●サクラサク 四月初旬。年度の切れ目が縁の切れ目、あるいは新たな縁の始まりでもあり。これまでの縁を絶やさないために、また新たな縁を紡ぐために人々は積極的に宴を催す。 四季の移ろい彩りが華やかな日本において、ことさら春、四月という時節において、この国には格好の酒の肴となるモノがある。 言わずとしれた桜である。三月彼岸過ぎには彼岸桜や垂れ桜が咲き始め、それと入れ替わるように大島桜にソメイヨシノと、五月に入る頃まで順繰りに咲き、人の目を楽しませ、そして春が去ると共に散り去っていく風物詩だ。 老若男女の区別なく誰もが目にし、愛でるモノであり。だが、それゆえに悲劇は起ころうとしていた。 ●桜見物は事後に 桜が開花する、その少し前。三高平にも桜前線は到達しつつあるが、まだ大半の桜はつぼみの状態で咲き誇るのを待っている。 大学でもサークルの飲み会や新歓などがあるのだろう、リベリスタたちを集めた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は手帳を閉じると、あらためて居住まいを正した。 「そろそろ暖かくなってきましたけど、リベリスタの活動に四季は関係ないようです。今回の任務はE・ビーストの討伐となります」 そう言うと、和泉はある都市一帯の地図を卓上に広げた。 「今回の相手は植物のエリューション……この時期ですと私達にもなじみの深い、桜が相手となります」 きゅっ、といつの間にか手にしていたボールペンで、和泉は都市を流れる川沿いに丸を付ける。 「河川敷に植えられた桜の木がその都市では有名なのですが、その一部がエリューション化することが予知されました。現場となるのは今印を付けた一帯となります」 和泉が丸で囲んだのは縮尺の大きな地図とは言え、大雑把にいって長軸が500メートルほどの楕円。戦場としては、かなり広い。 「エリューション化が甚だしい桜が1本。および、その周囲で革醒の進んだ昆虫や雑多な植物が敵性存在として予知されています」 ブリーフィング用ディスプレイが点灯し、そこに敵となる桜の姿が映される。 「桜のフェーズは2、エリューション化の影響か、咲き誇るその姿は幻視を突破できる者にしか認識できません。また昆虫の中にもフェーズ2エリューションが存在するようです」 毛虫の体をそのままに羽が生えたようなエリューションの姿がディスプレイに表示され、虫が苦手なのか、数人のリベリスタが顔をしかめた。 「桜と、その昆虫を除けば他は全てフェーズ1、革醒直後なのもあってか能力はほぼ同質のようです」 そこまで説明したところで、和泉は依頼の概要について纏めた書類をリベリスタに配布する。 「あと数日もすれば他の桜も満開になり、そうなってからでは人通りが増えて被害者が出ることになります。結果として桜を1本切り倒すことになるかも知れませんが、怪談のように桜に血を吸わせては本末転倒でしょう」 そう締めくくったあと、和泉はそっと雑誌を卓上に置いた。 「垂れ桜はまだなんとか残っているでしょうから、対処のついでに、軽く花見としゃれ込むのも悪くないかも知れませんね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Reyo | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月14日(日)22:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●咲き誇る怪異 遠目から見ても、散り始めた垂れ桜と未だつぼみのままのソメイヨシノに挟まれて、その桜花は見事に咲き誇っていた。