●ぢんせい★レボリューション! 「事件なのですよ!」 肩を竦める『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)に構う事無く、その目を爛々と輝かせた『清廉漆黒』桃子・エインズワース (nBNE000014) は集まったリベリスタにそう告げた。一応自称美少女の目を表現するのに爛々というのはどうなんだ、という虚しい突っ込みは勿論の事、この世界には産み落とされない。言わない方がハッピーな事は結構その辺りに転がっているからだ。 「……で、何が起きたの」 「はい。ええと、アーティファクト『魂の解放』(リベレイション)をとあるリベリスタが獲得してしまったのが始まりです。リベリスタがリベレイション、軽くちょっとアレでソレですね!」 「お前も結構ヤケクソだろ」 「はい、勿論」 何処かで聞いた事のある事情である。 さりとて、アシュレイや桃子の様子から重みが感じられないのはきっと『そういう事』なのだろう。 「……『魂の解放』は所有者を含めた人間の鬱屈を解放し、心のままに行動させてしまう傍迷惑で都合の良い品物です。ちょっと倫理観や常識が麻痺してしまったりするので軽く問題を生じさせる代物なのは違いありません。ええと、そのリベリスタの方も魂を解放(リベレイション)しちゃいまして。日頃のストレスを思い切り発散してしまったのです。色々と」 「何やったのさ」 「真っ昼間ビルによじ登って歌い出すとか、奇声を上げながら街中を疾走するとか」 「……相当ストレス溜まってるの?」 「お仕事を含め色々大変らしく。新幹線でちょっと話を聞いたんですけど」 「こだまなら仕方ないな」 アシュレイの言葉に頷くリベリスタ。 「余り重大な事件ではないのでアークも皆さんとは別の対応班を投げたんですけども」 「ですけども?」 「返り討ちにあって皆解放してしまったのです!」 ここで桃子が混ぜっ返した。 「つまり、皆さんの仕事は素敵に無敵にヘブンに有頂天な解放パンデミックに殴り込み、彼等を正気に戻し、混乱を収拾する事です。尚、ミイラ取りが一先ずミイラになる可能性はやみ調べ九十七パーセント!」 「おい……」 リベリスタは頭痛を禁じ得ずにこめかみを抑える仕草をした。 そして、重要な情報がこの依頼から抜け落ちている事に気が付いた。 「そう言えば、その『リベリスタ』って……」 「田辺正彦さんっていうハートエイク系リベリスタですよ」 「うわぁ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月17日(金)22:52 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●このシナリオの登場人物は実在の人物に多分関係ありません。 人間とは真に高度な社会性を備えた唯一の動物である。 本能や生まれついてのそれ以上に知性で、理性で己が行動を抑制し、より集団で円滑に過ごす為の術を身につけている。否、十数年における教育課程と『予行演習』でそれを身につけようするものだ。その『程度』に差こそあれ、大抵の人間は人間以外の動物に無いレベルで己を律する事が出来る。フィクサードが『きばのないけもの』と嘲るその事実は『爪牙が無いが故に人間が培った美点』である。 「……ああ、酷い有様なんだよ……」 尤も――高度な社会性を構築出来るという事実は『抑圧されない』という事実とは全く異なる項目なのだ。白昼の駅前に広がる『惨状』を見た『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)の口を全く重苦しく突いたのはそんな言葉だった。 「現代におけるストレスは深刻な問題だね……」 形の良い眉をハの字に寄せて複雑そうな表情を見せる彼女が言えばその台詞も説得力は十分だろう。 人間は『真に高度な社会性を備えたが故に己を抑圧して生きている』。生きる為以上に多々な理由を置いて『したくない事をし続け、したい事を我慢する』のもやはり人間が人間であるが故だ。 「ねぇ、アークってこんな組織だった? 