●モテすぎる男はつらいよ 美少年は必死に狭い建物と建物の間を走っていた。 里戸勇気、小学六年生になりたて。もともとかわいい顔をしていて男女に大人気であったが、本日はとみにひどい。 さっきまでも教師を含む学校中の男女からもみくちゃにされ、お持ち帰りされそうになったので、ほうほうの体で逃げてきたところだ。 なんとか、勇気に熱烈な愛を訴える人々を退け、ようやく逃げ切れた。 「はぁっはぁっはぁ……」 疲れきって、空き地の土管に座り込む勇気。 今日見たパンツ、数十枚。目撃してしまった裸、数十人。押し倒された数、七回。ハプニングキス、五回。ハプニングタッチ、百回。 「なんでなんだよー」 半泣きの勇気の胸には、つるりと光る綺麗な装身具があった。 ●ラブコメ主人公体質にされるアーティファクト 万華鏡に映った光景を、『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)はリベリスタに見せた。 「歴史から消えたはずのアーティファクトが、なぜか一般人の少年の手に渡ってしまい、彼はその影響で多大な迷惑を被っている。この光景は数時間後の隣町だ。事は一刻を争う」 なぜ一刻を争うかといえば、この調子で勇気少年が家に帰ると、母親が息子にときめいてしまい、イケない関係にもちこまれる可能性が高いからである。 「まぁ、僕としては彼が母親とどうなろうとどうでもいいのだが。アークとしては、世の中がアーティファクトのせいで混乱に陥るのを傍観するわけにもいかんのだそうだ」 勇気がつけている装身具、それこそまさしく『寅奉流』という名前のアーティファクトである。 「彼はこの装身具の危険性をしらないし、説明したところで信じはしないだろう。無理やり奪うしかないな」 奪ってから、破壊する。というプロセスをとるのが最善手だろう。 闇璃は腕を組み、誰にも聞こえない小さな声で思案にふける。 「……それにしても、一体どこであんな代物を手に入れたのか……。この件、なんとなくデジャブを感じるのは僕だけか?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月25日(土)23:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●前置きはいいッ! ここは公園、強結界はばっちりかかっている。 その真中に美少年、アーティファクト『寅奉流』つき。 「ちょ、なんだよ、えっ」 おろおろする勇気へジリジリ包囲を縮めていくリベリスタたち。 「まあいいわ。それじゃあ先陣切りましょうか」 物陰から赤が飛び出した。『』リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)、十六歳女子、色白ツインテールのびにう! 「後は野となれ山となれッ! レッツゴー!」 包囲からも弾丸が飛び出す。『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)、十七歳女子、ちょっと褐色肌のボブヘア、脱ぐと凄い! 「とにかく、上着を取ってしまえば……!!」 と猟犬が如き速度と確実さを伴う特攻は、『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)、二十六歳女子、銀髪豊満! じりじりと勇気の背後から忍び寄ろうとする者も居る。 「こんなものは即刻処分ですよ! 処分!」 『委員長』五十鈴・清美、十五歳女子、黒髪三つ編み眼鏡、ひんにう! 「わあああっ」 四方から女子のダイブを受け、勇気は泡を食って思わずすっ転んだ。 ドッシーンッ☆ 目を回す勇気の格好が凄い。 「えっちなのはいけないんだぜ?」 と『天晴』高天原 てらす(BNE004264)が思わず呟くのも仕方がない。 