● おりしも双子座の時。 偶然(?)にも現われたバグホールを通ってやってきたのは、2体のアザーバイド。 『ねぇねぇ、見てよ。変な人形がいっぱいあるよ』 片割れであるカトルは、ボトムチャンネルの全てが新鮮に見えるのだろう。 降り立った美術館に並べられた絵画や石膏像を、興味津々に眺めている。 『でもセンスがないよな、俺達がもっと格好良くしてやろうぜ』 残るもう片方のルクスは、カトルの眺める絵画や石膏像に悪戯をしようと考えているようだ。 彼等は幼い外見ながら、双子のアザーバイド。 その様子を影から覗いているのは、美術品を盗もうとやってきた者達。 「あー……なんすかね、あれは?」 「俺が知るかよ」 小声で会話を交わす彼等はフィクサード。 警備員を昏倒させ、防犯システムもカットし、ここまでの侵入にかけた時間は僅か1分足らずと、手際も良い。 だが手際の良い彼等も、見たこともない存在である双子に対しては流石に警戒心を抱かざるを得なかった。 「……どうします?」 1人のフィクサードが、リーダー格らしき男に問う。 「アレも捕まえれば、買い手がつくかもしれんな。捕まえるか」 リーダー格の男の答は相当に簡素で、わかりやすいもの。 『ねぇルクス、誰かきたよ』 『おっもしれー! あいつ等もついでに格好よくしてやろう!』 ゆっくりと姿を現したフィクサード達を見た双子も、戦う(×)遊ぶ(○)気になったらしい。 美術品を巻き込み、アザーバイドとフィクサードの一戦が今、始まる。 ● 「やっぱり来たわね、双子座」 もう予想の範囲内だと、桜花 美咲 (nBNE000239)はため息をついた。 しかも今回の戦場は美術館であり、下手をすれば貴重な美術品が破壊されてしまう恐れもある。 「幸いかどうかはわからないけど、警備員と防犯システムは今のところフィクサードの手によって動きがないわ。侵入は容易だと思う」 という美咲ではあるが、警備員が起きてしまうまでの話だ。 そうなれば防犯システムも復帰し、いやそれ以前に異常発生の報が警察に届けられて大きな騒ぎとなることは間違いない。 警備員が起き出す前にフィクサードを撃退し、双子を元の世界に送り返す事。 加えて美術品に可能な限り傷をつけないように――だ。 「面倒な事この上ないけれど、皆ならやれると信じてるわよ」 送り出す美咲は、集まったリベリスタ達ならやれるだろうと信じている。 だが問題が1つだけ残っていた。 「そうそう……双子は楽しい事が大好きなの。それ以外には目もくれないってくらいにね。会話はまともに通じないわよ」 説得をかけてアザーバイドを味方につける。 その道は、相当に難しいようだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年06月03日(月)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●悪戯好きな双子 「困った遭遇と言うものはあるものでございますね」 やれやれと言った口調でぼやくのは『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)だ。 敵がどちらか片方だけだったならば、どれほどに簡単なミッションだったことか。 正面からぶつかり、速攻で倒せばいい単体陣営が相手の戦いと、3つの陣営が入り乱れる三つ巴ではやはり話は変わってくる。 「美術品とは万人に鑑賞されてこその物。それを奪って私腹を肥やそうとは、なんと浅ましいのでしょう」 しかもフィクサードの狙いは『ヴリルの魔導師』レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096)の口から出た美術品の奪取であり、 「子供の相手は似合わぬのだがな。悪戯は好きな方よ」 続いた『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)が言うように、アザーバイドの狙いはフィクサードも美術品も巻き込んで悪戯する事。 