● もしゃもしゃ、もしゃもしゃ。 この世界の生き物で一番近いのは、羊だろう。 もしゃもしゃ、もしゃもしゃ。 ぐるぐると巻いた角。横向きの三日月の目。突き出した鼻面。もこもこと体を覆う嵩のある毛皮。 もしゃこしゃ、もしゃこしゃ。 毛皮の中から、三対六本の二股のひづめを持つ足。 もしゃこしゃ、もしゃこしゃ。 ふかふかした毛皮は唐突に途切れ、赤剥けの腹が大きく膨れ上がっている。 びくびくと蠢動するはちきれんばかりの皮膚の下。 網の目のような臍帯でぶどうの房のように繋がれた、数え切れないくらいの数の楕円形の肉の殻の中に、もぞもぞとうごめく幼生が透けて見える。 たっぷりとした羊水がそれらを包んで、外敵から守っている。 上半身の四倍もあるそれを引きずりながら、羊の上半身に女王蟻のような肥大した腹部を持った異界の生物は、見渡す限り全ての物を食べつくそうとしていた。 彼女のかわいい子供を生むために。 かわいい子達の美味しい養分になるために。 ● 「玉ようかんって知ってる?」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がテーブルの上に玉ようかんを置く。 風船の中に入った丸いようかん。爪楊枝でつつくと風船がわれ、ぷるんと中のようかんが現れる。 「今回感知された排除対象。大体そんな感じ。中は水羊羹より水っぽいけど」 いただきますとリベリスタ達の爪楊枝を持つ手が止まった。 「アザーバイド。体長五メートル。羊に類似した部分が1メートル。後は腹部。雑食。何でも食べる。異常な食欲。目に入るもの全て食べる」 イヴは、モニターをつける。豊かな草原。もしゃこしゃと草を食む羊。 カメラがパンする。荒涼とした荒地。肥大した肉の塊。 食べた草が、全て胎児の滋養になっているのだ。 「すでにD・ホールは閉じられた。残念ながら、送還の手段がない。大変危険だけど、討伐して欲しい。このまま放置しておくと、この羊もどきが何百単位で生まれる。植物はもとより動物も危険。軍隊蟻のようなもの」 巣を持たず、隊列を組んで前進し、目に付いた獲物には集団で襲いかかる獰猛な習性を持つ。 モニターに映し出される、大型昆虫に群がり跡形もなく捕食する様子に、リベリスタは眉をひそめる。 「幸い、D・ホールを越えてきたのは、この女王蟻の相当する個体だけ。今なら幼生は育ちきっていないから、女王を倒せば大丈夫」 モニターは、羊もどきの下腹部のアップ。皮膚の下が液体ではちきれんばかりになっているのが見てとれる。 「このおなかのせいで、ほとんど動けないと思っていい。攻撃手段も噛み付くくらい。上半身は、非常に堅固。もふもふの毛皮が物理ダメージを軽減していると思われる。だから、攻撃するならおなかの方なんだけど……」 ただ。と、イヴは続ける。 「この液体が問題。滋養たっぷりらしいんだけど、わたしたちにはすごく刺激物。皮が柔らかいから、わずかなダメージでも、この液体が飛び出してくると思う。かかったらダメージを覚悟しなくちゃいけない」 イヴは、モニターを消した。 「戦い方は、編成されたチームに任せる。がんばって」 一拍おいて、イヴは、小首をかしげた。 「みんな、ようかん、嫌い? おいしいよ?」 イヴは率先して、ようかんに爪楊枝を刺した。ぷるんとゴムの皮が剥けて、甘い蜜が飛び散った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年07月06日(水)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● (広い草原と草を食む羊。