下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






義剣心

●最期の親孝行
「宗太、お前は早くここを逃げろ!」
 師範が宗太に向かって一喝した。周りはすでに野犬に囲まれている。後ろは断崖絶壁だった。もうどこにも逃げ場はない。
 真剣を携えた師範は血まみれだった。野犬に身体を無数に噛まれて、もう満足に動けないはずだった。それでもまだ少年の宗太を庇って敵に対峙する。
 師範は身寄りのない宗太を道場で育ててくれた義理の親でもあった。小さい頃から立派な正義心のつよい人間になりなさいと、武術を教え込まれた。
 それはこの世の中で生きて行く唯一の術だった。身寄りのない弱い子供では強い者に倒されてしまう。だからこそ強くならなければならなかった。
 だから逃げるわけにはいかない。つぎの瞬間、野犬が襲ってくる。宗太は竹刀を構えて敵を退治しようとした。だが、不意を付かれて横から別の野犬が襲ってくる。
「ぐっはあああああ」
 そのとき、師範が宗太を庇って野犬の牙に倒れた。
「龍司師範!」
 宗太が叫んで間もなく、次の野犬が襲ってくる。しかたなく宗太はその場を逃げた。
 泣きながら宗太は夢中で森の中を走った。野犬も宗太を必死になって追いかける。転びそうになりながら歯を食いしばって逃げた。走りながら涙があふれてきた。
 師範を見捨てて逃げている自分が情けなかった。捨て子だった自分を拾って育ててくれた義理の親に何も恩返しをすることができなかった。
 自分の弱さに情けなくて死にたくなってくる。いっそこのまま野犬に喰われようか。
 すでに夜になった。辺りはもう暗くて何も見えない。もうこれ以上動くことが出来なくなって、大きな木の根元に宗太は倒れた。
「宗太、待て! 俺はここだ!」
 そのとき、後ろから声がした。宗太は振り返った。
 そこにいるのは紛れもなく師範だった。殺されてしまったはずの先輩剣士たちもいる。一瞬、師範たちは生きて帰ってきたのかと思った。
 だが、師範のお腹は野犬によって抉られていた。横には獰猛で血に飢えた野犬の群れが宗太を取り囲んでいる。宗太は巨木を背に竹刀を構えて起き上がった。
「宗太、師範の俺に――恩を仇で返す気か? 早くその竹刀を捨てろ。そうすればお前もすぐに楽になる。もう苦しんで一人で生きて行かなくていいんだ」
 師範はもう元の師匠ではなかった。そこにいるのは生前の師範とは違う姿。だが、宗太はその言葉に心を突き刺されてしまった。
 師範のために自分は死ぬべきではないのか。
 それが師範に対する最期の親孝行なのではないかと――。

●恩を仇で返す
「道場の子供が森の中でE・アンデッドとE・ビーストの野犬に襲われて食い殺されそうになっています。事態は一刻を争います。はやく宗太君を助けてきてください」
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)が、集まったリベリスタたちに向かって端的に情報を説明した。それを聞いたリベリスタ達も危機迫る状況に息を呑む。
 今日の昼に山の麓にある剣術道場がE・ビーストの野犬に襲われた。逃げ遅れた長谷川宗太を庇って義理の親でもある師範が代わりに犠牲になったという。その師範も今はE・アンデッドになって宗太を襲う側になってしまった。あまりの残酷な運命にその場にいた全員が顔を俯けて言葉を発せなくなってしまう。
「宗太君は苦悩しています。親代わりだった師範に竹刀を向けることは、義理の親に対して恩を仇で返すことになるかもしれないと。自分の代わりに身を賭けて死んでしまった師範に対してこれ以上傷つけることはできない。彼は自分の中の正義心と戦っています。このままでは宗太君は無残にも殺されてしまうでしょう。現場には他にもE・アンデッドになってしまった先輩達もいる。なんとか彼らを倒して宗太君を無事に帰してください」




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年05月01日(水)23:28
こんにちは、凸一です。

今回は、忠孝と正義の間で心が揺れ動く少年の救出です。
彼がどうかけじめをつけて、
これから強い人間として生きていけられるように。

それでは、以下は詳細となります。
よろしくお願いします。


●任務達成条件
E・アンデッドの全滅
E・ビースト/野犬の全滅
長谷川宗太の無事


●場所
深夜の暗い森の中。辺りは藪に覆われて足場が悪くおまけに視界が悪い。木々が多くて十分に武器を振りまわすことができない環境にある。


●敵詳細
・E・アンデッド/長谷川龍司師範
武術の名人として知られていた。武器は小太刀の二刀剣術。回転武連撃によって高速で二刀を回転させながら風刃によって相手をめった切りに裂く。狭い場所でも十分に攻撃の威力を発揮することができ、普通の日本刀や西洋剣よりも早く相手の懐に飛びこんで先手を打つことができる。

