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春色の便り


 その味と香りがとても新鮮だった。
 温もりを感じるポットから透き通るガラスのティーカップに注がれたブラウン・ゴールドの一滴。
 鼻孔をくすぐる円やかな香りと暖かな湯気。
 角砂糖とミルクが混ざり合ってキャラメル色に溶けていく。
 こくり。
 口の中に広がる紅茶の香りと舌を伝う甘いミルクの味。
「……とっても、美味しいです」
 初めて口にするそれに彼女は魅了されていた。
 イングリッシュフローライトの髪を揺らし、海色の瞳が見つめる先にあったのは一枚の広告。
 色取り取りの花とハーブが咲くイングリッシュガーデン風の施設。
 そこに書かれている『季節のハーブティ』に目を惹かれたのだ。
「ハーブティも美味しそうですね」
 どんな味や香りがするのだろうと想像するだけでソワソワしてしまう。
 しかし、一人で行くには心許無い。
 ……そうだ!


 プリマヴェーラの息吹が庭園を包み込んで、色彩を増した草木が芽吹いていく。
「ハーブ&フラワーガーデンに行きませんか?」
 手にしたチラシを差し出しながらリベリスタに声を掛けているのは『碧色の便り』海音寺なぎさ(nBNE000244)であった。
 配られたチラシを見ると、一面に咲く多彩なチューリップと風車の写真。
 パステルカラーで印刷されたハーブ&フラワーガーデンの文字。
 小さな白い花の中心にはフレッシュイエローの挿入色。カモミールだ。
 ニオイスミレのビビットカラーは目が覚める程鮮やかなヴァイオレット・パープル。
 訪れた暖かな光に元気に芽吹く草花達の様子が写し出されていた。
 それに、美味しそうなワインにソフトクリーム。
 種類の豊富なハーブティも取り揃えているらしい。
「よかったら、一緒にどうですか?」
 海色の瞳は優しげな笑顔と少女特有の屈託のない眼差しを向けているのだった。

 春の息吹を感じながら、色彩の草花に囲まれて素敵な時間をすごしませんか。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:もみじ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年04月21日(日)23:47
 もみじです。ハーブ&フラワーガーデンにいきましょー!

●目的
 春の色彩を楽しみましょう。

●ロケーション
 以下の様な施設です。アルファベットを振っておきましたのでご活用ください。

A:ハーブ&フラワーガーデン
 イングリッシュガーデン風の広大な庭園に色取り取りの花やハーブが咲いています。
 池に掛かる橋から見える草花はとても綺麗です。
 ベンチで一休みもできるでしょう。風車もみえます。
 願いが叶うハート型の石。大きいです。恋愛成就?

<ハーブ>
 園内のハーブには実際に触れることができるんですよ。
 コーンフラワー、タイム、カモミール、ニオイスミレ、ローズマリー、チェリーセージ等。
 カレープラントはなんとカレーの香りがします!
 その他ハーブが至る所に植えられています。

<フラワー>
 赤、白、黄色やピンク色のチューリップが元気満開です!
 その他、池の周りに多彩な花が咲いています。

B:販売所・工房
 ハーブや観葉植物の苗や種を販売しています。
 土やポット等園芸用品も取り揃えています。
 美味しいコーヒーはじめました。
 併設された工房では石細工のアクセサリーやハーブ染のうちわ等が作れます。

C:レストラン
 ラベンダーのソフトクリームは絶品です。
 少し甘酸っぱくまろやか。バニラ・ミックス・ラベンダー

・パスタ
・ピザ
・クラブハウスサンドイッチ
・カレー
・パフェ
・クッキー&アイスクリーム
・ハーブをふんだんに使用した洋食コース
・春のワイン(甘口なぶどうと桃のミックスワイン)
・ビールとか!

<シングルハーブティ>
・ラベンダー
・ワイルドストロベリー
・ダンディライオンリーフ
・スウィートクローバー
・ジンジャー
・リコリス
・リンデン
・マルベリー
・ローズヒップ
・ルイボス
・レモングラス
・ラズベリーリーフ
・タイム
・セージ
・マリーゴールド
・季節のハーブティ:
 その1:綺麗に咲いた朝摘みのジャーマンカモミールを使ったフレッシュティ。
 その2:スパイシーな香りの中にほんのり甘い芳香を感じるローズマリーティ。なんでも『若返りのティ』と呼ばれているらしい。

<ブレンドティ>
・プリンセスブレンド
・クラウンブレンド
・ナイトブレンド←実は安眠系。騎士じゃなかった……
・ライトブレンド
・スイートブレンド
・スパイシーブレンド
・燃焼するアタシ←脂肪判定回避
・ビューティブレンド
・初恋ブレンド(ブルーベリー)
・甘恋ブレンド(ピーチ)
・告白ブレンド(ごぼう)
・暗黒ブレンド←実表記は「ぱる○んてぃ」でした
・春限定ブレンド「笑顔の芽吹き」

