●うごめくユウザイヲトメ団 大阪日本橋から少し外れたビルの地下、いかにもラボっぽい空間は元々駐車場だったらしく、何本もコンクリートの太い柱が立っている。。 「小松、調子はどう?」 黒パンツスーツの女が、螺旋階段を降りてくるのに気づき、ぐるぐる眼鏡のおさげ女は弾かれるように立ち上がった。 「おおおお、黒井様! お疲れ様です! めっちゃ順調でっせ!」 「そう。我々が手に入れたアーティファクトは調子よく動いているみたいだね」 と黒井涙香――ユウザイヲトメ団リーダーが見上げるのは、巨大な機械である。 何百本もさまざまな太さのコードとマジックハンドが生えている珍妙な機械には、何故かキャタピラがついている。 「いやー、まさかあんなようわからん石をチップ代わりに埋めた途端、AIがめっちゃ賢なるとはビックリやわ。ついでにガス欠知らずや。アーティファクトって何でもありやな」 小松がえへらえへら笑う。 「あの石は、人間並みの知能を物体に与え、無限エネルギーを作り出すらしい。名前も分からない、機械なんて無い時代の遺物らしいが、ちゃんとメカにも効いた様で我々としても一安心だね」 「あとはプログラムだけやね。そっちはどないですのん」 「昨日開発を終了させた。明日にでも、荒俣に届けさせよう」 「インストールが楽しみやねえ!」 「じゃ、あと少しだ。頑張ってくれたまえ」 と出て行く黒井に、上機嫌で小松は手を振り回した。 ●『闇落ちクン1号』を打ち砕け ――ユウザイヲトメ団の拠点のひとつが見つかった。 と、『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)が言うと、リベリスタたちの間に緊張が走った。 散々翻弄された挙句、首魁を逃がしてしまった苦い記憶はまだ新しい。 「奴らは新たなるテロを企んでいる。そのための準備が最終段階にきているのを、万華鏡が捕捉した」 彼らは、差し込んだプラグから直接男性の脳にプログラムを流し込み、強制的に同性愛者へと洗脳するというテロを企んでいるらしい。 そのための機械が『闇落ちクン1号』だ。 ちょうど全長2mの茶筒からわんさかコードとマジックハンドが生えているような形状であり、キャタピラで移動する。 「世界中をホモだらけにする方法をいくつも考えているらしいな。暇な連中だ」 だがまだ『闇落ちクン1号』は未完成だ。 リスクを考えてか、プログラムは別の場所で開発されているらしい。 だから、まだ、肝心の脳へ流し込むべき『ホモプログラム』が、ロボにはインストールされていない。 今はただのコードとマジックハンドで動く戦闘ロボである。 とはいえ、マジックハンドで拘束したり、コードで拘束したり、プラグをぶっ刺したり、キャタピラで轢いたり……単体でも結構強い。 しかも茶筒の中にあるコアはアーティファクトである。コアがある限り、自律し、常時若干の自己修復を行えるそうだ。 「プログラムの受け渡しの時がチャンスだ。日時と場所は特定できている。プログラムをインストールさせる前に、ロボもプログラムも潰してしまえ」 とはいえ突入のタイミングを見誤ると、再び逃亡の憂き目にあうことは間違いない。 「現場にリーダーの黒井はいないようだが……それでも奴らの野望を少しでも砕かないことには始まらん。慎重にな」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月10日(月)21:07 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●だからディンプルキーにしときましょうねってあんなに言ったじゃない 「ひらけ、ゴマ。なんてね」 がちゃん。 『自称アーク美少年』星神 タクト(BNE004203)の手がノブに触れるなり、ドアは抵抗をやめた。 