勇気は、清美の胸を枕に、右手はエルフリーデのおっぱいをシャツの隙間から手を突っ込むように鷲掴み、左手は明奈のショートパンツに包まれた尻を鷲掴み、そして股間にはリリィの顔を埋めさせている。 「い、いたた……っ!?」 首をもたげた清美が状況を確認して、かぁあ~っと顔から火を出す。 「ひいっ、なにしてくれているんですか!! 破廉恥な!」 悲鳴を上げながら、清美は必死にズリズリと腕で這い上がり、肉布団から脱却する。 ビンタしてやろうかと思ったが、転んだ少年の下敷きになっただけだ。ちょうど頭が胸の谷間に……谷間? 貧乳に谷? あったっけ? 「やわらかい……? わ、わわっごめんなさい!」 勇気が気づいて、真っ赤になりながら手を引っ込める。 「ふふ、いいのよ。勇気君ならもっと触ったっていいんだから……っ」 エルフリーデは獣が親愛を示すかのような仕草、つまり頬を擦りつけて、甘い声を出す。 「え、えっとぉ」 「ほら……」 と少年の手をとって、豊かな胸へ導こうとする狼娘。 ケモおねショタの予感! 「もう目を見ちゃったのかよ!」 明奈はアーティファクトの威力を目の当たりにし、黒いサングラスの位置を改めて整える。彼女的には天才的アイディアだと思っているが……視界が確保されている以上、効果の程は…………いや、鰯の頭も信心から、病は気から、一念岩をも通すと言うではないか。生暖かく見守るとしよう。 「むぅっ、……っっ」 リリィは小学生とはいえ異性の股間に顔を埋めてしまった事実に、うろたえまくっていたが、クールキャラを守るべく必死に表情筋を抑えて、後ろを向く。 「あ、あんなこと、事故よ、事故っ。なんてことないんだからっ、冷静に、冷静にっ」 なんだかふにゅっと温かかったな……。 「ちちち違う違うわ!」 ブンブンと真っ赤なツインテールを、まるで連獅子のように振り回し、リリィは必死に感触を振り払った。 ●おねショタ祭りッ! 「一瞬でこの惨状……悪用することなんか思いつかない年齢の子のところにいったのは不幸中の幸い?」 『月光花』イルゼ・ユングフラウは首を傾げつつも、自分の策を実行する。ちなみに、二十四歳女子、巨乳の巫女コスチューム。 「とにかく逃げてこっちへ、何とかする方法を知ってるから!」 イルゼの声に、エルフリーデのおっぱい強要に困惑していた勇気は、どこかホッとしたようにイルゼへと向かう。 ばっちり目が合った……。 『しまった!』 かぁあっとまるで強い酒を流し込んだように、胸が熱くなり、ぞくぞくとした震えがイルゼを包む。 「こ、これ、ときめきっていうか……」 トロンとしてしまいそうな自分を叱咤し、イルゼはしゃがみこんで、勇気を抱きすくめる。 「こ、これは、勇気君を逃さないため……」 そして上着(アーティファクト)を奪いやすくするため、と続けようとして。 「も、もう、離さないわっ」 上ずった声で叫び、ぎゅむぅ。 巨乳で少年を包み込んじゃう巫女さんというのは、なかなか背徳的エロスだ。 「勇気君は私のよ! 狩人として狙った獲物は逃さないわ」 エルフリーデが逆側から少年に飛びついて、抱きしめる。ぎゅぎゅう。 「わっぷ、お、おねえさんたち、苦しいよ……!」 「わわわ、きょ、巨乳サンド! 違う! だめだろ初心を忘れるなー!」 明奈が泣き笑いながら、エルフリーデとイルゼを引き離そうとする。 そもそも二人がくっついていると、大きなバストでアーティファクトに手すら届かない。 「だめだ、びくともしないぜ」 とはいえ、攻撃すると勇気が死んでしまう。明奈が困り果てていると、ピンク色がふわふわと近寄ってきた。 「ふっふっふ、自分に任せておくのです。秘策があるのです」 尖った耳は異世界の住人の証、フュリエの美しい少女が、手に何やら持って、自信満々の笑顔をたたえ、ばいんばいん乳を揺らして近寄ってくる。 「シィンさんじゅうななさい! 胸はすいか!」 