D:お土産屋
 試食、試飲、アロマオイルのお試し等が出来ます。

<各種ハーブティ>
 レストランに並んでいたハーブティが販売中。

<ハーブ用品・食品等>
・オリジナルオリーブオイル(ハーブ入り)
・春のワイン
・アロマオイル
・ドライハーブ、フレッシュハーブ
・ハンドソープ
・シアバター、ハンドクリーム
・ハーブを使った自然派化粧品類(クレンジング、洗顔、化粧水、乳液、クリーム等)

<キーホルダー等>
・フラワーキーホルダー
・サシェ
・天然石アクセサリー(さざれ石が流行!)
・トンボ玉のストラップ(深海の様な深い青色)
・気分によって色が変わる指輪(!?)
・運命のストラップ(それはまさに……)

E:駐車場
 車が止まっています。
 喫煙所もこの一角に設置されています。

F:その他
 出来そうなことができます。(出来なさそうなことは描写が薄くなったりします)


●NPC
 なぎさはハーブ&フラワーガーデンを見た後、レストランや工房、お土産屋を覗いたりしています。
 喫煙所には現れません。

●注意
 未成年の飲酒喫煙は出来ません。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。←重要!
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。

●参加NPC
・海音寺なぎさ

参加NPC
海音寺 なぎさ (nBNE000244)
 


■メイン参加者 40人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
スターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)
ナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
ダークナイト
山田・珍粘(BNE002078)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
ホーリーメイガス
ブリギッテ・S・ゲハイムニス(BNE002494)
ナイトクリーク
マーガレット・カミラ・ウェルズ(BNE002553)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
ダークナイト
ユーニア・ヘイスティングズ(BNE003499)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
ナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
マグメイガス
コーディ・N・アンドヴァラモフ(BNE004107)
ホーリーメイガス
海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
ミステラン
リリス・フィーロ(BNE004323)
ミステラン
サタナチア・ベテルエル(BNE004325)
ミステラン
ミストラル・リム・セルフィーナ(BNE004328)
ミステラン
ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)
ミステラン
ルナ・グランツ(BNE004339)
ミステラン
リリィ・ローズ(BNE004343)
ミステラン
エフェメラ・ノイン(BNE004345)
ミステラン
アガーテ・イェルダール(BNE004397)

フィリス・エウレア・ドラクリア(BNE004456)

音羽 征一郎(BNE004471)

●春の風にのって
 カフェ・オ・レのアプローチを歩けば、もう、そこは花とハーブの庭園。
 大きな六角形の石から溢れる噴水にゆっくりと風を受ける風車。
 ペールホワイトやローズピンク、バタフライイエローに花咲くチューリップ畑。
 春の陽気に誘われて、花や草木が色彩を増していく。

 ―――イングリッシュガーデンか、なんだか懐かしい。
 レンの故郷は英国の山の中。本格的ではなかったが周りが庭のようなもの。
 それに少年の祖母は薬草や食料になるハーブを多く育てていたのだ。
「これは立派なガーデンだな……」
 心地良い風、ハーブの香りを乗せた空気、見たことの有る草木。どれも懐かしいものばかり。
 風景の中に英蛍石の髪を見つけて声を掛けた。
「すごく素敵なところだな、ここは」
「はい!」
 なぎさとレンが会話している一方で―――。
「駐車場にはいぱー馬です号つなぐです!」(うまー
 ペットは可だが流石に乗り物はいけない。ああ、けれど寂しそう馬。
「いいこで、まってるですよ」(うまー……
 愛馬はさておき。イーリスはソフトクリーム片手に園内を歩く。
「なんと! あれは風車なのです!
 あれは! 花です!
 これは! 草!!!
 草と池!!
 そして! じゃじゃん!
 はーぶ!!」
 元気過ぎる程の声で指を示した先には、カレープラント。触らずとも香るカレーのにおい。
「なんと! カレーのにおいがするのです! すごいのです!!
 すごい『かれいしゅう』がするのです!!!」
 ……オイ!
 近くを通りがかったレンとなぎさを引きずってカレープラントの前に連れてくるイーリス。
「……本当にカレーだ」
「はい。びっくりしました」
 レンとなぎさは顔を見合わせてぱちくり。
 食欲をそそるにおいになんだかお腹がすいてきた様だ。
「なぎさ、よかったらご飯に食べに行かないか?」
 もう少し歩けば、白壁のレストランが見えて来るだろう。それに……
「なぎさのお腹の虫も、鳴っていることだしな」
 お腹を押さえるのと頬がオパール・ピーチに染まるのは同時で。
 レンは笑って「大丈夫、内緒にしておいてやるぞ」と碧の少女に云った。

