● 「何も言わんで、チュウしてきてくれない?」 『擬音電波ローデント』小館・シモン・四門(nBNE000248)は、今日も遠い眼をしている。 「もう少し言うと、暴走しているアーティファクトがあるのでそれを停止させたいの。そんでそのアーティファクトが入ってる箱もまたアーティファクトで、開錠コードが「愛してるとささやきながらのお口にチュウ」×365回なの」 なんだ、その条件。 「作ったのが新婚で頭に血が上ったおにいちゃんで、毎朝新妻にチュウして一年後の結婚記念日に宝箱が開くって言う仕掛けになってたんだけど、新妻、三ヶ月で事故死。残り、約270回残ってるの」 満願成就すればロマンチックだったんだけどねーと棒読みしながら、スナック菓子を噛み砕くフォーチュナは、リア充爆発しろとは思ってないけど、自重しろとは思っている独り者です。 「だから、まず、箱を開けなくちゃならないの。でもさ。こういうの、女の子に頼むのどうかと思うんだよ。かといって、カップルに仕事でチュウして下さいとも言いづらいし」 言えよ。そっちの方が平和じゃねえか。ちょっとカップル放り込んで、ちゅっちゅしてもらえばいいじゃねえか。 「プライベートに関係あること、報告書に書いてもらうのやだ」 変なとこで恥らうな! 「で、俺、考えたんだよ。野郎同士なら、数の内にはいんねえし、いいんじゃね? って」 嫌な予感が的中したよ。 「だって、女の子と気まずくなるの、やだろー? 一回とかならまだ事故とも言えるけど、数が数だしさ」 落ち着け、この馬鹿。野郎同士でキスとか気持ち悪くないのか、お前は! 「何言ってんだ。口くっつけるだけだろ。男は数に入らない」 こいつ。清らか過ぎて、ほもぉとか知らないんだ。こんなにアークには腐れがいるのに、まだ遭遇してないのか!? 「それとも、なんか起こったりするのか?」 見ないで。そんな清らかっぽい目で見ないで。 「アーティファクトは、時計なんだ。竜頭引っ張ってくれればとまるから。よろしくね」 そういえば、どういう暴走なんだ。 「その時計を中心に、家一軒だけずっと同じ三ヶ月が繰り返されるんだよ。その家の上だけ雨が降って、周りは雪でも、そのうちの上だけ晴れて。幸せだった三ヶ月がずっと繰り返してるんだよ」 本当は進むはずだった時間。 「もう誰もいないのに」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月08日(土)22:33 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● この家の上だけ、雨が降っている。 「繰り返される幸せな時間……か。誰もいないのに繰り返されるそれのなんと虚しいことか……範囲が広がって被害が出る前に何とかしなければな」 アーサー・レオンハート(BNE004077)さんの常識的モノローグから始まる、365マイナス90イコール約275回チュッチュ大会である。どんどんどんぱふぱふ。 ダブルベッドにナイトテーブル。 新婚さんサイズの寝室に詰め込まれる八人。ちと狭い。 リベリスタでありながら、誰かの不幸が誰かの幸せ。 誰かの幸せは、誰かには許容できざること。 異なる思惑が、簡単なはずな仕事を複雑怪奇なものに変えていく。 要するに。 女子に夢見がちなフォーチュナが、女の子は巻き込めない。同性同士は数に入らないの法則を真っ正直に実行するべく、野郎同士なら誰も被害こうむらねーだろ。と、大雑把な指示をしたもんだから、まともな野郎は逃げた。 残ったのは、使命感に燃えた馬鹿とその寛容すぎる彼女。よく分かってなかった男子高校生と達観――ある意味油断した五十代。そして、腐女子が二人とおにゃのこ好きと寛容すぎるおばあちゃまが一人である。 「で、今回はどんな敵を倒せばいいんです?」 よくわかっていなかった男子高校生――『青碧の焔』小金井 春(BNE004510)のまっすぐな瞳が、今は悲しい。 「キス? 鱚のエリューションっすか?」 