●ヒッチハイクGOGOGO それはもう美しいフォームだった。 片足は岩を踏み、まっすぐに伸ばした右手から突き出た親指が空を突く。伸ばされた全身の筋肉が小気味よく電気を走らせ、大きく開いた口からは腹の底からの大声で。 「Heeey!」 これでもかというくらいの自己主張はあれである。荒ぶるヒッチハイクのポーズであった。 年の頃は二十代半ば程度のちょっとちゃらい兄ちゃんで、連休を利用してのちょっとした旅なのだろう。一度やってみたかったんだよねーといった楽観的な感じが見た目からもうかがえる。 一方で。青年の後ろで座ったままため息をついた若者もいる。やや年下で、大学の後輩といったところか。 「先輩、もう無理ッスよ」 投げかけられた声にも先輩ポーズは微動だにせず。 「諦めたら試合終了だぜ後輩!」 「いやいやだってさっきから一台も車通りませんし。つーかここ山の奥なんですけど。人より獣の方が来そうなんですけど」 間。時刻は夕方。そろそろ明かりもなくなる頃――元々生い茂りすぎた木々で周囲の様子も伺えない獣道だけれど。 「諦めたら人生終了だぜ後輩!」 「洒落になってねぇんスよバカ先輩」 説明しよう。彼らはヒッチハイク旅行の帰り道である。目的地への旅は順風満帆に終わり、一泊を過ごしてさあ帰り道。ちょうど急ぎで帰るという車があったので乗せて貰った……まではいいが。 至急の帰路なので滅多に使われていない最短の急な山越え敢行。これはよい。よかったが。 「……なんでこんなところで途中で降りたんスか」 「ポンポンペイン」 先輩ドヤ顔。 「真っ暗だし方角もわかんないし歩くのは自殺行為。ここで夜を過ごすとかもっと自殺行為。完全に詰んでるじゃないスか」 「諦めたら――」 「うるせぇよバカ」 「あー携帯は電波届かないし財布くらいしか持って無いから火も起こせないし」 「俺は財布も持ってないぜ」 「消えてくれカス」 そんな仲良し二人の耳に届くエンジン音。車だ! 「ポーズを決め続けてた甲斐があったぜ! 助かったな後輩!」 「バカ」 「返事がバカになってるよ!?」 急ぎ二人は道に出る。近づく明かりに二人は笑顔で手を振って―― 瞬間、跳ね飛ばされて粉々になった。 ●セーフドライビングGOGOGO 「そのエンドは唐突すぎるだろう」 「ワタシが決めたんじゃネーシなんだよそのダメ出し」 真顔で抗議する『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)。神秘事件だから説明を聞きなさいよと資料を広げる。 「コノ二人は普通のパンピー。ちょっとオバカですが一般人デス」 それは見ればわかる。 「対して二人を跳ねたこの車。これデースが」 示されたのは無人の大型車。 「何これまじジープ。こんなので獣道来るのかよ」 「山で廃棄されてエリューション・ゴーレムになってマスからネー」 要はE・ゴーレムが目についた人を襲うという話。二人が襲われる前に討伐すればいいのかなって顔のリベリスタに。 「他にE・フォースにE・ビースト、E・アンデッドもいるヨ」 「なんでだよ」 なんでだよ。 「コノ山、地元じゃちょっと有名なオカルト話満載のスポットね。数が多すぎて掃討は難しいので、今回は車でこの二人を回収して急ぎ山を降りてくだサーイ」 今度改めて人数揃えて山狩りするからさーとウィンク一つ。「楽しいドライブをヒーロー」と送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月16日(日)23:33 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ヒッチハイクで行こう! 「ヒュー! 美人さんの詰まったドリームカーに乗せて貰えるとかボク感激だなー!」 「せ、先輩……本当に乗るんですか?」 山奥でヒッチハイクを敢行していた二人組。(人生を)諦めかけていた矢先に通りかかった車に女性ばかり4人も乗っていたとあっては先輩の浮かれようもわからなくはない。