 ハートの形をしたローズクォーツの前に立つのはそあらだ。
 咲き乱れる花を横目に恋愛成就のシンボルに一直線。
 あたしが来なくて誰が行くというのですか!
 ぴゅあなあたしのお願い、聞いてほしいのです。
 もちろん彼女の願いは愛するさおりんの可愛い奥さんになること。
 ストロベリーの様に甘いぴゅあな気持ちは彼女の瞳からキラキラ溢れ出ている。
「こんなにおっきいのです」
 自分より大きなハートの石を象る様に、否それ以上の気持ちを込めて。
「あたしのぴゅあな想いきっと通じるにちがいないのです!」
 手の形をした凹みにぺたりとくっつけて彼女は願いを託した。
「わたし、春が一番好き。お外が気持ちよくて、花が沢山咲いて綺麗で」
 風車の見える花畑をアリステアと涼はゆっくりとした足取りで歩く。
 男の人はこういう所苦手かな? って思ってたんだけど……。
「男一人でこんな場所はちょっと来にくかったしね。誘ってくれて感謝してるよ」
 涼の言葉に自然と笑顔が溢れる少女。
「こうやって自然に囲まれてると癒されるね。俺も春が一番好きだけど。夏も秋も冬も。色んな景色を見せてくれるんだろうね」
 春だけじゃなくて、別の季節も君と過ごせれば、なんて思うんだけどな。
 他愛のない話が嬉しくて、だから、もっと教えて欲しいし、私の事も知って欲しい。
 アリステアは自分の心の中の『想い』にまだ気づいていない。まだ、もう少し蕾。
 ハート型の願石に込めるのは。
 一緒にいたい。もっと知りたい。
「恋愛成就。……ね。アリステア。キミは知ってて一緒に連れてきてくれたの?」
 涼のローアンバーの瞳がアリステアを優しく見つめるから。
 少女は顔が赤くなるのを自覚した。
 答えはまだいいからと言う相手への。
 ―――『想い』の花が少しずつ開いていく。
 植物事典を片手に園内を散策するのは糾華とリンシード。
「細かく手入れされてるのね。立派なフラワーガーデンだわ」
「……たくさん咲いてますね」
 ハーブも花も季節毎に植え分けされて、見る人を楽しませる工夫も十分。
「黒蝶館の庭も手入れするとこれくらいまで立派なの出来るのかしら?」
 大変そうねと云う糾華に同意するオリーブ・グレイの瞳。
「……きっと、できますよ」
 時間は掛かるかもしれないが、二人で力を合わせればいつかは……必ず。
「そうね、私達が出来る範囲で楽しく出来れば良いのよね」
「……愛着も湧くはずです」
 ―――貴女とならば、出来るかしら? ね、リンシード
 優しげなバタフライ・ローズの瞳は隣の少女を見つめる。
 種を撒いたであろう場所から小さな双葉が顔を出していた。
 亜麻仁の芽。リンシードと同じ名前を持つ存在。
 無いだろうと思って、手をつないで探していた。
 ここは、ハーブ&フラワーガーデン。きっと、どんな種類の草花でも存在する。
 在ったことが嬉しくて、二人でぎゅうと手を握り合った。
 その手は巨大なハートローズクォーツの凹みに添えられて。
「恋愛成就のハートの石?」
 それって成就された想いにも効果があるのかしら?
 ロアンはハーブの事をもっと知りたいという口実で旭をデートに誘っていた。
「わたしも使うのしかしらないのー。ローズヒップのお茶は癖なくておいしーよねぇ。お料理に使うのならローズマリーさんもすき!」
 キャンパスグリーンの瞳が元気に笑う。
「お肉と一緒に焼いたのをぱりぱり食べるのがたのしみなの。お花ならカモミールやジャスミンが有名だね」
「うん、僕より全然詳しい。僕は……カモミール結構好きかも」
 好きなものはどれ? と聞いたロアンに。
「一番はー、なんだろ? やっぱり(ろーず)まりーさんかなぁ」
 咲き乱れるハーブの花達に二人は感心しながら園内を歩いて行く。
「へえ、カレープラントだって。これも初耳だ……本当にカレーだ! 面白いね」
「あは、ほんとだ。かれー!」
 いつもクールなロアンが少しはしゃいでいるのを見て旭は嬉しくなった。
 きゅんとして、思わず腕に抱きついてしまう。
「……えへ」
 旭の仕草が可愛くて、ロアンも彼女に抱き返した。
 恋愛成就の石前、二人が願うのは『お互いの幸せ』