そうだったらよかったのにね。キスに頭丸かぶりされたほうがましだったかもしれない。異種的に。 違う違うと否定され、お指でチュッチュッチューとアクションされた春の顔から血の気が引く。 「接吻……? 聞き間違えっすよね?」 そうだったらよかったのにね。 「いやだって、いくら仲間同士とはいえ恋人じゃない相手となんて……男同士?」 『野郎同士は数にはいんないって!』 やたらと無邪気に言い放った赤毛のフォーチュナの能天気な笑顔が浮かんでくる。あれってそんな意味だったのか。 「あ、俺、用事思い出したんで……帰らせてもらってもいいっすかね? 母の体調が悪くって、面倒見なきゃ」 君のご両親、とうにお亡くなりになってるだろうが。 Lv36デュランダル、フィジカル35ホールド。Lv24マグメイガス、メンタル34ホールド。 Lv9、最大値フィジカル25では、どうすることもできません。 「にがさない」 腐女子がこんなおいしい男子高校生を逃がすか? そんなことはない。 意志の表明ではない。単なる事実の確認だ。 春は知ってしまった。ありえない所に足を踏み入れてしまったのだと。 天国のお父さんお母さん、これからはちゃんとブリーフィングの中身を吟味してから依頼を受けます。とか言いつつ、彼は数日後またうっかり同系列の依頼に入ることになるのだが、それはほんとに別のお話である。 「嫌だよ! 男同士でキスするなんて! 女子同士のキスも目のやり場に困るんで!! 俺、足引っ張ると思うんですよ! オレなんかがいても邪魔になるかなーって!」 『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)と『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)はうっとりしている。 ノンケ男子の半泣きからのわめき弁明、われわれの業界ではご褒美です。五臓六腑に染み渡るぜ。 (照れてる姿と嫌がってる姿の小金井くんプライスレス。男同士でも怖くないよ……大丈夫、君もこれでリア充だ) 壱也の腐女子アイズにおびえる春に救世主。 「なら、ボクとしようか」 『Hrozvitnir』アンナ・ハイドリヒ(BNE004551)が、にこにこして自分を指差す。 「さて、先に言っておくがボクは女だぞ」 いえ、小僧なので、女の人とチュウも怖いです。役得と乗れないお年頃です。 「愛はない? ならビジネスライクにいけばいいじゃないか」 じり。と、春が下がった。じり。と、追うアンナ。 「男とか女とか年齢がどうとかボクの前では些細なことだよ。一番年上だし――自分で言うのもなんだけど中性的だし?」 言ったな。50代のアーサーさんより年上だって言ったな!? 「――遠慮します」 なんか内なる道徳律がやめとけって言ってます。 「じゃあ、全力で百合百合するしかないね」 なんということでしょう。別ルートのフラグが立ちました。 (女の子とキス!! やっほう!! テンションあがる!!) 『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は、脳内ガッツポーズである。 (依頼のためだから、やましい事は何もないもんね!! やっほう!! さぁ、気合入れるよ、気合!!) かぽーんかぽーん。めっちゃやる気なのが黙ってても見て取れる。 (百合百合する。チュッチュする) セレアは、覚悟完了である。 (愛が無きゃ駄目だと思うの。いやまぁ、お仕事なので本当にどうしようも無いなら、愛のないチュッチュもやるしかないと思うけど――) 空気が一気に百合百合やむなしに。 (またやられたあああ!) 脳内絶叫する壱也は、正統派腐女子である。 (男性同士とかっ男性募集とかっ数にはいらないとかっ!! わたし向けの依頼だと思って飛び込んだら!! 自分のピンチが訪れるなんて!!) 正統派腐女子はあくまで観察者である。自分が巻き込まれてはいけないのだ。 あ、もちろん嫌がる人にはやらないわよ! と、二人は微笑むが、ぜんぜん信用できない。 