神秘の力って素晴らしい。 どんな物理鍵でも一発解錠だ。警備会社泣かせの力で、不法侵入を試みるリベリスタたち。 『あとは階段を降りた所で強結界を張る……っと』 さらなる神秘で人通りを抑制しようとタクトは考える。 するすると先行するのは、気配を遮断した『Vanquish』ケイス・ルザ(BNE002077)、無音で螺旋階段を降り、おさげ眼鏡の干物女の背中を捉える。 干物女こと小松京は、鼻歌交じりに茶筒に大量のコードとキャタピラを装備させたようなロボ『闇落ちクン1号』の整備に余念がない。 「これであらゆる男を巻いて、うひひ、羞恥に塗れた顔で泣き叫ばせつつ、洗脳してはハイライト消えた目で男を求めるホモにさせる……最高や! これ最高ですやん、禿げ萌えすぎるやん!? 誰かぁー誰か、ウチに育毛剤をー! あかん、この妄想でお櫃いっぱいのご飯食える! あっかーん、おちつこ、自分! あ、よだれ出た、ティッシュティッシュ!」 う・る・さ・い。 ケイスが気配を遮断せずとも、これだけ独り言に夢中だと、小松は何にも気づかない気がする。 「なかなか良い趣味をお持ちじゃねーか、お嬢さん?」 ケイスの一言と共に、黒が小松の頭をぶっ刺した。 「ほぎゃったーーーー!!」 謎の悲鳴をあげて、ようやく小松は闖入者に気づく。 「ぎゃー!? 眼鏡ブロンドイケメンー!! そうやな、どっちかってーとこれは攻めに見せかけて受けやな!」 「そっちかよ!」 何より先に上下判定とは。ユウザイヲトメ団、おそるべし。 「やっぱりそういうことを考えてるのか。野郎とイチャイチャするのはごめんだ。貴様らの野望もここまでだ!」 『うめももの為なら死ねる』セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)がかっこいいことを言いながら、階段を駆け下りてくる。 「おっとぉ、これは攻めやね! ちょっと俺様的な感じキボンヌ!」 「やめろっていってるだろ!?」 そんなもん、制止の言葉が聞けてりゃ腐女子フィクサードなんてやっていない。 「キャラソンとか出したら、ショップ限定予約特典に等身大スティックポスターとかついてくる系の乙女ゲーの三番目くらいに登場してそうやわ!」 セリオの叫びにも小松は動じず、謎の言葉を口に出している。 『桃子嬢、プラム嬢、桜子様、俺を守って……!』 脳内嫁(と書いて崇拝対象と読む)に呼びかけて、セリオはココロの平静を保ちつつ、ブロードソードを小松に叩きつけた。 「これなら、外に連絡はしそうにないですね」 なぜなら、妄想語りで連絡する余裕がなさそうだから。 『委員長』五十鈴・清美(BNE003605)は周囲を見回し、監視カメラがないか探すが、機械が多すぎて、特段機械知識に優れているわけでもない清美には、どれが何をするものかよくわからない。 そもそもカメラをこれ見よがしに見せるのは、抑止力を期待している時だけであり、本当の監視カメラというのは、人に見えないところに隠されているものだ。何の工夫もなく見つかるものではなかろう。 『とはいえ、行動前に皆さんと相談したかったのですが……そんな暇はありませんでしたね』 と、清美は歯噛みするものの、そもそも現場にきてから行動について相談するのでは、遅いのだが。 「この世の男性を全てホモホモさせようという発想は壮大で好きだわ! 一心不乱の大ホモホモを世界に!」 階段の上で大きく手を広げ、喝采を叫ぶ『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)、つまり腐女子。 彼女とユウザイヲトメ団を隔てるものは、紙一枚よりも薄かろう。 「でも、死んでね!」 だって、私リベリスタだから! と、セレアは血液を黒に変えて、ラボを飲み込む。 「死ねへんわー! だって、今からやん? 今からやんかいさほいさっさ?」 