 風車が遠目に見えるフラワーガーデンに足を踏み入れたのはブリギッテとハンナ。
 妹の髪を梳かし撫でながら、故郷の空気を思い出す。
「綺麗でいいにおいの草花たち……会話することが出来れば、きみたちに名前を聞けるのに……」
 悲しげなアザレアの瞳が揺らいだ。
「あっ……ごめん、ごめんね、ハンナ。君と一緒に来ているのに、へんなことをいってしまったね……」
 妹を撫でながら少年は言葉を紡ぐ。
「ねえ、どうかな……とてもいい所だと思わないかい?」
 咲き乱れる花はどれも妹によく似合いそうで。二人でしばらく眺めて居た。
 広大な庭園を拓真と悠月は寄り添いながら歩いている。
「……そういえば、以前は薔薇園に足を運んだ事があったか」
「あれは確か去年の5月……1年近く前。早いですね」
 同じ季節、同じイングリッシュガーデンといえども、少しばかり雰囲気は違う。
「あれもまた綺麗だったが……今回の物は何と言えば良いか。暖かみを感じる気がするな」
 美しく繊細に彩られたローズガーデンと自然の形を残したハーブフラワーガーデン。
「ハーブに色んな花。此処は柔らかい、優しい感じがします……」
 ベンチで一休みすれば、遠くに見えるモノクロのコントラスト。風車だ。
「……風車で有名なのは、オランダだったか。何時か、行ってみるのも悪くは無いな」
「キンデルダイク……とか。確かに有名です」
 いつか、アークのリベリスタが世界に羽ばたき、仕事で海外に行く事があるのかもしれない。
「何時か……旅行とか。そう言うのも良いですね」
 しかし、出来ればゆっくりとした時間をごしたいものだ。
「それじゃあ、約束だ。何時か……必ず」
 黒曜石の瞳にグリーシァン・オリーブの瞳が映り込む程に近く。
 指切りの代わりに口づけを交わし、約束を誓うのだ。
 ―――何時か。その時を2人で迎えられるます様に―――


 快はハーブコーディアルを求めて園内を歩いていた。
 以前、自営の酒店で販売していたローズコーディアルが好評だったのだ。
 目に止まったのは数種類のハーブコーディアル。
 試飲可能だった中から快が選んだのは、りんご果汁をベースに、コリアンダー、タンポポ、クローバー、フェンネル等、多数のハーブをブレンドしたもの。
 ピカディリ・ブラウンのボトルの中で揺らいでいるそれは『DTX(デトックス)』ブレンドとのことだ。
 まさに、快にぴったりであろう。
 ボトルに入っているのは濃縮したハーブ。
 お湯やジュースで割ったり、カシスやジン等を使ってカクテルにするのも良いだろう。
 上機嫌に瓶を手にとってお会計へ。
 せっかくだからと販売所に立ち寄ったのはカンタベリー・ローズの瞳を持つヘンリエッタ。
「『はーぶ』香りのいい草の事を、ボトムではそう呼ぶんだね」
 笑顔で並べられたハーブ達に声をかけていく。
「やあ、可憐なスイートバイオレット。キミはどんな環境がお好みだろう? アップルミント、キミは?」
 感じ取ったハーブ達の声。
「へぇ、逞しいんだね オレの庭で、ともに生きてはみないかい」
 ヘンリエッタに抱きかかえられ嬉しそうなハーブ達。
 ああ、これでもっと賑やかになる。
 次は軽やかな足取りでハーブと一緒にアイスクリームを食べに行こう。

●美食とは至福
 ぼっちです!
 だけど、ヒトカラとか一人焼き肉とか余裕な俺には一人レストランとかも余裕ですし! おすし!
 竜一はシェフを指パッチンで呼ぶと自分となぎさに春野菜とハーブのコースを注文した。
「あ、えっと……」
「なあに、気にするな、なぎさたん。此処は俺の奢りさ。いつも頑張っている君へのプレゼントというやつだ」
 出会ったばかりの竜一に奢らせるなど恐縮で。なぎさはどうしたものかと海色の瞳を揺らす。
「君には甘えられる相手が必要さ。さあ! 遠慮なく! 俺に甘えてくるといいよ!」
 竜一の勢いは止まらず、さあさあ!となぎさを抱きしめる。
 突然の事に動揺しながら、たんぽぽ園の弟達にするように窘めたなぎさ。
「ダメですよ」
「よーしよし! 料理が来たよ、あーんしてあげる! あーん!」
「あの……」
「よく噛んで食べるんだよ!」
「……」
 話を聞かず、口に押し込まれそうになった料理。
 ―――ガツン!
 瞬間に竜一の頭に衝撃が走った。
 悪い子には鉄拳制裁。意外と厳しい園のお姉ちゃん。
「残したら、お仕置きですから!」
 そう言い残し、竜一の元から走り去るなぎさ。
「……ど、どん引かれた」
 ベルカはアクア・スプレイの瞳を爛々と輝やかせ、どのアイスにしようかと迷っている様だ。
「欲張って全部の味を試してみたり!」
 3つものアイスを頬張る。
「でも良く考えるとミックス味で充分だったかな……いたた、お腹が」
 幸せの青い羽根がふわりと地面に落ちる。拾い上げた指先は亘のもので。
 一目見て気になり何処か親近感が湧いてしまったのは……
 お互いが似ていると自身が感じたからでしょうか。
「ふふ、初めましてなぎささん。自分は天風亘と申します」
 青の天使と碧の少女が遭逢する。
「この青い羽根は貴女のですか?」
「はい。綺麗だったので購入しました」
 ありがとうございます。と言ったのはどちらからだろうか。
 しあわせのなごりに導かれたのは必然であろう。
「宜しければ一緒にティータイムを楽しみませんか?」
 青い羽根を返しながら亘は優しげな空色の瞳を少女に向けた。
 応える様に海色の瞳を細めるなぎさ。
「はいっ!」
 ラベンダーのソフトクリームとローズマリーティを頼んで、ゆったりとした時間が過ぎていく。

