● 誇り高きアーリア人の証明たる金髪や碧眼を彼等は失った。 無理解な者達は彼等の姿を無様と罵りさえもするだろう。 だが彼等の誇りと忠誠に一片の翳りも在りはしない。 何故なら彼等の姿は、彼等が民族の闘争心の象徴を模した物であるからだ。 「傾注せよ。少佐殿は戦闘行動の開始を告げられた」 心を、精神を、魂を一つに、一心不乱にそれを成せ。我等こそがそれを成せ。 此度の敵は嘗ての同盟者にして極東が雄の末裔。 決して侮らず、敬意を持って、最大限の鉄火にて打倒せよ。軍靴にて踏み躙れ。 他には然して言う事もなし。 さあ戦争だ。 ● 『諸君すまない、緊急事態だ』 通信機に入る緊急連絡は、アークのフォーチュナ『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)からの物。 そしてそれに一呼吸遅れて届くメールに添付されたのは、逆貫が作成した資料だった。 資料 親衛隊1:『Monster』ラントクロイツァー特務曹長 身長3m50cmを越える常軌を逸した巨漢の親衛隊員。今回の親衛隊の部隊を率いるリーダー。 メタルフレームのスターサジタリーであり、機械化部位は巨大な戦車の砲塔と化した頭部。 其の外見通り動きは鈍めだが、其の体躯に見合ったタフさと砲撃戦闘能力を誇る。 所持EXは『zusammenschieβen』(砲撃で破壊する)。ハニーコムガトリングの如く対象全てに対して無数の砲弾を連続して叩き込む凶悪な攻撃力を誇る技。溜1、物遠2全、無力崩壊、追・連。 その他スキルとして戦闘指揮2lvも所持。 所持武装は『P1500型装甲』やその他火器群。 親衛隊2:『U』カラッセ伍長 ラントクロイツァーには及ばぬ物の、3mは優に越える巨漢の親衛隊員。 メタルフレームのスターサジタリーであり、機械化部位はUボートと化した頭部。 見た目に反して意外と素早く、更にスキルを使用した隠密行動を得意とする。矢張り割りとタフめ。 所持スキルは物質透過や影潜みの類。 所持武装は『53cm魚雷発射管』(腕に装着する型で魚雷は空中を飛ぶ)を所持。 親衛隊3:『Z』ツェッペリン伍長 ラントクロイツァーには及ばぬ物の、3mは優に越える巨漢の親衛隊員。 メタルフレームのスターサジタリーであり、機械化部位は戦闘型飛行船と化した頭部。 見た目に反して意外と素早く、更にスキルを使用した飛行戦闘を得意とする。矢張り割りとタフめ。 所持スキルは簡易飛行。 所持武装は『Motorkanone』(でっけー機関銃)と投下型爆雷(遠2、範囲、隙)を複数個所持。 『資料は読んでくれただろうか? 遂に新たなバロックナイツの一派が動き出した』 ドイツの旧軍が亡霊『鉄十字猟犬』リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイターが率いる親衛隊。 一人一人が一騎当千のフィクサードにしてプロの軍人、そして敗残兵。 かの楽団と『同格』の存在である。 『奴等の一部隊が、ノーフェイス退治に出かけたアークのリベリスタに強襲をかけている。至急救援に向かわれたい。…………すまん、どうやら七派のフォーチュナが奴等に対して情報提供を行なっている模様だ』 ノーフェイス退治の検案自体は独立した事件である。 其処には読み落としも情報不足もありはしなかったのだけれど……、其れに対する動きに応じて新たな事件を被せられて仕舞ったのだ。 ノーフェイスの退治自体は終えたリベリスタに、親衛隊は猟犬の牙を振るう。 『現場は君が居る地点からそう遠く離れていない。向かう道中に落ち合えるよう『paradox』陰座・外(nBNE000253)を派遣している。合流して案内を受けてくれ。君達が辿り着く頃には……、先遣の部隊はほぼ壊滅状態にあるだろう。