●だが彼女は微妙に笑っている。 「ユニフォーム着てバット持った巨人が大暴れしてるので何とかして下さい!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月11日(土)00:14 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●OP出したら壮絶に四連敗して書き始めたら猛烈な四連敗が決まった件。 全くそれは憤怒に満ちた大地が拳を振り上げるかのようだった。 ――――『疾く暴く獣』ディーテリヒ・ハインツ・フォン・ティーレマン ●進撃の巨人 「だから……」 震える山に乾いた女の声が静かに響く。 「だから……ッ……!」 暴虐なる力の塊がどんな存在かを知りながら。 その力こそ隔たれど、かの『R-type』を思わせるかのような憤怒の巨人の『進撃』がどれ程のものかをある意味――誰よりも理解しながらも。その『ホーム』で十連敗位している事を知っていながらも。 「だから、GWの三連戦よろしくお願いしますって言ったじゃないの!」 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)の言葉は何ていうか酷い素に満ちていた。 元よりそこまで一生懸命に応援している彼女ではない。何を思ったか白と黒のユニフォームに身を包んだ彼女は一応地元出身のよしみで応援する赤い人達とは別のカラーを選んだ位なのである。 しかし、十連敗が十三連敗に伸びれば言いたくなる事もある。 何も記念的、歴史的セレモニーをカードに当てなくてもいいじゃないかと思うのも人情であろう。 「久しぶりに心情とかなんやら関係ない任務に参加できたぜ! 存分に得物を振るってやるよ! で、この巨人、某球団のマスコットか?」 今はイケメンなウサギです……という気楽な緋塚・陽子(BNE003359)への突っ込みは置いといて。 この日、巨人のエリューションフォースが発生し、人里を目指しているという情報は驚愕と共にアークとリベリスタ達の間を駆け抜けた。何某かの強すぎる思念を受けて実体化したというそれは極めて強力な膂力を持つ危険な神秘である。この進撃を阻止せんと集まった合計十四人のリベリスタ達は『彼』のルートを先回りする形で初期発生した山間部と目的地である中央町の間で会敵を果たすに成功したのだが…… 「でかいのうぱないのぅ…… 恐ろしいのぅ……しかしそんなに恐ろしくもないのう……何故じゃ……?」 『ガンスリングフュリエ』ミストラル・リム・セルフィーナ(BNE004328)に応えるならコメディだからさ。 「やきゅーじょーなるものでなにがおこるのじゃ。 野球トナ。しっておるぞ。テレビでちゅうけーとやらをしてたのじゃ。 しかし巨人と何が関係があるのじゃ? よくわからぬのう……」 そうだね。分からないね。全然さっぱりだね。 「アシュレイ担当の時点で碌な予感がしないな…… 街まで行かせるつもりはない。悪意には鉄槌……いや、今だとスキル的に聖剣か? しかし、思い起こせば昔親父がチャンネルを独占して中継を見てたな。 自分も見たい番組はあったが、選手のホームランや三球三振を見るとカッコいいと思ったな。 今じゃニュースや新聞でしか見なくなったな。 あとはTVの珍プレー好プレーとWBC。特に後者は色々と感動した。いや、この依頼には関係ないんだが」 「……なんでしょうか、勝てるイメージが沸きませんねこれ…… で、でもなんとかしないとですね! やれるだけのことはしましょう!」 何か昭和の原風景的なノスタルジーを感じる風合いにしみじみ言った『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)に、呟いた『鉄壁の艶乙女』大石・きなこ(BNE001812)の口元が心なしか引き攣っていた。 杏や晃のものと同じ白と黒のユニフォームに身を包み、棍棒を手にした巨人は絶大な存在感をまるで隠す事無く悠然と移動を続けていた。自身を阻む為に派遣されたリベリスタの姿にもその様子は変わっていない。それは余裕か? それとも大いなる傲慢なのだろうか? 「ぶっちゃけ、太平洋町のルメにとっては対岸の火事なんだけど……独走しようが知った事ではないの。 でもこっちも結構独走されてるんだけどね! やっぱり常勝は羨ましい……この妬みをぶつけてやるの。 