君は、オカマ爆弾と呼ばれる催淫性非殺傷型化学兵器について、知っているだろうか。 アメリカ空軍の研究所で考案された、敵部隊に強い催淫剤を投下し、敵部隊兵士に同性愛行動を惹起し部隊を混乱に陥れるための兵器である。 しかし、その兵器による作戦は、諸般の事情で闇に葬られた。 その忌まわしき封印された兵器を、日本のとある女子の集団が完成させたのだ。 彼女たちは、自らの集団をこう呼ぶ――『ユウザイヲトメ団』と。 地方の同人誌即売会で壁配置になる程度の実力を持った、オリジナルボーイズラブゲーム同人サークルである。 しかしてその実態は、世界をホモだらけにするべく暗躍するフィクサードの集団なのだ! 「とある大学の数学部のゼミが、フィクサードのテロの対象になっている。ちょっと行って阻止してきてくれ」 ブリーフィングルームで、居並ぶリベリスタに『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃 (nBNE000242) は言った。 「ゼミの連中には、テロの犯人にバレぬように休講の知らせをしておく。代わりにゼミ生になりすまして、ゼミの部屋に居てくれ」 闇璃は、大学の見取り図を広げて、指で現場を指す。 A号館の入り口に最も近い『A101教室』が、現場だ。 そのゼミの時間帯、A号館は他の授業は行われていないらしいので、滅多なことで他の人は来ない。暴れていても、さほど問題にはならないだろう。 教室も狭くはないそうだ。 「ゼミは全員で七人、教授入れれば八人だ。なに、大学のゼミだ。自主休講もあれば、教授がすっぽかすなんてこともあるわけだし、全員揃ってなくても違和感はないだろう」 ただし、と闇璃は付け加える。 「ゼミのメンバーは全員男性だ。女がいたらおかしいことは、フィクサードも知っている」 つまり、女性はゼミの教室にいてはいけないということ。 「今回、実行犯となるフィクサードは五人。実力は、君達と同等くらい」 闇璃は、フィクサードについて説明を始める。 「どうも、全員ジーニアスらしい。エネミースキャンを持つレイザータクト、念写を持つマグメイガス、マスターテレパスを持つダークナイト、超幻影をもつインヤンマスター、一人ぼっちと透明化を持つプロアデプト……こいつが爆弾を仕掛けるわけだな。そういう能力があるようだ」 「え、爆弾?」 爆弾テロとは恐ろしい。と、リベリスタが顔を歪めた時、闇璃は冒頭の『オカマ爆弾』について、『ユウザイヲトメ団』について、ようやく説明した。 「そ、それって」 「そう、実験を兼ねて、ゼミの男どもをボーイズラブらせて、楽しもうってわけだ。ある意味、殺されるより辛いな」 「爆弾は時限式、破壊させまいと彼女たちは抵抗する。とはいえ、爆弾は非殺傷性だ。戦闘にもなんら影響はない」 隣に居る男に熱い恋心を抱く程度だ。と闇璃はなんでもないように言った。 「女性には効かないようになっている。バッドステータスじゃないから、対抗処置はないが、心配はいらない。試作品だから、一日たてば治る……はず」 「はずって!!」 ともかく、ゼミの時間に仕掛けてくるわけだから、待ち伏せも容易だ。 全員教室に引き入れて叩きのめせ、と言い捨て、闇璃は問答無用とばかりに帰っていった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月05日(日)23:01 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●腐女子は叫ぶ。イケメンワンサカ! 八人の男がコの字型に並べられた机についている。 中央に座った壮年の銀髪男性が教授で、その両側に居並ぶ若い男達が生徒らしい。 それを窓から覗き見る五人の若い女達。 「ジャン・デルヴィルの『プラトンの学校』ってゆー絵があるんだけど、アレ思い出したぜ」 ゴスパンに、ヴィジュアル系メイクでキメた女が粗暴な口をきく。俺っ娘の江戸川ラン。彼女はユウザイヲトメ団のストーリー担当。 「おじいさんの周りに半裸のイケメンがワンサカ集まってるアレだよねぇ」 マリー・アントワネットをビール樽に描いたような甘ロリ女が、激しく首を縦に振った。