…………すまない、例え僅かでも拾える命を拾って欲しい』 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月29日(水)23:22 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● 「成る程、マフィアの情報は確かに正しかったが、それでも情報戦は矢張り敵組織が上回るか」 リベリスタの生き残りのデュランダル『鴎』淀霧・利美香からの攻撃を、けれどもドイツが旧軍の亡霊『鉄十字猟犬』リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイターが率いる『親衛隊』が1人、『Monster』ラントクロイツァー特務曹長は避ける素振りすら見せずに装甲で弾きながら1つ頷く。 ラントクロイツァーの其の行為は油断では無い。 慢心も侮りも過小評価もなく、嘗ての同盟相手の裔には敬意すら持って、しかし過大評価もする事はなく此れまでの戦闘データから客観的に判断を下した結果、特に其れを避ける必要は無いと判断したのだ。 デュランダルたる利美香の渾身の攻撃を。 「しかしそれも事前調査通りの想定内だ。寧ろ我々と知って差し向けられた、我々に対応可能な戦力を削る事は今後に充分な意味を持つだろう。だがカラッセ、ツェッペリン、先ずは私が奴等に当たる。貴様等は残敵の掃討を継続だ。傾注せよ、我等が祖国と少佐殿の為に」 存分に力を揮える高揚に包まれながらも、優先順位を履き違える事無くラントクロイツァーは通信機を通じて2人の伍長、天と地を行く己が部下に指令を下す。 『『Ja』』 彼等にとっては想定していた第二幕こそが本命の戦いなのだ。 我等が祖国と民族の為に、主義主張と少佐の為に、誇りと名誉と鉄十字の為に、我等こそが其れを成す。 生き残りのリベリスタ達を救うべく現れたアークの精鋭達に、猟犬達が牙を剥く。 ● 爆雷降り注ぐ戦場に辿り着いたリベリスタ達。 先ず真っ先に目に入るのは地上の唯一人の敵、威風堂々と異形の姿を晒すラントクロイツァーだ。 彼の頭部が型成すは、第二次大戦中にドイツで計画だけされた超重量戦車Landkreuzer P1500 Monsterの砲塔。 極端な戦車設計の最終点とされる其の戦車は、けれども其のあまりの重量故に道路や橋梁を破壊してしまい、生産、輸送、運用が共に現実的でないと放棄された。 ラントクロイツァーは訳せば陸上巡洋艦とでもなるのだろうか? 人のサイズに落とし込んでも尚、その威圧感は圧倒的だ。 「ご機嫌麗しゅう。今宵のおぬしの相手はこの鬼蔭虎鐵が承るでござるよ。ゴツイ機械のおっさん」 けれど彼は怯まず其の懐へと飛び込んだ。破壊の神の如き戦気、ジャガーノートを其の身に纏う『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)はラントクロイツァーと比すれば凡そ半分ほどの身長しかない。 虎鐵が小さい訳でなく、ラントクロイツァーが桁外れに巨大すぎるのだ。けれど子供と大人並のサイズの差にも関わらず、虎鐵はきっちりと相手の進路を塞いでいた。 「Ich freue mich, Sie kennen zu lernen.私の名前はラントクロイツァー、特務曹長である。丁寧な敵兵、鬼蔭虎鐵。けれど私は君に問う、君1人ではヤクシャ不足ではないか?」 虎鐵の身から立ち上る戦気を見、彼が強力な戦力を持つ敵兵であると認識しながらも、其れでもラントクロイツァーはそう言った。決して侮る風でなく、厳然たる事実の確認として。 今此の砲身に溜めつつある力を解放するには、虎鐵1人が相手ではあまりに物足りない。 「此処から先はワタシ達の鉄火場です! 生き延びたいのなら、お仲間を連れて逃げてください」 「アークのウラジミールだ。救出にきた」 傷付いた利美香に癒しの奇跡、忌み嫌う神の愛を放った『ヴァルプルギスナハト』 海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)が撤退を促し、『T-34』 ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)は名乗りと、生き残りのリベリスタ達に伝える為に敢えて作戦目標をはっきりと口にした。 