十四日から太平洋町にも攻め込んでくるし、勢いを削いでおくのは悪くないし! どうでもいいけど、犬鷲に対する勝率がおかしくないの!?」 「私、埼玉方面の大型猫科のファンですの。 と言っても、熱心という程ではありませんわね。長く住んでいたので、身近に感じる故でございましょうか。 いえいえ、しかし同じ祭りならば楽しまねば嘘というもの。 今宵の惜敗の鬱憤、この巨人で晴らす他はありませんわよね?」 勢い良く拳を握った『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)然り、楚々と口元に手を当てて笑った『天邪鬼』芝谷 佳乃(BNE004299)然り。一応彼岸の事も気になるものらしい。 「それにしてもあの重量打線と俺達が噛み合ったらどんな事になってしまうのでしょうね」 烏の濡れ羽のような黒髪に着物姿の艶やかな妙齢の佳乃はその実、案外嗜虐的である。尤も、サディストとマゾヒストが表裏一体の関係を織り成す以上は――『どちらもイケる』と言った方が正解に近いのだが。余談ながら巨人は俺達が打て無い事に定評はあるのですけどもね。 「この依頼が出た瞬間四連敗した。沼の妖精さんは呪われている!」 言うなよ、ルメさん……書いてる今も四連敗してるんだよ…… ともあれ――相手がどれ程のものであろうとも食い止めるというリベリスタの意志は変わらない。 「だ、大丈夫。まだシーズン序盤やし、猛虎復活やし……神宮で三連敗したし! む、無敵とちゃうやろ……え? その巨人じゃない? ア、ハイ。でも」 縦縞の戦闘装束に身を包んだ『パニッシュメント』神城・涼(BNE001343)が自らに言い聞かせるように気合を入れた。 何、まだ焦る時間じゃない。兵庫県辺りの人々を殲滅する禁呪VYANENNも笑っている。 06年だって失速したじゃないか。だからきっと大丈夫。 「こう、頑張る! 憂さ晴らし的なサムシングも加えて! よっしゃこい! 伝統の一戦や!」 「強い巨人に対抗するためには、やはり強い対抗種をぶつけるべき! 幻想の種族! 『ドラゴン』を! ラノベだとすっごい強キャラよ、ふっふん! 赤いユニフォームとヘルメットを着用して来た! そう、私はどらごん! がおぅ!」 「大きいは男の浪漫でゴザイマスネ。大きい事は良い事だ。 さぁ戦争でゴザイマス。大胆不敵痛快素敵超常識的且つ超衝撃的に勝利シマショウ!」 『中二病になりたがる』ヴィオレット トリシェ(BNE004353)が『青いユニフォームを着なかった』のはフュリエが故か。『攻勢ジェネラル』アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)の言葉に頷いた仲間達はめいめい『それ』を食い止めんが為に動き出す。 「ちょっと其処行く巨人ちゃん! 貴方が本当の野球選手っぽい何かなら私たちの用意する球場で勝負だよっ! 行くわよ、それじゃあ――」 『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)の掛け声が僕の私の『ボールパーク』を作り出す。 陣地作成という名の理不尽は巨人の進撃を止める為のまず一つの策だった。 「――プレイ・ボール!」 ●こんなもんにまともな展開を期待してはいけない。 「いざゆけ 無敵の リベリスタ軍団~♪ いざゆけ 炎の リベリスタ軍団~♪」 何処か調子の外れた可愛らしい――即興の応援歌を口ずさむのはきなこである。 暴れに暴れる巨人とリベリスタ達の死闘は一回表から激しい乱打戦の様相を呈していた。 飛ばぬ飛ばぬと言われたボールも今や昔、日々各地で量産されるスコアの数々はまるでラビット時代を思わせる凄惨なものになっている。日本人の成績に限るなら然程大きな差は無いのだが、どうなっているんだ外国人。特に危険遊具は五十五本なんて軽くぶっちぎりそうな意味不明の領域である。 アレ誰か何とかしてくれよ…… 「全員で巨人の右足!右打者の軸足を集中攻撃 コイツ左打者だったらどうしよう……まぁ、どっちの脚が故障しても登録抹消だもんね、関係ないね! 貴様も某四十二番と同じ運命辿らせてやろう! BOWだけに!」←やめて><。 「お金もってていいわね。ぼんぼこスター選手そろえちゃって。そのホームラン、お高いんでしょう!?」 ルメの声に応えるように杏のギターが唸りを上げた。