が、後輩に言わせればそんなことより、この車が装甲車であり中の女性たちが武装していることの方が大問題である。 後輩の引き攣った表情に、けれど先輩はばかだなぁお前と笑うだけ。 「女性しかいないんだからそりゃ護身くらい気を使うだろー」 「はいはーい、出発するから乗って乗ってー!」 会話を断ち切ったカメリア・アルブス(BNE004402)の言葉に、「常識だろ?」という先輩のドヤ顔に対する後輩の「とんだ過剰防衛だよ」という突っ込みは呑みこまれた。そのままいつまでもここで突っ立っていられても困ると有無を言わさず押し込んでいく。 ――まずは救助対象の二人を回収だね。 カメリアが仲間に目配せしてドアを閉めれば、頷き最近ドライブに目覚めたという『白銀の鉄の塊』ティエ・アルギュロス(BNE004380)が装甲車を走らせる。 ――一般人が山の奥でひっそり幕を閉じるのは見過ごせないからな。 二人のフュリエが意思を疎通し合い、周囲の植物との同調を高めてエリューションの接近を探知する。そのまま護るべき一般人の様子を伺えば。 「せ、先輩……あの人、耳が尖ってません?」 カメリアに押し込まれて座った正面。幻視の力を使用するカメリアはともかく、運転技術に集中するティエのフュリエ的身体特徴に後輩の奇異の視線が向けられていたが。 「そりゃ外国人だからな」 「あんたの常識はどうなって――っ」 二人の常識論のぶつけ合いは続かない。急にスピードを上げた車に思いっきり舌を噛んで悶絶している。 「シートベルトは忘れずに」 バックミラー越しに後方から付いて来るオフローダーを確認しながらティエが声をかけた。 周辺の植物から伝わる恐怖の感情をカメリアと共に察知し、「荒っぽい運転になるかもしれないからな」と口にして。 「んーいい車だな」 「レオポルトさん自慢の愛車だものね」 山道をすいすいと自在に進むオフローダーを運転し、『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)がのんきに感想を吐けば隣で頷いたのは蔵守 さざみ(BNE004240)だ。 前方を見れば装甲車両、その中にいるだろう愉快な一般人。 「とても興味深いわ」 軽装甲機動車両相手にヒッチハイクできる人材をにこりともせず評価して、すぐにさざみはサイドミラーに目をやる。ついで口にした詠唱が、さざみの両の甲に蒼い魔力の刻印を浮かび上がらせた。 「おっと来なさったか」 その様子に小烏が楽しげに呟きアクセルを踏み込んだ。近づいてくる気配をすでに自身も察知して。 ――いやはや、真夏はまだ先と思っていたがもう怪談の時期になったとはねぇ。 山奥の静けさはすでにない。明確な殺意を肌で感じて、それでも小烏は愛嬌ある顔を楽しげに動かしただけ。 「さあレッツ脱出ってな」 ●安全運転で行こう! 「響け響け祈り……響け響け幽かに……」 言葉が響けば魔力の波が静寂に響く。魔力の流れを高めた『ヴリルの魔導師』レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096)はそのまま周囲の様子を探っていく。 山道に跋扈するは魑魅魍魎、落武者、獣に人魂、そしてジープ。 「毎度の事ではございますが、此度もおかしな方向にバリエーションが富んでございますな」 「倒せば全部一緒よ」 一言で簡潔に纏めたさざみに笑みを見せ、レオポルドはその通りと力強く答えた。 「少々時期の早い怪談めいたエリューションには、早急にご退場願いましょうぞ!」 念を込めた符を車に貼り付ければ、空間を走る守護の念が味方を支える。 「岩境さん、運転はお任せ致しますぞ!」 レオポルトの声に任されたと頷いて、支援を終えて振り返った小烏がおやと目を見開く。助手席のさざみに後部座席のレオポルト。だが先ほどまでは確かにもう一人。 怪談話などではない。どうしたんだと慌てるつもりもない。それぞれが役割に専念している、それだけのこと。 後方から迫ってきたハイビームに自身の役目である運転へと集中し。悪路をいなし猛スピードで駆け抜ける! 「一撃たりとも行かせねぇよ」 そう笑って。 