「でも、せっかくだから仕事を楽しめれば、それに越したことはないわよね!」 ――って、セレアの脳内駄々もれである。 「というか、アレです」 急に声を潜めるセレア、26歳。 「せっかくでございますから、リア充は爆発などなさってくださらないでしょうか的な空気もちょっとだけ。だってあたしもアラサーですよ、恋人居ませんよ、結婚なんて以下略」 アラサーではないよ、ヴァンサンカンだよ。思いつめないで。そのままの腐女子でいて。と、壱也は首を横に振る。 百合百合じゃなくて、ホモ炊きつけようぜ。 壱也的にはホモホモ観察どころか、自分が百合百合の危険が差し迫っているのである。 ぜひこの追い詰められ感を夏の薄い本作成に役立ててほしいものである。スペース確保できたかい? 「ちゅっちゅは男同士でやるもんだよね!?」 (わたしは絶対に逃げ切ってみせる。なんとしてもだ!!) 背後に破壊神を背負いながらの壱也の牽制。もう、どんなBSも怖くない。 「いや、俺らがやるから!」 報告書に自分たちのいちゃいちゃ書くのは抵抗あるんじゃないかなぁ。という、四門のよく分からない気遣いを踏みつけてやって来たカップルの男の方。 (くくくっ! 計画通り!) 『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は、バンドを組んじゃったせいで、ますます『口を開かなければ、いい男」の度合いを上げている。 「ホモリスタたちが増殖する昨今だが、それに抗い、正しき道! 歪みのない世界を生むべく俺はやってきた!」 とか偉そうに言ってるけど、こいつ、アーク発足当時はリア充爆発しろとか埠頭あたりで叫んでたんだぜ。 「世界の歪みを修正してやる! ホモとか! ホモとか! ホモとか! 不健全なほもっぽい依頼を、俺がユーヌたんとノーマルでいちゃいちゃラブラブにかえてやる!」 そんな竜一を冷静に観察するユーヌの木――じゃなかった、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は、ここまでせっせと影人をこしらえていたのだ。 ユーヌの木は増えて、林くらいになっている。 「竜一に誘われて来た物の――何かカオスだな?」 そんな言葉で、この色と欲にまみれた空間を端的に表現してしまうユーヌは、竜一の奇行のあらかたを許してしまう、でれクールなのであった。もうちょっと取り締まってもいいのよ? (まったく、死に別れたお陰で切ない話だが、死なず一年持たずに破局してたら物悲しい物体になってたな? 熱々バカップルの残滓で面倒なのは代わらないが) ゆったな、熱々バカップルの片割れめ。 もしかして:無自覚。 「時間かけ過ぎるのも問題だ」 すたすたと竜一の前に立つ。 (「ユーヌたん、愛してる。」とささやき、ちゅっちゅしまくるよ! 270回ぐらい? バカヤロウ! 俺が365回こなしてやんよ!はぁ~ん、ユーヌたんは可愛いなあ。いろいろしたいがガマンしよう。最初の50回ぐらいは、見詰め合ってから、ユーヌたんの頬を両手で包んで愛してるとちゅっちゅ。はぁ~ん、ユーヌたんはやわらかいなあ。何度しても飽きないよお。唇を啄ばむように、愛してるとささやきながらちゅっちゅし続けよう。別に365回で終わらせなくてもいいんだよね、ちゅっちゅ!) あらぶる竜一の脳内独白。ただし、考えはすべて顔と怪しく宙を撫で回す手つきに出る。 それを無表情で受け止めるユーヌの木。じゃない、大地のように受け止めるユーヌの器の広さに僕らは思わず涙する。 竜一が口を開く前に、「愛してる」と、ユーヌは呟き、キスをした。 竜一が「あ」、と言いかけたら、「愛してる」と、ユーヌは呟き、キスをした。 口を僅かに動かしたら、「愛してる」と、ユーヌは呟き、キスをした。 自分押したいことをまったくさせてもらえず、みるみるしょぼくれる竜一に、 「速度が足りないな?」 と、ユーヌは悪い女の笑みを浮かべた。 「速度判定に勝たない限り好きにさせる気はないが――?」 