● ニィ、と倒れ行くリベリスタを見ている男の口の端が吊りあがる。 「猿狩りが上手くいく快感はたまらないな。彼ら劣等が僕らアーリア人を楽しませるのは仕込まれた芸をする時か無様に死ぬ時だ。君もそう思わないかい? ギルベルタ」 「そうですね」 小隊を率いる男、レオナルトの質問に副官のギルベルタが感情の起伏少なく答える。 「まったく、君はいつも素気ないね。娯楽を持つことは嗜みだよ?」 やれやれ、と言わんばかりにレオナルトが首を振る。 「それが命令でしたら」 「……まあいい、残りの猿共はどこだい?」 軽い呆れを含ませつつの上官の問いにギルベルタは視線をレオナルトから外し、虚空を見つめる。 彼女の眼からしてみれば多少知恵を働かせた猿の逃げ道など手にとるように丸わかり。言ってしまえば猿知恵だ。 「……此処から北北東の方に4人、南西の方に3人です。 どちらも私達が追跡すれば数分で追い詰めることが出来るでしょう」 「そうかい、それじゃあ、そうだな北北東の方へ行くとしようか」 「南西の方は逃がすので?」 「無理をする必要はないからね、我々は確実に方舟の戦力を削ればいいのだから」 軽く顎に指を添えて思考するレオナルト、その言葉の中に劣等を見下す思想はあれど油断はない。 ただ確実にその牙をリベリスタ達に突き立てるべく、猟犬は歩を進め始める。 ● 「始めまして、諸君。出来得るならばゆっくり挨拶をかわしたいところだがすまない、緊急の任務だ。素早く現場へ向かってくれ」 衣更月・央(nBNE000263)は新人にしては堂々とした、しかし焦りを感じさせる口調で説明を開始する。 「『親衛隊』が現れた」 それはここ数週間程ですっかりアークの面々に鮮烈な印象を刻む敵の名前。 『鉄十字猟犬』リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイター率いるそれがアークの戦力を確実に削ぎ落しに来ていることは悪い意味で御馴染となってしまっている。 先ほどよりも一層引き締まった雰囲気のなか央は詳しい説明へ移る。 「状況は芳しくない。 リベリスタ八名がエリューション討伐直後に親衛隊からの襲撃。 疲労状態にあったリベリスタ側は即座に撤退を決意、一名の戦闘不能者を出しながらもそれを仲間が抱えて辛うじてその場を離脱することが出来た。 ――そして、その際殿を担った八名の中でもっとも手練であったリベリスタが死亡している。 これ以上の死者を出す訳には行かない、そこで今回の任務の目的はこのリベリスタ達の救出、及び親衛隊の撃退となる。 対象は親衛隊に追われている逃げた中でも戦闘不能者を抱えている方だ」 もう一つのグループは戦闘領域から離脱したところで先にアークの人員が迎えに行く手筈が既についているらしい。 「死亡した彼は実力的に逃げの一手を打てば最も安全にその場を離れることも出来ただろう。 それをしなかった彼が、そうまでして逃がした彼の、私達アークの仲間を、どうか無事に此処まで連れて来てくれ」 ● ああ、目が霞む。楯を握り直す力さえない。 自分の中に燃えていた運命の火が小さくなっているのがわかる。 俺はもう駄目だろう、だから、今この瞬間手の施しようがない自分よりも先に逃がした仲間の方が気がかりだ。 アイツらは無事逃げられただろうか。 自分が稼いだこの時間で仲間が生還できればそれが俺の勝ちだ。 「ざまぁ、みろ」 ああ、疲れた。後のことは頼りになる仲間に任せて、少し、眠ろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:吉都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月15日(土)22:44 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 絶望。 