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空を泳ぐ魚

●空飛ぶ異形を見た!
 とある街中。ビルが群れとなり、地面から何本も突き上がっているような所。
 最も高いビルの屋上にいる男は、仕事に疲れてここへとやって来ていた。
 仕事に疲れたと言っても、ここから飛び降りる訳ではない。ただ、空に近いここで、地上の世界で感じたものを吹き飛ばしてやりたかった。
 だから、今日も空を見上げた。空に近いここから見る蒼い世界は、白い雲が近くに感じられる。雲はいつも流れる。地上で貰った、もやもやした気持ちだって、いつか流れるものだ。
「空はいいな……。いい……」
 噛み締めながら、今日も至福の時間を過ごす。そんな彼だから、空に浮かぶそれを最初に目撃した。
「あれは……なんだ?」
 雲に紛れて、飛んでいる何かがある。
「鳥か? 飛行機か?」
 いや、違う。まるで、そうすることが正しいかのように、堂々と空を泳ぐアレは……。
「と、トビウオ……?」
 正確には、トビウオを元にしたエリューションビーストなのだけれど、彼はそれを知る由もない。
 そして、それが人の命を冒涜し、簡単に人の体を屠ってしまうものだとも。
「こ、こっちに降りてくるぞ! う、うわぁぁぁ!!」
 1羽は風を切りながら、一気に男への距離を詰める。男は背を向けて逃げ出すも、そのエリューションビーストはとても早かった。
 それが、彼の命運を分けた。男は振り返らなかったので知らなかったが、そのトビウオは巨体であり、男を丸呑みしてしまうには十分な『口』を持っていた。
 ごくん。
 音を立てて、彼の人生はあっけなく終わってしまう。
 地上を嫌った男の命は、空の魚に食い散らかされたのだ。

●空の魚
「トビウオの数え方は、ウサギと同じ」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタたちにそう切り出したのは、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)だ。顔は真面目なまま、緑と赤のオッドアイがリベリスタたちを見つめている。
 そうですか。と、リベリスタたちは返す。
「でも、ウサギはあげないよ」
 やはり、大真面目な顔で真白イヴは言う。ぎゅっ、とウサギのぬいぐるみを大事そうに抱きしめる。
 そうですね。と、リベリスタたちは返す。
「冗談はこれぐらいにしておく。依頼だよ」
 ああ、冗談だったんだ……。と、リベリスタたちは胸を撫で下ろし、ほっとする。意思が強いのも、こういう時は考えものだ。
「空に、トビウオのエリューションビーストが現れた」
 しかし、現れた真実はやっぱり冗談めいたものであった。エリューションビーストという真実を知るリベリスタにとっては、冗談ではない話だけれど。
「配下も小魚も一尾付いてきてる。こっちも、空を飛ぶ魚だよ」
 話によれば、こちらの方はイワシを元にしているらしいエリューションビーストだという。こちらの方はエラが羽のようになるまで異形化し、イワシ部分は顔ぐらいであるらしい。どちらにせよ、空飛ぶ魚という時点でかなり気持ち悪いものだけれど。
「でも、配下はフェーズ1。厄介だけど、問題はそれを従えている方」
 きゅ、と小さく歯を食いしばりながら、真白イヴは小さな手でモニターをタッチして操作する。
 間を置いて映しだされるのは、一体のエリューションビースト。それは巨体のトビウオそのものであるが、羽が異様に発達し、羽音が伝わってくるようだった。
「こちらはフェーズ2。攻撃方法は高速移動からの突撃と、剣のように鋭い羽での斬撃」
 ソードミラージュが使う『幻影剣』に似ている、と真白イヴは補足した。どうやら、その羽は攻撃にも使えるらしい。
「どちらの魚は空を泳いで、空に近寄った人を食べてしまう。遠くない未来、食べられる人が現れる」
 それが、真白イヴの見た未来なのだろう。彼女が感知したのは予知。まだ、食い止めることができる事件だ。なら……まだ間に合う。
「倒すためには、こちらも高いビルで戦わなければならない。高所は苦手?」
 真白イヴは確認のため、リベリスタひとりひとりの顔を覗き込んで語りかける。
 都会という特殊な環境の中でも、ビルの上というのは更に過酷な戦場だ。なんといっても足場がない。そんな場所での戦いの経験は皆少ないだろう。それを真白イヴは心配している。
「……まさか、高所恐怖症は居ないよね?」
 と、緑と赤の目の中に少し不安感を混ぜつつ。じっと真白イヴはリベリスタを見ていた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:nozoki  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年04月19日(火)23:45
 お世話になっています、nozokiです。
 今回の事件はビルの上で起こります。
 そして敵は、空飛ぶ魚です。もとい、トビウオを元としたエリューションビーストです。
 リベリスタの皆さん。都会の空を舞ってみませんか?