昼間の陽光と相まって、時折通り抜ける春風に散らされる花弁はまさに美麗な日本風景を想起させる。 リベリスタたちは事前の打ち合わせ通り、アクセスファンタズムを用いて運び込んだコーンとロープ、そして「ご迷惑お掛けします」「50m先工事中」などといった看板を手際よく設置していく。昼間の河川敷だけあって時として人通りもあるが、看板を見るか、コーンとロープで意味を察すると自然とその脚は遠のく。 念には念をと、河川敷一帯を千里眼で見通した『贖いの仔羊』綿谷・光介(BNE003658) が首を縦に振る。エリューションの手が届く範囲に一般人はいないことが確認された。 光介の首肯を合図に、戦場確保のための用具設置を終えた者から次々と戦闘に向けた準備を開始した。己の速度を、魔力密度を高め、作戦の要となる者へ意志の力を授け、絢爛たる怪異と相対する用意を調える。 「それでは人払いはこれで仕上げといたしましょうぞ……ここからは任務遂行の時間でございます」 仲間が準備を整えたのを確認し『闇夜の老魔導師』レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096)が一際強く編まれた結界術式を張り巡らす。キンと澄み渡る空気。河川敷の日常から切り取られた戦場がいまここに顕現する。 そして咲き誇る桜花が結界に応えるように蠢く。本来動くはずのない枝葉がざわざわと揺れ、擦れ、その音を合図とするように大地を割り姿を現す昆虫型エリューション。僅かに鱗粉を散らしながら羽根を開き、宙に舞うは2体。同時に舞い散った花弁と葉が一塊の胞子のように寄せ集まり、4の塊となって浮かび上がる。 現れたエリューションに、ザン、とリベリスタたちが一歩を踏み出す。互いに目線を交わし、頷き。後に控えた花見を心置きなく楽しむためにも、怪異の被害を生まぬためにも、全員が己の得物を構えた。 「面倒だ。とっとと片付けて酒飲むぞ」 先陣。一瞬身を屈め、直後、跳躍し周囲の樹木や地面を足がかりに突撃するのは『神速』司馬・鷲祐(BNE000288)。その称号の通り、神に等しき超高速から繰り出される蹴撃が容易く怪異桜花の枝を刈り取る。 「動かないなら、切り倒してしまうのが簡単だな」 足下に蹴り刈った枝を踏みしめて一言。パキリと怨嗟を上げるように枝が軋む。 「雑魚はわたしに任せて!」 続いて、怪異桜花の独壇場となる距離を走り抜けた『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が、致命を与えぬよう軽やかな攻撃を連打し、塊状の植物型エリューションの注意を次々引きつけていく。本来意志などない植物とはいえ、エリューション化したなら話は違う。攻撃手段を持たない幼若な個体であれ、軽んじられたとでも感じたのだろう。舞姫の周囲にわらわらと草の塊が寄り集まっていく。 寄り集まった草塊に好機を得たと飛び出す徒手空拳のリベリスタが1人。 「義桜葛葉、推して参る……!」 放たれた拳が掻き消え、一瞬後に多重の幻影を伴って草塊と空を舞う昆虫を打撃する。『閃拳』義桜・葛葉(BNE003637)の縦横無尽な拳撃が、草塊からの反撃に傷を得ながらもエリューションたちを悉く殴り尽くした。 しかしその間にも飛び出てきたリベリスタ、特に最前衛にいる葛葉に昆虫が羽ばたき近寄る。とはいえ、空中を舞いながらその体から射出された毒針も、速度の加護を受けた葛葉には届かない。 「……毛虫って、なんのために存在してるんだろうね、ホント」 「今はどうでもいいじゃん毛虫なんて――さぁて、引っ掻き回させてもらうよ!」 