巷では楽団がどうとかでシビアな戦いをしてた筈なんだが…… ……私がブリーフィングルームに行くと、だいたいろくでもない仕事なのは気のせい?」 頭痛を堪えるようにこめかみに指を当てて言った『黒猫』篠崎 エレン(BNE003269)が口にしたある種やり切れない感情の一部を人は『ストレス』と呼んでいる。まさに今生まれ出でたその瞬間と言えるだろう。 「うわぁ……」 冷静沈着な『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)がそうとだけ漏らした光景はエレンが言った通り今日、リベリスタ達が解決するべき『事件』の存在をハッキリと告げていた。さりとてそこには一目にして『悲劇』も『凄惨』も存在しない。十一人のリベリスタが駅前で見たのは革醒者の集団が歌えや踊れやそれ以外やらの――何とも見ていられないような風景(じょうれいいはん)の数々だった。 「一番! 田辺正彦、リクエストに応えて歌います! 『銀河寝袋伝説阿頼耶識』!」 酩酊したように赤ら顔をしたクソ真面目そうな眼鏡の青年が何かを解き放っている。 「えへへ、しいな楽しい気持ちになってきたのです。たのしいな、あやしいな」 傍らでは妙な幼女が頭上で寝袋をスイングして踊っている。 「えへへ、そこのお姉ちゃん、スカートめくってもいいですか?」 何故か混ざっている股間に天狗面のフィクサードは扇子を片手に通常営業で、 「俺は伝説を作るんだ!」 「もうモブリスタなんて呼ばせない!!!」 「いぇーい、お母さん見てる!?」 『本部で見た顔』の数々は口々に騒がしく焚き火をするわ、ビルによじ登るわ、上半身裸になって立ち入り禁止の噴水に入るわ、やりたい放題に世間様にご迷惑をかけ続けていた。 ちなみにあさこは愛の為に走り去ったらしい。可愛いよあさこ。←名指し 「ええと、これ、どうしましょう……」 本気で困り果てた様子の『Clumsy thoughts』リッカ・ウインドフラウ(BNE004344)はアークにやって来て日が浅いフュリエが故に――逆説的に言うならば『染まっていない』と言えるのではなかろーか。 この状況を手っ取り早く説明するには『塔の魔女』アシュレイの言を引用するのが早いだろう。 ――『魂の解放』は所有者を含めた人間の鬱屈を解放し、心のままに行動させてしまう傍迷惑で都合の良い品物です。ちょっと倫理観や常識が麻痺してしまったりするので軽く問題を生じさせる代物なのは違いありません。ええと、そのリベリスタの方も魂を解放(リベレイション)しちゃいまして。日頃のストレスを思い切り発散してしまったのです。色々と! 「なんということでしょう! 主よ、これがあなたが望んだ世界だというのですか! いえ、このようなものを世界とは呼べない。合体事故確実の魔女の釜ではないですか!」 「やだ……開放されたらアタシがどれだけ聖女かバレちゃうじゃない……恥ずかしいから隠してたのに><」 何処と無くメルヘンを思わせるディアンドル姿で『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)が嘆きに嘆く。『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)の聖女発言(笑)は後宮シンヤにでも草葉の陰から「異議アリ!」して貰うとして。 「では、私、準備がありますので後ほど……」 準備って何ですか、アーデルハイトさん。 傍迷惑なアーティファクトが人間社会に混乱を招く事は多々あるが、(約一名を除いて)リベリスタが神秘を露呈させてしまう(?)のは忍びない。正彦以下三人のリベリスタ(と一名のフィクサード)のしょうもねぇ対処に急行したアーク構成員が返り討ちにあったのならば、もう頼れるのはエース部隊以外に存在しなかったのである。 「馬鹿な男達はどうでもいいけどシーナちゃんは早く正気に戻してあげないと。 でも何してるんだろう? 幾ら回って回ってても円広志の夢想花じゃないだろうけど。 でも可愛いので写メは撮っとこっと……」 「兎に角、騒ぎを収集して全員沈黙(意味深)させましょう」 アンジェリカの手によっても増える記録。