●任務達成条件
・敵エリューションビーストの全滅。

●戦場
 とある都会のビル群の上を舞台とします。
 万華システムと真白イヴが指定したのは、街で最も高いビルの屋上と夜中です。人通りも結界を使えば問題ないでしょう。
 今回は舞台が舞台ですので、飛行能力があれば若干有利になるでしょう。

●エリューションビースト
 トビウオです。
 漢字で書くと飛び魚。数え方は1羽2羽です。
 もとい、トビウオを元にしたエリューションビーストです。
 フェーズは2。空を飛んでいますが、攻撃が届かないほどの高度ではありません。
 それでも、速度は早いため要注意です。また、その攻撃はソードミラージュが使う『幻影剣』と似ています。効果も同じようなものと考えてよいでしょう。
 配下にフェーズ1のイワシを元にしたエリューションビーストが1匹います。
 魚に弱いと書いて鰯。数え方は1匹、2匹または1尾、2尾です。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
ナイトクリーク
鷹司・魁斗(BNE001460)
覇界闘士
十 刈穂(BNE001727)
デュランダル
緋袴 雅(BNE001966)

●おとぎ話から都会へ
 地のネオンが星のように煌き、空は摩天楼が支配する。そこで眠るのを忘れたかのように人は忙しなく動き、都市機能は煌く光を作り出していた。光は闇を産み、空に本物の星はない。
 人はその街を都会と呼ぶ。
 そして、その街の象徴とも言える、最も高いビルの屋上に8名の男女がそれぞれの武器を持って夜空を見上げていた。星は見えない。
 しかし、視界は鮮明である。都会は眠らない。都会のネオンの光は天までも貫かんとしていたのだ。だが彼らは星を見に来たわけではない、この夜空の向こう側からやって来る“敵”を打つべく、この都会の天に集っていたのである。
 その敵の正体は……。
「海だけじゃ物足りなくなって、空に焦がれたのかしら。夜空を泳ぐ魚なんて、お伽話みたいでロマンチックだと思うけど……」
 リボルバーの銃床を掌で叩きながら、『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)がつぶやく。空を泳ぎ、飛ぶ魚。確かに、まるでおとぎ話。
「人が犠牲になるのなら話は別よ。この手で撃ち落としてあげる」
 物語の住人といっても、実際に出る被害は現実のもの。許すわけにはいかない。空に向けてリボルバーの銃口を向け、ダンスを踊るようにステップを踏みながら宣言する。履いているハイヒールの踵がカカッと音を立てて、その勇猛さと気品さ、そして何よりも決意を同時に表した。
「魚のエリューション・ビースト、か。エリューション・ビーストも色々と種類が居るものだな……。と、感心している場合ではないか」
 一般人が怪我しないよう、これから起こる戦いを下手に認知されないよう、結界を張り巡らせつつ『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)が続ける。現代的な、眼下に広がっている都会にも適応できそうなファッションに身を包んだ彼は、一般人ではない。その証拠は、手に持つ剣の存在である。
 銃。そして、剣。武器があるということは、戦えるということだ。
「気合を入れねばならん、予知された未来の様にはさせんさ」
 普段は朴念仁で、縁側でお茶を飲むことを趣味とする彼も、空に剣を向け、戦いへの決意を示す。
「でっかいおさかな! 楽しみ!」
 そんなふたりに対して、『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)はビーストハーフらしくぴょこんと狼耳を立て、灰色の尻尾を振りながら空を見上げている。口も大きく開き、空からやって来る魚を無邪気に待ち望んでいた。
「この事件が起こっちまったら、都市伝説になるんじゃね? グロテスクなトビウオが空を舞い、人を食うなんて伝説、作らせねぇぜ! 予知が現実にならないよう、今完全に叩き潰すぜ!」
 とは、同じくビーストハーフの『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)。こちらは準備運動で強調される引き締まった体と同じく、帽子からはみ出た耳をまっすぐに立てて敵対心を高めていた。しかしその表情はどこか愛嬌があり、人懐っこい犬を思わせる。
 ざわり、と音がして、玲と静の耳が動く。雲の向こうから、何かが下りてくる。雲を引き裂き、天に穴をあけたそれは……巨大なトビウオのようなエリューション・ビースト。
 この地で人を食うという未来を引き起こす要因。間違えようもない“敵”だ。

