● ちょっと注意を怠っただけなのだ。 ちゃんと前のポケットは調べたのだ。 どうして、後ろのポケットにたまたま貰ったポケットティッシュが入りっぱなしなどと気がつけよう。この世知辛いご時勢の影響で、死ぬほど薄かったのだ。 「俺のバカ……」 対処法は、乾いてから払うしかないのだ。 「――のに」 なにかがささやいた。 「――で――えば――に」 空耳ではない。 「し・で・まえば、い・に。しんでしま・ば、いいの・。しんでしまえばいいのにしんでしまえばいいのにしんでしまえばいいのに!」 よじれた白い紙が、寄り集まって、洗濯機の中から現れて。 するすると首に巻きつき、ぎゅうと締める。 指でかきむしっても、ボロボロと白い紙かすが落ちるだけで一向に切れない。 ぬれた紙はしつこい。 ティッシュ入れたまま、洗濯するなんて、死んでしまえばいいのに! ● 「――という訳で」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、無表情だ。 「E・フォース。識別名『ティッシュ・ロープ』 とあるコインランドリーの洗濯機でティッシュと一緒に洗濯すると出てきて、やっちゃった人の首を閉めて殺害する」 そのくらいの失敗許してやれよ。 「これ、過去にやってしまった人達の『ちゃんと確認しなかった自分を殴ってやりたい』という自責の念の塊だから、正確に言うと自責の念に駆られた人だけが襲われる」 真面目な人から不幸になっていく。 倒すんですね。分かります。 「慰めて、なだめすかして、消滅させて」 なんですか、それ。わかりません。 「下手に攻撃すると意固地になって、しゃれにならない速度でエリューション特性のフェイズが上がる」 ヤンになるんですね、大体分かってきました。 「ヤンになったら、それこそ人が死ぬ。人を呪わば穴二つ。ティッシュ・ロープが悪さをすると、ここでお洗濯失敗した人達に影響が出ないとも限らない」 そんなことになったら、誰も幸せになれない。 「自分のやった過ちに対する自責の念の集まりだから、肯定し慰めるのが一番。共感したり、お洗濯の先輩の立場で声をかけたり。日本的に言うと、祟る前に祭るに限るってこと。お供えはいらないけどね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月17日(金)22:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 小雨そぼ降る真夜中のコインランドリー。 電気はついているがブラインドは下ろされ、【機械故障にて修理中、明日お越し下さい】の張り紙が貼られ、中では複数の人間が動く気配がする。 この辺りだけがひっそりと静まり返っている。 『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が、赤いコーンで『この先工事中』と偽装したから。 「修理中」の張り紙だって、雪白 桐(BNE000185)と『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が貼ったものだ。 アーサー・レオンハート(BNE004077)に作られた強結界の中。 「これで他人が来たら、どれだけ必死でコインランドリーに来たいのかと思うのです」 そあらは、完璧ですと呟き、サングラスとマスクで顔を覆い、防犯カメラのレンズをふさぐ『無銘』熾竜 伊吹(BNE004197)の背を見る。 「――ライブカメラでネットに流している所もあるからな」 用心に越したことはないです。神秘秘匿大事。 伊吹は、きびすを返すと、洗濯機の中に残った洗濯物を混ざらないように次々と畳み、それぞれ清潔な袋につめた。 レンズをふさいだときより、リベリスタの視線が集中する。 「男やもめが長いと、この手の場所は馴染みすぎて――そのままにしておくと皺になってしまうからな」 きちんと女性者の下着までたたんでしまうのはどうかと。 