フィクサードの側はさらに双子の鹵獲も考えているようだが、狙いの本筋はやはり並べられた高額な美術品であり、そちらを優先する可能性が非常に高い。 「泥棒に悪戯好きな双子か。どっちもお灸が必要だな」 ともすれば、『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)がお灸と言ったのは両者が所謂『悪い子』に分類される以上は正しい。 「双子は悪戯っ子だけど悪い子じゃないんだよね、きっと。フィクサード達に捕らえさせたりしないよ。無事に帰してあげなくちゃね」 最初に双子に視線を移し、それからフィクサード達を見渡した『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は双子の無事の帰還を切に願う。 無邪気に笑う双子を見れば、やはり2人は子供なのだと感じるアンジェリカ。 「物事の分別が付かぬ子供を窘めるのは大人の役目。相手がアザーバイドとは言えどこの老骨、魔術の力を以て全力で当たらせていただきますぞ」 ならば、子供に対して怒るのは大人の役目だとレオポルトが頷く。 家族の在り方を知る彼ならば、こういった子供も決して扱いにくい存在ではないだろう。 「おい、誰かいるぞ?」 そして双子を追い回していたフィクサードの1人が、リベリスタ達の存在に気付いた。 『あいつ等も悪戯していいのか?』 『良いじゃん、やっちゃえやっちゃえ!』 追い回されてケラケラと笑っていた双子もピタリと足を止め、その興味の視線を向ける。 後ろから追っていたフィクサードもリベリスタ達へ視線を移したことを見れば、彼等もリベリスタ達を警戒しているらしい。 「悪ーい子たちには贖いを……、さぁその命を捧げなさいな。とてつもなく安い命だろうけどね」 それも凶悪な言葉を『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)が口にしたのだから当然か。 だが今回においてはフィクサードであれ、殺害はあまり良い判断ではない。 殺されまいと必死になった相手が美術品を投げつけてきたりといった可能性も、ゼロではないからだ。 「ち、邪魔が入ったか。俺等を殺すだとか言う面倒だ、やる事をやって逃げるぞ」 故にフィクサード達にはまともに戦う意思はなかった。 殺害をほのめかす邪魔者とやりあうよりは、さっさともらう物をもらって逃げたほうが利口だと考えたのだろう。 (フィクサードは殺さない、殺させない) 彼女の言葉に耳を傾けながら、胸中でその阻止を決意する杏樹がいる限り、そう血生臭い話にはならなさそうではある。 「正直、変な人形や絵の良さは未だ理解出来ませんが、泥棒や悪戯を見逃す訳にはいきません」 果たして、シャルロッテ・プリングスハイム(BNE004341)の言葉通りに万事が上手くいくのだろうか? 「あっちは始まったみたいだね、じゃあこっちもちゃっちゃと済ませましょー」 そして3陣営が睨みあいを開始した中、離れた位置に陣取った『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)の陣地作成は双子に通用するのか? 「あなた達に提案があります」 「ねぇ、遊びならボク達も混ぜてよ」 戦いはまず、シャルロッテとアンジェリカのそんな言葉から始まるのだった――。 ●落書き乱舞 『ていあんって、なんだよ!』 『面白いならいいよ!』 どうやら子供であるせいか、提案なんていう言葉は双子にとってはあまり聞きなれない言葉ではあったようだ。ひらがなで言ってるし。 それでも意味がわかったのか、尋ね返してくる彼等にシャルロッテは続ける。 「どちらが多くの泥棒さん達を懲らしめられるか。私達とゲームをしませんか?」 2つの陣営を同時に相手にするのではなく、双子をどうにかこちら側に引き入れられないかと彼女は考えていた。 「それとも勝つ自信はない?」 「あなた達が勝ったら、変な人形は勿論、私達も好きなように格好良くして頂いて構いませんわ」 相手が子供である事を利用し、『勝てないよね、私達は大人だものね』とアンジェリカが挑発すれば、シャルロッテは双子が勝った時の条件を提示した。 