●食い気
 その姿は空に浮かぶトビウオそのものだった。『深闇を歩む者』鷹司・魁斗(BNE001460)は悪態をつきながら、感想を漏らした。
「これぞ、本当のトビウオってか? ったく、笑えねー冗談だな」
 同時に狼……狩人としてのステップを始め、眼帯に覆われていない目で敵の動きを観察する。彼が動くたびに、服装に付けた金属のアクセサリーがジャラジャラと金属特有の音を漏らす。
 トビウオのようなものに続いて、イワシのようなエリューション・ビーストもトビウオが貫いた雲を辿り、都会の空にやってくる。ネオンに照らされた二匹の魚は、どこかシュールで、同時に圧倒的な違和感をリベリスタたちに与える。
 魚が空を泳ぐなど、あってはいけないことだ。
「イワシも最近は漁獲量が減って、すっかり高級魚だけど、まさかトビウオと空に逃げていたとは……。そりゃ漁師さんじゃ捕まえられないよね」
 ビルに設置されている給水塔の上で天を見上げながら『三高平の韋駄天娘』十 刈穂(BNE001727)はちょっと変わった感想を漏らす。あれを捕まえるのは、漁師ではなく刈穂たちリベリスタの仕事だ。
「このトビウオって食べられると思うかい?」
 これは『シャーマニックプリンセス』緋袴 雅(BNE001966)の言だ。この男の娘は、凛としながら、ポニーテールを揺らしながらそう言ったのである。
「いや、うちの局に『空飛ぶでっかい魚が食べたい』と言うのが居てね。この魚の肉を土産に頼まれたんだ。三枚おろしにして持ち帰れるかなと思って」
 食べる? 多くのリベリスタたちは首をひねる。しかし、刈穂は美しい脚を踏み込ませ、腕を振り上げながら、大食漢らしい返事をした。
「と言う訳で、あたし達がきっちり“料理”すべく頑張るよ!」
「大きな魚ですね……。ふむ、生きも良い、食いでがありそうだ」
 食い気をつぶやいたのは『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)。空を泳ごうとも、巨大であろうとも、魚は魚だ。見ていると食欲も湧き上がるのだろう。
 魚のようなエリューション・ビーストたちは、まさか自分が食われるとは思ってもいない。むしろ、自分たちがリベリスタたちを食べてしまおうと、ビルの屋上に向かって来た。
 食うか、食われるかの戦い。
 ――人は、食べる時に食物への畏敬や感謝を込めて「いただきます」と言う。ならば、この状況、この敵に対しても同じように言うべきなのだろうか。
「いただきます」
 少なくとも、アストラールは言った。アストラールは真面目だから。