小松はそう言いながら、ロボのスイッチをオンにした。 ●無駄に鳴る! 無駄に光る! すごいぞーかっこいいぞー! ウィウィーン、と音がして、ぴかーと茶筒にくっついたひとくちゼリーみたいな形の電球が光り、ギュウィイーンバゴーンとちょっと音が割れたチープな効果音が鳴った。 「なんで光って音が鳴るんですか?!」 「かっこええやろう!!」 ギャキィ! 小松は謎のポーズと共に、自信に満ちた大声で清美の疑問に答えた。 「一つの事に情熱を注ぐ姿勢は尊敬すべき、かどうか……私はそういう趣味を理解できないけど、趣味に口出すべきではないし」 ライフルを構え、『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)は小松を狙い撃とうとするも、逆にライフルを持つ手を気糸で貫かれた。 「おっとぉ、どこまでもやられっぱなしじゃいられまへんでぇ」 小松はニヤンと笑って、眼鏡を光らせ、 「そんじゃ、やってもらいましょう、闇落ちクーンいっちごーっーGO!」 闇落ちクン1号がコードを思い切り振り回す。 口々に悲鳴が上がった。 『癒し系ナイトクリーク』アーサー・レオンハート(BNE004077)が、その筋骨隆々とした体を銀のコードに戒められ、呻く。 「見た目とか年齢とか不満があるだろうが、お前の好きなものはこれだろう……」 「せやねぇ。いや、おじさまステキやで? でももっと、こーなんてゆーか、恥ずかしそうな顔もらおか? ほら、悔しい……でも……みたいな!」 と小松が取り出したるはスマートフォン。 「今だ!」 とばかりにエルフリーデがスマートフォンを狙い撃つ。 「あーっ! 千六百万画素ー!!」 これで外部への連絡は出来まい、とエルフリーデは満足気だったが、彼女の豊満な乳はコードによって絞り上げられ、強調されていた。 「……っ、ちょっと、あんた、戦闘中に何考えてるの!?」 リーディングによって小松の思考を読み取ろうとしていた『虚実之車輪(おっぱいてんし)』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)が、耐えられなくなって泣き言を叫ぶ。 シルフィアも、二十三歳だ。そこそこのエロい話にはついていけるし、男遊びだって大好きだ。ボイーズラブだってそれなりに好きである。 だが、だが! 「アブノーマルすぎて、しゃべれないわよ、こんなの! っていうかもう、読みたくない、なにこれ?!」 干物だからそんなことばっかり考えてるのね、とか嘲ろうとしたが、彼女の思考は干物とかそういうものを超越していた。 小松は、女不在の妄想しかしないのだ。むしろ、無機物と男、つまり男単体の変態妄想世界に生きているのだ。 「はっはっは、サトリが脳みそ見たら、トラウマになるようなこと、毎日考えてるでー?」 思想の自由は与えられてるもんなぁ、と小松はニヘニヘ笑う。 「せ、精神的ブラクラじゃないの、これぇ……。ホモだらけにしたところで、余計自分の魅力が無くなるって、気付いてる? 気付いてないからやってるんでしょうね」 リーディングを試みれば対象はそれを察知できる。 察知した腐女子が考えることなど、普段以上に張り切った変態妄想にきまっているのである。 「ウチ別に魅力とかどうでもええよ、そんなことよりイケメン同士恋に落ちてくれたほうがよっぽどええよ」 「ホモしかいない世界なんて……男遊び出来ないじゃないの。そんなの私は認めない……!」 とりあえず、連絡手段を潰してやろうと、かたっぱしから八つ当たりのようにシルフィアは機材を狙い撃つ。 よくわからない機械から、インターホン、テレビ、無線っぽい何かまで、完膚なきまでに……。 それを見て、小松が、 「まぬけちゃんやなぁ」 と呟いたのも知らずに。 しかし、小松の命は風前の灯だった。