「枯れたおっさんは女物ごときに動揺しない」 伊吹は、見た目はともかく目下、『パパは私の洗濯物に触らないで!』 と叫ぶお年頃の娘に傷心中の50過ぎのおっさんである。 パンツ畳まれたらはじゅかちい娘の心がわからないパパは、しばらくハートブレイクでいい。と女性リベリスタの心は一つになった。 「ううん、ねむくない、ねむくないよ。じょーざいせんじょーのこころえ」 いつもならこの時間は夢の中の『無銘』佐藤 遥(BNE004487)の語尾が怪しい。 「ハッ!?」 パンパンッっと両手で頬を叩く。 (任務中のうたた寝は死亡フラグなんだよ!) 人が来ないか見張ったり貼り紙や看板設置のお手伝い、深夜の都会の片隅なんてちょっと怖くてドキドキしてた分、今急に眠気がきている。駄目だ。なんかしゃべってなくちゃ。 「それで、誰を説得すればいいの?」 遥ちゃん、ブリーフィングはちゃんと聞こうね。 「こちらが今回の資料ですっ」 『深夜コンビニのバイト戦士』都築 護(BNE004463)がきびきびと期間限定メニューのように、資料の3ページ――ティッシュ・ロープのリアルな外見図(四門作画)を差し出す。 遥にはおねむの時間だが、護にとってはゴールデンタイムだ。 「…………おぉ!」 (おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん、みんな、ボクはこれから幽霊としゃべりばするよ!) この場合の『ば』は、標準語の『を』に相当する。 遥は新天地でがんばってます。神秘初心者の感慨。それっぽいよ! 幽霊というよりは、妖怪・しろうねりって感じだけれども。布じゃなくて紙だけれども。 「あれ、人じゃない? というか、これ、ティッシュの固まったの?」 残留思念体がそんな形をとったものですな。 「じゃ、ガムテぺたぺたして洗濯物からティッシュとるとか、これには無理?」 すごく無理。というか、それは体がこそげますな。 「イライラしてるときは、おいしいもの食べて、帰ってお風呂入って歯磨いて寝ちゃおうよ――って、言うつもりだったんだけど――」 お風呂入ったらばらばらになるんじゃないかな、ティッシュ的に。ほんとのティッシュじゃないけど。 「そっか。幽霊だから、人って訳じゃないんだ」 うんうん。と、先輩リベリスタ達は高速で頷いた。 聞いてくれてよかった。多分、それ、ティッシュ・ロープに向かって言ってたら、ヤン化への階段駆け上がるところだった! 「一度ここで失敗することで、次からはやらないように気をつけられるようになったと考えられるじゃないか」 護は、遥を、部活で後輩の悩みを聴く先輩のように、励ましながら諭す。 つまりは、そういうことなんだ。自責の念の余り、自分や誰かを傷つけちゃうなんて悲しいこと起こっちゃいけないって事なんだ。 ● 四門の予知による出現予想時間にはちょっと間があった。 それぞれぼそぼそ語りだす経験談。 「ティッシュをポケットに入れたまま洗濯……」 全員の口から長い長いため息が漏れる。幸せが逃げる。 「自分で洗濯機を回す人間にとっての通過儀礼のようなものだ」 護が、だからこそ気を落とすことはない。と言う。 「わかりますね。細かくなったティッシュが張り付いた服。なかなかとれず一緒に洗った衣服の被害も甚大」 桐が遠い目をする。 「実は洗濯機本体の方にも被害がでているのですよねぇ」 そあら、家事に精通してるっぽい発言。 「さおりんの未来の妻としてはこういううっかりは気をつけないとなのです」 沙織んちに嫁にいったら、お洗濯はメイドさんがやってくれるんじゃないかなぁ。と、突っ込むような優しくないリベリスタはいない。 「正直に言えば年に1回はやっちゃいますね……孤児院での子供達の衣服の量は沢山だから、疲れていると、つい見落としてしまうこと……あるのでございます」 『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)の告白。 