余計なアレが目に入りさえしなければピクニック気分が味わえ……) 『薄明』東雲 未明(BNE000340)は、ギリギリ「余計なアレ」が目に入らぬようを角度を調整しつつ、現実からに逃走を図ってみた。 (うん、無理、キモイ、普通にグロイ) ぶよんぶよんと波打つ肉製水枕。 攻撃すると、酸を撒き散らすのが非常に厄介だ。 それを視界から排除するとしても、どうがんばっても、肩から生える六本足が目に入る。 (うーん、この外見はうわぁ……だね。絶対夢に出てくるよ……) 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)も、表情が曇りがちだ。 「玉羊羹はうめぇんだけどなぁ、あれはちょい気持ちわりぃなぁ」 井上・輝紀(BNE001784)も苦笑する。 (とりあえず最大のもんだいてんは「アリだー!」と「サンダー!」のどちらをさけぶかだねー) どっからどうみても、悪役の得物。 呪われてないか心配になる禍々しい外見のハルバート・アンタレスを抱きしめて、『キーボードクラッシャー』小崎・岬(BNE002119)は、周囲を見回した。 (ふうけいが寂しくなっちゃうし、ざっそうは強いといってもたべられつくすまでにぼてくりこかしたいところだよねー、このブヨブヨ) 「薔薇」って漢字で書けるけど、「風景」は書けないお年頃だ。 「帰る道を無くした迷い羊はアレかしら?」 『ヴァルプルギスの魔女』桐生 千歳(BNE000090)は、薄く笑みを浮かべている。 (アザーバイトさん! いつ見ても変なの! ……敬意をこめて変な羊とでも呼びましょうか?) その呼び方で敬意が示されるのかは甚だ疑問だが、千歳は高揚しているように見える。 「零六、倒すなら、ルカと競争しよう。どちらが、最後の一撃、だせるか。力の零六、速さのルカ、どっちかな」 『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495) は、アリヒツジを同属と認識し、なおそれを殺す不条理と戦うことを愛している。 『人間魚雷』神守 零六(BNE002500)は、ライバル登場に心が高鳴った。 女子中学生に勝負を挑まれる。ここで受けなきゃ男じゃない。 うおぉ、すごく主人公っぽい! 「面白いじゃねーか、ルカルカ! その勝負、受けて立つ!」 パイルバンカーの先端が更に鋭角に変形する。 「行くぜ、デスペラード! フォルム・ギムレット!」 錐のように細くなったそれを担いで、零六はアリヒツジに突貫した。 ● 「初めまして! 自分は桐生千歳です! アナタを潰しに来ちゃいました!」 少し早口でまくし立てるように自己紹介を済ませると、千歳はいそいそと魔法の矢の呪文を詠唱して行く。 (母親なのね? 素敵! 子のために躍起になる滑稽なまでの無様な姿を見せて?) のた打ち回る姿が見たくて仕方ないのだと、フードで隠した高潮した頬と潤んだオッドアイが言っている。 「んふっ」 矢が光の尾を引いて、肉の袋に穴を開ける。 思っていたより遥かに頼りない手応え。 そして、傷つけたものを許さないと呪いのように千歳に向けて酸の弾丸が打ち込まれる。 しゅうぅぅぅ……と音を立てて、千歳の導師服が焦げ、皮膚が焼け、肉がいやな音を立てて爛れる。 「怪我しちゃった……。自分、こんな危ないものと戦ってるんだ……」 うっとりと、千歳の唇に笑みが浮かんだ。 「食い意地に続いて体液も汚いか。……最悪だな」 見た目はなかなかかわいいのに。と、言いながら、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は細い指を何度も組み替え、印を結ぶ。 