「わぁ、あちこちにハーブが。素敵ね。――あ、ここにも。いい香り」
 豊富なハーブティに歓声を上げるのはニニギアだ。
 目の前にはバイデn……おっと、危ないあぶない。赤の戦士ランディが居た。
「ランディはどれがいいかしら。ジンジャーやレモングラスはどう? 爽やかそうよ」
「そうだなぁ、何が良いだろうな、甘いよりさわやかな方が好みだが……」
 クッキー&アイスを頬張り、透明なガラスのティーカップに注がれたハーブティを頂く。
 もちろん、中身は『燃焼するアタシ』。これを飲めば脂肪判定回避が出来る!
「ね、甘恋と、暗黒と、笑顔の芽吹きならどれがいい?」
「……変な名前だなオイ」
 特に真ん中の『ぱる●んてぃ』!飲んで大丈夫なのだろうか。
 それより、気になるのは……。
「まぁ、そうだな、目の前の笑顔にちなんで笑顔の芽吹きって奴を頼むぜ」
 ―――誰のかって? 解るだろ?
 ランディのグラナート・レッドの瞳は優しげな表情を滲ませている。
「お料理も追加しましょうよ。まだまだつきあってもらうのです」
 にこにこの笑顔は何よりのスパイス。
「俺はマルゲリータとビール。……ハーブの店なら期待出来そうだしな?」
 なーに、存分に付き合うさ、と食いしん坊な彼女を見つめる。
 恋人と語らう時間にハーブを添えれば、そこはいつもより癒し成分が増すのだ。
「そういう事なら今日はお言葉に甘えるかな、でも世話も何も、俺がフィリスと居るのが楽しいから、誘ってるだけなんだからな?」
 そういう会話をしながら席に着いたのは琥珀とフィリスだ。
 彼女が頼んだハーブのコースを同じように頼む青年。
「店独特のアレンジが期待できそうだなぁ」
 ハーブ料理は初めてだが、それよりも目の前に居るフィリスの笑顔の方が気になった。
 出てきた料理を頬張りながら
「フィリスの色んな一面が見れるってのは嬉しいぜ。今日のお礼に、今度は俺に奢らせて
 ……ってそんな慌てて食べるなよ!?」
 咳き込む彼女の背中を擦りながら、可愛いなぁと琥珀は笑顔。
 彼女の照れ隠しと美味しかったという言葉に
「ああ、今日の料理は最高だなっ!」
 ……どれだけ料理が美味くとも、一人じゃここまで嬉しくなかっただろうな。
 アンバー・ゴールドの瞳を細めて青年は彼女を見つめていた。
「たくさん種類があって、どれにするか迷っちゃいます……」
「ねぇ、三千さん。これを頼んでみましょう。お姫様と王子様だなんて、素敵じゃないかしら」
「わ、素敵ですね」
 ハーブの洋食コースとプリンセスとクラウンのブレンドティを頼む。
 クラウンブレンドの香りが立つ白磁のカップを軽く掲げて、ミュゼーヌを見つめる三千。
「大好きなお姫様と過ごす一時に……」
「ふふ、王冠を戴いた王子様との逢瀬に……」
 ―――「「乾杯」」
 美味しいランチと、愛する人と過ごす時間は何にも代えがたい至福の一時。
「まるで、春そのものを味わっているみたいですね。ミュゼーヌさんと一緒ですから、なおさらおいしいです」
 素直な三千の言葉にミュゼーヌは少しばかり頬を桃に染める。
 普段の毅然な彼女からは想像も出来ないほど、たおやかな表情、仕草。
 お姫様にそうさせているのは、目の前の王子様で。
 自然と二人の間に笑顔が溢れていく。
 食後にはラベンダーのソフトクリームとモカのアイスを。
「後でお土産屋さんにも寄りましょう。家で淹れてもらうお茶、いっぱい買って帰るんだから」
「はいっ。いっぱい買って帰りましょうねっ。シングルのをひと通り買って、ブレンドのレシピも教えてもらって……楽しみです、えへへ」