忙殺される中、いかなワーカホリックと言えども魂が遠のく思いがする。 「――落ち込んじゃうよね、わかるよ。こういうのって急いでる時や、疲れてる時に限ってやっちゃうし」 『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)も、ぎこちなく頷く。 自分が、誰かを、これから現れるエリューションを慰められる気がしないけれど、精一杯の話をしようと思っていた。 「全く調べてないんじゃなくて、うっかり調べ忘れたところに、たまたまティッシュが入ってた、というのが余計にやるせなさを感じさせるんだよなぁ」 アーサーも、お洗濯は自分でしなくてはならない身の上である。 「身につまされる話だな。日常に潜むささやかな油断が心の傷に――」 伊吹は、心臓の辺りで拳を握り締める。胸に来る何かがあるのだろう。 「疲れていたり落ち込んでいたり浮かれていたり、何かに気をとられていたり……気をつけていてもやっちゃうから、うっかりなんだ」 一人暮らし初めてです遥が締めくくる。 なんとなく円陣を組み、互いの瞳に共感を見る。 この一体感こそ、リベリスタに大事な「絆」。 「――ネガティブなことは言わないように」 打ち合わせででたことを、アーサーがもう一度確認する。 わかるよ。君のやるせなさ。 僕達は、君を肯定するためにここに来た。 ● にょろ。 ドラム指揮洗濯機のふたが音もなく開く。白くてもじゃもじゃ。 毛羽立ったティッシュをより集めて縄にしたようなのを束ねて太くして、青大将くらいにした外見――E・フォース「ティッシュ・ロープ」がにゅるにゅると出て来た。 「落ち着け。話し合おう」 伊吹、掌をずいっと前に出し、ステイのポーズ。 鎌首をもたげながらも、洗濯機の下でとぐろを巻くティッシュ・ロープ。 (よし、言葉は通じるな) しかし、臨戦体勢に見えなくもない。お尻尾ぶんぶん。サイドワインダーなら威嚇音が聞こえてきそうだ。 (元々の役割も果たせず持ち主のうっかりでそんな姿になったティッシュも被害者なのですよね) ティッシュだって、好き好んで粉砕されて洗濯物に張り付いているわけではない。 ティッシュ本来の使いかたされたかった。 それは汚されて、ゴミ箱直行と言うことだけれど、それがモノの本質と言うものだ。 桐は、がさがさとコンビニ袋をあさる。 ばりばり。ポテチの袋を破る。こぽこぽ。紙コップにジュースを注ぐ。 「時間はありますし、お菓子でもつまみながらこちらの話ばかりではなく貴方の意見も言ってもらってかまいませんよ?」 桐は、にっこり微笑んだ。少女と見まごう微笑は語る。 (ティッシュが物を食えるのか!? とか、気にしたら負け!) お供えの心意気である。手ぶらで荒ぶる残留思念を収められようか、否。否である。 「そうですね、貴方が悪いわけじゃないのに悪者扱いされてやるせないですよね」 どうぞお一つと言いながら、桐もポテトチップに手を伸ばす。 「でも一度失敗した方は、次からは洗うときにちゃんとポケットを見るようになるでしょう。花粉症の時なんかは貴方に感謝ですよ? ここでの事だけではなく、もっと広く見れば貴方に感謝してる人はいっぱいいますよ?」 トイレットペーパーが常備されていない公衆トイレで、鼻水が止まらない満員電車の中で、さっきもらっててよかったと胸をなでおろす、希望の光とありがたがられる瞬間が確かにあるのだから。 「私は思うんです……」 シエルはそっと言葉をつむぐ。 「……洗濯ものと一緒に洗ってしまったちり紙様は……ちり紙さんが身を挺して、『君、疲れているんだよ』 『今はボクがボロボロになっちゃったけれど、君がボロボロにならないか心配だよ?』 と、私に教えて下さっているのではないでしょうか?」 アーク厚生課の「超過勤務要注意リスト」の上位に名前を連ねているワーカホリックが言うと説得力がある。 