逃げるリベリスタ達の胸の内を表すならば、この一言で十分だ。 任務でノーフェイスを倒した直後に近頃アークに仇なす敵であるところの親衛隊による襲撃。 それを一度は二手に分かれて逃げることで切り抜けるも数分で追い付かれる。 最早スキルを使う余力すらないリベリスタ達にとってこの状況は致命的に絶対絶命。 「このまま殺されてたまるかよ……!」 数十メートルの距離を置いて親衛隊と対峙するリベリスタのうちデュランダルの男が悲壮な顔で剣を握る。 「やめておくといい、苦痛が長引くのは嫌だろう?」 その様子を部隊の隊長であるレオナルトは薄ら笑いを浮かべて嘲る。 彼にとって、剣を握るその行動は足で潰せるカマキリが鎌を振り上げて威嚇しているようなもの故に。 だからこそレオナルトはその虚勢を剥ぎ取ろうと嗜虐的な笑いを浮かべる。 「ギルベルタ」 「了解しました」 レオナルトの副官であるギルベルタは彼の声音から指示を読みとり、自らが携えるライフル型のアーティファクトを構える。 彼女が引き金を絞れば弾丸は容赦なく戦闘不能に陥っているリベリスタを死亡に、またはそれを庇った者が新しい戦闘不能者に追い込むだろう。 どちらにせよ、敵戦力を削るか敵の逃亡を更に難しくしながら見せしめを作れる。 そんな考えからの行動だ。 「彼女が撃てば君の大事な大事な御仲間が死ぬだろう、それが嫌なら君が庇い給えよ? おっと、手が震えているぞ? 大丈夫かい?」 飽くまで油断せず、しかし余裕を持った親衛隊と極限まで追い詰められているリベリスタ 其の様をなんと称するべきか、少なくとも親衛隊にとっては戦いと言えるものですらない。 では其の様をどう称するかと言われれば、それはやはり狩りというべきだろう。 ―――ギルベルタが弾丸を放つ、この瞬間までは。 発砲の音が森の中を木霊する。 しかし、高速で飛翔する弾丸よりもなお早く動く存在が戦場に駆けて来る。 ソレは弾丸が無情に標的を貫く寸前で対象に間に体を割り込ませ、腕で弾丸を受ける。 レオナルトが笑みを崩し、ギルベルタが眉をひそめる。彼らが予想していた死体の姿はそこになく。 「なかなかいいスタートの合図だったぞ」 代わりに、神の如き速さの異名を持つ男、『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)が其処にいた。 「私達もいるんだからねっ」 「此処からは我らにお任せ下さい」 「良く頑張ったな」 鷲祐に続くように『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)、『ヴリルの魔導師』レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096) 、『悪童』藤倉 隆明(BNE003933)が飛び出す。 ルナがNo.57を一振りすれば炎弾が降り注ぎ、着弾の瞬間に爆発する。 「ぐっ」 爆発の煽りをまともに受けた親衛隊のデュランダルが後衛、ギルベルタの前まで押し返される。 次に攻撃をするのは同じく遠距離への攻撃手段を持つレオポルト。 「我紡ぎしは秘匿の粋、ヴリルの魔弾ッ!」 杖の先に魔力が物理的な作用を持つまで凝縮され、放たれる。 それは先程のルナによるエル・バーストブレイクを楯で防いだクロスイージスへと殺到するが敵はそれも楯で受け止める。 高い性能を秘めた無骨な楯は二人の攻撃によるダメージをかなり減衰させているようだ。 二連撃を楯で防御したクロスイージスの前へ隆明は位置取りを調整する。 「よぉ、うちの奴らにずいぶんとヤンチャしてくれてるじゃねぇか」 おかえしだ、と言わんばかりに撃鉄が何度も跳ね上がりリボルバーが回る。 先程仲間に銃を向けたギルベルタまで巻き込んで親衛隊を撃つ。 気の済むまで撃ち終えて隆明は銃口から煙を燻らせる銃を一回転させてナックルダスターとして握りこみ構え直し、後方から突撃してくるデュランダルも纏めて対峙する。 