・E・アンデッド/先輩青年剣士×3
真剣である日本刀を持っており、名人には及ばないが腕前は有段者レベル
安村真司/トップスピードに乗った鋭い突きが得意
井手誠/鍔迫り合いによる押しが強い
浅羽康彦/防御が固く切り返しからのカウンター攻撃を得意とする

・E・ビースト/野犬×5
大きな牙で敵を噛み殺す。噛みつかれると麻痺して動けなくなる。足場の悪さはもろともせず、鋭い嗅覚を頼りに相手の背後をついて奇襲攻撃をおこなう。また仲間と連携しながら危なくなると速さを生かして逃げる。


●長谷川宗太
ジーニアス×デュランダルの少年リベリスタ
初級スキルまで使用できる


●その他補足
長谷川宗太は竹刀を持っているが、攻撃力防御力ともに未熟であり、このまま何もしなければ師範と野犬たちの餌食になってしまう。また、辺りは藪と木々に覆われているため、野犬の姿が見づらく突然の奇襲を食らうことがあるので注意。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)
ソードミラージュ
神薙・綾兎(BNE000964)
デュランダル
阿野 弐升(BNE001158)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
ナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
マグメイガス
コーディ・N・アンドヴァラモフ(BNE004107)

●閉ざされた闇の向こうに
 深夜の森の中はどこまでも暗い闇が広がっている。木々や藪で辺りを囲まれてなかなか思うように前に進んでいけない。荒れた土地はまるで人の心を写し出しているようだ。閉ざされた闇の向こうに絶望が待ち受けている。
 人の世はどうしてこんなにも残酷なのだろう。早くしないと宗太がやられてしまう。リベリスタ達は辺りを警戒しながら現場に急いでいた。
「ガキながら、立派な義侠心だ。けどな、間違うんじゃねえぜ。ただひたすらに従うだけが忠孝なんてものじゃねえ。長谷川流とも言うべき剣術を次代へ繋げる事が出来るのは、もう坊主だけなんだぜ」
 『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)は、まだ見ぬ宗太のことを想って言った。絶対に殺させはしない。それまでなんとしても耐えているんだ、と心の中で強く願う。
「宗太の知っている師範代は、お前が死ぬことを望んだだろうか。なぜお前のために前に立ち続けたのだろうか。それはお前が一番よく知っているはずだ。もう答えはそこにある」
 『red fang』レン・カークランド(BNE002194)も深く頷いた。
「突然親代わりが豹変したら、戸惑うのは当然でしょ。だからといって、こんな形の恩返しなんて俺は認めないけどね」
 『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)も宗太に同情した。それでも師範を倒さなければならない。それが本当の親孝行なのだと信じる。
「死人に口無し、とはよく言ったもので、死人は黙ってろ。テメェが吐く言葉は妄言だ。宗太は俺達が守る」
 『群体筆頭』阿野 弐升(BNE001158)も強い口調で言い切った。
「拾ってくれた者に刃を向けるのは心苦しいだろう……私も拾われた身だからね、何となくは判る」
 『境界のイミテーション』コーディ・N・アンドヴァラモフ(BNE004107)は宗太と同じ境遇を経ていた。今までさぞかし苦労してきただろう。その気持ちは十分にわかる。だからこそこれ以上宗太が苦しむ必要はないはずだ。
「自分は剣士じゃない。忠義もない。けど、伝えたいことがあるんです」
『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)は短く言った。すでに視線は前を向いている。いまの自分だから言えることを、少年へ一刻も早く伝えたい。
「目をそらすな、男がする覚悟は逃げるためのものじゃないだろ。そんなもんは犬に食わせちまえ!」
 『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)も宗太に言いたかった。ぐずぐずしているのは男らしくない。はやくけじめをつけて、自分のすすむべき道を歩んで欲しかった。
「もうそろそろじゃの。敵はすぐそばにおる。くれぐれも野犬の奇襲には気を付けて。はやく宗太を確保することを目標に」
 『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)がみんなに合図を出した。一行は速度を緩める。ほどなくして藪の向こうから微かに気配がした。
 綾兎が集音装置を使って敵が居る方向を指し示した。レンがテラーオブシャドウを使用して準備する。
 そのとき、目の前に野犬に襲われそうになっている宗太がいた。傍には剣を構えている龍司師範や先輩剣士たちがいる。
 すでに宗太の目には戦闘意欲がなかった。どこか諦めたような気の抜けた感じで師範たちが近づいてくるのを待っている。身体はもう満身創痍だった。所々野犬に襲われた箇所から流血している。
 リベリスタたちは宗太たちがいるところに割り込むように侵入した。