一介のデュランダルが何をできるというのでしょう。世界法則を超えねばなりません。 (単なる戯れ。ちょっと悔しがる所を見てみたい程度の) 悔しがるどころか意気消沈してしまった竜一の浮上のため、更なるチュッチュが必要だったのは今更のことなので割愛する。 ● 一方、その頃。 レイチェルは、まずは優しく。と、セレアと唇を重ねていた。 「見られながらするの……ドキドキするね」 (1回1回を大切にしたい。すぐに終わらせたくないもん) 「セレアの唇、柔らかくて気持ちいい……」 (それにしても、間近で見ると本当に可愛い……見惚れちゃいそう) レイチェルの腕がセレアの背中に回り、身体を押し付けながら深く唇を重ね、セレアを求めた。 舌をそっと吸っては離れ、また吸ってはまた離れを繰り返して、セレアを感じたいレイチェルの気持ちが溢れる。 「んー……」 セレアの唇から、声にならない声が漏れる。 まさしく唇が触れ合う距離で、セレアがレイチェルにささやく。 「熱いキスもいいですけど、あたしは何というかこう、柔らかく、そっと当てるような感じのキスが好みなの」 キスを交わす相手にしか届かないおねだり。 小さく頷き、レイチェルはそれに応える。 (身体、火照ってきちゃった……あたしの熱も、胸のどきどきも、セレアに伝わっちゃうかな……) 16歳の熱烈さに、26歳の余裕が削れてくる。 (だんだん頭がぼんやりとしてきた) 出入りする舌の先に絡む銀色の輝きに、かっとレイチェルの頬に朱が走る。 (やだ……こんなのまで見られちゃってる……本当言うと、さっきからあたし、変な気分になっちゃいそうで……ずっと我慢してるんだよ……?) セレアのまさぐる指に、レイチェルの髪や頬の柔らかな感触。 この部屋に他の誰かがいなかったら、かび臭い寝台に身を投げ出すことになったかもしれなかった。 「よし、次はアンナさんだ!」 アンナは、よしきたと混ざった。 (回数を稼ごうか。まあ、唇が痛くならない程度にね) ● 「男子……少なくないですかねぇ……しかも一人は彼女連れとか……非戦勝じゃないですか……やだぁ……許さない……」 地の底を這う声で呟く壱也が怖かっただけなのだ。 『俺、カウント役やります! カウント超頑張るから、キスを見るの恥ずかしいの我慢して超頑張るから、勘弁してください!』 そんなことを叫んでしまった数分前に自分をいっそ殺してしまいたい。 熱烈爆発カップルに即席百合っぷるのキスカウントが、体育の時間に腹筋の数数え上げるのとは訳が違うということを体感せざるを得なかった男子高校生は誰だい? 春君だよ! 交代したユーヌが造った影人が、黙々と野鳥の会あるいはユーヌの木的にカウントしている中、手持ち無沙汰な二人の目があった。のに、気づかぬ壱也ではない。 「わたしカウント係しますね! 任せて!! 伝説のカウンター羽柴がんばります! 小金井くん、リラックスしてね!リラックス!!すってーはいてーはい、かわいい期待の新人小金井くんと安定のベテランアーサーさんでイチャイチャしてもらおう異論は認めない」 壱也が息を吹き返す。 「わたし今日この仕事しにきたんだよ!」 目から星が零れ落ちそうです。 「美少年とかイケメンとかナイスミドルとかならともかく、強面で厳つい50代のおっさんとかお呼びじゃないよなこういう依頼。仕事である以上頑張るが、なんだが申し訳ない気が……」 謙虚なんだか、牽制なんだか分からないアーサーの呟きに、いやいやいやいやと首を横に振る腐女子、壱也。 「アーサーさんは安定…なのかな、もっとこう包み込むようにいっていいんだよ。結城くん、小金井くんが頬赤らめながら見てるよ」 ファイト! と、エールを送る壱也に、アーサーはさらに言う。 「そういえば、ふと思ったが、俺って今までキスなんてしたこと無かったような……ということは、これが俺のファーストキスになるということに――」 なんだって? チュッチュしていた腐女子セレアの動きが止まる。 「いやいや待て待て、野郎同士は数の内には入らないと四門も言っていた。