いは、きれいな月夜に魅せられて……。

●月の兎と、月光と
 蒸し暑い夜だ。梅雨時期にしては珍しく、空に雲はかかっていない。降り注ぐような満天の星空。とある田舎の、平原であった。日本有数の平原地帯として有名なこの場所は、時期がくれば日本各地からマラソン選手が練習に訪れる。
 大きな月が、平原を照らす。都会にいては見る事の出来ない明るい空と、大きな月だ。ビルなど存在しないため、空が広く感じる。
 蒸し暑い夜だ。生温い風が吹き抜ける。
 平原には、少女が2人立っていた。銀の髪が風に揺れる。頭のてっぺんに見えるのは、耳だろうか? 長くまっすぐ天に伸びるそれは、まさしく兎の耳だろう。
 肩に担いだ鉄槌と相まって、そのシルエットはまるで月の兎のようだ。
 否、まるでではない。彼女達は、まさしく月の兎である。
 ただ、この世界の兎ではない。アザーバイドと呼ばれる、別世界からこちらへ迷い込んだ存在だ。
 更に言うなら、彼女達の世界の月は、すでに滅んで消えている。
 だから、だろうか。
 月を眺めるその瞳に、幾分か、悲しさや寂しさの感情が窺えるのは……。
「お姉ちゃん、月が出ているよ」
「そうね。月が出ているわ……。この世界には、月があるのね」
 羨ましい。
 そう呟いて、兎の少女は月を眺め続けるのだった。

●月の獣
「アザ―バイド(らびぃ)と、アザ―バイド(ラビー)。兎の姉妹。それから、姉妹のペットである(月兎)が1体。平原に空いているDホールを潜って、こちらの世界へやって来た」
 モニターに映るのは、何をするでもなく月光を浴び続ける姉妹と、大きさ4メートル程になるだろう巨大な兎が1体。月明りのせいか、平原は明るい。
 モニターを見ながら『』は言う。
「彼女達の種族の特徴として、月光を浴びている間は身体能力が格段に上昇する、というものがあるわ。月兎も同様の能力を持っているみたい」
 見た目は、まだ十代後半ほどの少女でしかない。細く白い腕に、銀の髪、長い耳など外見もかなり整っている。しかし、それに似合わぬ鉄槌の存在が異彩を放っていた。
「彼女達は、あの鉄槌を軽々振り回すだけの力を持っている。穏便に事を澄ませることができればいいのだけど、元来好戦的な種族な事と、それから彼女達自身が元の世界への帰還を望んではいない」
 月を愛する種族であるらびぃとラビーにとって、月の無くなってしまった元の世界へ帰るのは辛いことなのだろう。何故彼女達の世界の月が無くなってしまったのかは知らないが、このままこの世界に滞在させるわけにもいかない。
「帰りたくないと言っても、無理矢理送還してきて……。或いは、殲滅でも可。異世界から来た兎達を、この世界から排除すること。それが今回の任務」
 その後、Dホールの破壊も忘れないで貰いたい。
 モニターの中の兎達は、今尚じっと、大きな月を眺め続けていた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年06月30日(日)22:57
こんにちは、病み月です。梅雨入りしたそうで、じめじめしてますね。
今回は、異世界から来た兎を追いかえすお話。
説得、強制送還、殲滅などやり方は様々。
それでは、以下詳細。

●場所
田舎の村の平原。標高は高く、自然豊か。空気が美味しい。
現在夜ではあるが、月の光が明るいため視界に問題はない。空は快晴。月は大きい。雲はない。
平原には遮蔽物がなく、またやたらと広い。急な斜面の影に隠れるなどして、身を隠す事も可能だが見つかり易いので注意。
Dホールが開いたままになっている。
標高が高いため、酸素が若干薄い。