むしろ、宙を舞う昆虫の距離が近づいたのを良いことに『不機嫌な振り子時計』柚木・キリエ(BNE002649)の気糸が草塊、昆虫の双方を纏めて狙い撃ち、『デイブレイカー』閑古鳥・比翼子(BNE000587)が羽ばたき、残像を残す速度で乱舞。僅かな手傷と引き替えに、草塊をバラバラに散らし元の雑草へ回帰せしめ、昆虫にもまた打撃を与えた。 「貴方も人間のように動いてみたかったのですか? なんとも、度し難いですね」 腕の振り払いをひとつ。神を信じぬ『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)の厳然たる意志が呼び起こした光が怪異桜花と昆虫エリューションを纏めて焼き尽くす。 「春の色めく佳い季節に、斯様な興を削がれる桜の花はさっさと切り落とすに限りますから」 戦闘開始から未だ10秒足らず。的確な連携が、素早くエリューション達を刈り取る。 ●桜花舞う ざぁ―― 肌を撫でるような風もない、ただ闘いの響きだけがある戦場でざわりと桜花が揺れ、風もなくしなった枝葉から花弁が飛び散り、その1枚1枚が鋭い桜切片となりリベリスタたちを纏めて切り刻んだ。 「くっ、桜花が纏わり付いて――これは厄介ですな」 「この程度、と言いたいところだが、面倒な!」 黒いスーツに華を添えるように纏わり付いた花弁。レオポルトの服に傷を入れ、なおかつ動きを阻害する無数の花弁に彼は顔の皺を深くする。同様に桜に絡め取られるリベリスタも数名。特に桜への打撃を優先した鷲祐へは桜の纏わり付きが色濃い。 だが、絡み纏わり付く花弁をもろともせず、光介の目は仲間と、相対する桜を見詰める。 「ボクのなすべきことをなすために……その酷な美しさ、今は見とれるのではなく受け入れます」 詠唱と結印。体系的に形成され、合理化された術式が光介の手の中で光を発する。 「術式、迷える羊の博愛!」 微笑みと共に拡散する声と治癒の息吹が、手傷を癒すと共に仲間の体に纏わり付いた桜吹雪を吹き飛ばす。 「ありがとうございます。では私も、私のなすべきことをなしましょう――力持てし四の韻の下に、我紡ぎしは秘匿の粋、禍つ曲の四重奏ッ!」 既に前線はエリューションとリベリスタとが乱れる戦域。仲間を巻きこまぬよう選択されたレオポルトの魔術が、敵と仲間の間隙を縫うようにして昆虫エリューションを撃つ。 4色の絢爛な魔光が強かにエリューションの羽根を打撃し、それまでのダメージ蓄積と相まって胴体からもぎ取るようにそのまま貫いた。浮力を失い、地面にぼとりと落ちたエリューションはそのままさらさらと土に帰るように形を無くし、消えていく。 雑魚散らしを終え、フェーズ2エリューションのうち1体までもを仕留めてリベリスタたちの気勢はいよいよ高くなる。 残されたもう1体の昆虫エリューションがぎちりと歯を鳴らすと、ごくごく小さな虫が群れ、群体生物じみた動きで戦場にその姿を現した。事前情報で召喚を予知されたフェーズ1エリューションだろう。 増えた雑魚には目もくれず、その掃討を仲間に託して鷲祐が身体を屈める。 「所詮植物か? その程度では薪にもならんぞ!」 言葉による挑発は届いているのか、それでも行動で示すと、わざわざ跳躍の足場に怪異桜花を用いる変則的な軌道で宙へと駆け上る。上空へと脚力だけで舞い上がり、宙を舞う昆虫エリューションへとその蹴りが突き刺さった。 めり、と毛虫のような外見からは想像できない感触と共に鷲祐の蹴りがエリューションを貫き、抉り、そのまま突き抜けるようにして体躯を真っ二つに蹴り割った。地面に落ちる時間すらも与えられず、空中でエリューションの身体が四散。動きと共に生じた風が僅かに桜を舞い散らせ、それを背後に鷲祐が華麗に着地する。 怪異桜花の周囲を固める他のエリューションが散ったことで、残る殲滅対象は桜本体のみ。