ここで2人が乗ればよし。 別に乗らなくても、 「あなた達はまだ小さいから、無理よね。大人の私達に勝つなんて到底無理な話しだったわね」 とアンジェリカのように続ければいいだけの話だ。 「おい、くっちゃべってる今のうちにやろうぜ?」 「悪いが、それはさせられないな」 一方、会話を続ける4人を尻目に美術品を持っていこうとするフィクサードには杏樹が待ったをかける。 「こやつ等はださい上に悪党だからの。 何をしても許されるぞ? のぅ?」 わざわざフィクサードに尋ねながら双子にそう言ったシェリーの口元には、『勝つのは妾達じゃ』とでも言わんばかりのオーラが漂っている。 が、リベリスタ達は何かを忘れていないだろうか? 「どうやらこいつ等は、お前達の邪魔をしたがってるようだな。どうだ、俺達と一緒に邪魔するヤツを追い返さないか?」 交わされる会話を黙って聞いているほどフィクサードはお人好しではなく、そして彼等も考える頭のある人間であると言う事を。 双子をどうコントロールするかをリベリスタ側が考えるのならば、切り替えしで逆にやり返すのも当然の話。 『めんどくさいなぁ』 『もういいよ、どっちもやっちゃえ』 とすれば、双子がこの判断に至るのもまた当然だろう。 「じゃあボク達と君達とフィクサード達、誰が最後まで立ってるかのゲームだよ。但し美術品を傷つけたら罰ゲームだからね」 『わかったよ、じゃあこっちが勝ったらあれに落書きとかするからな!』 すかさずアンジェリカが口にした罰ゲームによって、なんとか美術品への被害は抑えられそうな点は幸いか。 「こんな所で、姐さんから聞いた言う事を聞かない子供の操作方法が役に立つなんて」 多少狙いから外れてはしまったが、双子をゲームに乗せる事が出来た事実にシャルロッテはどこか感慨深げである。 「話はまとまったようだな。では美術品に傷ついたら働いても返せない額になりそうだし、慎重に行こう。そして迅速にお仕置きだ」 「そう簡単にお仕置きされて、たまるかよ!」 杏樹の言葉に憤るフィクサードは、彼女の狙いではない。とはいえ開戦直後では誰が彼女の狙うホーリーメイガスかも、判明はしていない。 (とりあえず後ろにいるヤツを狙えば良いか) 眼前の相手は違うだろうと判断し、その鼻先を掠め彼女の魔銃バーニーが正確に撃ち抜いたのは最も後方にいた1人だ。 それが狙った癒し手なら幸運だったが、 「持ちこたえろ、盗みに入って捕まりましたでは笑い話にもならない」 別の方向から声を発したフィクサードが件のホーリーメイガスだったようである。 盗む事に主眼を置いているせいか、彼等はあまり固まっておらず、攻撃を集中させやすい点では制限時間の問題はクリアしやすいだろう。 加えて逃げ道を防ぐため、リベリスタ達は寿々貴による陣地作成も策の1つとして準備していた。 (美術品はなるべく傷つけないですよ~、なるべく……ね) その陣地を双子が抜けてしまえば意味はなくなるが、それでも『なるべく』傷をつけないようにしようとエーデルワイスは次の攻撃のための態勢を取る。 「こちらには、もっと面白いおもちゃがあるぞ」 もしも双子に陣地が通用せずとも大丈夫なようにと、シェリーは手にした破界の戦斧に双子の興味が惹かれないかとも声をかけた。 美術品を傷つけない。 そのために、リベリスタ達は各々が出来うる限りの手段を持って、まずは双子の興味を逸らそうとしているらしい。 「より早く彼らを格好良く仕上げた者が勝ちでございますよ?」 『何言ってるの? お姉さんも格好よくしてあげるよ!』 とはいえ、既に双子達は『誰が最後まで立っていられるか』というゲームの真っ最中。フィクサードに双子をぶつける事を念頭に置いたリコルの顔にべったりと絵の具を塗りつける様を見れば、2人の興味は美術品より動く人間に向いている。 「や、やってくれましたわね!」 であるなら、仕返しはしなければならない。怒りに燃えるリコルと、逃げる素振りを見せる双子達はさながら悪戯好きの弟を叱るしっかり者の姉か。 