『ピンクの変獣』シィン・アーパーウィル(BNE004479)さん、自己紹介ありがとうございました。それでは秘策やってもらいましょう。どうぞ! どっっばあ。 「……な、何を」 清美が理解できないとばかりに眼鏡をクイッとあげて、変獣に尋ねる。 「練乳です」 どっろどろの白濁液を、顔から胸から髪から垂らすイルゼとエルフリーデと、勇気は、きょとんと仁王立ちのフュリエを見上げる。 「一流のトラブルメーカーとは、身一つで様々な演出をすると調べて知りましたが、自分は未熟者なので小道具を用意させてもらったのです」 えっへん、と胸を張って、鼻息を一つ。 「さあさあ里戸さん、ずいぶん汚れてしまったのです。こっちの服に着替えて、そのよごれちまつた上着をこっちによこすです。大丈夫、クリーニングして返します」 ずいっと手を伸べるシィンは、巧妙に勇気の目を見ないように、彼の口元を見つめている。 ●その時奇跡が起こったッ! 超展開に呆然としている少年に、もっと超展開が待ち受ける。 「勇気先輩……前から先輩の事が好きでした! 先輩は知らないかもしれませんが、ずっと先輩の事みてました! だから……脱いでください、脱いでくれたら嬉しいな、脱げ!」 てらすがそう叫んで、巨乳サンドにダイブしたのだ。 高天原 てらす、十歳女児、色白ひんにうオッドアイ。貧しいとはいえ、十歳なのだから、そのうち育つ気もする。 「ほら、脱ぎ脱ぎしちゃおう!」 「うわー!」 と嫌がる十二歳男児の上着をひん剥く、笑顔の十歳女児。と書くと、日本の行く末が不安になるが、任務、任務です。 「よっしゃあ、寅奉流ゲットだぜー!」 「あ、じゃあ、この上着を……」 と、ようやく登場、本件唯一の男性、『エゴ・パワー』毒島・桃次郎(BNE004394)十二歳。とはいえ女装男子だ。兄はオカマだが、本人はオカマではないらしい。 桃次郎が真っ当な上着を差し出そうとするのを、シィンが遮る。 「いやいや、こういうのをご用意したのです! どれがいいですか?」 新妻仕様の桃色ふりふりエプロン、スクール水着(当然女児用)、ネクタイ、そして……十分長い鎖付きの首輪。 「……上着じゃないよね、それ」 桃次郎が思わず突っ込む。一応まだ、勇気はブラウスも半ズボンも着用しているのだが。 「でも、ネクタイは紳士の嗜みなのです。ジェントルマンなのです」 「どこ情報だよ」 「ネットや漫画ですよ?」 これだから、フュリエは! と全国のまともなフュリエに土下座したくなる感想を抱く桃次郎である。 そうこう考えているうちにシィンはネクタイやら一式を握りしめ、勇気へとダッシュし――石に蹴躓いて、てらすにぶつかった。 ぶつかった拍子に振り回されたネクタイが、奇跡的な軌跡を描き、てらすとシィンの腕を一緒くたに結んでしまう。そして首輪の鎖がてらすの胸とシィンの腰をまとめあげてしまった。 「えー!?」 しかも固結び。 「そ、そうか、今は高天原さんがアーティファクトの持ち主だから、ラッキースケベの主役も高天原さんってことか」 明奈はウンウンと頷く。 「うわあ、ねーちゃんの胸でっかいな。ビーチボールみたいだぜ……じゃなかった。納得してないで助けてくれよ!」 とてらすが叫ぶのを聞きつけ、リリィが駆け寄る。 「はぁ、なんでこんなことになるんだか……。仕方ないわね、ほどいてあげるわ」 大きくため息をはいて、リリィがまずは固結びを何とかしようと腕を取る。 「ぬっ、くっ、固いっ。しょうがないわね、切るしか無いわ」 と解くのを早々に諦めたリリィが取り出したナイフを見て、シィンが怯える。 「ひぃい、怖いです! リストカットヤンデレにはなりたくないです!」 「何を言ってるのよ。大丈夫よ。ネクタイだけ切るから。絶対に傷つけはしないわ」 キラァンと光るナイフをかざした時、間の悪いことに明奈が、 「よーし、じゃあワタシは鎖を」 と加勢にやってきてしまった。 