「洗濯されちゃったティッシュ様……お優しい方なのだと思うのです。洗濯ものとティッシュ様と私……それは切っても切れない絆で結ばれた【心友】だと私は信じてます」 いや、結びついちゃ駄目だろ、洗濯物とティッシュは。 「神秘の世界を垣間見るからこそ痛感する何気ない日常の一風景……それは何よりの宝物です!」 ――という突っ込みさえも拒絶する、なんかいい雰囲気。神秘界隈では、とにかく雰囲気をかもし出した方が勝つ。 「故に――」 シエルの羽根が、ティッシュ・ロープを優しく包み込み、そっと抱擁……無言で心を込めて慰撫をする。 「癒しの息吹よ……」 柔らかな微風が吹くが、上位存在も無生物は癒せない。 それでも、痛んだティッシュの哀れな末路にも意味を見出され、ティッシュ・ロープは少し短くなった。 ● 「自責の念か。そなたは真面目過ぎるのだな。それ故自分を責め過ぎてしまう」 伊吹がティッシュ・ロープを見る目は優しい。 完璧主義者の憂鬱。 「こう言って慰めになるかどうかわからんが、俺はそなたのような者が好きだぞ」 目の位置は定かではないが、リベリスタには分かった。今伊吹とティッシュ・ロープは見つめ合っている。 「思えば俺の周りはそんな者達ばかりだな。小さな見落とし――ああすればもっと助けられたと後悔して だが、そういう者達だからこそ俺は共に歩みたいと思うのだ」 その心の形が、新たなリベリスタを生む。 「俺にアークを教えた者もそうだったように」 いいか。と、伊吹は少し前置きをした。 「この世に完璧な者などいない。もちろん俺も完璧にはほど遠い。そなたを愛する者はそんなことでそなたを否定したりはしないぞ。もう自分を責めなくていい。楽になっていいんだ」 ティッシュ・ロープの向こう。 自責の念に駆られて涙したどこかの誰かに向かって話しかける。 そうそう。と、遥は頷いた。 「わたくしはそのようなミスはいたしませんっ」 胸を張り、とんがった眼鏡をくいっと直すしぐさをする。 「……なんて人がいたらすごいけど、ちょっと堅苦しくてお話しづらいかな」 えへへ。と笑う遥は人懐っこい。 「いいじゃない、少しはあるあるミスしたほうが親近感涌くよ」 さっきやらかしかけた遥は、きっと今日のことを忘れない。 「私も子供の頃は、よくお皿を割ってガッカリしたな。今でも、気をつけてるのに、たまにやっちゃうよ……でも考えてみれば、他の人のミスだったら、同じようにカバーしてても、軽く笑って流してあげちゃうような事だよね」 キリエは、第三者の視点からティッシュ・ロープの心をほぐす。 さっき、遥の思い違いをみんなでセーフ! と流したように、本人が思っているほどたいしたことではないのだ。 「完璧でありたいと思うのも、人の心なのかもしれないけど…こういうのが、教えてくれるよね。自分も他の皆と変わらない、弱い人間だって」 (幾度となくぶつかるたびに他の誰かを傷つけて、執着を、心を捨てようとして、でも結局は同じことを繰り返すけれど) 「お弁当箱持って帰るの忘れ続けたお父さんは過労になってた。スライサーで怪我しちゃうお母さんは病気で視力が落ちてた」 もう回復してるけど。と、キリエは付け加えたが。 「同じ痛みを知らない私は、そばにいて、気がつきもしないでイライラしてた」 気がついて上げられなかった後悔が言葉尻ににじむ。 「同じように苦しむ人を、理解出来るなら。これはこれで、いいんじゃないかな」 だから、自分を責めないで。 「ね。時々なら、こんな小さな失敗を積み重ねるのも人間味があっていいんじゃないかな。少なくとも、私は君達に親しみを感じるし、安心も出来るよ」 ティッシュ・ロープの向こうにいる誰かさんに届くといい。 ミスしたから、嫌われるかもしれないという心の重荷から開放されて、ティッシュ・ロープは短くなっていった。 ● 「思わず自分を責めたくなってしまう気持ちはよくわかる」 アーサーは、遠い目をした。 