「援軍の登場って奴かな」 「それ以外の何かに見えるか?」 ナイフを構える鷲祐が自然体のベルナルトを睨む。 「その目、気に入らないね。 君はなんでそんな目をして僕の前に立っているのかな?」 「いちいち聞かなければ俺の意図もわからんのか? 使う頭もないとは格が知れるぞ」 細められた目が、彼の持つナイフの切っ先が、いつでも地面を蹴れるようなその構えが、鷲祐のその一挙手一投足がベルナルトへの挑戦状だ。 「ハッハッハ、劣等が僕に真っ向勝負で勝てる訳がないからわざわざ聞いてあげたんだが、やはり日本人は気が狂っているよ」 ベルナルトが押し殺した笑いと共にシースからナイフを抜く。 「ギルベルタ、そっちは任せたよ。僕はちょっと、コイツで遊んでみたい気分になった」 「了解しました」 軍靴の爪先で軽く地面を蹴ってベルナルトが構える。 「特別に先手は譲ってあげるよ」 「ふん、譲ってもらうまでもない」 鷲祐が一度息を深く吸う、それだけで体内のギアが切り替わる。 「―――お前は、俺より遅いからな」 瞬間、二人の足元で派手に土が飛び散った。 そうして先に突撃したメンバーが時間を稼ぐ間に『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)と『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)が一つの目標を達成しようとしていた。 「大丈夫ですか? 動けますか?」 光介が先程銃弾を防いだ鷲祐を含めた回復術式を発動させる。 憔悴しきっていた彼らに微かな活力が戻っていく。 「あ、ああ。 だけど他にも仲間が!」 一人が焦ったように声を出す。 しかし、既に八人が任務に割り当てられたことを知っている海依音は諭すように語りかける。 「大丈夫です、今回親衛隊が来たのはこちらだけみたいですから。 だから安心して、貴方達は下がってくださいな」 そうして仲間達に小さな翼を付与する。 自分達が足手纏いだと分かっているのだろう、救援対象のリベリスタは二回目の撤退を開始する。 「ありがとう、私達が言えることじゃないけれど、無事で帰ってきてくださいね」 戦闘不能者に肩を貸している女性のリベリスタが一度振りかえる。 光介が視線を敵に向けたままうなずく。 海依音は戦闘領域を離脱し始めたリベリスタに一度ちらりと視線をやって前を向く。 それはとても今から激戦に身を投じるようには見えない、だが、それがまた海依音のらしさだ。 「さぁ、それではアンティークをスクラップにするとしましょうか」 ● 海依音達が回復を行っている間、親衛隊もただそれを見ているわけではない。 自分達の狩りの標的をむざむざ逃がされてなるものかとデュランダルをアタッカーにして襲いかかる。 「ここがナイトの出番であることは確定的に明らか。 消耗した敵を狙うしか出来ないきたない奴らに負ける訳はない」 『白銀の鉄の塊』ティエ・アルギュロス(BNE004380)がデュランダルの攻撃を盾で受け止める。 高威力のそれに躰が悲鳴を上げるがティエは表情を動かさずに彼女の魔力を乗せた言葉で持って挑発を返す。 精神に直接ゆさぶりをかけるソレはデュランダルとマグメイガス、ホーリメイガス一人を激情させ、回復を一時的に封じる。 「バッドステータスの解除を」 しかし、即座にギルベルタの指示が飛び、クロスイージスが動く。 盾から発せられる光はデュランダルとマグメイガスの狂わされた精神を正常に引き戻す。 「あらあら、バカリア人様の指揮能力はその程度ですか? ならもう一つ行きましょう」 『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)の手に神秘の閃光弾が生まれる。投擲されたそれは先程の光とは違い強烈な悪意をもって親衛隊の視界を焼く。 