●魚と空中戦
 トビウオの胸ビレは翼のように発達しており、それを広げることで滑空をすることができる。いわば自然のグライダーである。
 だが、トビウオのようなエリューション・ビーストのそれは鋭利な刃のようであり、触れたものを一瞬で切り裂く武器でもあった。
「ギャギィィィィッ!!」
 奇声と共に開戦の狼煙を上げたのは、この鋭利な翼だ。見た目からは想像できないほど素早く滑空し、飛び込んで来たトビウオのような翼は刈穂を狙った。
「……とっとっと!?」
 給水塔がふたつに切れて、水の飛沫が都会の空に、ビルの屋上に飛び散っていく。その一撃で刈穂はダメージを受けたものの、間一髪ジャンプしたことで大ダメージを避けた。
 ただ、ジャンプの着地点が屋上のフェンスの上であったため、刈穂はバランスを崩しかける。刈穂はハイバランサーの能力によって咄嗟に屋上に飛び移り、事なきを得たが、この屋上という空間で空中戦を仕掛けるのがいささか困難なものとリベリスタたちに思わせるのには十分であった。
「空中戦なんて初めてで心躍るぜ」
 といっても、静のようにそうでもない者も居る。気持ちを抑えきれない彼は軽く跳ねながら、トビウオに伴ってやって来たイワシに狙いをつける。拓真、玲、刈穂、雅は彼と同じく、イワシを狙うようだ。
「皆、油断なされぬ様に」
 静とは対照的に、張り詰めた気を屋上という空間の把握に使っているのはアラストールだ。彼はオートキュアーを自身へと使いながら、戦場の把握に務めた。余裕はあるが、用心に越したことはない。
「手筈通り、私達はトビウオを抑えます。鷹司殿、ミュゼーヌ殿、力を合わせましょう!」
 名を呼ばれたふたりは頷きを返し、同時に駆けて行く。それぞれの力と意思を、手に持った武器に込めて。
「さて、それじゃ始めようじゃねぇか」
「さあ、貴方の相手は私達よ。トビウオさん」
 先にミュゼーヌが1$シュートを使い、トビウオの羽を撃ち抜こうとする。これはトビウオのスピードを捉えきれず、羽を掠めるだけに至った。しかし、それでもこちらに注意を向かせることは成功した。トビウオは空中で体をうねり、軌道をミュゼーヌに向けて変えてみせる。
 魁斗はそれに反応し、走る方向を修正する。その先に居るのは、アストラールだ。
「今だ! よし、アストラール!」
「委細承知! 人間機雷鷹司殿、投擲!」
 アストラールは頷くと、バレーのトスめいたポーズを取り、飛び込んでくる魁斗の足を腕と体の力を使って、上方向に弾き飛ばした。
「もらったぜ!」
 飛び上がったことでトビウオの背後と上空を位置取り、そこからギャロッププレイを使ってトビウオを絡め取ってみせる。トビウオは絡め取られたものを振りほどこうと、無茶苦茶に巨体と羽を使って暴れてみせる。
「……さすがに、ダメージの蓄積が大きいか!」
 その巨体に見合った力から、味方を守るアストラール。バックラーがあるものの、大きすぎる力は受け流しきれず、言葉通り大きなダメージが溜まっていく。
「みんな! 私たちが抑えている今のうちに!」
 ミュゼーヌの声が、イワシの方へ向かった五人にかけられる。彼らがお供のイワシを早く倒し、こちらに付いてくれるまで何とか持たせる、という想い弾丸に込める。
 まだまだ、トビウオは元気だ。掴まっているとはいえ、それでも高速で空を泳いでいる。
 イワシの方もなかなかのスピードである。空を泳ぎ周り、自分の元に来た五人のリベリスタ達の隙を窺っている。
「存外に早い……。しかし、それだけだっ……! 悪いが、此処でお前達は倒されて貰う!」
 そんなイワシの背を取り、メガクラッシュを使って味方の場所へと叩きつけたのは拓真
だ。早いことは早い、が仕掛けられないスピードではなかった。
「ここからは――お前たちの道だ! ワンコ!」
「ワンコって呼ぶな!」
「静さん、行くよ!」
 静と玲が待ち受けている辺りまで吹き飛ばされたイワシは、ふたりの同時攻撃をその身に受ける。疾風居合い斬り、そして斬風脚による連激はイワシの体を容赦なく切り裂き、Xの形に鮮血を噴かせてみせた。
 大きな傷を負いながらも、イワシは飛び上がり体勢を立て直そうとする。
「行かせないよ♪」
 しかし、刈穂の放った斬風脚がイワシの頭上を掠める。振り上げた足と、スタイルのよい健康的な太ももを覗かせながら刈穂は笑う。その一撃で、イワシは飛び上がるのを躊躇したからだ。
「とどめだ」
 雅のバスタードソードがイワシの腹に当てられ。一瞬の間の後、オーラスラッシュがイワシの体を両断する。その剣閃で動かなくなったイワシの体が雅の両脇に物言わず落ちる。
 それを確認すると、五人のリベリスタ達も物言わず走り出した。トビウオを抑えている仲間たちに合流し、奴を倒さなければならないからだ。

●ハイジャンプ
 人も、空を飛ぶ。
 空を飛ぶトビウオ(のようなもの)は、それを確信した。先の捕縛攻撃だってそうだ。
 それに、この人間たちはみんなで飛び上がってくる。攻撃を重ねて、自分に逃げ場を与えない。
 分かったことがひとつある。
 この人間たちは、怖い。トビウオはそう思う。