●ターゲット
アザ―バイド(らびぃ)&(ラビー)
異世界から来た兎の姉妹。しなやかな身体と、長い耳、銀の髪と赤い目、そして兎の耳を持つ。
音に敏感で、動作も素早い。戦闘に特化した種族のようで、割と好戦的。
柄の長い鉄槌を持っていて、主にそれを武器として使う。
彼女達は月を愛しているようだ。しかし、彼女達の世界の月は、既に無くなってしまっているらしい。月明りに誘われ、この世界に迷い込んだようだ。
元の世界へ帰りたくない、と考えている。
月の光を浴びている間、身体能力を大幅に上昇させることができる。
【フルスイング】→物近範[ノックB]
遠心力に任せ、鉄槌を大きく振り回す攻撃。
【アイアンバック】→物近単[ブレイク][崩壊]
大上段から振り下ろされる、鉄槌による強打。
【ムーンサルトブレイク】→物近複[弱点][隙][致命]
宙返りと共に放たれる、鉄槌による高速の打撃。

アザ―バイド(月兎)
体長4メートルはあろうかという巨大な兎。らびぃ&ラビーのペット。
姉妹に懐いている。
割りと凶暴。獣らしく、強靭な脚力を持つ。
月の光を蓄え、発光する能力を持つ。
【月牙】→物遠貫[流血][連]
真空の刃を撃ち出す高速の蹴り。
【月光】→神遠範[呪縛][不殺]
全身から鮮烈な月光を放つ。


以上になります。みなさんのご参加お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
クラリッサ・ベレスフォード(BNE003127)
プロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
レイザータクト
波多野 のぞみ(BNE003834)
ホーリーメイガス
鰻川 萵苣(BNE004539)
ソードミラージュ
アンナ・ハイドリヒ(BNE004551)
ホーリーメイガス
レディ ヘル(BNE004562)
ダークナイト
廿楽 恭弥(BNE004565)
インヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)

●月を求めて
 兎の耳を生やした2人の少女。そして、少女の後ろに控える巨大な兎。悲しげな瞳で、空を見上げている。田舎の高原。真夜中である。
 明るい月夜だ。月明りを浴びて、少女達はまどろむ。
 だが、彼女達はこの世界の住人ではない。彼女達はアザ―バイド。異世界から迷い込んだ。
 彼女達の世界の月は、既に失われてしまった。
 だから、月のあるこの世界へ迷い込み、そして帰りたくなくなってしまうのも致し方ないことだろう……。
 とはいえ……。
「残念ながら、この世界に居て貰うわけにはいかないんです」
 そう告げたのはクラリッサ・べレスフォード(BNE003127)である。
 兎達を元の世界へ送り返す為、彼女たちリベリスタは、この場にやって来たのだった。