街多米 生佐目(BNE004013)の身も蓋もない発言に頷く仲間達。 正彦の持つ『魂の解放(リベレイション)』が何時その牙を剥くか分からない以上は仕事は手早く済ませるに限る。全くそれは事実を正鵠した冷静かつ賢明な判断と言えるのだが―― 「取り敢えず、縞ぱんを二枚重ねで履きました。マジ暑いんですけど、今年の五月! クッソいい加減な天気予報、いい加減恥ずかしくないの!?」 ――自爆しそうな真夏日は確かに『おかしい人々』を遠巻きに見つめる一般人の皆さんに神秘を思わせない認識のヴェール足り得てはいるのだが、暑いもんは暑いので彼女に抗議させるに十分だった。 「わりといつも心に忠実な俺がさらに解放したらどうなるか! ふふふっ、面白くなってきましたよ……! 要するにアレだろ? リベレイションの免罪符の名の元に好き勝手やっていいんだろ? ひゃっほい! スカートめくるぜ! どうせ何しても面白おかしく殺されるんだろ! ならばやったもん勝ちさ! はいはい! 皆さん! 只今映画撮影中ですから大丈夫ですよ! ノー通報で! 作戦ですからね! ノーピーチでフィニッシュです!」 「うわぁ……」 「いぇあ!」 二度目「うわぁ」だけで全ての心を吐露したミリィが茹ったテンションで叫ぶ『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)を見てはいけないものを見るような視線で眺めていた。 「と言うか……ですね。仕事前に竜一さんから渡されたアレ、如何すればいいんでしょうね?」 「今日は縞パンを結城君に穿かされちゃいました。 穿くためにあの小坊主から一万GPをがめました。あのこちょろい」 ミリィに答えた不良聖職者――『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)における縞ぱんと金品授受のアヤシイ関係(はぁと)は置いといて、予め「これは激しい戦いになるだろう」と予見したこの獅子身中の虫(重傷予定)は仲間の何名かに『縞パンfeat.DT』なる下着を送りつけるという暴挙にいたったのである。この男の恐れるべき所はアイテムマジで作って送り付けて来る事である。 沙織ちゃんにパンツ送ってどうして欲しいのよ><; 「さあ! しーなあああ! かわいいよおお! 大丈夫! オレに委ねて!!!」 「ぴぃ><; たのしいな、おいしいな……」 「竜一きもすぎわろた。ワロタ……」 「あの、つかぬ事をお伺いしますが……これ、いつものことなんですか?」 今の所、アーティファクトの影響下に無いにも関わらずリベレイションしている彼の姿はシャドーボクシングに余念が無い『清廉漆黒』桃子・エインズワース (nBNE000014)さえ殴るに躊躇わせ、立ち入り禁止のテープを張って、カメラを構え――偽装(笑)に努めるリッカさえもドン引かせるギャラクティカな性能である。閑話休題。 ――「遊ぼう」って言うと「死亡判定の可能性があります」って言う。 「ばか」って言うと「フェイトが減ってる」ってなる。 「もう遊ばない」って言うと「楽しそうな依頼」が出る そうして後で、また予約して 「殺す」ってなると「残念だったな」ってなる こだまでしょうか。いいえ、誰でも。 「大変な事になってるねー★ シーナちゃんの思い出もちゃんと撮影してあげないとねー」 「お仕事ですね。こだまならしかたありませんからね」 ポエムめいた『泥棒』阿久津 甚内(BNE003567)にうんうんと海依音が相槌を打つ。 「でもこれどうやったら収拾できるのかしらね、まじで! まぁ、きっとなんとかしてくれるでしょう! 沼の妖精さんとかが! たぶん!」 久嶺の台詞は酷い他力本願だったが、世の本質をズバリと突いていると言えなくも無い。 だが、まぁ、それは要するに「ねこたんすきにして///」って意味でいいんだよね? 「えっ……」 えっ…… 「しーなは回収しないとまた、心の闇がこれ以上蓄積しないうちに助けないと! 