そして、シィンが躓いた時にばらまいてしまったエプロンを踏んづけ……。 「うわあっ」 バナナでもこうはいかないというくらい見事にすっ転ぶ。 ナイスリアクション。さすがバラエティアイドル。 「きゃっ」 明奈が転んだ衝撃で、リリィの手元が狂い、ナイフの切っ先が明奈の太ももを覆う黒いストッキングを引っ掛けてしまった。 ビリリィッと丸く大きく破け、黒の間から明奈の小麦色の肌がまろび出る。 今日のファッションがショートパンツだったのが災いし、明奈の片方の尻たぶが露出してしまった。もちろん下着も少し見えている。 下半ケツというやつである。 「大丈夫! パンチラしても黒ストだから恥ずかしくない! ないッ! のはずだったのに……」 完璧な策だと思っていたファッション作戦が裏目に出て、しょんぼりする明奈。 「まったく! なんという体たらく! 早く高天原さんからアーティファクトを回収してください!」 「え、ボク?」 いきなり清美に話を振られ、桃次郎はきょとんと己の鼻を指さす。 「あなたが一番近いでしょう。私は他にやることがあります」 と清美は、呆然としたままの勇気に歩み寄っていく。 「うん、まぁいいけど。それにちょっと……もとい思いっきり興味が無いって言ったら嘘だよネ」 と清美に聞こえない音量で呟きつつ、桃次郎は、女団子状態になっているてらすの手から上着ごとアーティファクトを取り上げた。 そして、上着から『寅奉流』を取り外すとしげしげと眺め回す。 「う~ん、自分魅力でなくてアーティファクトの力でモテモテかぁ。何か間違ってるような気がしないでも無いけど、ソレ有れば好みのお姉さんとかにも優しく甘えさせてもらえたりするんだよね?」 もちろん好みじゃないお姉さんや、お姉さんとは呼べない人間からも優しく甘えさせてもらえる仕様である。 ●おっぱいは凶器ッ! 「はっ。うぅ、私ったら小さな男の子になんてことを……。あんな危険物はやく破壊しなくっちゃ」 「くっ、事故とはいえ、旧貴族たる私にあるまじき振る舞いだったわ……はやく任務遂行しなくては」 とようやく目が覚めた巨乳お姉さんズだったが。 現在の所有者を確認しようとして、桃次郎とばっちり目が合った。 「え?」 小さな男の娘に、事故、ふたたび。 「……あっちは放っておいて。あなた、ちょっと訊きたいことがあるんですけど」 清美は勇気に尋ねる。 「あなたは何処であれを手に入れたのですか」 「え? あれは……もらったんだ」 「誰に?」 「名前は知らないお姉さん。黒いズボンのスーツ着てたよ」 清美は少し思考にふけったが、黒いパンツスーツの女に彼女は心当たりがなかった。 「く、くるしー。おっぱいで窒息死とか男のロマンだけど、ま、まだ死ねない! 仕方ないけどっ」 巨乳サンドで死にかける桃次郎は、覚悟を決め、断腸の思いで持っていたアーティファクトを地面に叩きつけた。 「今だ! 総攻撃!」 明奈がアーティファクトへストンピングを仕掛けた。 他の面々もさっきまでの行為の羞恥のいたたまれなさをアーティファクトにぶっつける。 全員の気が済んだ時、アーティファクトは、すでに粉になってしまっていた。 さらさら、さらさらと風にのって消えていくアーティファクトを見送り、リリィは呟く。 「……はぁ、散々な目にあったわね。さっさと帰って忘れたいわ……」 「ごめんなさいね。もう今日みたいなことは起きないと思うから」 エルフリーデが謝りながら、練乳染みつきの上着を勇気に返す。 「う、うん……」 一体何だったのだろう。 嵐のような空き地での出来事は、少年の記憶にしっかと刻み込まれた。 しかし、人に説明できそうにもない内容なので、墓の下まで持っていかれることだろう。 めでたくもあり、めでたくもなし。 |
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