「まだ、私は経験不足…だが援護ぐらいは可能だ」 そう言って、仲間の守りを固めるための結界を張る。 「さーて、さっさとたおして帰るよアンタレスー」 岬は大事な相棒に話しかけ、まだ不釣合いに大きな、さそり座の星の名を持つ斧槍を振りかぶる。 流れてくる岬のオーラを飲み込んだアンタレスの赤い一つ目が大きく見開かれた。 光が溢れるタイミングを逃さず、岬が赤い肉の塊にその切っ先を叩きつける。 びしゃっと音を立てて噴出す酸を巧みに避けて、回避した。 「離れてるから、どーんといってみよー」 そのまま、仲間の打撃の巻き添えにならないように背後に飛び退る。 「タフなだけが取り柄、か。俺の力を見せつけるのに打ってつけの相手だ!」 まってましたと、零六が駆け込んでくる。 突き抜けそうに青い光が、赤黒い肉の底を貫くように打ち込まれ,袋の中身を内部から蹂躙する。 悲鳴のように酸が勢いよく噴き出し、周囲の地面がじゅじゅっといやな音を立てた。 「へ、へへへ……。大して痛くはねえよ」 捨て身の大技と酸で自身も傷を負いながら、零六はそう嘯いた。 ライバルのルカルカが、そのトップスピードを上げたのが見て取れた。 泣き言を言うには、早すぎる。 ● 「羊、羊、可愛い羊」 に戯言を口にして、ルカルカは地面を蹴る。 誰も止められない速さ。振るわれる腕は常人の目には見えない。 (この子お母さんなの? このせかいで育てるの? この世界の生き物じゃないのに。理不尽) 手につけられたかぎ爪が、容赦なくアリヒツジの腹をえぐっていく。 その衝撃に比例して、辺り一面に吹き上がる大量の酸。 「攻撃も回復もはいぶりっどにこなせる私ならではの仕事っぷりを見せてあげるよ!」 ウェスティアの詠唱で、体のほとんどが焼け爛れていた千歳を筆頭に、全員の傷が柔らかな旋律に癒されていく。 「子どもの為に頑張るお母さん羊には悪いけど、こういう生き物が闊歩する世界になったら嫌だし、討伐させてもらうわね」 全身からあふれる闘気を雷撃に変えて、後方から近づいてきた未明が鉄槌を振るう。 電撃で瞬時に沸騰した体液が、薄い皮を破って辺り一面に降り注いだ。 面白いようにアリヒツジに攻撃が当たる。 そして、報復の羊水が、ざぶざぶと無尽蔵にわきあがってくる。 蹂躙される下腹部を気にする風もなく、羊は草を食み始める。 草さえ食んでいれば、何の問題もないのだと言わんばかりに。 「凍ればシャーベットになるか、試してみるか」 ユーヌは、長い間集中していた。 仲間の攻撃で降り注ぐ酸の中、皮膚や髪を焦がされながら、術の精度と練度を整える。 狙い済ました正確さで、羊の頭にだけ氷の雨が降り注ぐ。 濡れそぼつ毛先に白い氷の玉が出来、長いまつげからピシピシと音がする。 半ば凍りついた口はそれでも止まらず草を食み続けている。 「さて、時間もねぇし、一気にいくぜ!」 輝紀の鍛え抜かれた筋肉がたわめられ、幅広い刃が100キロ超の加重を加えられて叩きつけられる。 「玉羊羹はうめぇんだけどなぁ」 はじける酸の洗礼に、小さくぼやく。 未明の渾身の一撃が、肉の袋のみならず、中の幼生も押し潰す。 もとから、子供ごと思いっきり潰していくつもりではあったけれど。 「でも流石にちょっと、罪悪感感じちゃうわね」 白く細長いぶよぶよした塊が衝撃で引きちぎれ、地面に転々と転がっている。 自分たちがアリヒツジのみならず、数え切れない命を潰しているのだという感触。 しかし、看過することは出来ない。 彼らが、世界を守ると決めたリベリスタであるが故に。 「これは、骨が折れるお仕事ね……」 千歳が呻いた。 前衛による激しい攻撃は、後衛にも酸の雨をもたらす。 