 ―――食欲の春。そう、何も秋に限ったことではない。
 シェリーは『花』見で十分に春を満喫したからと、今度は『団子』に一直線。
『久しぶりだな。メニューの上から全部頼むのは。』
 怒涛の勢いで全てを完食した彼女はゆったりとした時間を過ごす為、シングルハーブティを頼む。
 しかも、一品ずつ全てである。
 サタンズ・スパークの瞳を優雅に細めて彼女は云う。
『さて、あとはのんびりとアフタヌーンティーを楽しむとしよう』
 真紅の修道服が吹いた風に煽られる。チラリと見えた太腿の上に走るガーターベルトは黒だろうか。
 海依音はレストランのテラスでローズマリーティをティーポットに注いだ。
「若返りとかアンチエイジングなんて革醒者には関係ありませんが……ここは乙女ゴコロ」
 ―――常に若く可愛くあるべきなんです! 女子は!
 もうすぐ三十路が迫っていようとも。否、だからこそ! ええい、歳の事を言うんじゃない。
 ローシェンナの視線の先にいたのはなぎさで。
「素敵なお誘いありがとうございます! ワタシ! 今! 若返ってますよね!」
「あ、えっ、はい! とっても綺麗です!」
 海依音の声になぎさはワタワタと応える。
「それはそうと、お名前が似ていて少し親近感ありますよ」
 海音寺と海依音。海の音。さざなみの音。確かに似ている。しかも同じルーキー同士。
 仲良くしましょうとクッキーをはんぶんこ。
「こういうのはね、一人より誰かと一緒にいただくほうが美味しくかんじますよね」
 舌だけでなく、会話や空気も、人間は美味しいと感じるから。
 ―――青がお好きですか? 海音寺君。海色の目に映る世界は輝いていますか?
 問うた海依音は記憶の中の『私』を思い出していた。ちょうど目の前の少女と同じ年の頃の話だ。


 那由他はなぎさをテーブルに招いた。
 お勧めを碧色の少女に聞いたグラファイトの黒はそれを注文する。
 出てきたリコリスのハーブティをガラスのカップに注ぎ、しばしのティータイム。
 カップの紅茶が半分程になった頃、那由他が三日月の唇を開いた。
「たんぽぽ園で私が何をしたのか知っていますよね?」
 なぎさの家であった養護施設で那由他は彼女の家族を嬉々として切り刻んでいる。
 そんな那由他に何故、感謝の気持ちを抱いているのか。
「あなたの考えが、私には分かりませんよ……」
「あの、私は……」
 自分に向けられる嗜虐的疑問符に海色の瞳を伏せるなぎさ。
「私が気まぐれに見せてる優しさに騙されているのなら、その認識は早めに改める事をお勧めしますよ」
 私は、基本的に残虐ですからね?
 誰かが傷ついたり、苦悩する姿を見るのも楽しくて仕方ないんです。
「ほら、なぎささんのその表情。可愛くて、もっと苛めたくなります」
 それでも、私に感謝などという感情を抱くのですか?
 ―――。
「私は、フォーチュナになった後、報告書を読みました。あの時は、『家族』を斬らなければ更に被害が出ていたでしょう。命を救って頂いたのですから感謝するのが当然です――っ」
 一気に捲し立てたなぎさの口調はどこかこわばっていた。感謝しなければならないのだと。
 そうでなければ、切り裂かれた家族や、目の前で弾丸に燃やされた兄が報われない。
 怖いのは悪いのは、リベリスタにそうさせた、『愛黄蝶』だったのだからと。
 那由他の言葉は家族を失ったばかりの13歳の少女の心に突き刺さる大槍の様だった。

 居ない兄妹を想う。どんなに手を伸ばしても。それは叶わぬ夢。

「ボクにとってはリリ姉さんは本当に姉のような存在だから、一緒に出かけるの嬉しいよ」
「私には下のきょうだいが居ないので、妹が居るってこんな感じなのでしょうか……」
 マーガレットとリリは姉妹の様に仲睦まじく土産物店内に歩を進める。
 数十種類のハーブ、アロマオイルにハーブティの試飲。はしゃぐ二人。
「メグ様はお好きなハーブや香りってありますか?」
「ん、バラの香りとか好きかな?」
「薔薇の香りはやはり優雅ですね。メグ様にお似合いです」
 褒めるリリ。照れるメグ。
 ローズヒップの試飲をすれば、「わ、酸っぱい…!」とラピスラズリの修道女が声を上げる。
 隣のメグは気に入ったと言ってあれもこれもとカゴの中に。
 ホワイト・シルバーの髪を揺らしながら妹が夢中になっている隙に、リリはフラワーキーホルダーを入手して。
 ……これは帰り際まで内緒なのです。