木々を抜けて現れたその巨躯。フェーズ2となったジープは文字通りのモンスターマシンとして奇妙に膨れ上がったそのボディに開いた口、あり得ないその牙を見せつけて迫り来る。 その視界――目に頼っていればだが――に何かがちらつく。オフローダーではない。高速で走るオフローダーに張り付いた不可思議な存在。 4人目はここにいた。慣性に逆らって。引力に逆らって。高速で走る車にただ無造作に足をつけて張り付くその少女。巨大な肉斬り包丁を二振り構えて獲物を待つその少女。楽しげに口元だけを歪ませて、歌うように言葉を紡ぐ。 「さてさて、ヒッチハイクは青春の一ページ。さりとて襲い掛かるは怪奇現象。ホラーな展開はこれでオシマイ、ここからはアクション巨編の思い出に変更なのデス」 それは映画の評論でもするように。帯のキャッチコピーでも語るように。脳裏に浮かぶは亡霊車両VS都市伝説の煽り文句。王道のようなB級のようなと声を上げて笑った。 ――さてB級映画に巻き込まれた不幸な一般人の運命は。哀れ亡霊の餌食かそれとも都市伝説の語り部か。 「最後まで正気でいればの話デスケドネ」 都市伝説はアハと高く音を響かせて。『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)は眼前に迫るジープに得物を向けた。 「こちらは戦闘開始したわ」 AFで前方車両に報告して、その視線を周囲に巡らせる。薄暗い森に隠れる危険のひとつひとつを闇を見通す目で監視し。 「さて、愉快なドライブの始まりよ」 さざみの言葉はただ淡々と紡がれる。この場でやるべきことをこなすだけ。4色の魔光を拳に重ねて―― 「ポンポンペインだからといって山奥で降りるなんて……バカすぎるわね」 「手を洗ってなさそうなので触らないでください」 左右からまくしたてる『マグミラージュ』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)と『さくらふぶき』桜田 京子(BNE003066)の連携攻撃が発動中。ソラから「もうちょっと後先考えて行動しなさい」とまともな教師っぽい発言が飛び出せば、先輩は何故か顔をほころばせて「ありがとうございます」と連呼するだけだ。 「後輩を振りまわす先輩っていうのは本当に困ったものですよね」 妙に実感こもった台詞は何でしょうか京子さん。 「来たぞ!」 後方車両からの通信の直後、ティエの言葉と後方で響いた轟音はほぼ同時。振り返れば木々を薙ぎ倒しながら突き進むモンスターマシンがわずかに視界に入った。同時に周囲で高まるその殺気! 「……進路を変える!」 ティエが事前に調べた下山ルート。道の様子やジープの動きを考慮して最適を導き出す。それは運転技術を極めたティエだからこその瞬時の判断だろう。 「鉄壁のドライヴテクニックを誇るナイトに隙はない!」 最短のルートで突破を目指す装甲車が沼地に差し掛かる――瞬間突き出した無数の手に、捉えられるようなティエではない! 危険すぎる追いかけっこが始まった。どう見ても動物の枠を超えた何かが木々の隙間からこちらを伺う。その数は見渡すだけで数える気力も失うほどに。 「一度山ごとお掃除したほうが良さそうだけど……今は逃げるのが先かなー」 近づく敵に投擲せんとすでにパンティーを脱ぎ臨戦態勢を取るカメリア(真面目な文章です)。無頓着な彼女に代わってソラが睨みつけたが二人組は外の様子にそれどころではなかった。口をぱくぱくさせる後輩に、ただただすげーすげーと連呼する先輩。 神秘の隠匿はエリューションの義務である。なんというか普通に考えればもう不可能な気がするけど必死に言い訳を考えて…… 「これは、あれ、そう! テーマパークのアトラクション! 新作の試運転よ!」 「まじで! すっげーじゃん! ハハッ!」 強気に押し切るソラ。甲高く興奮する先輩。 「あれもこれも全部CG! 最新技術って凄いわね! 先行体験できる貴方たちは幸せものね!」 「まじで! 超ラッキーじゃん今週の乙女座最高じゃん!」 「あなた、本物のバカね!」 