普段はともすれば威圧的に見えかねない軍人然としたウラジミールの姿は、けれども此の状況では異常に頼もしく見える。 「でも……!」 だがだからと言って、利美香や『鵲』四葉・縁にとって、回復してくれた恩はあれど海依音の言葉は俄かには従い難い物だった。 任務の終了時に奇襲を受けた理不尽、更には仲間を殺された強い怒りと恨み、其れ等を直ぐに消化する事は非常に難しい。 ましてや彼等だけでは傷付いた仲間をすべて連れて逃げれる訳でも無いのだから尚更だ。 リベリスタとは理不尽な運命に抗う者であるが故に、襲い来る理不尽への怒りは一層強かったのだろう。 「貴方達のリーダーがどん『良いから此処は任せて倒れてるのを担いで逃げるの手伝ってよ』」 海依音の言葉に被さる様に、或いは其の言葉を隠れ蓑に、利美香と縁の脳裏へと『墓守』ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)のハイテレパス、協力要請が響く。 無論生き残りの2人とて、自分等の実力が敵と比して圧倒的に足りて居ない事くらいは判る。それでも其の身を盾にしてでも、倒れた仲間達を守れるならばと居残る心算だったのだ。 「助けたいのなら、今、何をすべきかを冷静に考える事だ」 重ねられるはウラジミールからの言葉。 しかし救援のリベリスタ達が仲間を運ぶ手を割いてくれるなら、倒れた仲間を此の場に残さないで済むのなら、それを拒む理由は2人にはに無い。 それも態々利美香と縁を慮って協力要請と言う形まで取った心遣いに、2人のリベリスタは胸中の怒りを押し殺し、すぐさま要請に従い動き出す。 「臨む兵、闘う者、皆陣列べて前に在り、守護せよ」 そして2人の生き残りが戦闘不能者の移送に加わるが故に、手の空いた『paradox』陰座・外(nBNE000253)が印を結んで九字を唱え、守護結界を味方に付与する。 此処までは凡そ救援のリベリスタの作戦通りに事が進んでいた。 さりとて1つの命も零さず救う事は矢張り非常に難しい。倒れ伏した若きフュリエ『若木』シェッサの頭部が弾け飛び、故郷とは異なる世界、ボトムチャンネルの大地の染みと化す。 猟犬が行なったのは、先ずは未知の排除。其れが今此の段階ではさしたる脅威では無い事は感じていたけれど、プロの軍人である彼等は不確定要素となりかねない物に容赦しない。 「敵性異種、排除完了」 一幕目からそのまま続く戦場、戦闘継続中であるが故に最初から20数メートルの高度に存在した宙を征く飛行船『Z』ツェッペリン伍長からの1¢シュートが彼女の命を散らしたのだ。 遥か異世界の世界樹の子が最後に噛み締めたのは、冷たい鋼の弾丸の味。 悲痛な怒りが戦場に木霊する。 ● だがそれ以上は許さない、零さない。 次に倒れたリベリスタ達を狙ったのは、密かに回り込んだ潜水艦『U』カラッセ伍長が放つ、宙を切り裂き飛ぶ魚雷。 音も無く地中を行き、彼等の退路を断ち切る形で仕掛けられた奇襲は、けれどカラッセの動きに注意を払って戦場全体を監視していた『ガントレット』 設楽 悠里(BNE001610)に阻まれた。 超直観により異常に捨て目が利く彼は、視界に入った僅かな違和感も見逃さない。 放たれる直前に射線に強引に割り込んだ悠里に、魚雷が炸裂して爆煙が立ち込めた。 しかし己が身を魚雷のダメージに焦がしながらも、悠里は煙を切り裂いてカラッセへと迫る。 カラッセが隠密行動を取る事はフォーチュナの予知で知れていたのだ。そうと知れれば不意打ちは不意打ちになり得ない。 そして空を征く脅威、ツェッペリンに対しても抑えが付いた。 「お前の相手は俺だ、飛行船野郎。