悪い大阪のチンピラから助けないと! ところで田辺正彦って誰でしたっけ? Masahiko tanabeなら知ってはいるんですが……」 「又、そういう事を言う! アイツマジで一発叩く!」 歌ってる正彦が海依音の言葉に今日日見なくなった分かり易い地団駄を踏んでいた。 ●解放(リベレイション)! しなやかな女のシルエットが白昼の駅前に躍動する。 銀糸のような長い髪を靡かせ、流麗なる流し目はカメラ目線だ。 銀色の懐中時計(アクセス・ファンタズム)が強過ぎる五月の日差しを跳ね返せばおかしい人……じゃなかった黒地に銀の装飾、宮廷風の衣装で上下を固め、ヴェネツィアマスクを装着したアーデルハイトがそこに居た。 「混沌の沼より来る悪の組織BNE団! 闇に蠢き夜を乱す獣どもは許さない――美少女吸血姫デア・ズィルバーン・モーント! 満ちて輝け、白銀の満月!」 「なんだってー」 仲間も含めた一同から棒読みの歓声(?)が上がり、通行人は携帯の写メールで彼女の姿を写している。 態々近くのビルまで登って派手な登場を決めた彼女が動じていない事実は恐るべき現状を告げていた。 「ボクだって」 ぽつりとアンジェリカが呟き声を漏らした。 「ボクだって、ノワールオルールになればシトリィンさんのような立派な胸になると思ったのに! どうしてボクはぺたん娘のままなの? 胸がある人が憎い。巨乳滅ぶべし! そうだ、きっとボクの乳成分を皆が吸い取ってるに違いない! 全部やっつければきっとボクの番に!」 先程までは冷静だったアンジェリカがぐるぐるの目で煮えた主張を開始した事実は恐るべき未来を告げていた。 即ちそれは―― 「ハァハァ、お姉様あああー! 紅葉お姉様あああー、愛してる! オ゛ネ゛エ゛サマ゛ァー! なんでこの場にいないのか! お姉様は! いないのか! 毎回こんなこと言ってるような気がするんだけどね! いればもう、もう……ええ、あっはァン! これ以上言えないわぁ! せいよくもてあます! この思い止められない! これはお姉様の、お姉様の! くんかくんかんがっ! ぐふうへへへ! オッホゥ! アァー! お姉様、お姉様ぁ! ハゲシスギマスワァ! Oh、Yes!!!」 ――竜一から受け取ったパンツをもぐもぐしながら悶える聖女(笑)の姿を確認するまでも無く、『魂の解放』は空気感染で爆発的に広がるという厳然たる『結果』であった。シナリオの都合とか尺の問題とか言ってはいけない。何故か笑顔で久嶺にサムズアップする桃子が満足そうなのも含めて戦い(?)はのっけから酷い事になっていた。 「……一体、これをどうしろと」 比較的冷静さを保つエレンが自分が何かするより先に強烈に悪化を始めた状況に難しい顔をしている。 彼女のこめかみ辺りに浮き上がる青筋は腐れ縁の飲み仲間から激励に受け取った紙袋の所為でもあった。 ・メイド服(ミニスカート、尻尾用の穴も完備) ・ニーソックス(白) ・ローファー 解き放て、に対する解としては何を言わんとする所であろうか。 「……今度殺す」 暗い目で呟いたエレンも後方支援はそんな具合で、仲間の具合はくんかくんかふんすで溜まるものがあるのかも知れない。 「やっほー! らるとん! 今日も人傷つけてるーぅ(↑)?」 「ほぐぅ!?」 やたらなテンションで旧交を温める甚内がらるとの天狗面を凍った拳でかち上げた。 ニコニコ楽しそうな様子はそのままにのたうつ彼を指差して笑う甚内は実に楽しそうである。 「たまにはイベシナの一つでも出そー? 皆待ち望んでるよー」 「で、でも通常シナリオの方が得意だし」←イベシナあまり出さないのでそうなのかな、と。 「患者さん増えてるからねー」 「もぐぅ!?」 追加の一撃にゴロゴロ転がるフィクサードに構わない彼はマイペースそのものだ。 「まー皆大変なモンだよー。生きるってそういう事よねー解るー★ masahikoも困ったね。えーと、対応班の連中も死図化にさせるんだっけー? ワーオ!」 股間が冷温停止するらると。キョロキョロと地獄絵図を見回して怯まない甚内。彼の言をより正しく補強するならば『対応班に加えて今一緒にやって来た仲間の後始末も必要』なのは確実な所である。 