「まじで! 俺本物じゃん!」 ほんとまじばか。 車が取り囲まれる前に念を集中させ、京子は己が式を産み出して。膝の上で動いた小鬼に後輩がくらっと意識を失った。構わず集中を続ければ、ついで現れたのは人を模る影。近づくE・ビーストを迎撃せんとする影人は、後輩が見れば恐慌では済まなかったかもしれない。 が、とにかく狭い。小鬼はともかく影人を入れれば後部座席に5人である。「すげーすげー」と興奮する先輩に。 「ころがれ」 「え」 「え。じゃない。ころがれ」 足元を指差し圧力。努力せよ。足手纏いだから。似合うから。 「わかったらそこに転がりなさい。ころがれ」 「ありがとうございます」 すちゃっとお腹を見せて横になった先輩の上に影人を配置し、京子は蝙蝠の翼の様に黒い弓に矢を番え。 「一網打尽ですよ!」 冷たい雨の如く降り注ぐ! ●セーフドライビングで行こう! 「我が血を触媒と以って成さん……我紡ぎしは秘匿の粋、黒き血流に因る葬送曲!」 レオポルトの魔術杖から流れる黒を紡いだ鎖の渦が車に張り付いた無数の手を飲み込み剥がした。それでもわずかに残った手に「ちょこざいな」と魔力を紡ぎだす、より早く。 突き出した拳が魔力の刻印を浮かべ象る。魔力が可視の光となれば、切り裂き穿つ力の塊となって。四散したエリューションからすぐに視線を動かしさざみは別の敵をサーチする。倒した敵に興味はない。やるべきは敵を討つ、ただそれだけ。 「やりますな」 微笑んで。レオポルトは沼地を抜け出すまでの辛抱と次々と迫る敵を狙い穿つ。 「我紡ぎしは秘匿の粋、ヴリルの魔弾ッ!」 近づかれる前に次々と撃ち放つ。さざみと並び敵を落とし、あるいは無力化し。「ここが正念場ですぞ」と力づけ。 「また来たよ人魂!」 カメリアが言葉と共に降り注がせた神秘の矢弾は、そのいくつかを吹き飛ばしながらも完全に食い止めることは出来ない。半数はかいくぐって襲い来る。 更に足元から突き出す無数の手! 前面を埋め尽くすエリューションの襲撃に。 「こっちは私がカバーしてるわよ」 魔力媒体を通し、突き出したソラの指先から放たれる雷撃の騒音が沼を焼き焦がした。高まった精神が再び集う人魂を連続的に吹き飛ばし。 「協力して全方位カバーするわよ!」 暗闇を見通して次の敵を発見しては指示を飛ばす。まるで先生だ。 一般人が巻き込まれないように次々現れる敵を確実に処理していく。そのために纏めて吹き飛ばすべく連続して術式を繰り返し。 それを支えるのがカメリアだ。フィアキィと共に祝福を投げかけその力を枯渇させないのも彼女の務めなのだ。 横から飛び出したビーストの群れを闇の瘴気が包み込む。怯んだところをそのままティエが見事な運転で駆け抜けて。 「荒っぽい運転になっているが大丈夫か」 仲間に気を配りながら操縦するその腕は正に極めた運転技術。沼地を抜けた現在、一度たりとも車を危険な状態にはしていなかった。 片手間に動きを鈍らせた仲間の浄化支援を行うその姿は安心を与えるナイトそのもので。 もっとも、敵とて愚鈍に突進を繰り返すだけではない。タイミングを合わせ、木々から飛び出したビーストたち! リベリスタの射撃が敵を穿つ。その足を止め、倒し、それでも1体が咆哮と共に見せた体当たり! それは装甲車から飛んできた影人と頭をぶつけ合って地面をもんどりうつ結果に終わったのだけど。 「影人爆弾です」 京子、己の影人にサムズアップ。いくらでも弾はあるとばかりに再び産み出して鉄壁体勢。この2人がいる限り車は大丈夫な気がしてきた。 「さすがにあの運転についてくのは大変だけどな」 敵の合間を自在に縫うような運転を小烏はさすがに真似できない。けれど状況を判断し、仲間に指示を飛ばすことは小烏の得意分野。味方が見ている場所は、どこが手薄か、運転しながらそれを見極める。 「歪崎!」 一言で指揮を執れば、心得たとばかりに車外の行方が足場を変えた。 2歩踏み込めばジープを牽制していた行方はすでに正面にビーストを迎える。構わず突進する獣を、両手の包丁が無造作に捉えた。 瞬間、全身に満ちた破壊の闘気が肉を断ち骨を砕く。