囮役を交代したキリエが己に防御の意志を宿し、桜のもたらす異常への態勢を整え、それを横目に舞姫が日本刀を抜く。 「血を吸うならわたしのにしておきなさい、きっと美味よ」 片手での器用な抜刀。抜きさり、構えるまでの一瞬でその白い肌に赤い筋が1本。自傷による血の臭いをどうかぎつけたのか、ざわりと怪異桜花の根が蠢いた。 根の蠢きを気にすることなく舞姫が突撃。鷲祐に次ぐ速度から繰り出される高速の斬撃が、生木を割る湿った音と共に桜の枝を切り払う。 「動いたり暴れたりする桜なんてお呼びじゃないぜぇ。なんてったって鳥の止まり木にもなりゃしないんだから!」 羽ばたきと残像。リベリスタの脚力と翼となった腕で跳躍した比翼子が、上空から鋭い刺突を放ち墜ちる。 「桜なら咲いたら潔く散らないとねっ! 必殺、ひよこ殺法!」 ばき、ぱきりと刺突によってまた枝打ちが成される。咲き誇っていた桜の姿は既に半分以上の枝が折られ、また花弁も舞い散りもはや見る影もなくなっている。 「見事な桜であったが――」 着地した比翼子と入れ替わるように葛葉が拳を溜め、前へ。 「その気高き姿ですら、俺を拳を止める事は出来ぬ……!」 一瞬にしてその数は無数。一の打撃音の間に何重もの拳が重ね放たれ、その名の通り閃いた拳が桜木の幹をそのままへし折らんばかりの勢いで痛烈な打撃となる。 めきりと。鈍い音。 咲き誇っていた桜花は次々と舞い散り、宙へ舞う先から次々と砕け、さらさらと薄桃色の粉末のようになり消えていく。 打撃を重ねられた幹が悲鳴を上げゆらりと傾いだ。 「畳みかけましょうぞ!」 「ええ、いますべきことは、癒しではなく攻撃です!」 レオポルトが術式を紡ぐ。仲間の回復を重視していた光介も、味方の損害が少ないことと桜の軋む音にいまが好機を魔力を弾丸状に成形した。 「我紡ぎしは秘匿の粋、エーテルの魔弾ッ!」 「術式、羊角の貫撃!」 鋭く駆け抜けた魔力の弾丸が桜花の幹に穴を穿つ。穿たれた穴から流れ出る樹液はまるで血液のよう。桜花もその全てが散り散りになり、既に丸裸である。 「今の姿ではとても見れたものじゃないですね。魅入るのにはすこし物足りない」 言葉と共に海依音が放つのは聖気を感じさせる1本の矢。魔力で編まれた一矢が、彼女の言葉通りみすぼらしい姿を晒した桜へと吸い込まれるように突き刺さる。 斬撃と弾丸を受け、惨めな姿を晒しても未だ力はあるのか、地中からドリルのごとく突き出た根がリベリスタの血を求め荒れ狂う。 しかし回避力の高い者達が務める前衛を狙った根の一撃は掠ることすらなかった。むなしく、根が再度地中へと潜る。 既に大勢は決していた。 「――徒花、散り舞え!」 最期の一撃。鷲祐の蹴りが、残った一輪の花弁ごと、桜花を割った。 ●花見 エリューションの気配が消えた。光介と舞姫が千里眼で周囲を走査し、増殖性革醒現象が他の桜に伝播していないことを確認。その間に他のリベリスタたちが立て看板やコーン、ロープの類を収納していく。 幻視を突破しなければ見えなかった桜花はいまや枯木よりもひどい有様で、近いうちにアーク処理班の手で本格的に伐採がされることになるだろう。ひとまずエリューションの討伐という形で仕事を終え、周囲を見回せば花見をするには十分な程に咲いた垂れ桜。全員が目配せして、自然とリベリスタたちの足が近くの桜花の根元へと向く。 「適当にジュースとかつまめるものとか持ってきたよー。この花見は閑古鳥商店の協力でお送りしています」 桜の根元にいち早く荷物を広げたのは比翼子。ピクニック用のシートをばさりと広げ、その上に次々と繰り出されていくのは「閑古鳥商店」の店名とロゴの入ったプラスチックケース。