「て……、天狗とか、何処に身に付けているんですか!? すけべっ、えっち、らると!」 紅潮した顔を両手で隠し、指の間から仰向けに動かなくなったらるとの天狗を眺めている。 そんなミリィはと言えば、全身から少女らしい可愛らしさを発揮したと思えば、 「全力で撮影するぜ! ほら、映画撮影中だし! 斜め下からのアングルで! 見えそうで見えない感じで! あ、でも、スカートめくるけど! 俺がなんのためにシマパンを送ったか。シマパン普及のために、どれだけの時間を費やしてきたか。 見知った顔の誕生日のたびにシマパンを送りつけて、はや半年。 シマパンテロと揶揄されながらも、俺は俺の生き様を貫くべく! ただひたすら、純真に、無垢に、真っ直ぐに!走り続けるのみ! 地道な努力がいつか大輪の花を咲かせると信じて! 俺はただ一歩一歩歩み続けるのみだ! そう、全ては、依頼のために!」 「……騒ぎを起こしている彼らもそうですが、竜一さんもアレをコレした方が良いのではないでしょうか。 寧ろ〆ます。一発のアブソリュート・ゼロは誤射ですね?」 めたくそ冷たく呟いたりもしているのだ。 ――時に竜一君、うぬたんは? 「勝負下着として彼女に送ったんだけどさー。ぜんぜん履いてくれな……」 「黙れ、童貞!」 「げぅ!」 何だか全てを焼き尽くしたくなってきたミリィを代弁するように桃子の拳が熱く語った。 「だが、誤射や沼の妖精さんとかにも負けるものか!」 「今日はしぶといんですね。何時も(退場が)『早い』のに」 「やめろよ!!!1!」 gdgdにgdgdを重ねた酷い光景は皆が皆自分勝手を極めている。 「ボクの乳成分を返して!」 目のアレなアンジェリカがその辺のおねえちゃん(巨乳)を追い回す。 それでも桃子だけを綺麗に避けたのは本能のなせる業だろうか? 「聴きなさい、冥府への葬送曲を! アイン・シュヴァルツェス・レクイエム!」 一方でポーズを決めて何か特殊効果を放つ『特撮のおねいさん』に歓声が上がった。 「――私はね、正義の味方になりたかったんです。 歳月を重ね、経験を重ね、人は理想と現実を知る。それでも―― 闇に棲まおうと、光に憧れることもある。太陽が無くては、月は輝けないものなのだから。 ねぇ、一度はやってみたいでしょう? 魔術師なら! 女の子なら!」 ハートキャッチ★アーデル。 「こういう時はどうしたらいいんでしょう……シェルン様、私たちをお導きください」 大きな瞳をうるうると潤ませたリッカがストレス社会の現実の前に神頼みをし始めた。 そんな彼女の見つめる戦場(?)はそれぞれがそれぞれに悲惨に悲惨を極めていて―― 「海柘榴シーナ可愛いよ! 幼女可愛いよ、うへ、うぇへへ!」 ――おねえさまのみならず、寝袋を抱きしめてガタガタと命乞いをする幼女に久嶺の魔の手が迫っていた。 本人も一応美少女なのにまず涎を拭け、話は全てそれからだ! 「何か解放されればいいみたいですね! とりあえず、近くの店でカレー粉とありったけのスパイスを買って、準備はオーケー。 全部ブチ込んで水で煮込む、イイ感じの煮汁を空き缶に注いで、空き缶をビニール袋へ。 で、後はシンナーの要領で。ブラックカレーの要領で解放されます、スパイス・イズ・プラァ~ントゥ、神様はいる!」 何処と無く問題発言をかます生佐目の頭は煮えていた。 「儂の頭の中、すっかり黒死病じゃけぇのぅ! 今人生を無駄にしている貴方。これからは、おとうさん、おかあさん、のうないよめ、みんなのために、いきようね! まぁ、どうにもならなくても、ほっとけば、どうせ桃子さんが何とかしてくれるんでしょう? あの人、普段何してるか知らないけれど、もう十九なんでしょう? もしかしてニート? いつまでカラスのビーストハーフのケツ追っかけてるつもりなの、実の姉にその感情、恥ずかしくないの? まぁ、よくわからない人ですが、何とかしてくれるでしょう。 大丈夫大丈夫、ヘーキヘーキ、ハイ、よろし――」 「――年収二億パンチ!」 「ブゥ!?」 言いたい事を好き放題言った彼女の腹に亜光速の衝撃が突き刺さる。 「たーまやー……じゃない! 聞いて下さいよ!」 