●ムーンライト
「誰?」
 そう呟いたのは、2人の兎の片方。(らびぃ)であった。(ラビー)も同様に、首を傾げている。そんな2人の背後では、2人のペットである(月兎)が唸り声を上げてリベリスタ達を威嚇する。
 その視線の先に居たのはレディ ヘル(BNE004562)であった。鉄仮面で顔を隠した異様な風体。やれやれ、と『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)は肩を竦める。
「怪生物かと思えば、やはりリベリスタでしたか。やれやれ、変わらない鉄仮面。もう少し笑えるものにしたらどうです?」
「………」
 返って来たのは無言であった。再度肩を竦め、諭は視線を兎達へ移す。
「月を楽しんでいるところ申し訳ないですが、お帰り願えませんでしょうか?」
 警戒体勢を解かない兎達に対し、『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)は柔和な笑みで説得を試みる。しかし、帰れ、と言われた途端に兎達の表情は一変した。
「帰れ? 私達から、月を奪うの?」
「どうして? 月を見ているだけよ?」
 赤い目で睨みつけるらびぃとラビー。地面に置いていた鉄槌を落ちあげ、振りあげた。すぐにでも戦闘に移れる姿勢。彼女達にとって、月とはそれほどまでに大切なものなのだろう。
「らびぃ、ラビー、どうか聞いてください。こちら側はあなた達を受け入れる事ができません。何もできないの、ごめんなさい」
 なおも説得を試みる『アカイエカ』鰻川 萵苣(BNE004539)。この世界にとって、彼女達の存在は毒である、とそう告げる。
 確かに彼女達は月を見ているだけだ。ただそれだけなのに、彼女達の存在はこの世界の崩壊を加速させる。
 だから、元の世界へ帰ってもらうしかない。
「胡散臭い話ね……」
「そう言って、私達から月を奪うの?」
 どうやら2人は冷静ではないようだ。話を聞いてはくれるようだが、それを理解するつもりはないようである。
「良く分からないけど、邪魔しないでよっ」
 最初に駆け出したのは、らびぃか、或いはラビーだったろうか? 鉄槌を振りあげ、強靭な脚力で飛び出した。
「気合いを入れて戦わねば……。三郎太参ります!」
 迎えうつのは離宮院 三郎太(BNE003381)だ。鉄甲に包まれた両腕で、らびぃの鉄槌を受け止めた。ギシ、と軋む三郎太の腕。
「まぁ出来れば、穏便に帰っていただこうじゃないか。思う様、愛(こわ)してあげてもいいんだけど、あからさまな敵でもないようだし」
 飛び出して来たらびぃと入れ替わるように『Hrozvitnir』アンナ・ハイドリヒ(BNE004551)が駆け出した。片手に銃を、もう片手にはガントレットを。飛び込んだ先には、巨大な兎、月兎が居た。懐に潜り込み、アンナは笑う。
「ちっ、抜かれた!!」
 踵を返すラビー。だがしかし、そんな彼女の手を『変態紳士-紳士=』廿楽 恭弥(BNE004565)が掴む。
「美しい…失礼。こんばんは、今宵は良い月ですね。それ以上に…月を見る貴方達の姿が美しく、つい言葉に」
「ひっ……」
 顔を近づけ、ラビーを口説く恭弥。赤い瞳に涙を浮かべ、ラビーは力一杯、鉄槌を振りあげた。

「お月さまがない世界、ですか。なんだかかわいそうですね」
 そう呟いたクラリッサ。彼女を中心に、周囲に居た仲間達の背に、疑似的な翼が生える。翼の加護。一時的にだが、飛行を可能とさせるスキルである。
 彼女の役割は、後衛から仲間をサポートすることだ。
「僕たちを信じてください。僕はこの世界を守らなくてはいけません。あなたたちだって、月よりも大切な家族を守らなければいけないでしょう?」
 クラリッサと並んで、後衛から仲間のサポートをする萵苣。必死の訴え虚しく、萵苣の声はしかし、兎達には届いていない。
 久しぶりの月を見て……。
 月から強い力を借りて……。
 もしかしたら、気分が酷く高揚した、所謂酔っ払いのような状態にあるのかもしれない。
「だったら……」
 萵苣の放った光弾。まっすぐ、らびぃへと飛んでいく。大きく振り抜かれた鉄槌が、光弾を打ち消した。
「可愛いだけのウサギならよかったのですが……」
 三郎太の拳が突き出される。正確に、らびぃの急所を狙う一撃だ。しかし、らびぃは鉄槌を足場に、まっすぐ上空へと飛び、それを回避。大きな月をバックに飛ぶ兎の姿は、幻想的だった。
 直後、まっすぐ振りあげられた鉄槌が、三郎太の胸を叩く。
「う……っぐ!?」
 吹き飛ばされる三郎太。それと入れ替わるように、仮面の怪人、レディが前へ。
『来るべき場所へ帰れ。加減も慈悲も、容赦もしない』
 脳裏に直接声が響く。ハイテレパスによる意思疎通。レディの突き出した斧にも似た魔力杖が、らびぃの脚を切りつけた。飛び散る鮮血。レディの仮面が赤く濡れる。
「このっ」
 背後へ跳び退るらびぃ。リーディングで読み取っていたその意思を、レディは素早く三郎太へと伝える。
 らびぃを追い詰めるべく、2人の放った魔弾が、らびぃを襲う。