空が得意なんだろ? ドッグファイトと行こうぜ」 胸中を過ぎる苦味を殺し、『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)が言い放つ。 ツェッペリンが最初から高度を維持して生き残り達の上に居たが故に、間に合わなかった、割り込めなかった一手は痛恨の極みだ。 けれどそれ以上をさせはしない。ツェッペリンもクルトも使用するは同じ簡易飛行。 条件が五分であるのなら、クルトに遅れを取る理由は存在しない。 「その装甲をぶち破ってやるでござるよ!」 虎鐵の咆哮と共に放たれるは、全身のエネルギーを切っ先に集めた渾身の一撃、メガクラッシュ。 『P1500型装甲』に叩きつけられた真打・獅子護兼久が硬質の音を響かせ、ラントクロイツァーの巨体が宙に浮く。 けれど虎鐵の腕に走る強い痺れ。ラントクロイツァーは、そしてP1500型装甲はあまりに重く硬い。 「ほう、素晴らしい威力だ鬼蔭虎鐵」 P1500型装甲に入った傷に、そして突き抜けてきた多少の衝撃とダメージにラントクロイツァーは賞賛の声をあげた。 しかし同時に其の賞賛は、ラントクロイツァーの余裕をも伺わせる。 超重量戦車Landkreuzer P1500 Monsterの構想では、その前面装甲は250mm、重量は1500tとされていた化物だ。 そして其の名を冠するP1500型装甲も矢張り尋常ならざる防御力と重量を誇る。 虎鐵の成した事はラントクロイツァーにとって賞賛以外の何物でもない。 「しかしカラッセとツェッペリンをも止めるか。ならば良いだろう。君等に私の火力をご覧に入れよう」 ゆっくりと動く巨漢と巨大な砲塔。 見た目通りに動きが鈍めの彼が誇る物、それは防御性能と射程と火力。 動きの遅さなど関係無い、圧倒的なまでの其れ。 『zusammenschieβen』 砲撃にて、砲戦にて、圧倒的火力にて、敵を打倒し粉砕し、破壊する。 放たれるは宙を埋め尽くす無数の砲弾。 ● 戦場を蹂躙したその砲撃は、リベリスタ達に圧倒的な被害を与えた。 ラントクロイツァーの前に居た虎鐵に、退路を作る為に戦闘不能者達の前に立っていた海依音、更には引き上げる縁を、ホーリーメイガスを庇った外等の体力は大幅に削られている。 長い射程は撤退組の一部にも及び、仲間を抱えて引き上げる利美香の背をも襲う。 けれど彼女が紙一重で倒れなかったのは、施されていた癒し、海依音の神の愛による強力な回復が利美香の体力をベストに近い状態まで引き戻していたからだ。 とは言え、それ以上は耐えられないし、させられない。 「手負いの相手をする方が楽ですものね」 自らも脅威的な威力の砲撃で傷を負いながらも、挑発的な口調でラントクロイツァーの注意を惹かんとする海依音。 「頭が武器になってるってさ、メシ食えるの?」 退路を塞ぐカラッセに、おちょくるかの様なノアノアの言葉が投げられる。 だがそれは決してからかうだけが目的では無い。同時にノアノアがカラッセに仕掛けるは、思考を探り読み取るリーディング。 相手の次をいち早く読み取り、突破する、或いは隠密行動を阻止する為の一手。 しかしそれに対するカラッセの反応は、破天荒なノアノアを持ってしても想定から外れたものだった。 ノアノアの言葉に、カラッセの頭部、Uボートと化した異形の其れに切れ目が走る。潜水艦の船体の丁度下1/3~1/4の部分に、真っ赤な裂け目が。 硬質を感じさせる船体が柔らかにぐにゃりと曲がって上下に開く、中に見えるは綺麗に整った、それがより異形さを引き立てる真っ白な歯と、そして異常に赤い口腔と舌。 「面白い奴だな、名前も知らない劣等民族。心配しなくてもお前等を始末したら帰って朝食のヴルストさ。だから早く死んでくれないか?」 人としての特徴を中途半端に残すが故にあまりにおぞましい其の異形。 しかし異形の腕の魚雷発射管から再び放たれた空飛ぶ魚雷はウラジミールのハンドグローブ、サルダート・ラドーニ によって掴み取られ、彼の手や腕を致命的に焼きながらもそれ以上の目的を果たせずに終る。 