●お買い物
 土産物屋の中をうろうろとしていたなぎさに話しかけたのはコーディだ。
「いつぞやの養護施設の時以来であるな。まさかフォーチュナになっているとは思わなかった、が」
「あ! コーディさん。その節はありがとうございました」
 丁寧にお辞儀をした碧の少女にコーディは少しだけ微笑みをみせる。
「何か欲しいものがあれば買ってやるぞ。……まあ私もそれほど懐が暖かい方ではないが、うム」
「えっと……」
 どうしようとなぎさはオロオロとしていた。
「……なんかよく判らんがこの運命のストラップとかいいんじゃないか」
 なぎさの持っているメモ帳と同じ顔をした、てるてる坊主の様なストラップ。
「何かあったらお守りになるかもしれんぞ、うム」
 喜ぶなぎさを見つめ思うのは、彼女の名前。
 ―――海音寺、な……。
 コーディが対峙した六道のフィクサードに同じ氏の者が居た。なぎさと同じ海色の瞳をした男。
 ……あれがやはり父なのであろうか、な。
 そうであったとしても、コーディはそれをなぎさに伝えることはしない。
 父が護れぬなら、私が護ろう。代わりとしてはいささかどころか不足過ぎるであろうがな……。
「こんにちわ、なぎさちゃん。わたし羽柴壱也って言うの」
 ああ、三高平の男子ならば全員が知っているであろう、ヤバイ人物がそこに居た。
 どうヤバイかと言うならば、上下関係が厳しいというか左右関係が激しい感じである。
 僕のエクスカリバーである。おっと、良い子の皆は検索しちゃだめだゾ★
「あ、初めまして! 壱也さんもお土産を見に来たのですか?」
「そうそう。……わ、これみて!なぎさちゃんみたいな綺麗な青色」
 深海のディープ・ブルーをそのまま閉じ込めた様な石。光に煌めく部分は水面の様。
「綺麗ですね。何の石でしょう?」
「トンボ玉……? って書いてあるね」
 初めて見る深海の石を二人は夢中で見つめた。
「そうだ、ここで見つけたのもきっと運命だよ! わたしがなぎさちゃんにお土産にトンボ玉買ってあげる」
「あ、えっと……」
「その変わり、わたしのトンボ玉も選んで! お揃いの、トンボ玉つけよっ! どれがいいかなーっ」
 なぎさが壱也に選んだのは、中に繊細なアザレアの花が在るもの。
 きっと、赤い瞳の彼女に良く似合う。
「これから大変なことがいっぱいあると思うけど、一緒に戦おうね。
 ……独りじゃないよ、みんないるから」
 海色の瞳から流れた涙はなぎさではなく壱也の手で掬われた。
 ブックカフェ「七色の霞」に新しいメニューを追加しようか。
 春めく香りに誘われて店内を歩きまわるのは光介。
 趣味の料理に活かせたらと、茶葉を眺めてみたものの
「め、目移りしちゃいますね」
 試飲をする度に、味も香りもそれぞれ魅力的で、思わず売り場で立ち往生。
(あ、それなら)
 目に止まった碧の少女を呼び止めた。
「なぎささんは、どれがいいと思います?」
「えっと……」
 ふふ。少しずるいけど、選んでもらっちゃいましょう。
 だって……先日紅茶を淹れて差し上げた時の、瞳の輝きが忘れられないから。
 生まれて初めて感じた味と香り。海色の瞳は本当にキラキラと喜びを表していたから。
「また、淹れて差し上げたいなって」
 だったら、となぎさが選んだのはカモミール。この清純な花の花言葉が好きだから。
『逆境にも負けない』は自分自身に言い聞かせて。『親交』は大切な仲間へと。
 お茶も料理もきっと心持ち次第。せっかくなら―――――親愛なる誰かのために。


●お茶会
 レストランに併設されたテーブルにホワイトレースのクロスを掛ければそこはフィリエ達のお茶会に早変わり。
 【Place】の可愛い妖精たちに紅茶を振る舞うのはユーニアだ。
 朝摘みのカモミールをガラスの茶器に落としこむ。
 ポットの底で揺蕩う白い花。ふわりと広がる瑞々しい青りんごの風味。
 リリィが持ってきたお茶菓子とクッキーを広げて優雅なティータイム。
「美味しい。ハーブを混ぜると、色々な味わいが出るんだね。すごく上手」
「フラワーガーデンで、皆とお茶会…ハーブティーって良い香りだねぇ~……」
 ユーニアはフィリエ達の言葉にコバルト・グリーンの瞳を細めた。
「今日はご一緒できて嬉しいです。アガーテと申します」
 まだ、挨拶が出来ていない人に向けての良い機会だとアガーテは笑顔で挨拶。
 透明なティーポットに入れられたカモミールの花は底に沈みゆらゆらと揺れている。
「こんなに綺麗な器で淹れるのね……」
 サタナチアは興味津々にカーマインの瞳をきらめかせた。
「ハーブティー、ですか。いろいろな種類がありますのね。どれもいい香りがします」
 アガーテが並べられた茶葉を見比べる。
 ユーニアが用意したのはカモミールだけではない。沢山の種類を楽しめるように持参した物やお土産屋で入手した物など。
 更に彼女達の目を楽しませる為、ガラスのティーポットで淹れて、テーブルでサーブ。
「リリィちゃんが用意してくれたお茶菓子も美味しくて……リリスも何か覚えようかなぁ……」
「リリスが覚えたいなら、今度一緒に焼こうかな」
 とろんとした表情でリリィのクッキーを見ていたリリスにリリィは「約束」と指切りをする。
 