●魚下ろし
 飛び上がった仲間を守る陽動組、アラストール・拓真・玲・刈穂・雅。彼らはそれぞれのアビリティを放つ。その顔は、都会のネオン、そして勝利の予感に照らされて明るい。
「その羽をもらう、地に落ちよ!」
「俺が全力で飛ばした仲間たちだ。覚悟はいいか? 逃げんなよ――!」
「静さんたちの邪魔はさせない! そろそろこっちも行くよ!」
「魚はおとなしく料理されちゃうのがスジってもんだね♪」
「行け! ここはうちらが時間を稼ぐ! ……いい加減に、沈め!」
 ジャスティスキャノン、オーララッシュ、斬風脚、二度目の旋風脚、そして再びオーラスラッシュと、距離を置いた彼らの連続攻撃がトビウオの巨体に叩き込まれる。
 全力で夜空に飛び上がったリベリスタたちは、急降下しながら、仲間の攻撃によって揺らいだ巨体に狙いをつける。――今だ。
「ヒュゥ♪ あーきら、最高!」
 落下の勢いで大振りに振り下ろしたハルバードの刃が巨体に喰い込み、引っかかる。間髪入れずに引き抜けば、大出血と共に鮮血が飛び散って、ビルの屋上を汚していく。静のメガクラッシュだ。
「全力で、攻撃させてもらうぜ。魚に空は似合わないんだよ。とっとと落ちろ」
 叩き落とされていくトビウオに、魁斗のギャロッププレイが追撃に入る。数えきれないほどの傷とダメージを受けて、最後の抵抗にと暴れ回ろうとしたこの巨体の動きは、その一撃でマヒし、抑えられた。
 そして、ジャンプした仲間たちの攻撃を待っていた者がいる。落下地点にて、愛用のリボルバーを構えたミュゼーヌだ。その銃口は、無抵抗のまま地に落ちて行くトビウオの頭をロックオンし……、
「空を泳ぐ魚のお伽話は……これでおしまいよ」
 1$シュートが放たれた。
 銃声の後、カカッ、とハイヒールの音がビルの屋上に鳴り響き、ミュゼーヌは踊るようにポーズを取る。その背後で、トビウオ……いや、トビウオのようなエリューション・ビーストは屋上に叩きつけられ、動かなくなる。
 リベリスタたちの、勝利だ。

●で、味は?
 戦闘後、リベリスタたちの前には大き過ぎる魚の切り身があった。その切り身の方は銃弾やら切り傷やらが目立つけど。
「あいつらも、空に憧れたのかな……。次は鳥にでも、生まれ変われるといいな」
「いつか、ちゃんと空を飛べる日が来るといいね」
 すっかり切り身になってしまった強敵を想い、空を見上げる静と玲。夜空は相変わらず星も見えず、ただ都会の光が空まで伸びていた。
「この明かりひとつひとつが、人々が平穏に暮らしている証……守っていきたいものね」
 ミュゼーヌが言うように、その光は人の営みの象徴である。その光を生み出す、宝石のような夜景を彼女は見下ろしていた。彼女らは確かに、この街を守れたのだ。
……ところで、トビウオとイワシの切り身。小さく刻んでから見ると、身と脂が詰まっており、美味しそうだ。
「それ以前に、これ食べて平気なんだろうね?」
 でもやはり、口に未知のものを入れるのは怖い。持って帰る用の袋に詰め込みながら、雅は首をひねる。
「さあ? でも、料理すれば大丈夫だよ♪」
 刈穂はポジティブである。たぶん、という形容詞が付くけど。
「……俺は帰って昼寝でもするよ」
 興味なさそうに、魁斗は頭をかきながら背を向ける。
「うまい可能性も、あるかもしれない、か」
 そんな風に、切り身の前で様々な対応を取る仲間たちの前で拓真はそう言いながら、切り身を眺めた。……確かに、うまそうだ。
「食べる時が、楽しみです」
 後日、アストラールたちが食べてみたら、意外と美味しかったらしい。
 こうして、胃に収まるという原始的な手法を持って、空を泳ぐ怪異は真に終わりを告げた。
人はいつでも、好奇心を持って生きている。
 その好奇心が、摩天楼の街を作ったのかもしれない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ということで、空飛ぶ魚との戦いは食べられるという方法で決着がつきました。
 胃袋には勝てなかったよ……。
 空中戦の方は、皆様の様々なアイデアもあって色々と詰め込むことができました。皆さん個性的で、
書いていて楽しかったです。
 そんなわけで、ちょっぴりシュールな戦い。いかがでしたか?
 お送りしたのはビルの屋上で佇むのが好きなnozokiでした。