リベリスタ全員が、一人のフィクサードを集中攻撃しているのだ。研究員ごときに勝ち目など無い。 ●死ぬと止まりませんがよろしいですか? ギリリィとコードがきしみ、男が呻く。 磔刑に処せられたように吊るされるタクトは、苦笑を漏らす。 「男と触手の組み合わせとか、嬉しくないんだけど……」 「記念すべき初めての依頼がこうなるとは……ま、楽しいけど」 巻きつかれ、後ろ手に縛られ、縄責めに合っているような格好を強いられつつも、ケイスは余裕の笑みを崩さない。 「どうした? 貴様の攻めはその程度か? この程度の触手攻め如きで俺は揺るがないぜ? 俺を満足させてみろよ、ポンコツ」 とぐるぐる巻きになりながらもセリオは、ロボットを挑発しているが、触手ではない、これはあくまでもコードである。 『これぐらいなんでもないさ……敬愛するお二人がいれば俺はこれくらい冷静に耐えてみせる。だが! ホモだけは全力で回避しなければならない! 報告書をあの方々がお読みになられたらと思うと! あの方々が汚れてしまうッというか俺の評価が下がる!』 冷静な顔の裏で、セリオの思考は忙しい。 「これで、終わりですッ!」 清美が燃える拳を小松に叩きつけ、命ごと燃やそうとするのを、 「やめろ!!」 アーサーが大声を上げて制止した。 「どうしてですか! 敵を倒すのが任務でしょう?!」 不満気な清美に、セレアが厳しく言う。 「合言葉を聞かなきゃいけないのよ。そうじゃないと、後からくる荒俣を逃しちゃうでしょ」 エルフリーデが、小松にライフルを突きつけて、尋ねた。 「さ、言いなさい。脚を潰すわよ」 「あんたがウチやったとして、言うかいな? それが答えや」 ライフルが火を噴く。 右足が腿からもげ、大きな血管が切れて大量に血が噴き出る。 あまりの痛みに小松が絶叫する。 「……さすがに、もう妄想してる余裕はないみたいね。……痛いしか思考にないのも無様だけど」 シルフィアが小松の横に仁王立ち、おそるおそるリーディングを試みて、安堵の息を吐いた。 あんな変態妄想よりは、狂ったような痛覚への悲鳴のほうが、ずいぶんとシルフィアにとってはマシである。 「手の生爪剥がしとか指の関節を一つずつ撃ちぬくとか、やられたくないんなら、話すことね」 「ど、どっちがフィクサードやねん、死にさらせ外道」 ペッと唾を吐かれたので、シルフィアは小松の右小指の関節を平然と撃ちぬいた。 喉から吹きこぼれるような絶叫がラボ全体に響く。 「本気よっ……つう!」 闇落ちクン1号がシルフィアの背中をプラグで貫いた。 「ふん、主人に忠実ってわけね」 シルフィアが振り向いて、ロボを睨みつける。 「こっちで抑える。そちらは尋問を続けてくれ」 アーサーがロボにオーラをぶつけた。小松を説得する言葉を用意していなかった清美やケイス、セリオも抑えに加わった。 「協力してくれるなら、こんなテロではなく真っ当な創作活動なら力を貸してもいいぞ……」 アーサーはロボと闘いながらも、小松に声を掛けてみるが、小松は鼻で笑い飛ばす。 「創作は妄想で十分ですわー。創作を現実にするのがウチらユウザイヲトメ団の目的やもんねぇ」 「投降してアークに来ない? 腐女子結構いるみたいだから……事件さえおこさなきゃ大丈夫だと思うよ。任務にはほら、合法的にそういうのが見られるのもあるらしいし」 タクトが優しく言ってみるが、 「はっ、ウチらは、世界の男をホモにするために、命かけとんねん、そんなしょっぼい世界やったら今の世界でも十二分やねんボケ」 捨て鉢の小松の罵声を浴びせられるだけで終わる。 「素直に言えば殺したりしないわよ、たとえ敵味方でも貴女は同じ趣味なんだし」 セレアが言う。 「ハン、いまさら、命なんて。それに言うたところでもう使えへんやろ」 だが小松はせせら笑った。 「え?」 「あんたら、調子に乗ってインターホンまで潰しよって。