中には言葉通り飲料とお菓子が多数。一晩騒いでも充分足りそうな量が提供される。 「桜もですけど、これもまた春の恵みですね」 にこにこと笑顔を浮かべ、光介が差し出すタッパーに入っているのは若筍煮。時節の食べ物ということで、なにより手作りらしいその煮物に生唾を呑み込む者も数名。 「花見までやってきて良いとのことなんですから、楽しみましょう」 「良いことです。それでは私めからはシュヴァルツビアと鱈のブランダードを」 光介の言葉に頷き、レオポルトが取り出したのはまだ肌寒いこの時節でも冷気をまとったビール瓶と、マッシュポテトのように見えなくもない白い塊の入ったタッパー。 「ブランダードは、塩漬け鱈で作るポテトサラダのようなもの……クラッカーに載せてよし、成人の方はビアとご一緒に。よろしかったらいかがです?」 懐から取り出したナイフでクラッカーにブランダードを一乗せ。差し出されたクラッカーを受け取ったのは鷲祐。酒瓶を抱えつつ、クラッカーを囓った鷲祐の口から旨い、と呟きが漏れ、そのまま言葉を続ける。 「いい酒のアテになるな。飲むぞ。もちろん、朝までだ」 「いいねぇ鷲祐君! それじゃあ勝利にかんぱーい! と、勝ってるのに完敗とはこれ如何に?」 それはともかくワタシもクラッカー頂戴! と手を上げた海依音にブランダード乗せクラッカーを差し出すレポポルト。成人組は酒の栓を開ける者も出始め、早くも宴会ムードが出来あがりつつあった。 「……うむ。やはり桜とは我が心の花よ」 レオポルトから受け取ったクラッカーや鷲祐に勧められた酒を嗜みつつ、静かに桜を見上げるのは葛葉。そろそろ日暮れも近づき、時折冷たい風が吹き抜けるが、そうして散っていく様もまた美しい。今年もまた良い花が咲いてくれたと、葛葉はここにはいない誰かに杯を掲げた。 少し離れたところで桜を見上げる者も二人。舞姫とキリエだ。どこかそわそわした様子の舞姫にキリエが首を傾げ、それに応えるように舞姫が包みを取り出す。 「じゃーん! おばーちゃん直伝の桜餅作ってきました! 舞姫ちゃんったら女子力高いでしょ!」 「舞姫お手製かい?」 にこやかに微笑みながら、解かれた包みから見える桜餅にキリエが手を伸ばす。 「う、うん! ちゃ、ちゃんとわたしが作ったよ? おばーちゃんにもちょっとだけ手伝って貰ったけど!」 「……そっか、ちょっとか」 わたし葉っぱ巻いた9割くらいかな? と言う舞姫に苦笑しつつもうんうんと頷き、キリエは桜餅をかじる。淡いピンクと葉の緑、内部につつまれたあんこの程よい甘み。確かに花見にはもってこいの和菓子だとキリエは舞姫をねぎらうように頭を撫でる。 冬を越えた喜びを仲間と分かち合い春を迎える。そう、闘いを終えていま仲間と花を愛でるように。美観はさして重要じゃないということかもしれないと、今隣にいる舞姫の暖かさを感じてキリエは桜を見上げた。 宵越しの酒と宴と。途中で一般人も混ざり、夜を明かす勢いで花を愛でる。 後片付けはしっかりと、他のリベリスタを一足早く返して、そろそろと白みつつある空を背に海依音は赤ワインを片手に、刈り取った怪異桜花を訪ねた。 手早く流す赤ワインは、かの書に記されたような血の代用となりうるのか。それでも。 「普通の桜に戻って、もう一度芽吹くと良いですね。また、来年。今度は、ワタシ自ら魅入るような桜になってくださいね」 瓶1本、まるまる捧げて微笑み1つ。踵を返した海依音の背後で、花弁が1枚、舞っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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