空高くカー田飛びを見せた生佐目の軌道を見送るだけ見送った海依音が「フゥ!」といい汗をかいた桃子をがっくんがっくんと揺らし始めた。 「もう海依音ちゃんちょー可愛いのに不思議と! このリア充だらけのBNEにおいて全くもってモテないとかおかしいとおもいません! くろくてはねのはえたかわいくてむがいなねこたん! みんな大好き巨乳シスターで清楚な三つ編み、目元の泣きぼくろは情が深いという九蓮宝燈的美少女なのに! おまけに穿いてない属性まであるんですよ!今回穿いてるけど! 彼氏ほしいの! 金持ちの! 理想が高いと言われようとそこだけは譲れません! 桃子君!そうでしょ!?」 「えっ、でもももこさん、年収は単に男の実力を見る為の物差しにしかしてないし……」 「突然、梯子を外すのやめませんか!!!」 「ももこさん、最後は愛が大事だと思いますし……」 「私! だって! 愛は重要ですよ!!!」 アラサー乙女(笑)の結婚観は哀れなので見逃してあげる事として。 繰り返す。gdgdにgdgdを重ねた酷い光景は皆が皆自分勝手を極めていた。 「ふふふ……、楽しくなって来ましたよ! 逃げられるものならば逃げて御覧なさいな!? ……ハッ!? わ……私は一体何を……って言うか楽しくなったらダメですよね!? でも、楽しい……こら、シーナさんをそれ以上撮ってはいけません!」 零下の視線と神気に逃げ惑いながらしつこい竜一にサドっ気を見せたミリィが声を上げる。 彼女にとってシーナは特に守らなければならない保護対象だ。だって好きなんだもん。シーナ。 椿しいな。かわいいよ、しいな。大好きだよ、しいな。(プレイング直訳機能つきリプレイ!) 「こ、こらあああああ!」 抗議の声を上げる可愛いミリィ。トムソンしちゃう。 「こ、こんな所に居られませんっ! 私はシーナさんと対応班の皆さんを助けて帰らせていただきますっ!」 漸く沈んだゾンビのような竜一からシーナを奪還したミリィが力強く宣言した。 日和って心のフェイト使用とか書いた彼だから今回は何回かドラマ復活したんじゃないの多分。←どうでも良さそう 「き、きっとシーナちゃんは良い子だからこれで我に返ってくれる筈……」 おれはしょうきにもどった! と言わんばかりのアンジェリカが自前のバイオリンで『遠き山に日は落ちて』『夕焼け小焼け』を奏で出す。周りの無関係な人々が「うおお、母ちゃん!」と郷愁に誘われて泣き出した。 当のしいなじゃないシーナはと言えば…… 「そらをじゆうにたのしいな!!!」 等と供述し、また寝袋を振り回し出す。 正気と狂気の狭間で笑いの神とダンスし続ける革醒者達。 「……そういえば、昔ちょっとだけ、可愛い服を着てみたいとか思ったっけ……」 そう呟いて『しまった』――言い残したエレンが取り返しのつかない衝動に飲み込まれた。 「れっつ☆生着替えにゃん!」 後で知ったら死にたくなる事請け合いの萌え媚び全開二十九歳が猫耳猫尻尾のミニスカメイドなぞとゆーものを爆誕させればむべなるかな。『空気感染』はやがて大量に集まった野次馬達にも感染し……常識的に考えてやがて集まってきたK察の皆様まで巻き込みに巻き込み倒し。 「うん。そーなるよねー。なると思った。全く後片付けする気ないよねー? ねこたん!」 「はい、かーっと! お疲れ様でしたー! お願いだからお疲れて下さい!」 甚内の的確な指摘の通り雪崩の如く場の全てを飲み込んでいく。 リッカの健気な抵抗は無力で無駄で、皆の社会的フェイトを守ろうとする姿は涙なしには語れまい。 「俺だって別に後味の悪いシナリオばかり運営したい訳じゃねえんだよ!!!」 歌うだけ歌って満足した正彦(結構上手い)の主張が彼の望む世界とは程遠いダメ空間に木霊する。 世界は今日も残酷だった。でも正彦、世界も皆も君が思う程、君に冷たくないんだぜ? えーと、事件は飽きた頃片付きました。完。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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