●仲間割れ
「おい、貴様らはなんだ! 邪魔をするなら殺すぞ!」
 師範が突然現れたリベリスタに向かって恫喝する。すぐに部下の剣士たちに指示して攻撃準備に入るように仕向けた。
 それを見たリベリスタ達は奇襲攻撃に向けて円陣を組む。どこから攻撃されてもいいように周囲の警戒を強化する。辺りは視界の悪い戦場だ。藪や木が邪魔をして敵の姿がうまく捉えられない。油断は禁物だった。
「その陰からきます!」
 千里眼を使用した光介が仲間に向かって叫んだ。
 後ろの大きな木の陰から獰猛な野犬が牙を向けて襲ってくる。いち早く振り向いたとらが野犬の前に立ちはだかった。
「フヘヘ、かわいいワンちゃんでちゅね~。……なんて言うと思ったか! そんなかわいいアピールの仕方があるかっ!」
 とらはバッドムーンフォークロアで襲ってきた数匹の野犬をまとめて攻撃する。野犬は逃げ切れずに攻撃を受けた。すかさずコーディがチェインライトニングで一気にせん滅をはかる。
 野犬は攻撃する間もなく倒れた。その敵のちょっとした隙をついて、綾兎が宗太の確保に乗り出す。ハイスピードとハイバランサーを駆使して近づいていく。
「邪魔をするなといっただろう!」
 剣士の浅羽と井手と安村がそれぞれ綾兎にむかって突き進んできた。だが、リベリスタたちも負けてはいない。円陣の外側に居る者がブロックを受け持つ。
 その間に綾兎は一足早く宗太の元に辿りつくことができた。
「怪我はない? このまま下がるよ」
 綾兎は宗太に確認を取った。震える声で静かに頷く。まだ頭が混乱していて自分でもどうしていいいのかわからないといった様子だ。綾兎は視線をやって後ろに合図を送ると、そのまま宗太を味方の円陣の中に組み込んだ。
「ぐはあっ! この野郎こそこそしやがって」
 ソウルが後ろから襲ってきた野犬に噛みつかれる。なかなか振りほどけない野犬にむかってギガクラッシュをぶっ放す。
 野犬はソウルの激しい攻撃を受けて地面に崩れ落ちた。
「残りはあと2匹か。まだ隠れてるぞ!」
 弐升が仲間に向かって叫ぶ。そう言い終わらないうちに、野犬が足元に噛みついてきた。鋭い牙が弐升の足に食い込んで離れない。すると、今度は右腕を別の野犬が襲ってくる。
「うがああああっ! 同時に2匹か!」
 弐升が腕をやられて攻撃が出来なくなってしまった。そこへとらがやってきて、剣で野犬を切りつける。ようやく野犬は弐升を離れた。
「野犬共め! 薙ぎ払ってくれるわ」
 仲間を傷つけられて怒ったシェリーがフレアバーストで一気に残った野犬を巻き込んだ。強烈な攻撃になすすべもなくついに野犬は駆逐された。
 野犬が居なくなると、リベリスタたちは円陣を解除した。それでも宗太は後ろの方で光介たちによって囲われていた。
「宗太さん、しっかりしてください」
 気をもたせるように光介が問いかける。傷を直ちに回復させた。ようやく宗太も竹刀を力強く握って自分の足で立つことができるようになる。
「龍司師範どうして――」
 まだそれでも宗太は迷っているようだった。
「宗太は俺達のものだ! 返してもらうぞ!」
 野犬が居なくなって青年剣士たちの攻撃が苛烈になった。まずは井手がそれまで対峙していた綾兎を力でねじ伏せに掛った。
 攻撃をブロックしていた綾兎はついに力で押し切られて斬撃をくらってしまう。
「ぐはああああっ!」
 そのまま倒されてしまい、馬乗りにされた。
「貴様の首は、この長谷川流剣士、井手誠がいただく!」
 大きく剣を振り上げられたところに、レンが後ろからライアークラウンで襲い掛かった。間一髪のところで綾兎は難を逃れる。
 ダメージを受けた井手はさらに綾兎にむかって迫ってきた。
「全く……力比べは苦手なんだけどね」
 綾兎はなんとか立ち上がると、ソニックエッジで相手よりも早く懐に飛び込んだ。
「ぐあああああ――」
 井手が攻撃をうけて突っ伏した。だが、綾兎も相撃ちをうけてその場に倒れ込む。光介がなんとか綾兎に回復を施して安全な後衛に戻ってくる。
「お前の相手はこの俺だ! よそ見するな」
 浅羽がソウルの不意をついて、真剣を叩きこむ。一瞬仲間を助けに行こうとしたソウルが攻撃を受けて後退した。口から大量に血を吐く。
「なかなかやるじゃねえか。遠慮はいらねえ。受け止めてやるから、てめえの生きた証を俺に刻みな。人生を賭して鍛え上げたであろう、お前らの剣をな」
「望むところだ! 長谷川流の名にかけて。浅羽康彦行きます!」
 浅羽はそれまでの受け重視の構えから積極的に前にでて攻撃を開始した。力強い攻撃にさすがのソウルも押され気味になる。
「ぶはあああっ」
 またソウルは血を吐く。次から次へと刀を繰り出す相手は容赦しない。だが、ソウルも最後のところで踏ん張った。力では絶対に負けない。ついに相手の刀を左手で受け止めることに成功した。
「もうこれで終わりにしてやるから。安心して逝きやがれ!」
 ソウルは重心を低くして力を溜めた。そして渾身の力でもって浅羽にギガクラッシュをぶちかます。
「くっそおお! うがあああ」
 浅羽は逃げることもできず正面からソウルの攻撃を受けて突っ伏した。最後に残った安村は仲間の死を見届けて言った。
「俺は仲間の分まで戦う! いざ尋常に勝負!」
 目の前にいるとらに向かってトップスピードに乗って、突きを食らわせる。それまで抑えていたとらもあまりの攻撃の威力に弾き飛ばされた。
 だが、とらも近づいてきた余裕の安村に対して、デッドリーギャロップで縛り上げた。一向に立ち上がろうとしなかったとらに安村は油断した。不意をつかれてまともに攻撃を受けてしまう。これでは自慢のスピードが生かせない。
「やっだもー☆ヤンデレ~? とらちゃんはね、ただじゃ倒れないのよ。メイドのお土産に覚えて置きなさい!」
 とらも冗談を言いながら目は本気だった。安村に大きく振りかぶって、ブロードソードで切り捨てた。そしてついに先輩剣士たちは誰もいなくなる。