彼女は横溝正美。ユウザイヲトメ団の作画担当。 横溝の横で、にやにやしている死神のような貧相なゴスロリ女は、妙な語尾でアニメ声。 「にゅふふ、それ絶対哲学以外も教えてる感じにぇ! あー楽しみだにゃー。ここで全員がホモになると思うともー滾っちゃうにょ!!」 このゴスロリが夢野ひさで、正美の作画的アシストを担当している。 「あれ、アークだね。なんとなくどっかで見たことあるような人がいる。大体全員、E能力者だし。我々の野望の第一歩、邪魔しにきたかな」 一人冷静なのは黒井涙香。彼女こそユウザイヲトメ団のリーダーである。彼女の格好は黒のパンツスーツであり、普通の格好ながら周りが周りなので、浮いている。 「めんどくさ……」 ジャージにひっつめ髪と、地味すぎる格好の坂口安子が、手にしたオカマ爆弾を抱えて嫌そうな顔をしている。 「でもあのイケメンどもをホモにしないなんて勿体ないぜ!」 「イケメンの絡み、見たい、見たいよぅ涙香ぁ」 「……うん。もう向こうのフォーチュナに我々の野望の一端がバレてるというわけだし。お披露目ご挨拶かねて、やおい祭りにしてあげようか」 メンバーたっての希望をのみ、黒井は作戦行動の開始を宣言した。 「全員そろっているようだな。感心だ」 教授役の『』アーサー・レオンハート(BNE004077)は、一応ゼミらしさをかもしだすべく演技をしている。 「はい、先生」 それに生徒っぽく返す『ライトハンドバインド』月代 十夜(BNE004305)をはじめとする仲間たちを横目で見つつ、『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)は無表情で腕を組んでいた。 『憂鬱だ。なんで俺はこんな務めをせにゃならん。帰りたい。いや帰る! 帰らせてくれ! 俺には妻も子も……子はいなかったが嫁はいる!』 無表情の裏で鷲祐の脳内はもはや大騒ぎであった。 「司馬。顔が固いぞ。お前ほどの人間が、まさか緊張しているのか?」 隣の盟友が優しく声をかけてきて、鷲祐は困ったように彼を見上げる。 「……オーウェン……」 『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)は、フッと笑った。 「司馬……」 と肩に手を置きかけるオーウェンを、思わず神速で避ける鷲祐。残像すら見えた。 「あ、いや、あの、近い、近いぞ、オーウェン」 怪訝そうに顔を近づけてくる盟友に、鷲祐は戸惑う。 「ま、俺はどちらでもいけるので、な?」 「なにが? いやっ! 言うな。何も言うな」 「ふん、まだ敵も来ていないのに、うろたえがすぎるぞ司馬」 と、『新ジャンル:王様系男子』降魔 刃紅郎(BNE002093)は、対面の男の振る舞いに呆れたか、大きなため息を付いた。 「王はすげーなぁ。余裕すぎて、大学生の授業態度じゃないぜ」 ほへーと見上げる『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)が、言うのも無理は無い。刃紅郎は、足を組み、赤いワインを片手に、片肘をついていた。 「……僕には待っている人がいるんだ!」 切羽詰まった表情で呟く『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)の、悲壮な決意を『きゅふふふ』と笑うのは『ナルシス天使』平等 愛(BNE003951)である。 ちなみに、愛は爆弾を食らわなくてもオカマだ。 「ロアンちゃん、それはフラグだね☆」 がちゃり、とおもむろにドアが開かれ、五人の腐女子フィクサードが、ドヤドヤと教室に乱入してきた。 男子全員が透明化もひとりぼっちの能力も通用しない相手であることが分かっているので、ユウザイヲトメ団は正面切って堂々とやってきたのだ。 江戸川が叫ぶ。 「やぁやぁ、アークの皆々様。イケメンばっかりでやってきてくれて超嬉しいぜ。それじゃあ、俺達の野望のため、モルモットになってもらおうかっ!」 ぞん! と突き出された爆発物を見て、 「なるかあっ!!」 「お断りだよ!」 鷲祐とロアンが立ち上がる。 が、他の面々は特に抵抗を見せない。 