「……やれやれ、やはり子供の躾は手がかかりそうですな」 しかしその行動はやはり気紛れそのものであり、展開した魔陣から魔法の弾を放ったレオポルトは口元に浮かぶ苦笑いを隠せない。 「何、それなら勝負とやらに勝ってしまえば良いのじゃ」 だが余りに気紛れに動いていれば、ゲームの勝敗に先に決着をつければ良いとシェリーは言う。 興味の視線を向けていたカトルの眼前を掠め、織り成した四色の魔光を位置のわかったホーリーメイガスに放つ彼女の姿に、 『うわぁ、すげぇ! 俺達もあんなんしたいな!』 『だな! 家帰ったらちょっと勉強しようぜ!』 双子の目が凄まじく輝いていたとか。 リベリスタと双子がそんなやり取りをしている今は、フィクサードにとってはチャンスだ。 「やっぱガキだな、何を考えてやがるんだか。今のうちだ、少しでも……」 「残念だけど、それはさせられないよ」 軽く見ただけでも身軽そうな存在をソードミラージュだと感じ、目的を果たさんとするフィクサードの前に立ちはだかるアンジェリカ。 「なら、お前を黙らせてからそうしようか!」 「それも無理な相談だね……」 振り下ろされるナイフを大鎌で上手くいなし、その勢いのままに斬りつける彼女は実力的にも眼前のソードミラージュを上回っている。 「くそ、リベリスタが来るならもう少し準備を整えるべきだったか」 「それが正解だったかもしれないね。周りを良く見てみたらどうかな?」 歯噛みする敵に、アンジェリカは視野を広く持てと告げた。 「回復係は目障りだし、柔らかーい所から食いちぎるモノよね」 「それは構わないが、殺すなよ」 邪悪な笑みを浮かべ、別に死んでも構わないと言った感じのエーデルワイスと、彼女が殺さないように警戒する杏樹がホーリーメイガスを攻め立てていく。 「あやつはあの2人で何とかなるじゃろう。ならば妾は――!」 「魔法勝負か、面白ぇ!」 そこから少し離れた場所では、マグメイガスの動きを止めんとするシェリーと当のマグメイガスがほぼ同時に攻撃を放ち、宙空で双方がぶつかる姿が見て取れた。 しかしこの魔法勝負は大魔導の称号を持つシェリーが押し負けることはなく。 「ぐわっ……!」 「魔法で妾に勝てるものではないぞ」 戦斧をぶんと振り、勝ち誇った彼女に軍配が上がっていた。 一方ではレオポルトが大技を放とうとしているのだろう、小さな声で詠唱する姿も見て取れる。 「……なるほどな、実力ではこちらが及ばないか。だがな?」 そんな中、アンジェリカと相対するソードミラージュはリベリスタ達の穴をも見抜いたらしい。 「お待ちなさい!」 『待たないよーだ!』 顔に絵の具を塗りたくられたリコルは、未だ怒りに駆られて双子を追っている。 捕まえてお尻をぺしんと叩く姿は、どこか微笑ましさすら感じられるというものだ。 「くっ、敵は……」 その向こうでは、暗闇に対して何の対策もとっていないシャルロッテが敵の姿を探していた。 周囲の足音や声である程度は判別できるが、視界が最悪の状況では攻撃を敵に当てることもままならない。 「……見えてないのか?」 不意に、横からナイトクリークのナイフが彼女の肌を裂く。 「っ……! そこですか!」 攻撃が飛んできたほうに拳を放てば当たるだろうと判断したシャルロッテの一撃は、やはり空を切る。 「これでそっちは6人だな」 血のついたバールを振り回した彼女が、探していたクロスイージスに倒される様子に、フィクサード達が僅かに活気付いた。 「何を言っているんだ。お前達も重要なところを放置しすぎだろう」 ように見えたが、直後に杏樹に撃ち抜かれたホーリーメイガスが膝を折った姿に、速攻で消沈していく活気。 「うふふふふふ……残念ですねぇ」 あわよくば殺してやろうと考えていたエーデルワイスは少々残念そうだったが、今回はとりあえず杏樹が先に倒したおかげで死者は出ていない。 「これでよし、と。さて、そろそろ合流しましょうかー」 リベリスタ達が待ちにまった瞬間、寿々貴の作り上げた陣地が戦場を現実から切り離したのはそのすぐ後だ。 最早フィクサード達に逃げ場はない。 そして陣地の中では、美術品が破壊されることもない。 