結界や集中に勤め、攻撃回数が少ないユーヌや、回復に努めるウェスティアに比べ、魔法の矢を射続けて報復を受けた消耗は、後衛の中でも群を抜いて激しい。 体を蝕む酸に、千歳の体は限界を訴えている。 やむなく攻撃の狙いを上半身に変更し、体力の温存を図っていたが、徐々に意識が遠のいてくる。 「ああ、こんなにぼろぼろになるまでがんばる自分……」 なんて素敵なの。 もはや、温存していた魔力を使うこともないまま倒れてしまうだろう。 「子のために食べる母親。その狂気じみた愛、素晴らしいわ」 最後の力を振り絞り、千歳の魔力は、魔曲の名を冠する恐るべき四色の光に変換される。 「でも駄目ね、場所がイケナイ。せめて安らかに眠れますように……」 千歳の手から、四色の光が放たれる。 羊の腹が青黒く変色し、だらだらと赤い体液が漏れ、草を食もうとする顎ががくがくと痙攣する。 「んふ……っ」 アリヒツジに魔法が完全な形で掛かったことを見届けて、千歳はその場に崩れ落ちた。 岬、輝紀、零六と重ねる攻撃は、確実に大きなダメージをアリヒツジに与えていた。 それに比例するように降り注ぐ酸の雨は、リベリスタ達が想定していた以上に広範囲に降り注いだ。 集中するためにできるだけ離れていたユーヌの上にも、容赦なく。 防具の隙間をすり抜け、生身の体を内側から蝕む毒の側面を持つ酸から身を守るには、ユーヌの装備は余りに薄すぎた。 「守りの結界、途切れさせる気はない。薄紙程度の効果は期待できるだろう……後は任せた」 印を結ぶ指から力が抜ける。 「虫けらのように啄まれてしまえ」 誰かが弱ったらかばおうとしていた零六からも遠すぎる。 すでに、ウェスティアは次の回復のための詠唱に入っていたが間に合わない。 かくんとユーヌのひざが折れ、酸の水溜りに突っ伏した。 降り注ぐ酸の雨に、ルカルカは小さく呟く。 「味方の攻撃で傷を負う。なんて理不尽」 だくだくと流れ落ちる酸に、靴底さえ悲鳴を上げる。 みながお互いの攻撃で、傷を負っていた。 ただ身を投げ出し、むしゃむしゃと草を食む。 傍若無人なアリヒツジから嘲笑されているような気さえする。 「キミがッ! メ~って鳴いても! 殴るのをやめないッ!」 岬がそう言った。 承知の上で、一気呵成に攻撃すると決めた。 戦うのを放棄するという選択肢はないのだ。 ● ルカルカの動きに更に加速が乗る。 「二度も切りかかられるなんて。理不尽だね、羊」 無駄をそぎ落とした結果、全く別の行動を取ることさえも可能にする。 しかし、相応の報復として、肉の袋は盛大に酸を吹き散らす。 たんぱく質の焦げるいやな臭い。 命が削れる音がする。 「俺はな、主人公になるんだよ」 零六は、振り絞るように言った。 急速に暗くなっていく目の前。 先ほど倒れた千歳やユーヌの姿が脳内でフラッシュバックする。 かろうじて開かれた目には、共に前衛で同じように酸を浴びているはずの仲間の姿があった。 未明は羊の血を啜りながら、体力と気力を維持していた。 輝紀は修練の賜物の頑健さと堅い鎧で酸の羊水をしのいでいた。 岬は酸が掛からない所まで下がることによってダメージを減じていた。 ルカルカは、持ち前のスピードで飛んでくる酸を見切って避けていた。 それぞれが自分の適性を見据えて成長した、それぞれの戦い方。 零六がまだ持っていないものだった。 零六は、唇をかみ締め、指が白くなるほどデスペラードのグリップを握り、なんとか自分の意識を保つ。 「今はまだ力が足りねえけどな。最終的には俺が主人公なんだよ」 膝に手を付き、根性で体を支えて立ち上がる。 「ライバルのとばっちりでダウンとかで倒れる訳にいかねえんだよ!」 ひゃはははと笑い声を上げながら、巨大な錐でヒツジアリの頭を貫いた。 ● よく晴れたいい天気だ。 ジャブジャブとあふれる羊水で、地面はとうにぬかるんでいる。 「そろそろEPやばい!」 ウェスティアの声に、一同の手が止まった。 そもそも、ここまで回復一辺倒になるとは想定していなかった。 ウェスティアが準備していたのは、大規模治癒詠唱。一度のコストがかなり大きい。 ここまでの長期間詠唱し続けられたのは、彼女が専業魔術士だからであり、ウェスティアが体内で気を練る術を持っているからに他ならない。 その彼女がEP切れに追い込まれるほど、戦闘は長期にわたっていた。 すでに、羊にかぶりついて補給し続けている未明以外の前衛のEPはとうにガス欠だ。 ウェスティアの回復抜きでは、下腹部への攻撃はリスクが高すぎた。 がちん。 羊の平たい歯が空鳴りする。 アリヒツジが届く限りの範囲の草を、全て食べ終えてしまっていた。 食べられる物は何でも食べる。 今度は、リベリスタが食べられる番だった。 ● いつ果てるとも知れない戦闘への苛立ちが、リベリスタの動きを鈍くする。 ウェスティアからの回復は当初の半分以下にまで減少していた。 めりっ。 羊の歯が、輝紀の足首を捕らえた。 鎧の関節の継ぎ目。装甲が薄いところ。 べきぼきっ。 鎧の上から噛み砕く鈍い音がした。 「ひゃっ、はははっ! ざまあみろ、ざまあみやがれ!」 零六は、酸を浴びながら連射の限りを尽くし、今度は立ち上がることは出来なかった。 毛皮と角に阻まれて、上半身に加えられる有効打がその骨身になかなか至らない。 噛みつきから逃れようと、飛び退りながら戦うならなおさらだ。 付き重ねてきた毒や出血、雷撃が少しづつアリヒツジの体力を奪っていた。 長い長い時間をかけて、当初の目標を遥か過ぎ、どのくらいたったのか誰も思い出せなくなった頃。 未明が振るった鉄槌の雷撃が、ようやくアリヒツジの横向きの三日月に似た瞳を白濁させた。 未明は、肩で息をしながら、電撃で爆発したようになったアリヒツジの毛皮にばふんと顔をうずめた。 「ようやくもふもふになった。今この瞬間だけ、この依頼受けてよかったって思えるわ……」 命を繋ぐ吸血のためとはいえ、ユーヌの氷雨で凍りついた毛皮に何度も顔をうずめていたのだ。 少しくらいは許されて良い。 「うん、でも下半身が目に入った瞬間受けなきゃよかったと後悔の念がっ」 茶化して見せる未明に、笑い声が上がる。 「未明が止めをさしたから、勝負は持ち越し。次は、理不尽って言わせてあげる。それまで修行。主人公だね」 ルカルカは、倒れている零六の手を取るとぶんぶんと握手した。 ● 今にもへたり込みたい体に鞭打って、倒れた仲間の側に駆け寄り、抱き起こす。 酸で満たされた地面に突っ伏していて、体に良い訳がない。 パクパクと唇を動かす仲間の口元に耳を寄せた未明とウェスティアが同じような顔をした。 困惑、もしくは今にも吹きだすのを我慢しているような顔だ。 「玉羊羹食べたいって……」 「こっちもそんなこと言ってる」 「……まじで?」 シャワー浴びたいと呻いていた岬は、うわぁ。と言う。 「その玉羊羹もどきにひどい目にあったのにね。不条理」 ルカルカのしれっとした物言いに、まだ動ける者たちはこらえきれずに笑い出した。 「買って帰ろうって言ってる」 「こっちもそんなこと言ってる」 戦闘が終わった安心感と仲間の意外な元気さに、一度あふれた笑いはしばらく止まらなくなった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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