「皆の分のソフトクリームを買ってくるねっ!」
「あ、ルナちゃんそふとくりーむ買いに行くのぉ? リリスも付いてく~……一人で人数分持つのは大変そうだしねぇ……」
「コレでも皆のお姉ちゃんとして頑張ってるからね。ちょっと位へっちゃらなんだよっ!」
 ムーンシャイン・ブルーの瞳が笑顔で応えた。
 ルナはとリリスは皆がハーブティを飲んでいる間にレストランへと向かう。
 そして、手に余る程のアイスクリームを抱えて帰って来た二人。
「はい、バニラにミックスにラベンダー。皆はドレが良いかな?」
「あっ、ソフトクリームっ! ルナお姉ちゃんとリリスお姉ちゃんありがとっ! ボクラベンダー♪」
「ルナお姉さまはソフトクリームをわざわざありがとう!」
「知っておるぞソフトクリームは甘くて冷たくておいしいのじゃ」
 手にしたソフトクリームを美味しそうに食べるエフェメラ、サタナチア、ミストラル。
 ぱくりとラベンダーを口に含むと甘酸っぱい風味が口の中に広がる。自然と表情も緩む。
 サタナチアはほわーっとなった表情を、ボトムの人間であるユーニアが居ることを思い出して引き締めた。

 お茶会はゆったりとした時間を刻み。日差しはぽかぽかと暖かだ。
「んー……ちょっと、眠さが徐々に……」
 うつらうつらとリリスが船を漕げば、「ふわ……」とサタナチアも目をこすり始める。
「リリスお姉ちゃんは眠そうだねっ。眠気覚ましに何か飲むー? ……んー? これと、これ?」
 眠そうなスモーキィ・ブラックの瞳でエフェメラの持っていたハーブティを指さすリリス。
 細い指が示した先には騎士じゃなく安眠系ナイトブレンド。
 こくりと飲めば、ふわふわといい気分で夢心地。
「あはは……リリスお姉ちゃんがこれ飲めばそうなっちゃうよねー」
 眠りに落ちた黒の姫を抱きかかえているうちにリリスも眠くなって行く。
「帰ったら改めてお昼寝……お布団はふかふかの、ほかほか……よ」
 サタナチアが眠りに落ちれば、アガーテも若葉色の瞳を静かに伏せた。
 ……自然に囲まれていると、向こうを思い出しますわね。
 ぽかぽか陽気にすやすや吐息。フュリエのお茶会がお昼寝会に変わっていく。
 その様子を見たユーニアは通りがかったなぎさに声をかけた。
「いい所教えてもらったぜ、ありがとな」
「いえっ! 私もここに来てみたかったので。皆さんのお陰でとっても楽しい思い出になりました。ありがとうございます!」
 遠目に見えるコーンフラワーの鮮やかな青を見やり。
「ここの花やハーブも良いけど、なぎさの髪と瞳も綺麗な色だな」
「あ、えっと……」
 歳相応の少女が見せるのは頬をオパール・ピーチに染め上げるだけ。
 容姿等を褒められる事に慣れていないようだった。
「ルナお姉ちゃんは寝ないの? ……あっ、いいもの持ってるっ! ボクも飲みたいなー♪」
 エフェメラはルナの隣に座り、二人で春のワインで花見酒。

 色彩の庭園にスカーレットの絵の具が広がっていく。
 さあ、もう帰る時間。忘れ物はない? おっと。まだ渡していないものがあったような。
 リリはマーガレットを呼び止める。
「はい。メグ様にお土産です。今日はご一緒して頂き、ありがとうございました」
「わあ! ありがとう、大切にするね!」
 嬉しげなメグの笑顔。リリの顔も微笑みを浮かべていた。


 マリーゴールドのオレンジがスマルトの青に変わっていく。
 草花の芽吹きは春の便り。一つ、一人、違う色。
 あなただけの色彩を心に描いて。――――今日のスケッチブックは何色でしたか。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 如何だったでしょうか。
 春の彩りを感じて頂ければ幸いです。もみじでした。