「科学者としては、『実験の結果』には興味を持たざるを得ないのでな」 と、オーウェンは澄ましている。 「ばっちこーい」 夢野が無慈悲に起爆スイッチをオン。 「畜生、俺は抗うぞ、負けてたまるか!」 鷲祐はとっさに彼女たちの背後へと回った。煙が最も薄いと判断したからだ。 とはいえ、誰よりも速度を誇る彼だからこそ、起爆よりも早く動けたのであり、常人では逃げることなど出来ない。 爆弾は、ぶしゅうううっとピンクの煙をリベリスタメンズめがけて吐き出した。 ●腐女子は思う。やっぱノンケがひとり居たほうが楽しい。 煙が晴れ、鷲祐は、周囲を見回した。 フォーチュナいわく、この爆弾を食らえば男に熱いときめきを覚えてしまうとのことだったが、鷲祐にはそんな不埒な気持ちは浮かばなかった。 「すばやいなぁ。完全に回避しちゃったよぉ」 横溝につまらなそうに言われ、鷲祐は思わずガッツポーズをとる。 「やった! よし、覚悟しろ。全員、お仕置きだ」 「そんなこと言ってる場合かな? 爆弾を食らっておいたほうが幸せだったと思うよ」 黒井がせせら笑う。 「ホモの世界へノンケ一匹……。それ、狼の群れに羊を放り込むのと同じ……」 坂口の圧倒的な思考の奔流が、鷲祐を吹き飛ばす。ちなみに、ネジとプラスドライバーとマイナスドライバーの切ないラブロマンス、という高度なホモ妄想の奔流であった。 「い、意味わからん!」 意味不明すぎて回避ができなかった鷲祐は、たちまちリベリスタ陣営へと押し流された。 「ふん、全力だ……好きなだけ魅せてやる」 と傲岸不遜に言ってのける刃紅郎の背を熱っぽく見つめるメガネの男。 「っ……こんなのっ、無理やり抱かされた感情なのに……ときめくなんて!」 と十夜は唇を噛んだ。 「そこに愛はあるのか? これは創られた感情だ、いつかは覚める……不毛な恋なんだ」 その切なさに涙すら浮かべ、十夜はその涙を振り切るように夢野へ気糸を伸ばす。 「きゃうぅ!」 攻撃を受けた夢野の叫びは、痛みではなく萌えへの叫びであった。 「これは、これはぁ! セツナ萌えにょにょ!! みのがせないにゃぁ!」 怒りというよりも、萌え集中な気がするが、夢野は十夜に釘付けである。 無数の符鳥で十夜を呑み込まんとする夢野は、ハッと目を見開いて、悲鳴をあげた。 十夜の前に刃紅郎が立ち、鳥の渦を受け止めたのだ。 「かばっちゃったにゃぁあっ、うひょぉおお、萌えぇりゅうぉお」 大いに悶絶している夢野を尻目に、刃紅郎は冷えたような凛とした目を十夜に向けた。 「勘違いするな。この戦いで誰も倒れさせぬためだ。貴様は好感度もステータスも足りぬ。我の攻略難易度……激高と知れ!」 「っ……そ、そうだよな。すまない」 十夜がショボンとしているのを見下ろしフンと鼻息を吐くと、刃紅郎は夢野への猛攻に転じた。 「とはいいつつ、ボクが居る限りは回復に問題なんてないのに、序盤から庇っちゃうあたり、ツンデレだよね、これ」 ニヤニヤと笑いながら愛は、全力で刀を振るう刃紅郎を眺めて呟いた。 「にゅふふ。わたちが、かわうぃー十夜きゅんを攻撃して怒っちゃったにょ? 素直になれない我を許せ、月代……みたいにゃ?」 「黙れ。これは事前に決めた討伐順の通りだ」 大興奮の夢野を一蹴する刃紅郎の表情は、どこまでもクールである。 ちなみに、ユウザイヲトメ団がリベリスタの名前を知っているのは黒井のエネミースキャンのためである。 「萌えるとか言うな!」 ロアンが夢野に三日月を思わせる残像を見せつつ、死の刻印を刻む。 こんなときめきは嘘だ! と言うのかと思いきや、ロアンは真剣な表情で続けた。 「僕のアーサーへの想いはキミたちの余興じゃないんだ!」 ばっちり吸い込んだらしい。もはやロアンは自分の恋心を制御できないのだ。 「ラブラブ~!」 嬉しそうな横溝が、猛る思いを呪いの大鎌に変えて、ロアンへとぶん回す。 「ロ、ロアン。気持ちは嬉しいが、俺はもうボーイズと言える歳では」 夢野の頭部を狙撃し、銃を下ろしたアーサーは、戸惑ったように若いヴァンパイアから目を逸らした。応えられない、というように。 ロアンはアーサーの元へ駆け戻り、必死に訴える。 「歳の差なんて関係ない。