もう荒俣さんと合言葉言い合えへんがな」 「……」 リベリスタ達はお互いを見あい、沈黙せざるを得なかった。 まず連絡手段を完膚なきまでに潰すという手段が悪手だった。 そもそも、小松の生死をどうするかも全員の中で意思統一できていない。 小松とロボを撃破した後、荒俣をおびき寄せる方法もまとまっていない。 ただ、小松を倒す。ロボットを倒す。そしてどうにかして荒俣を倒す。 倒す以外にチームとしての動き方に意向が定まらないままの作戦決行。 ユウザイヲトメ団は、前回首魁がさっさと仲間を見捨てて逃げたことからもわかるが、臆病で捨て鉢でずる賢く、プログラムとロボットを別々の場所で開発し、会合に合言葉を使用するまでに、リスクを極端に嫌う女の集団だ。 そんな集団を相手にするには、あまりにも、あまりにも、準備が足らなかった。 「ピンポン鳴らんかったら、そら、おかしいなと思って帰るわなあ! あー……そろそろ血なくなってきたわぁ。ウチ死んだら、そのロボ止まらんからね。もー知らんからね。ウチしーらね、しーらね」 ケケケと悪い笑みをこぼし、小松は自分の頭に指を当てる。 「やめっ!」 「黒井様よ永遠なれー! ウチが死んでも代わりはいるものー!」 ちゅん、とプロアデプトの気糸は小松の脳髄を破壊した。 ●臆病者こそが長生きする ヴィヴィヴィーとロボが光りだす。 主人の死を認識したのだろうか。 激しいコードの嵐がリベリスタを襲う。 「ちっ、とりあえずコレをぶっ壊さないとどうしようもないか!」 セリオが叫び、闇落ち1号に全力をぶつける。 リベリスタは、ラボで暴れまわるロボットを沈黙させることに注力するしかなくなった。 「……もうとっくに一時間たってたね」 タクトが時計をみて、呟いた。 周囲に気配はない。タクトが人払いを狙って、強結界を張ったからだ。 半径二百メートル圏内はすっかり一般人の人通りがなくなっているだろう。 その効能で、地下での拷問沙汰も一般人は察知することはないし、近寄りもしない。 だが、普段人通りが多い大阪日本橋界隈において、それはあまりに異常。 現場に近づいてきたエージェントが、状況を不審に思うのは当然。 そして、相手に連絡を試みても、リベリスタが通信手段を壊したので、いかなる手段も返答がない。 荒俣がインターホンを押したとしても、故障していて音すらしないのであれば、取引どころではないと悟るに十分だ。 彼女がラボに侵入せず、引き返すのは、エージェントとして当然の結果であっただろう。 古来から、後ろ暗い交渉事にあたるものは、普段以上に異常に敏感であり、リスクを恐れる。 リベリスタとて、己が同じ取引のエージェントを依頼されれば、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』よりも『君子危うきに近寄らず』を優先するだろう。 もはやどれだけコードにいやらしく巻かれても、器用に亀甲縛りをされても、マジックハンドで拘束されても、穴という穴にプラグを押しこまれて苦痛に顔を歪めても、それを喜ぶ腐女子はとっくに死んでいる。 「さっさと止まりなさいよ!」 シルフィアの魔曲がロボの中枢を潰す。 ぷしゅーんとか細い音をたてて、ロボは光を失い、だらりとコードを垂らして完全に沈黙した。 茶筒状のボディの中で砕け散るアーティファクト。 闇落ちクン1号は、未完成のまま、人を闇落ちさせることなく、主人を守り切ることもなく、その生涯を虚しく終えた。 「……くそ、またか……」 ユウザイヲトメ団に、二度までも失敗させられたアーサーは、ぐうっと拳を握りしめ、うつむくしかなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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