「宅急便を受け取る時にボールペンでサインして、その後ポケットに入れていたのを忘れてそのまま洗濯してしまい、中のインクが漏れて『洗濯するつもりが全部真っ黒になっちゃったZE☆』とかやらかしたときのあのやるせなさといったら……」 それは、なかなか壮絶な「やっちまったぜ」だ。 「だが、よく考えてみて欲しい。こんな経験をしたことの無い者に、このやるせなさがわかるだろうか」 共感とは、経験に裏付けられている。 「否、断固として否だ。このやるせなさは、同じ経験をしたものにしかわからないのだ。だからこそ、同じような失敗をしたものが自分を責めているときに、そっと肩を抱いて慰めることができるのだ」 洗濯機を開けたときの絶望感。再び洗濯をやり直す徒労感。 その心の重みをわかり、そっと寄り添うことが出来るのだ。 「だから、そんな失敗をした自分を責める必要なんて無い。同じような失敗をした者を慰められる自分をむしろ誇って良いと思う」 こんなおばかは自分だけだ。という疎外感に苛まれていた思いが軽くなり、ティッシュ・ロープはまた少し短くなった。 ● 「起ってしまっても対処できる方法もあるですよ?自分を責めなくてもいいのです」 そあらの手に卓上掃除機。 「乾燥機をかけれる衣類は乾燥機でしっかり乾かすとある程度自然に剥れ落ちる! 乾燥機の中に散ったものは掃除機で吸っちゃいましょう!」 という訳で、こちらに先程そういう状態になっちゃってたやつを乾燥させたものがあります! ちょっとぺふぺふすれば、大丈夫! 「乾燥機不可の場合はしっかり干したあとにコロコロ等で取る!」 護が、俺の出番だな。と、一歩前へ。 「ところで俺のを見てくれ、こいつをどう思う?」 と言って、かざす粘着ローラー。 通常より巻きが多くて幅が広い――太くて長いお徳用だ。バラのプリントがおしゃれでもある。 何、そのほんのり香るメタファーに満ち溢れた選択。オ段を駆使して雄叫びを上げるアークの一部のお嬢さん達にロックオンされても知らないからな。 閑話休題。 しっかり干された衣類のうえを頃ころがすべると、消えていくティッシュ。 「これですぐ取れちゃうんだ。だから、そんなに気に病まなくていい。出来るだけやさしく、かつ大胆でスピーディーにヤらないとな」 「洗濯層にへばりついたものは水を張ったあと糸くずフィルターである程度取れる!」 これで、洗濯機も大丈夫! 「ティッシュが付いた事でお掃除するきっかけになってコインランドリーも綺麗になったですよ」 そあらさんの実演付き対処法講座、終了。 「大事なのは起こしたことより起きた後なのです」 対処法さえ学んでいれば、必要以上に自分を責めることはない。 (それでもうっかりする人はするですが。あたしとか。これは言わないでおくです) どじっこはステータスだよ、そあらさん! とんでもないことをしでかしてしまったという心の重さが少し軽くなり、ティッシュ・ロープは短くなっていった。 ● 桐は、もう指くらいにまでになってしまったティッシュ・ロープに微笑んだ。 小さな箱を取り出し、蓋を開ける。 「最後、この中にまとまってくれればまたティッシュに蘇生できないか上の人に頼んで見たいのですが、ちゃんとした形でまっとうしてもらいたいですし」 ティッシュ・ロープは、桐の手の上に乗った。 そして、その指に巻きつき、ポテチの油のついた指をキレイに拭き上げ、消えていった。 それが、ティッシュペーパーの本分、果たしたかった生業だった。 ● 「そう言えば、洗濯物たまってたな……」 伊吹は呟く。リベリスタ達は、それぞれに自宅の洗濯物について思い浮かべた。 この先、彼らがティッシュを入れたまま洗濯することはしないだろう。 彼ら自身のため、洗濯物のため、そして、何より、ティッシュ・ペーパーのために。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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