大きく旋回する鉄槌。咄嗟にガードするものの、鉄槌は恭弥の胴を叩く。大きくよろける恭弥の身体。そこへ割り込んだのぞみ。放電する鞭が、ラビーの鉄槌に巻き付いた。
 しかし、お構いなしに鉄槌を振り回すラビー。
「わわっ!?」
 のぞみと恭弥がもつれあって地面に倒れる。追撃、とばかりに大上段から振り下ろされる鉄槌。しかし……。
「まったく、脳味噌空洞なんですか? 月に近付くために軽量化で中空構造なんですか?」
 轟音と共に降り注ぐ氷の弾丸。それを放ったのは、諭であった。戦艦の砲台を傍らに据え、薄く笑う。諭のフォローを受け、素早く起き上がるのぞみと恭弥。
「我々には世界に仇成す存在を知る術が有ります。その者がどのような力を持っていて、どこに居るかを知る事が出来ます。我々を退けた所で逃げ場は無いでしょう。こちらの都合ばかりで申し訳有りませんが…今なら、まだ引き返せます」
 撤退することを推奨する恭弥。彼の全身から、濃い闇が立ち昇っていく。禍々しく不気味な気配に気押されて、思わず数歩後じ去るラビー。
 その背後に、のぞみが回り込んだ。
「さァ、速度を上げていきますよ!」
 高速で振り回される鞭が、鉄槌を避けてラビーを襲う。完璧に弱点を捉える、大振りの1撃。ラビーの身体を打ちのめす。
「このっ!!」
 苛立ち混じりにそう叫ぶラビー。鋭い足刀が、のぞみを襲った。

 巨大な兎が月に吠えた。強靭な脚力で放たれる、鋭い蹴りがアンナを襲う。
「大人しく帰っておかないか? 月を見せてあげたいのは山々だし、気持ちはわからなくもないんだがね?」
 ガントレットで、月兎の蹴りを受け流すアンナ。彼女の背後で地面が割れた。真空の刃だ。月兎は、アンナを蹴飛ばし、もう一度距離を取る。
 距離を取った月兎へ銃口を向ける。放たれた弾丸は、しかし難なく回避された。兎の瞬発力。一瞬、アンナの視界から月兎は姿を消して……。
 頭上から、その巨体が降ってくる。
「あはっ……。そうくるなら無理矢理にでも帰ってもらうことになるな」
 素早く月兎の落下地点から脱出。急旋回し、銃を振り抜く。ソニックエッジ。真空の刃が、月兎の身体を切り裂いた。
 唸り声を上げる月兎。白い身体が、ぼんやりと輝いた。
 次の、瞬間……。
 閃光が瞬いた。眩しいほどに鮮烈な閃光だ。閃光は、アンナの視界を白く染める。
 それだけでは、ない。
「うっしゃァァ!!」
「月の光、頂きましたァ!」
 月兎の放った眩い閃光。月の光だ。
 それを浴び、らびぃとラビーは、歓喜の声をあげたのだった。