僕は、キミを愛しているんだ」 アーサーの骨ばった手を取り、ロアンは愛おしげに包む。 「……俺は恋愛なんてしたことがない。教えてくれ、この熱い感情は何なのだ?」 「アーサー、それが愛、だよ……」 手を取り見つめ合う二人をキラキラしたものが包む。 夢野の超幻影による特殊効果である。 江戸川がニヤニヤしながら、パラレルショートストーリーを脳内放送し始めた。マスターテレパスの無駄遣いである。 ――殺し屋アーサーは、恋愛を知らなかった。 だがある日、アーサーは神父ロアンに出会う。 神父たるロアンに、自分の職業を明かせないまま友情を築くアーサー。 だが、ロアンはアーサーに恋愛感情を抱いていた。 歳若いゆえの情熱をもって求愛するロアンに、アーサーは絆されていき、とうとう二人は結ばれる。 が、愛を知ったアーサーに、裏社会は牙を向いて……。 「やめろ! 攻撃されてないのにゴリゴリなんかのゲージが減る!!」 一人だけホモ耐性のない鷲祐が悶え苦しんだ。 ●腐女子は信じてる。萌えは世界を救うって。 「司馬、尻尾に触っても?」 不意に普通のトーンで言われ、 「いいよ、ザラザラするよ?」 普通に返してしまった鷲祐だが、すぐハッと気づいて抵抗する。 「や、やっぱダメだ! 触るな!」 「さっき、いいって言った」 不敵に笑い、太いトカゲの尻尾を撫であげようとしたオーウェンの手を、パシッと掴む指ぬき黒革手袋。 「セクハラじゃね? 嫌がってるだろ、シバちゃん」 オーウェンを睨みつけるのは翔護である。 「司馬はただ恥ずかしがってるだけだ。俺には分かる」 おろおろする鷲祐を正面から抱き寄せ、翔護を威嚇するように睨むオーウェンに対抗し、翔護も、鷲祐を後ろから腰に手を回し、抱きしめる。 鷲祐を間に挟んで睨み合う、金髪碧眼クールイケメンと茶髪茶目のチャラ男。 翔護は言う。 「強引な男は嫌われるぜ。シバちゃんのファーストステップなんだ。優しくしてあげないとさ」 「ファーストステップって……っ!?」 もがく鷲祐の顎を捉え、オーウェンは痛ましそうに言う。 「つらそうだな、司馬。こんなヤツにお前を任せる訳にはいかない。俺がじっくり丁寧に花開かせてやる」 鷲祐は思わず声にならない悲鳴をあげた。 「言ったな! どっちがシバちゃんを満足させられるか勝負と行こうぜ!」 「ふん。勝負するまでもない。司馬のことなら解析済みだ。……さ、大丈夫だ、司馬。俺に委ねろ」 と自然な形で机の上に寝かせられそうになり、鷲祐は必死にオーウェンを押した。 「ちょ、ちょっと待て」 「まぁまぁ」 さっきまでの対抗はどこへやら、翔護が鷲祐の肩を押さえて机に縫い止める。 「ウオオ!! ステキすぎるぜっ!!」 イケメンの三人くんずほぐれつに、江戸川が発狂した。 横溝もヨダレを拭いながら、 「これは、絶対にスケッチしとくべきぃ。でもでもスケブがないから、壁に描いちゃお☆」 念写で白い壁にスケッチを始める。 「うるさい」 江戸川をオーウェンのピンポイントが貫く。 「シバちゃんを見ていいのは俺だけだっつの!」 翔護が横溝をパニッツュで狙撃する。 「俺も攻撃させろ! 殴る! あいつらグーで殴るから、ちょっとどけって!」 もがく鷲祐を、二人が押さえつける。 「まぁまぁ、シバちゃん」 「お前さんはいいから。俺の下で鳴いてりゃいい」 「よくねーよ!」 そんなやり取りをきき、暗黒の瘴気を撒き散らしていた江戸川がニヤリと笑った。 「うへへ、禿げ散らかすぜ」 江戸川は江戸川で、マスターテレパスにより、オーウェン・SHOGO×鷲祐のあまあまラブラブストーリーを全員の脳内に放映してくる。 「古来の戦場で戦士達は互いを愛し合いその力を増したという。戦場において、衆道による結びつきは戦士を強くするのだ。我の期待に応えられるな? 夢野は任せたぞ!」 と真打・獅子王「煌」に力を注ぎこみ、坂口にとどめを刺す刃紅郎の横で、 「ああ。わかってる」 十夜は気糸にて、夢野を刺し貫き、二度と立てなくさせた。 「爆弾が破裂したら、向こうからボクに迫ってきてくれる! って思ってたんだけど……ボクは、なんでぼっちなのかなー? 八人いるんだから四カップリング出来るんじゃないの?」 