●苦しめる想い
「小太刀二刀流! 回転武連撃!」
 師範は、長い鞘を抜いた。小太刀二刀を構える。まったく隙のない構えだった。うかつにこちらからは攻撃できない。対峙していた弐升も動けなかった。
「こないならこちらから行くぞ!」
そう思った矢先に一気に師範は間合いを詰めてきた。狭い所をもろともせずに師範は回転武連撃による風刃を弐升に切り刻んだ。
「あああああああ――」
 弐升の叫び声が上がる。目にもとまらぬ速さになすすべなく攻撃を受けた。そのまま膝をついて倒れ込む。だが、横からその隙をついて、コーディがフレアバーストで焼き払った。これには師範も逃げることはできない。
 ダメージを受けながらも師範はなんとか這い上がった。反射神経のよさを生かして辛うじて大きな傷を避けることに成功していた。
「妾の攻撃はそれでも避けれるまい?」
 背後に回っていたシェリーが不敵の笑みを浮かべる。後ろからシルバーバレットを叩きこむ。あまりの威力に今度こそ師範は血を吐いた。満身創痍になりながらなんとか立ち上がろうとする。すでに満足に歩ける状態ではなかった。
「もうやめてくれ! これ以上師範が苦しんでいるところ見たくない!」
 その時だった。それまで戦いを見守っていた宗太が叫ぶ。目には師範に対する同情があふれていた。それにもまして自分の弱さを悔やんでいた。自分が弱かったから今度の事件が起きてしまった。強ければ師範も先輩達も自分を庇って死ぬことはなかった。
 彼らが死んでしまったのは全て自分の責任だ。
 宗太はみんなに向かって言った。それを聞いて一瞬、リベリスタたちも攻撃の手を止めてしまう。それを師範も見逃さない。シェリーに風刃を切り刻む。
「ぐぬぬぬぬっ! おのれっ」
 不意打ちを食らってシェリーが倒れ込む。慌てて光介がかけよって回復を施した。
「ちがう! 今お前の前にいるのは生前の師範じゃない。死にたいと願うなら、俺達がお前を生かす。強く生きたいと願うなら自分を倒せ。心の中で自分を倒せ、弱くて臆病で逃げてる自分を!」
 レンが横から宗太に向かって言った。傷ついたシェリーも続ける。
「そうじゃぞ……心頷かなくては、力は出しきれない。迷いがあるなら、妾達が代わりに倒そう。いずれにせよ、“倒さねばならぬ”のだ。今ここで向き合わなければ一生後悔することになる。おぬしの親は、正義を成すために死んだのだろう?」
 そうかもしれない、と宗太は思った。
 目の前に居るのは無残にも人を傷つける怪物だった。あんな優しかった師範が人を殺そうとするはずがない。ようやく宗太は心を決めた。
 落ちていた浅羽の真剣を持って立ち上がる。師範に向かって振りかぶって行く。
 師範も二刀を構えて回転武連撃を放つ。だが、その間に再び弐升が割り込んだ。
「宗太をみすみす殺させはしねえ! 来ると解ってれば、この程度の痛み大したことねぇなぁ!」
 弐升は渾身のバトラーズアバランチで師範をなぎ倒した。一瞬の攻撃の早さがわずかに師範を上回った。
「いまだ! 宗太やれっ!」
 弐升が血を吐いて倒れ込みながら最後に叫んだ。
「長谷川宗太! いま参ります!」
 宗太が真剣で師範を渾身の一撃で切り捨てた。
「ぐはああああああああああああ――」
 宗太のトドメによって、ついに師範は地面に動かなくなった。