 高速で振ってくる重たい打撃。鉄槌を受け止め、三郎太は唸る。
「あなたたちの世界の月がなくなってしまったのは確かに悲しいことです」
 怒涛の連続攻撃を受け止めながら、三郎太の拳がらびぃを打つ。手数と重量で圧倒してくるらびぃ相手に、三郎太が行っているのは正確かつ無駄のない打撃。
 月兎の放った強烈な月光を浴びて、段違いに強くなったらびぃ。速く、重く、鋭い鉄槌。気分も高揚しているらしく、その瞳に宿る闘志は、先ほどまでの比ではない。
『失われし月光を求めるか。良いだろう。その命と引き換えならば』
 三郎太の背後から、無数の光弾が放たれた。鉄槌ごと、らびぃを後ろへと追い立てる。光弾を放ったのはレディである。翼を広げ、杖を突き出し、まっすぐ狙いをらびぃへと定める。
 彼女の攻撃に容赦はない。展開する光弾。レディはそれを、指揮するように杖を振り下ろした。
『機会は与えた……』
 再度放たれる無数の光弾。今度は、らびぃが防御に徹する番だった。月光で強化されたとはいえ、ダメージは蓄積されるのだ。
「あなたたちがこの世界に影響を及ぼしてしまうからっ」
 光弾に紛れ、鉄槌の下を潜り抜ける三郎太。大きく一歩、踏み出した。渾身の力で放たれる突き。手甲に包まれた拳が、らびぃの鳩尾に突き刺さる。
「う……っぐぅ!! 兎の月見を、邪魔するなぁ!」
 叩きつけられる鉄槌。三郎太の背中を叩く。血を吐き、地面に倒れる三郎太。
 らびぃのブロックに回るべく、レディが前へ飛び出した。

 ラビーが鉄槌を振り回す。のぞみと恭弥、2人纏めて薙ぎ払った。地面を滑る2人を追撃するラビー。それを阻むのは、諭の重火器による援護射撃だ。
 氷の弾丸を、並はずれた反射神経で回避するラビー。
 その脚に、のぞみの鞭が巻き付いた。
 大上段から振り下ろされるラビーの鉄槌。のぞみの首筋に叩きつけられる。地面に倒れ込むのぞみ。しかし、鞭から手は離さない。
 動きの止まったラビー目がけ、恭弥が駆ける。どろりと這い寄った暗黒の闇が、ラビーの身体を包み込む。闇を払うためにもがくラビー。しかし、もがけばもがくほどに、闇はラビーを飲み込んで行った。
「トドメは刺しませんよ」
 そう呟く恭弥。しかし、次の瞬間、暗闇を吹き飛ばし、ラビーが空へと飛び上がった。
 目を見開く恭弥。その背後で、空中のラビーへ狙いを定める諭。
「凍える前に、おうちへ帰ったらどうです?」
 轟音。展開する魔方陣。降り注ぐ氷弾が、ラビーを襲う。鉄槌を振り回し、それを防ぐラビーだが、空中でまともに姿勢を制御できる筈もない。
 そのまままっすぐ、地面に叩き落される。
「悪いけど、弱点を突かせてもらいますね!」 
 額から血を流すのぞみ。電撃を放つ鞭が、ラビーへと叩きつけられる。鞭の先端が、ラビーの喉に突き刺さった。吐息と共に血を吐くラビー。
 そのまま地面に落下すると、そう思われた、次の瞬間。
「まだ……まだァ!!」
 強靭な脚力で地面を蹴飛ばすラビー。全身のバネを利用し、その場で高く宙返りを決める。一拍遅れて、鉄槌がのぞみの顎を捉えた。
 ガン、と鈍い音が響く。
 白目を剥いて、倒れるのぞみ。地面に倒れ、動かない。口の端から血が滴っていた。ムーンサルトから動きを止めず、その場を離脱するラビー。
「ゲート方向へ、追い込みましょう」
後退するラビーを追って、恭弥が飛び出す。
「野良ウサギとじゃれる程度の間は持たせますよ?」
 重火器を構え、諭はそう告げたのだった。