『魔曲』の名を冠する魔術を或る意味で誰よりも体現する彼女のピックは今日も激しく、情熱的に痺れるようなサウンドを作り出していた。 「結局、広島県民がアンタみたいな巨人嫌いっていうのはそういうところなんじゃないかしらね。 貧乏だし、補強出来ないし。広島の人は都会に行くっていったら何だかんだで大阪すっ飛ばして東京行くし――何だかんだで憧れてんのよ、広島人は、東京に!」 繰り出された四色の閃光が咆哮を上げる巨人の右膝――軸足に突き刺さる。 「かっこつけて『強い奴応援してもつまらない』とか言う奴居るけれど、勝ちたいに決まってる。地元愛なだけなのよ。ただ、照れくさくて単純に『広島大好きです』っていうのを声に出していえない県民性なだけなのよ。分かる、このもどかしい気持ち――」 まず打撃の礎となる軸足を集中攻撃する事を決めたリベリスタ達はここぞと連携を見せている。 「魔力のダイスをシュート! 藪からBOWに内角を突いて見せるぜ! だが、SYBSだけは勘弁な!」 これが正々堂々たるスポーツならば乱闘ものというか、番カラな黒い人が指三本立てて迫ってきそうなアレでソレであるが、恐らく十代位の読者少年少女を置き去りにするその辺は置いといて。きなこの翼の加護で立体的に機動力野球を決めた涼が往年の名投手ばりのシュートで右足を爆破(エグ)る。 「こう踏まれないようにしつつ! 透明な刃を抜いて! アレ!」 とってつけたような立体機動は辛うじてこれがBNEのシナリオですよと言い張る保険である。 「ヘッドを遠回りさせないように――最短距離でボールドインパクトでゴザイマス!」 断頭将軍(くびかりこん『ばっと』)はバットと呼ぶには余りにもえげつない得物であった。 「勝利をかけて! 命を懸けて! 鬨の声を張り上げて! 戦争だ、戦争だ! ураааа!」 何だか良く分からんが凄い気迫なのは確かだった。猛烈な連続攻撃にもまだ痒いと言わんばかりの巨体に大胆不敵、意外性の打撃を見せたアンドレイが右中間を深々と切り裂いた。ややバランスを崩した巨人が纏わりつく十一球団連合(自虐表現)をねめつける。 「ああ……決戦でこの巨人が大型の猫科の獣に弄ばれる姿を見てみたいですわ」 八十年代から九十年代に良く見られたトラウマもんのシーンをうっとりと夢想する佳乃である。右足を襲うまでは同じく態々小指と薬指の間をギガクラる彼女は『痛そうだからそそる』とまで述べる筋金入りのいじめっ子であった。 「ええい、取り敢えず止まれ!」 後方から硬球……じゃない光球を放ったミストラルの一撃が炸裂する。 「お主が、泣くまで、右足を狙うのをやめないっ!」 「暗黒は、コンパクトなスイングっぽく、ぶぅん!」 ネクストバッターズサークルからやや忙しなく飛び出したのはヴィオレット。 何処で聞いた知識か可愛らしい唇に立った葉っぱを咥えている。多分悪球打ちの魔力剣が唸りを上げてボールならぬ暗黒を間合いに迸らせた。そういやケチャップの会社みたいな名前のPとか居たよねぇ。 「それでもどんな相手でも――ここは食い止める!」 アシュレイにこの話をすれば面白がられるのは目に見えている。 しかし、彼女を敢えて楽しませる心算は無い――晃である。 「一気に叩く!」 強烈なリーガルブレードの打ち込みに巨人が揺れた。 鈍重な巨人を攻め立てるのはアジリティーに優れたリベリスタ達である。解説者は判押しのように鈍足だの機動力が無いだの言うけど最近の巨人はスタッツ見ると結構素早いんだけど、まぁ。その辺りは…… 「こちとら運任せが信条だ! チマチマ狙って叩くとかできるかよ!」 まるでサインはホームランと言わんばかりに『振り回す』のは乾坤一擲のクリティカルを戦闘信条に愛して止まない陽子であった。『心情傾向』なる枷から解き放たれた彼女は実に生き生きとくだらねー馬鹿依頼時空に躍動している。そう、まるで若手が溌剌としたプレーを見せるように。 「しかし、何と言いますかメジャーリーガーもびっくりでございますね!」 それでも手に残る鈍い手応えに『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)が呟いた。 重要な事はそう――この巨人がそれ等リベリスタ側の猛攻にも怯まず攻勢に動き出した事であった。 「一発警戒、内外野共に下がらないとね――」 いよいよ破壊的オーラを強めた巨人に的確な声を飛ばす『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)。