●真剣を手に
 リベリスタたちは激しい戦闘によって、少なからず負傷者が出ていた。それでも最後に宗太の助太刀もあって全ての敵を倒すことができた。
 戦闘後しばらく宗太は師範の亡骸の傍から離れなかった。ずっと溢れる想いを堪えているようだった。
本当にこれでよかったのだろうか。自分が最後に下した決断が恩を仇で返したことにならないか苦悩していた。
「亡き親に報いる唯一の方法は……やっぱりあなたが生きることなんだと思います。ボク自身ずっと悩んでる。親を亡くしたあの瞬間から。大した孝行もできぬまま、おめおめと生き長らえたことを、時々呪いたくもなる。けど、自棄になったり、まして死んだり。そんなの親が望むはずないんです。親心に報いたと思える、その時まで生きてください」
 光介がようやく顔を上げた宗太に向かって言った。光介自身も親を亡くしていた。宗太のように悔やんだこともあった。でもそれでは何も解決しない。だから今もこうして頑張っている。宗太のように苦しんでいる人を助けるために。
「お前一人で答えが出せぬなら、『以前まで』の師に、心の中の師に問うてみろ。恩返しとは何かを」
 コーディも俯く宗太に向かって優しく問いかけた。
「今こそ、お前が教わった、学んできた全てを見せてやるときだ。見届けてもらえ、今のお前の全てを。そして、安心させてやれ。最後までその両足で立っていてみせるのが、親孝行ってやつだ」
 ソウルがこれからのことを案じて言った。宗太は一人で生きていかなければならない。だからこれからはちゃんと自分の目標を立てて頑張って行くんだ。曲りなりもリベリスタならそのうち分かる時が来る。ソウルはそれ以上口にはしなかった。
「ありがとう。いつか龍司師範のように――」
 最後に宗太は皆の前で言った。技量は未熟で修行が足りない。それでもいつかは越えてみせる――宗太は新たな目標を胸にして、真剣を手に立ち上がった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
みなさま、お疲れさまでした。

戦場は視界が悪く、足場もよくなくて、おまけに敵も数が多く大変でしたが、それでも敵をすべて倒すことができました。

とくに、今回は宗太に対する思いやりのある言葉を持つ人が多くいました。まだ、苦悩することがあると思いますが、今回のみなさまの優しい言葉を糧として、ぜひリベリスタとして活躍していってくれることを願ってやみません。

それでは、みなさまの更なる活躍も願って。

またどこかでお会いいたしましょう。