即ち、これはノーカウント、ノーカウントだ! ファーストキスが仕事で野郎とでしたなんていくらなんでも虚しすぎる」 え? 魔法使いを通り越したあなたは、一体どんな清らかな人生を送ってこられたのか。 「俺、キスとか初めてだし……や、優しく頼みますって、え?」 年の差ヴァージンキッスだよ。どレアだよ。 「それにしても、キスなんて恥ずかしいよな。しかも「愛してる」と囁きながらしなきゃいけないとは…… 俺が相手の者は、正直罰ゲームもいいところなんじゃなかろうか。まぁ、お互い仕事と割り切ってやるしかあるまい」 「くぅ……これは仕事なんだ、逃げるわけにはいかないんだ」 仕事だから。ああ、なんて素敵な免罪符。 春は、逃げなかった。だって、もうカウントとか無理だし。 セレアの一眼レフのシャッターを切る音がカウントの代わりになった。 (教えてくれ……俺はあと何回キスをすればいい) ユーヌの影人に聞けば答えてくれただろうが、口がふさがっている。 (もう、いいんじゃないかな?結構回数こなしたと思うんだけど) なんかもう、いろんなところが磨り減りそう。 (俺、何のためにリベリスタやってるんだろう……あく、うがっ) アークのリベリスタよ。もちろん、崩界阻止のためだ。 君のその尊い行動で、この界隈の異常気象が今後一切なくなるのだ。 その事象を止めることも大事だが、それがなくなることによる人々の心の安定が、この崩れやすい底辺世界の安定に確実につながっているのだ。 君達に、この言葉をささげよう。 「依頼に貴賎なし!」 ● 「怖いのは最初のうちだけよ」 くるぅり。夏コミの資料をゲットしたセレアとレイチェルは、壱也に向けて満面の笑みを浮かべた。 頬に余韻が残っているところが超怖い。唇つやっつやなのもまた怖い。 「同性といちゃつくのに遠慮なんていらないの! 百合は正義だから! あ、ホモォも正義!」 (むしろ羽柴さんは巻き込みたい、全力で巻き込みたい、ちゅっちゅしたい!) 「ほら、可愛がってあげるからおいで」 年下攻めレイチェル、キタコレ。 「わたしがしにきたんじゃないですからー!!」 壱也、捕まっても抵抗して暴れる。素手でも、現在ジャガノ中だから、危なくてしょうがねえ。 「わたしそーゆーの遠慮しますからあああ」 ほっぺをつかんで固定しようにも、じったんばったん。前衛職、マジ全身凶器。つうか、歯医者の治療を嫌がる小学生女子のようだ。 これは、磁石の空気ではない。 「……うーん、まぁそりゃ、本気で嫌がってる子には出来ないし。諦めるかぁ」 レイチェルは、今回は許してあげることにした。 (危なかった。わたしの貞操は守られた) ぜひゅーぜひゅーと、壱也は肩で息をした。 この緊迫感を、ぜひ夏の薄い本にぶつけてほしい。 ● そんなこんなしているうちに、箱は、かぱっと開いたのだ。 いち早く手を突っ込んだ壱也が思いっきり竜頭を引っ張り、時計を停止させる。 降っていた雨がやんだ。 さて。 このチームのアーク帰還直後。 「イヤー!! アンナさん、よしてー!」 「とりあえずは…全員の唇を奪わせてもらうとしたんだが、色々ガードが固くてだな。男連中のは奪えなかったので、四門のと思って。なに、見た目は少女なんだから、おふざけと思っておけば傷は浅いんじゃないかな? もしくはおばあちゃんが孫の頬にキスしてるようなものと思うか。犬に噛まれたとでも思っておけば?」 「女の人は数に入りますーぅ! 初めては好きな子と決めてるんですーぅ! ばあちゃんより年上の人は嫌ですーぅ! たすけて、奥地さん、蒐ちゃん、ギロチンさーん!」 とあるフォーチュナが泣きじゃくりながら要塞ブリーフィングルームに立てこもる事件が勃発したのだが、当案件とは関わりがないことを改めて追記しておく。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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