彼女は防御の薄い仲間に防御の力場を纏わせようとするが――その時カメラは宗派の違い等、悲しい諸事情から集中攻撃を受けそうな涼の横顔をワイプしている。 「――ファッ!?」 「さんしん・ぴっちゃーふらい・せかんどごろ・こっせつ・とうろくまっしょう……」 呪言を唱えるきなこ。アーアー聞こえないと耳を塞ぐやみ。 (聞きたくないから)ブン、と唸りを上げた巨大なバットがパカーンとかなり頑丈な少女の身体を捉えていた。 「あーれー!?」 真芯で打ち抜かれた打球ならぬきなこは遥か彼方、お山の向こうまで星のように消えていく。 極めて頑丈な彼女でも……ありゃあ復帰出来ても時間が掛かる。 「妖精さんの気持が増幅してこんな迷惑なヤツが出てくるなんて…… きっとバチが当たって調子悪くなってイライラするに違いないです……」 (´・ω・`)とした『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)の表情が複雑な事情を物語っている…… ●ガシッボカッ 「チキショー! 覚えてやがれよー!」 お約束な声を張り上げた陽子が本日二度目の飛翔をする。 「あんっ、なんとも野性的なお味……」 荒々しい打撃は佳乃のお気に召したのか上がる色っぽい声はまるで試合の清涼剤チアリーダーのようである。 「野球のらんとーとやらは行事らしいがルール違反なのじゃ! バットを武器に使うのももってのほかなのじゃー。ふりまわすでない!」 尤も過ぎるミストラルの抗議もコメディ時空では無力であった。 巨人の進撃を阻まんとする戦いはシーズンも温まり激しいものになっていた。 巨人の暴虐は徐々にリベリスタ達を追い詰めた。圧倒的破壊力は幾度と無く彼等を襲撃する。 「詳細不明のビッグボールは……いや、言うまい」 肩で息をする晃が案の定と言うべきか魔女の期待した通りになっていた。 層の厚さという名の体力はシーズンを乗り切るまるで不沈艦の如しである。 現実問題結構沈む事も多いのだが、それはそれ。ねこたんは夢を見ているのでアレなのであった。 「何でや! ワイ……俺、関係無いやろ!?」 バットを振り回す巨人に追い掛け回され涼が全力で逃げている。 「そうよね。分かってたわ……分かってた」 未だ疲れた調子で呟く杏の向こうでは、 「へいへい、ピッチャービビってるー!」 等とルーメリアが野次将軍と化していた。 しかして、ルーメリアさん。「どうだ、この某盗塁王のリード。気になって制球も定まらないだろう!」とは去年の水道橋球場で彼が完璧に刺されたのをお忘れですかな? と声を大にして申し上げたい。 「護りに回れば、手を抜けば、そこに待つは敗北デショウ! ならば攻撃あるのみ、勝利あるのみ。 攻撃は最大の防御! 絶対攻勢力の限り! 人間のド根性というモノをお見せ致しまショウ!」 アンドレイは叫んだ。正論である。ハマスタに学んでるよね…… 「名古屋はええよ! やっとかめ!」 ロシア人の中部地方的主張は今季の惨状を見るだに忍びない。 「どんな戦力差がつこうとも、諦めない事。 理不尽でも、諦めたら――可能性も何も無くなってしまうわ。自分を信じて、攻撃するだけよ! でもタイム! 出来ればタイムね!」 反発を信じ、昇り龍を信じて――ヴィオレット先生の次回作にご期待下さい! そうこうしている間にもリベリスタ側の集中攻撃は徐々に巨人を痛めつけていた。 如何なロケットスタートを果たそうともその推力は無限では無い。敵もプロ、己もプロならば弱った相手の隙を突くのは当然とも言える結論だったのだろう。 決して埒が明かないから巻いている訳では無い! ルーメリア「食らえ! 神宮ミルミルなの!」 グワー! 涼「表ローテ三連発!」 ギャー! 不倒にも見えた巨人がぐらぐらと揺れ、やがて膝を突く。 集中的に痛んだ右足は今、限界を迎えようとしていたのだ。 山の如きそれの進撃が止まろうとしていた。大正義リベリスタ軍団は容赦なく許しはしない! 今、叩いておかないと何が起きるか分かったもんじゃないしねえ!←自棄 冷温停止した打線で巨人は虚ろに呟いた。 ――アイ、ドントライク、ノウ…… やみは死んだ。セリーグ! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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