●月見て跳ねる
「う……あぁ!」
 閃光にやられ、動きの止まったアンナの胴へ、月兎の脚が突き刺さる。骨の軋む音。次いで、内臓が圧迫される音。血を吐き、倒れるアンナ。上空へ飛び上がった月兎が、真空の刃を放つ。
「僕達は一緒に居る事ができない、残念だと思います。でもお互い守るべきモノの為に元の世界へと帰って欲しいです」
 主の為に、身体を張って戦う月兎。萵苣は、言葉を投げかける。アンナを庇うべく、真空の刃の前に、身を投げ出した。
 当たるを幸いに、めちゃくちゃに放たれる真空の刃。鋭い刃物で切られたように、萵苣の身体が一瞬で血まみれに変わった。
 萵苣が咥えていたストローが切断され、地面に落ちた。
 それと同時に、崩れ落ちる萵苣の身体。意識は保っているようだが、満身創痍。
 だが、次の瞬間。
 淡い燐光が、アンナと萵苣の身体を包み込んだ。優しい光が2人の傷を癒していく。傷を癒し、体力を回復させる。
「「ね、できれば貴方達のことを、殺したくないの。この世界に居て貰うことはできないんだけど……ここで見た思い出や、貴方達の世界に月があった頃の思い出を胸の中にしまって、大切に生きていく、ってできないかしら。月が壊れてしまうことはあっても、思い出だけは大切にとっておけば絶対に壊れないんですよ~?」
 月兎に向け、そう語りかけるクラリッサ。優しい頬笑みが月兎に向けられる。
 だが、月兎も引かない。主の為に、この場で戦いを止めるわけにはいかないのだ。
 地面に着地し、飛び出す月兎。全身の筋肉をフルに使った猛ダッシュ。弾丸のような速度で、こちらへ向かって突っ込んでくる。
 眩い閃光が放たれた。
「あぅ!?」
 真正面から閃光を浴び、萵苣は思わず目を閉じる。
「くっ……!」
 防御の姿勢を取るクラリッサ。4メートルの巨体が突っ込んでくるのだ。威圧感も並ではない。
「フェイトも無く居座るつもりなら、無理矢理にでも帰ってもらうことになるな。フェイトを得たら、三高平に招待けど」
 閃光が収まった、その瞬間だ。
 月兎の背に、アンナが飛び乗ったのは。
「一応、降伏勧告もしたけど……」
 どうやら聞きいれるつもりはないらしい。
 スカートを翻し、長い髪を振り乱し、アンナは素早く両腕を振るう。解き放たれる真空の刃。連続で、月兎の全身に降り注ぐ。
 月兎の足が止まった。白い毛並みを血に染めて、月兎は地面に倒れ伏した。
「わざわざトドメを刺したりしないから安心するといいさ」
 気を失った月兎に向け、そう声をかけるアンナ。
 その直後だった。
「そんなっ! 月兎!?」
 慌てたような悲鳴が上がる。らびぃとラビー、叫んだのはどちらだっただろうか? 鉄槌を投げ捨て、月兎の元へ駆けもどる2人。
 守るように、月兎に抱きついた。
「……………頼む。月兎は、助けてやって欲しい」
 零すように呟いた一言。
 それは、事実上の降伏宣言であった。

 それから数時間。
 じっと、治療を施された月兎と共に、らびぃとラビーは月を眺め続けた。
 涙を流し、なつかしむように、じっと……。

 この世界に残りたい。もっと月を見ていたい。そんな想いに後ろ髪を引かれながらも、2人と1匹は、Dホールを潜って元の世界へ帰っていった。
『次は、親しき者を失うことになる……』
 兎達が、ホールを潜るその直前。レディは彼女達に、そんな言葉を投げかける。
 彼女達の姿が見えなくなったのを確認し、レディはそのまま、翼を広げ飛び立っていった。
 何処へ向かうのか、誰にも分からない。兎達の行く末に興味はなく、また、既にこの場に用事もないのだろう。
「後始末はきっちりと。また似たようなのが来ても面倒です」
 そう呟いて、Dホールを破壊する諭。
 月に向かって飛び去っていくレディを、彼はそっと見送っていた……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
死者は出ず、名残惜しそうではありますが、兎たちは元の世界へ帰って行きました。
依頼は成功となります。
異世界から来た兎達との戦闘、送還の物語、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけましたなら幸いです。

それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別のお話でお会いしましょう。
このたびはご参加、ありがとうございました。