● 狂気染みた遊びが有る。 それは積もる衝動を抑えるため。 研ぎ澄まされたナイフを隠すため。 日々のストレスを発散するため。 そんな芝居がかった、三尋木のペテン師が運営する血塗れたサーカスが存在する。 ……といっても本日は別のお仕事の話。 「やっほー、お集まりのサーカス団員の諸君。 今夜も血や女に飢えているのかな? それとも俺に会いに来てくれたのかな?」 全身赤色の男は、奇抜な恰好の部下達へと……目が笑ってない笑顔を作って見せた。 仲間と久しぶりに会った、なんていう和やかな雰囲気なんてとんでもない。むしろ張りつめた空気しか存在しないこの空間に、馴れ合いなんてものは存在はしない。 「団長、そんなクソ話はクソどうでもいいんです。早く本題を。この――クソ『群れないサーカス団』である僕等をクソ集めたからにはクソみたいな理由があるんだろう?」 「話が解る馬鹿共で俺はとっても嬉しいです。その本題ですが。脱出ショーやるんです!! 超楽しみです!! ……つっても俺の趣味とお前等の趣味は全く合わないから、手伝ってくれる奴だけ残れば良いんです」 長い鎖をジャラリと引く。その先に着いた赤い首輪には、目隠しに、ご丁寧に口に猿轡をされた少女が一人捕まっていた。頬には涙の痕が色濃く残っている。 「とある地主の娘です。えーっと……『菱沼伽凛』でしたっけね。 同僚の仕事が終わるまで面倒を見なければならないんです。ですが、事には不祥事が付き物です。大きく動けば、大きく動く程、ね……」 含みを持たせた言い方に、団員の一人は大きく舌打ちする。 「なので皆さん、この子の面倒を一緒に見てくれる優しい保護者、募集です☆ 命に関わらなければ、お好きな事シていいですよ?」 例えば合法じゃない薬を飲ませてみたり、芯の奥深くに疼く欲望を晴らしてみたり、はたまた暇潰しにお喋り相手をしてみたり、口を利くかはどうかは別として。他にもお人形遊びの方法は多々ある事だろう。 「ロリコンは団長の管轄……かと」 「俺一人だと、うっかりこの子を殺しちゃうので……っ!」 「うわぁ。クソ引くわー」 団長と呼ばれたこの男――『Crimson magician』は数年前に杏里という少女を飼っていた。彼女はフェイトを持っていたからこそ壊しても壊しても立ち上がった。だが、今此処に居る彼女は違う。 「冷ややかな目線は慣れっこです。で、手伝う奴は手あげてー、はい! 決まり! あとは解散! また会う日まで顔も見たくないです、サヨウナラ!」 ● 「皆さんこんにちは、お仕事です。急ぎです、今から行けば、間に合うのです!」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は少し青ざめた顔で、ゆっくりと口を動かした。 「とある神秘的に優れた山が存在するのですが、それを三尋木のフィクサードが狙っています」 古い文献にはアザーバイドが封印されているとあった。その大きな存在の力を吸い取り、生命力として変換し続けて、山が潤い、草木が生い茂るシステムが完成している。またそんな神秘で溢れている山だが一般人等に増殖革醒等の影響が無い事も解析済みだ。 その山で三尋木が何をするのかは読めない部分であるが、彼等の手に渡って良い事は無いとだけは言える。 「三尋木ですので武力交渉では無く、穏健的な圧力で山を買収しようと……既に地主の方が軟禁状態になっており、三尋木の交渉と戦っている最中です。が、其方は違う班が対応します。此方はその地主の娘さんの救出を行います」 地主『菱沼 与一郎』の娘――『菱沼 伽凜』は山を買収するための交渉材料である。 彼女は『Crimson magician』クリム・メイディル率いる『群れないサーカス』の団員の下で監禁されており、交渉のために命の保障はされているものの、その他の保障は一切無い。その通りに、伽凛はリベリスタが到着した頃には命に関わらない程度での拷問を行っている最中に遭遇するという。 「娘の危機です……拷問なんて、そんな境遇になったら親は山よりも娘の無事を取ると思うのです。でも、それだけはさせてはいけません……なんとしてでも彼女を救出して下さい」 「場所は八月あたりに取り壊しが決まった工場内部です。中は暗いので暗所対策は忘れずに、ですよ。 その中にはクリムと、その部下二名と、使役されているエリューションが居ます。伽凛さんは最奥付近で椅子に張り付けられている状態ですので自ら動く事は不可能ですね」 工場が生きていた頃は内部に機械類が所狭しと並んでいたが、今は全て撤去されて中は正に長方形の地面があるだけになっている。戦闘する分には十分な広さがあるだろう。 「それでは、宜しくお願いします」 ● 冷たい椅子に座る伽凛。手はベルトで手もたれに固く固定され、その下には何やら恐ろしい歯車がついていた。おそらく何かの拷問椅子。歯車が回転し始めれば時間と共に手が引っ張られていき、最終的には腕が引き千切れるというものなのだ。 そして彼女の目の前にはカメラが設置されている。それはリアルタイムで何処かへ彼女の様子を送っている様で――あ、と思い出すようにクリムは団員へと釘を刺す。 「カメラを壊したらお仕置きしますからね? ほら、向こうも娘の姿が見えなくなったら、不安になってしまうでしょう?」 笑いながら言う彼に団員は、ただただ首を縦に振った。 恐ろしい話をしている男達だ、と。伽凛は不安と恐怖に満ちた表情の中に、「タスケテ」と訴える瞳をクリムへと向けた。だがクリムは伽凛の額へキスをひとつ落とすだけ。 「腕が無くなったら、ご飯食べ辛くなりますねぇ」 さあ、此処から脱出ショーの始まりだ。判子を一つ押せばすぐに成功する脱出ショー。 「人の心ってどれくらいまで追い詰めれば壊れますかねぇ。ね、沙救・仁。制限時間は三分ですよ、それでは良い返事をお待ちしていますね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月10日(水)23:02 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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