突然の閃光に身をすくめたデュランダルへ隆明が殴りかかる。 本来は楯役がカバーリングするはずであるが、怒りに突出していた者は守れない。 「ざまぁねぇな」 抉り込むように打つショートアッパーが武装したデュランダルの体を一瞬宙に浮かせる。 「全くでございますな」 嘆息するレオポルトが見るのは怒りのまま、目の前で攻撃を受けた仲間を回復することもせずにティエへ攻撃を放つホーリーメイガス。 「結局はアレと変わらんのですな 強大な力を持ってしまったものが感情のままにそれを振り回す。滑稽なことでございます」 愚かな子供を見るような眼をしたレオポルトが一度頭を振り詠唱を開始。 「我が血を触媒と以って成さん…我紡ぎしは秘匿の粋、黒き血流に因る葬送曲」 高速演算によって瞬時に完成された術式は黒き奔流を戦場に生み出す。 同じ術師としても攻撃魔術を本領とするレオポルトの魔術は先程のホーリメイガスを含めた敵の全てを飲み込む。 それに対抗するように親衛隊のマグメイガスとダークナイトがそれぞれ攻撃を開始する。 黒の二重奏はリベリスタ全てを蹂躙し、後衛の前に立つティエの後ろまで貫いて行く。 其処にギルベルタの射撃が重ねられ、一際体力に劣る光介が崩れ落ちそうになるも運命を燃やして立ち上がる。 「僕が一番最初に止まるにはいきません」 今、彼の目の前には自分と同じように攻撃を受けダメージを抱える仲間が居る。 彼らを回復する前に自分が倒れては自分は役に立てない。 「術式、迷える羊の博愛!」 癒しの風が吹く。傷口を広げる黒の鎖も傷口をじくじくと苛む痛みも纏めて砕き、傷口を塞いでいく。 レオナルトの振るうナイフが一息の間に二桁に届こうかという数の斬撃を生みだす。 鷲祐はそれを高速で回避することで防御するも全てを避け切ることは出来ない。 今もまた、切られた腕から血が噴き出す。 「あれだけ言っておいて無抵抗かい? つまらないなぁ」 「その眼」 回避した先、着地した先にある木の根を更なる足場にして鷲祐が加速する。 「ん?」 「俺も貴様のその眼が気に入らなかったんだ」 小さく息を吸って、止める。 深化した鷲祐の肉体はそれだけで血液に大量の酸素を取り込み、心臓が高速で脈を撃ち、筋肉を駆動させる。 木漏れ日を反射したナイフの刃が宙に銀色のレースを描く。 「立てよ、コレで終わりじゃないだろう?」 先ほどまでの綺麗な軍服を土と血で汚したレオナルトへ鷲祐が吐き捨てる。 ● 「救援対象が戦域を離脱しました」 光介が己の視界から救援の対象者達が完全に消えたことを報告する。 即ちそれは新しい札を切る好機がやってきたということである。 「うん、海依音ちゃん。ギルベルタは無理そうだから、あっちかな」 ルナが杖先で指すのはデュランダル。 元々彼女の狙いであったギルベルタは前衛の後ろにいる以上その判断は妥当なものだろう。 「そうですね、では」 海依音が後衛の位置を飛び出し、ルナが続く。 後衛で火力を担う者が前に出るという行動は、普通なら自殺行為だ。現にすぐにデュランダルが海依音を狙って剣を振る。 其の一撃はアーティファクトの高い性能と相まって海依音に深い傷を付けるがしかし、海依音の目的はルナを対象へと近づけること、即ちこの時点で彼女の目的は達成されている。 ついでに置き土産で放ったジャッジメントレイが纏めて敵を灼く。 その光に紛れるように海依音の後ろから飛び出したルナがたった今海依音に攻撃したデュランダルに接触する程に近付き掌を向ける。 「いっけぇー!」 朧に透けた木の根の様なものが現れ、デュランダルへ向けて絡み付こうとする。デュランダルは自らに向かってくる其れへ剣を振って根を断ち切ろうとするがそれは剣をすり抜る。 遠き世界から齎される加護は加護であるが故に抵抗を許さない。 本来は全ての物理的なダメージから身を守る鎧は、今敵の動きを鈍くする枷として顕現する。 「皆、今っ!」 