「我が血を触媒と以って成さん……我紡ぎしは秘匿の粋、黒き血流に因る葬送曲!!」 今がチャンスだとレオポルトの放った黒き葬送曲が、手当たり次第にフィクサードを巻き込み奔った。 「……おやおや、そんなに簡単に倒れたら殺しにいけないじゃないですか」 トドメを刺しに行かない限り、と後付した上でエーデルワイスがそう言うように、アンジェリカが相対していたソードミラージュが無言のままに沈む。 「殺すよりも止める事が先決じゃ!」 続けてシェリーが放った炎の弾により、シャルロッテを倒した2人のフィクサードもどさりと崩れ落ちる。 「まったくもう、顔が絵の具だらけですわ。そこ、笑わないでくださいまし!」 ようやく落ち着いたリコルも戦線に復帰すれば、フィクサード達が追い詰められている事は明瞭だった。 『変な空間になってない? カトル』 『ゲームの場って事だろ、ルクス』 陣地にとりあえずは封じる事が出来た双子の方は、陣地を抜けようと思えば何時でも抜けられるようではあったが、ゲームを優先する2人に陣地から出るつもりはないらしい。 「さて、フィクサード諸氏を見習って、すずきさん達も手際よくいきましょー」 仲間達がそうなるように仕向けたおかげも相俟って、美術品を守るための陣地を作り上げた寿々貴も合流すれば、フィクサード達は既に心が折れたのだろう。 「妾の破壊から逃れる術はなし、滅ぶがよい」 「あーもう、わかったよ、抵抗はしねぇよ」 シェリーの背負うオーラに恐れをなしたのだろう、武器を捨てて座り込んだ彼等はその態度を持って降伏をリベリスタ達に告げた。 恐らくリベリスタ達の手際は、寿々貴の想像以上にフィクサードを上回っていたという事か。 ●悪戯っ子達は家に帰る 「ここにある物は私達にとって、とてもとても大事なものなのでございます。あなた方も、自分の大事な物を誰かに悪戯でめちゃくちゃにされたら悲しいでしょう?」 『そ、そりゃ、なぁ』 正座し、レオポルトのお説教に双子は静かに耳を傾ける。 魂を共有している彼等は同時に大人しくさせる必要があったが、フィクサードが降伏した状況でのソレはさほど難しい事でもなかった。 「悪戯をしてみたい気持ちは分からないでもありませんが、美術品は作った方々の思いとその作品を愛する方々の思いが詰まっております。勝手に手を加えて良いものではございませんよ?」 顔に付着した絵の具をハンカチで必死にふき取りながら続いたリコルに、『ごめんなさい』と謝る双子を見れば反省はしているらしい。 「悪戯をするなら悪いヤツにするのじゃな。それなら誰も怒りはせん」 「芸術はよくわからないけど、キミ達のは芸術じゃないってゆーのはわかるからね。そういう悪戯は悪い人にしよー」 どうせ悪戯をするのなら、悪い事をしている連中へ。 頷きながら諭すシェリーと寿々貴は、『あんな連中だ』と言わんばかりに捕らえたフィクサードに指を差す。 「いっぱい遊んだし、そろそろ帰らないとね」 そろそろ警備員も起きてくる頃合だろう。 あまり時間をかけて鉢合わせても問題だと、アンジェリカが双子の通ってきた穴に視線を向け、言った。 「遊び邪魔してごめん。あっちの人形は上げれないから、せめてのお詫びだ」 別れ際、杏樹が2人に手渡したぬいぐるみは異世界からの来訪者に対するお土産。 『……また遊びにきて良いかな?』 「それは構わない、一緒に遊ぼう。ただし悪戯は程々にな」 少し寂しげなカトルと握手し、杏樹はふっと笑みを零す。 「今度会う時は楽しい歌を歌ってあげるよ。ボク達の事、覚えていれくれるかな?」 『覚えてるさ! な、カトル!』 『もちろんだよ。じゃあねー!』 再会の約束を交わし、アンジェリカの言葉に『絶対覚えてる』と答えた双子が家路に着く。 彼等は僅かな時間ではあるが、この世界に触れて少しだけ大人になった。 来年の今頃に再び訪れるであろう彼等は、次はどれほど成長した姿を見せてくれるだろうか――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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