愛が不満げに呟きつつ、それでも仕事をすべく、聖神の息吹を発動する。 「あ、でも、いい話だね、これ。絵もうまいし、壁サークルになるのも分かるなぁ」 江戸川から流されて来るラブストーリーと大学の白い壁に横溝の念写で描かれる美青年の絡み絵に、愛は素直に感心するのであった。 愛はふと気づく。 「そういえば、スケブ持ってないって言ってたけど、取材で来たんじゃないの?」 リベリスタは、彼女たちの目的は、サークル活動の取材だと思っていた。 なのに、パソコンはおろか、原稿用紙の一枚も彼女たちは所持していない。 愛の問いに、ロアンの鋼線を間一髪躱した江戸川は平然と返す。 「ボーイズラブゲーム作成は、趣味と実益をかねたカモフラージュ。俺達は世界中がホモで満たされる野望を叶えるために集まったんだぜ」 アーサーの念による狙撃をうまく防ぎながら、横溝もニコニコしながら付け足す。 「取材とかどうでもいいんでぇ。ホモが世界に満ちて、世界が愛で満たされるとぉ、世界が平和になるんだよぉ。ラブアンドピースってゆーじゃん?」 ほらぁ、見てぇ。と横溝は指をさす方向には、攻防を続ける鷲祐と翔護とオーウェンがいた。 「平和でしょっ♪」 「何も平和じゃねえぇ。今まさに俺の貞操をめぐって戦争中なんだよ!」 鷲祐が必死に怒鳴る。 「それは君が今、ノンケだからだろ。煙を吸っておけば今頃、二人を気持よく受け入れてだな……」 「死んだほうがマシだ!」 江戸川に噛み付き、鷲祐はようやくオーウェンと翔護をはねのける。 そして、ハッと気づいた。 「黒井はどこだ?!」 しばらく前から声を聞かないと思ったが、あの黒スーツ姿の女が教室内のどこにも居ない。 「くっそ、気づきやがったか。だけどな、もうおせえ! リーダーはもうここにゃいねえよ!」 江戸川は高らかにリベリスタを笑った。 ●腐女子は願う。マイ神が自分の妄想を具現化してくれることを。 リベリスタ達は事前に決めた順番通り、集中攻撃でフィクサードを倒していた。 リーダー黒井涙香の討伐順は、最後だった。それが仇になったのだ。 ユウザイヲトメ団の目的は、リベリスタの駆逐ではない。『世界をホモだらけにする計画に必要なオカマ爆弾の威力を確かめつつ、目の前のホモを楽しむこと』である。故に、逃亡するという可能性もあった。 「みんなぁ強いしぃ、さすがにヤバいと思ってぇ。ここで死ぬわけにもいかないしぃ。私達みんなでぇ、あんたたちの気を引いてぇ、涙香を逃したぁ」 ビール樽甘ロリがブリブリ揺れながら、種明かし。 壁に書かれたBL絵も、脳内にガンガン流された『濃いBL』も全て黒井逃亡からリベリスタの目をそらすためだったのだ。 「なっ。やべえじゃん」 翔護が、慌てて出て行こうとするが、ドアの前に江戸川が立ちはだかる。 翔護を闇の霧で拘束しながら、江戸川は笑った。 「おっと、出す訳にはいかないね。俺達の任務は、殿をつとめることだ。……命賭けて」 「涙香さえいれば、私たちの夢は叶うものぉ」 リストカットした横溝は、黒い鎖状の血液でリベリスタを飲み込む。 「これからもユウザイヲトメ団は安泰だぜ。さて、最期に楽しいホモが見れて、俺は満足だ。腐女子人生、一片の悔いなしってとこだな!」 二人は、死力を尽くす覚悟であった。 ふざけた口調でも、目に宿る意思は本物だ。 「ふん。その戦意、受け止めた。では王たる我に魅せてみよ、貴様らの覚悟とやらを!」 刃紅郎の声をきっかけに、死闘が始まった。 隣に抱く熱い恋心など、今は意識している場合ではない。 「……まさか、こんなに粘られるなんてね……」 倒れた四人の女を見下ろし、愛が呟く。 「ユウザイヲトメ団、黒井涙香……思っていたよりも、強敵なのかもしれんな」 オーウェンは傷ついた肩をかばいながら、荒い息を整える。 「あいつらをナメてた……腐女子つっても、テロリストなんだよな」 翔護は唇を噛んだ。 どこかから、黒井涙香の高笑いが聞こえる気がした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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