ルナは自分達の作戦の成功を確信して声をあげる。 「お任せ下さい」 答えるはレオポルトの詠唱、高速で組み上げられた術式が戦場を黒く染める。 「全体への攻撃を確認。各自回避もしくは防御を」 戦場全体を見るギルベルタからの指示。それに従い各々行動を取ろうとするがエル・ユートピアを受けたデュランダルは上手く動くことができずまともに黒の奔流に飲まれる。 それを見ていたギルベルタは眉を上げる。 「対象の行動を妨害するスキル、しかし速度減衰でも行動阻害でもない……」 「優秀なアーリア人様でも分からねぇことってなあるんだなぁ!」 隆明が皮肉を飛ばしながらクロスイージスを鎧の上からぶん殴る。 「古い頭を持ってるって嫌ですね、脳みそに埃を被ってるんじゃないでしょうか」 海依音の破邪の呪文が加護を受けたデュランダルに刻まれる。勿論神秘のダメージを加護は跳ね除けず、あっさりと剣士は炎に包まれ、倒れる。 戒められ、聖なる炎に焼かれるその姿はまさに悪魔の呪いを受けた罪人の様。 自分達の狙い通りの結果に海依音は身を張った価値があったとニヤリと笑う。 「敵指揮官の排除を」 未知のスキルも仲間が倒れたことも頭から締め出したのかギルベルタが銃を構え、撃つ。 彼女の狙いはのぞみであり、正確無比な一撃がのぞみの纏う鎧を貫き通す。 「そ……ん、な」 のぞみの中に燃える運命の火はなく、彼女はそのまま地面へと倒れる。 さらに親衛隊は回復役である光介を倒さんとダークナイトが己のダメージを呪いへと転化し放つ。 それは十二分に光介の意識を刈り取るに足るものではあるが再びティエがそれを庇う。 「二度も回復役を倒れさせるような真似はしない」 逆にリベリスタ側の度重なる複数攻撃が親衛隊のホーリメイガスにダメージを蓄積させ 「これでっ!」 降り注いだ火炎弾がホーリーメイガスの一体を落とす。 さらにそれは隆明を押し止めていたクロスイージスを後方に吹き飛ばす。 隆明が吹き飛ばされたクロスイージスを追うように前へ詰める。 疾走の途中、頭に射撃を受け倒れそうになるも運命を消費して踏みとどまり、再び走る。 自分の流した血など先に倒れた男に比べれば痛くもないというように。 「ぶっ散れよ駄犬共!!」 怒りのまま、手の届く範囲全ての敵を巻き込み薙ぎ払う。 それにより二人めのホーリーメイガスも弾き飛ばされる。 「レオナルト様」 其処までを確認して、ギルベルタが上官へ呼びかける。 今、レオナルトの前には途中、一度打ち倒し、運命を消費したとは言え確りと両の足で立つ鷲祐が居る。 或いは一対一であれば勝者はレオナルトであっただろうが、彼には帰還させなければならない部下が居る。 「『アークの神速』……改めてお前の名前を覚えたよ」 「貴様のような奴に覚えられても虫唾が走るだけだ」 刃の次に、言葉のやり取りを終えたレオナルトがマントを翻す。 それに合わせ、親衛隊は負傷者を抱え撤退を開始する。 数分で戦いの場は長閑な静寂に包まれて 「任務完了だ」 AFを通じて報告を行う鷲祐の声で、この戦いは完全に終わりとなった。 ● 「えっとね、このあたりだって植物たちが」 ルナが案内する先には一人のリベリスタの亡骸。 血に塗れたその姿と、傍らに転がる楯がその男の死に様を如実に伝えている。 「お前から受けた任務は完遂した」 鷲祐が弔いの言葉を投げる。 それに続いて手を合わせた隆明が男の死体を担ぎあげる。 「最後までお疲れさん、カッコいい奴だったぜ、お前さん」 言葉を投げかけられた男はアークの英雄達からの言葉に喜ぶように、 守れた仲間たちの命を誇るように、凄惨な死に方であってもどこか満ち足りたモノを感じさせる。 親衛隊はアークの戦力を一つ奪ったが。 しかしてそれは勝ちでなく、七つを守った男に対する敗北であった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|