押し切り押し込み叩き斬るその一撃が獣の首を簡単に刎ね飛ばして。 「アハ」 行方は笑う。空は先ほどより薄暗く、行方のように闇を見通す目でなければ敵の接近の感知は難しくなってきた。時間の経過は同時に山をずいぶん下ったという意味を成し。 「つまりクライマックスが近いってことデス」 ジープがこのまま逃がしてくれるものか。さあB級映画の結末やいかに。 突如襲い来る振動が激しく車を揺らす! 何もない場所から急に実体化する落武者たちが車の前に立ちはだかり。 「やってくれるじゃない!」 ソラの叫びが電撃を伴いアンデットを蹴散らした。同時に、もう一息だと仲間を癒す歌を紡ぎ。 献身に支えられ、リベリスタは一斉に動き出す。左右のビーストを京子が影人と共に、前方のアンデットをカメリアが。 降り注ぐ氷雨が獣の脚を凍りづかせれば、炸裂する神秘が落武者の身体を装甲車から引き剥がした。 「――森を抜けますよ!」 京子の叫びにティエがグラトニーソードでしがみつく落武者の腕を切り落として―― 長いドライブの終点にアクセルを踏み込んだ。 「突撃してきましたぞ!」 レオポルトが叫び紡いだ魔力を弾き飛ばして、ジープが最後の猛進を試みる! 集中的にジープを対処しようとした小烏が舌打ちをみせた。森をまもなく抜ける今、恐らくこれが敵にとって最後のチャンスなのだろう。誰の指示か、周囲の獣たちもまた一斉に飛び出した。 対処に悩む間もなく、振るわれた拳が代わる代わる光の文様を描いて獣たちを突き飛ばす。さざみは表情を動かさずにその無力化に専念する。 そちらはさざみに任せよう。木々を薙ぎ払い直進するジープ、小烏はその動きを読み取って。 「全くヤクザな車だねぇ、そんな煽るもんじゃねぇぞ?」 事故ったら洒落にならんと笑い飛ばし――小烏は念を込めた符を貼り付けた。 途端車内から飛び出した影。小烏の符で負傷を癒した少女。高く高く山に木霊する都市伝説の笑い声。 「さあさあきたデスネ、亡霊ジープ! 亡霊車両もまた都市伝説の代表例、ぶつかり合うもまたスペクタクルというやつデス! アハハハハ!」 「本気で相手すんのはまた今度、お互い程々で頼むよ」 小烏の苦笑。ジープの咆哮。行方の嬉々とした笑い声。全てがクライマックスを彩って。 ジープの突進を行方が払う。行方とジープの動きを見極めた小烏の指揮判断がわずかに車のラインを動かして回避し続け。 大口を開けて呑み喰らわんとする魍魎を、その牙を骨断チが断ち切った。ついで、口を肉斬リが抉る。痛みと怒り。それらを都市伝説が呑み喰らって! 叩き付けた一撃がジープを弾き動きを止めた。行方は無念のクラクションを楽しげに聞き。 「See you again」 木々に隠れるその姿に手を振って。 ●お家に帰ろう! 「どうやら逃げ切ったようですな」 お互い無事で何よりでございましたとレオポルトが会釈する。 未だ気絶している後輩を介抱し、カメリアが2人を街まで送ってあげないとねと仲間を振り返る一方。 「今日の事は絶対に秘密よ? 公言するようなことがあれば、怖い人たちが貴方の目の前に現れてイロイロされちゃうわよ?」 先輩の首を掴んでソラが脅していた。その後ろで虚ろな目で笑みを見せる行方。怖い。 「存在が足手纏いだったけどお疲れ様です。あと早く2万円返してあげなさい」 笑顔の京子。怖い。 「あら、先に帰るの?」 さざみの言葉に頷いて。その運転技術で戦況を優位に導いたナイトは時間を気にしていた。 「実は連続して次の任務が入っているのだ。今度はバイクだそうだが」 そうしてティエはバイクの聖地と呼ばれる峠へと―― いやー終わったなとひと伸びして、小烏が仲間を振り返る。 「帰りは誰か運転頼むよ」 疑問を浮かべた仲間に。 「自分は今日が初運転の無免許だからな。免許持ちに任せるよ」 そう笑ってウィンクを。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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