カラッセの横を駆け抜けて行く仲間を担いだ利美香と縁。逃げるターゲットに、けれどもカラッセはそれを視線で追う事すら許されない。 彼の視線を独占するのは、今眼前で放たれた雷光を纏いし悠里の武舞、壱式迅雷。 「ここは僕に任せて先に行って! 大丈夫! ちゃんと帰るから!」 更にはノアノア、ウラジミール、外、撤退するを利美香と縁を護衛し、或いは残る1人の戦闘不能者を運ぶ彼等の背に、悠里が口にした言葉は誓い。 「無様だな」 ツェッペリンと相対するクルトの口から挑発的な言葉が飛び出す。 けれど其れはツェッペリン達の異形の姿に言及した物では無い。 唸りを上げる巨大機関銃『Motorkanone』が吐き出す弾丸に、体の各所を朱に染めたクルト。 「何を誇りに思ってどんな姿になろうが勝手にすればいいさ」 それでも彼は言葉を紡ぐ。自らに攻撃を引き付ける事で、撤退するリベリスタ達が無事に逃げ延びれる様にと。 そして其の言葉は彼等と国を同じくするからこそ出て来た物であったのだろう。 クルトの家はドイツに数世代続く闘士の家系であったから。 「だがな。祖国の為だの未だに大義を掲げて戦おうってのが、無様だよ。時流に乗り損ねた骨董品が」 吐き棄てる様に。 しかし侮蔑は怒りを呼ばず、唯、唯、ツェッペリンの口からは哀しげな嘆息が漏れる。 「祖国の為でなく、大義の為でなく、ならば貴様は何の為に戦うのだ? 寄る辺を持たぬ、確固たる信念すら持たぬ、流れに乗るだけの風来坊」 クルトが島国の下等民族でなく、出自を同じくする者である事は一目瞭然だ。 なのに此の無恥は如何なる事か。ツェッペリンの身を震わせた衝撃は自責の念。故にツェッペリンの引き金を引く指は、この一時確実に止まった。 「しかし其れは貴様の罪では無い。国民が大義を、寄る辺を失ったのは我等が敗北の咎だ」 痛烈な敗北は国民から己が国への、歴史への、誇りを奪い、大義を翳して戦った戦士達を恥だと教える。 生まれた時から其れを恥じるよう、覆い隠すよう教えられて来たのであれば、其の反応も仕方ない。 「だが我等は今度こそ勝利する」 敵国を、植え付けられた敗北思想を、打倒し、破壊し、祖国に大義の旗を掲げるのだ。 引き金を引かれて再び唸りを上げる機関銃と、氷に覆われたクルトの拳が交差した。 ● 戦闘不能者達と生き残りの利美香と縁、更にはノアノア、ウラジミール、外が戦場を完全に離脱した。 リベリスタ達は親衛隊の目論みを完全にでは無いものの阻止する事に成功したのだ。 だがそれは同時に戦場に残された者、虎鐵、海依音、クルト、悠里の負担が激増した事を同時に意味する。 戦場を多い尽くす砲撃に彼等の運命は等しく削られ、更には追撃を受けた虎鐵が地に落ちた。 けれども逆境状態に陥る事でその性能を引き上げた悠里と、元より命中の高いクルトの2人が放った魔氷拳が、幸運も手伝ってカラッセとツェッペリンの2名を同時に氷結した事で退路が開ける。 虎鐵を担いで逃げる海依音の背を悠里が固め、クルトは更に高度を上げて撤退を始めた。 ちらと死したリベリスタ達の遺体が視界に入るが、けれど其れに避ける時間は無い。生きてる者を優先せざる得ない。 リベリスタ達の潔い逃げっぷりに、ラントクロイツァーは追撃を断念する。カラッセ、ツェッペリンの2名は兎も角、彼自身は向かって来る者に大しては強大な戦力となり得るが、其の鈍重さは追撃には決して向かない。 「―――本部、此方ラントクロイツァー特務曹長。状況終了、戦果3。敵は想定よりもヤルようだ。戦闘記録を持ち帰る、以上」 余りに短い1分にも満たない交戦時間でラントクロイツァーはアークのリベリスタ達をそう評し、鉄十字猟犬達は犬小屋へと帰還する。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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