●血に塗れた女の覚悟 ――とある郊外。表向き、カタギを装った小さなヤクザの事務所。時間はまだ、『朝』の範疇に入るだろうか。 「さて、と。……準備はいいかい?」 勝気な様子はそのままに、一家を構成する面々の顔つきを確かめるように見つめる山楝蛇 蘭子(やまかがし・らんこ)。 素のままでもそれなりに綺麗な顔立ちの彼女に、元々ふざけた様子は見られないのだが、今朝の彼女の漆黒の瞳には、普段より一層際立って、真剣な色が湛えられていた。 「「へい、姐さん。俺らの準備はバッチリでさ」」 「俺たちも準備万全っすよ。お頭の強さも重々分かりましたし、リベリスタでしたっけ? あいつ等の腕前が俺らよりも少しだけ上だってのも理解してるっすから!」 蘭子の声に、一家の幹部、火巫 拳(ひかなぎ・けん)と、雷頭 貫一(らいず・かんいち)が頷くと、それに追従する4人の若い衆。全く以て彼らの舌はよく回る。 「よく判ってんじゃないか。それなら話が早い。今回、あんたたちは留守番だよ!」 蘭子がにべもなく言い放つ。 「へっ!? マジっすか! 何でなんすか、お頭!!」 「ハッキリ言わなきゃ分かんないのかい?」 「そんな、お頭~!」 蘭子の足元に縋りつく4人。既に相当情けない気もするが、本人たちは至って真剣。 「てめぇら。姐さんの言葉に逆らう気か!?」 拳がスゴみを効かせ、若手4人を黙らせる。 彼には蘭子の想いがすぐに分かったから。無闇に若い連中を死地へ送り出すような真似はしたくない、という想いが。 そんな彼らを制するように、今度は貫一が蘭子の前へ。 「……まぁ、こいつらの留守番は良いとして、それだと少し頭数が足りないんじゃ?」 「あぁ。それなら心配要らないよ。配島からコマをまわして貰ったからね。ま、使い捨てるのも躊躇いないようだから、今頃あたしにコマを回したことも忘れてんじゃないかねぇ? とにかく、下にいるからお前たちで半分ずつを纏めときな!」 「「へいっ!」」 そして、蘭子は拳と貫一を脇に従えると神農の掛け軸とその上の神棚に向かって手を合わせる。そして、神棚に祀っていた長ドスを手に取る蘭子。 「姐さん! そいつぁ……」 「そうさ。拠点に乗り込もうってんだ。本気を見せなきゃ失礼ってもんだろ?」 長脇差『紅柳』(べにやなぎ)――使い手の力とクリティカル率を飛躍的に高めるアーティファクト。しかもその力は、血の匂いの濃さと共に更に力を増すと言う、何とも乱戦向きの得物。 「しかし、姐さん……本当にカレイド・システムは心配ないんですかね?」 「さぁねぇ? けど、対策は出来てるって話だったろ? なら、あたし達は信じるだけさ。ま、この間の連中に会えないのは残念だけどね……とにかく、あたし達の使命は一刻も早く『時村 貴樹』の命を取る。あのシンヤみたいに血生臭いだけの奴らなんかより先に、ね」 (姐さん。今回こそは必ず俺らの力で……) 旦那に一目置かせてみせる……拳と貫一は、敬愛する姐御のために、今回こそは命を棄てるのも厭わぬ覚悟を決めていた。 ●時村本邸 トゥルルルル……。トゥルルルル……。トゥルルルル……ピピッ。 「出てくれて助かった。危うく切ろうと思ったところだ」 時村沙織(nBNE000500)はいつになく急いた様子を隠さずに告げた。 「いいか。緊急なんで質問はなしで聞いてくれ。ついさっきアーク本部の方に電話が入ってな。何者かは知らないが……そいつの話によれば時村本邸がフィクサード達に狙われてるって事だ。目的は親父の暗殺。……まぁ、効率的って言えば効率的なやり方だな」 急いでる割には台詞を噛むこともなく、一息に告げる。 そして、言われた通り問いを返すこともなく待つリベリスタに対し、当然のように話を続ける。 「ただ……おかしな事にそれだけの事件をカレイド・システムが何も感知していないんだ」 と、不審な様子を隠そうともせずに告げる。 「匿名だし、情報にどれだけ信頼が置けるかは微妙だが、本邸の方と連絡が取れないのは事実だ。放っておく訳にもいかないだろ。それに、例のフィクサードの攻勢で本部の方はかなりばたついてる。そうでなくても本部から戦力を回してたんじゃ間に合わないだろう。俺の方で付近に居るリベリスタに連絡を取って戦力を編成するから、すまんが一刻も早く本邸の方に急行して親父のガードに当たってくれ」 と告げるや、互いの受話器に沈黙が走る。 勿論、沙織が待っているのは承諾の返事のみ。幸い、さほど待つこともなく了解の旨が返るや、幾許か安堵したように次の言葉を紡ぐのだった。 「或る程度、時間を稼げば援軍を送れるかも知れん。それに連中も交戦が長引くのは嫌うはず。だから、それだけは念頭に置いて臨んでくれ。最悪の事態(親父の死)だけは阻止できるように……」 最後の一節にこそ本音が含まれるのかも。沙織は、頼む……とだけ付け加え、通話を切った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:斉藤七海 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月30日(木)02:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●血風舞う離れ ――時村邸。広い本邸と、それに連なる離れ。そして周囲に広がる日本庭園。 平時なら、侘び寂びを体現するであろうそれらも、かつてアークに届けられた報告書にあるフィクサードたちによって蹂躙され、あちこちで、一足先に駆けつけた同胞たちとの戦いが始まっていた。 正門、裏口……そして庭園、離れ。もちろん本邸も。 (せっかく発足した、日本を護る組織を……アークを潰させたりするものか!) 手にした剣の柄を握り、『シルバーストーム』楠神 風斗(BNE001434)が仲間と共に庭園を駆け抜ける。そこら中で既に始まっている戦いを後目に。 「こんな時に不謹慎だけど、直接電話を貰ってお願いされるなんて、悪くない話ね。必要とされる事。それがアタシにとっては何よりの原動力なんだし……」 唇の端に僅かな笑みを見せながら、『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)が呟いた。 そんな彼女たちが離れの脇に着いた辺りで、中から溢れんばかりの剣呑な気配が迸る。 そして……聞こえてきたのは、覚えのある『声』。 (今の声は……?) 『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)の脳裡に鮮やかな記憶が蘇る――喉を切り裂いた鮮やかな赤い爪――伴って湧き上がるのは恐怖ではなく、悔しさと憤り。 (やらせねぇよ。じーさんも、そしてニニも……な!?) と、裡で呟く『悪夢の忘れ物』ランディ・益母(BNE001403)以外の面々が気付いたかは知らないが、いずれにしても誰1人確かめ合うこともなく、離れの中へ。畳の間や板張りの廊下を幾つも走り抜け、途中、柱を折るなどして道を塞ぎつつ『声』の主を捜す。 (絶対に、時村司令は殺させない……。沙織さんのお父さんを、死なせたりはしない……!) 『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)が、走りながら拳に力を込めた時、ちょうどその視線の先に……かつて見た3人に加え、入り乱れるように刃と銃弾を交わす見慣れぬ者達の姿が映った。 「何だい、手応えのないヤツらだねぇ。本当にやる気あるのかい? あたしは何でもテキトーに、みたいなヤツが大嫌いなんだよ!!」 変わらず、威勢の良い啖呵を切る山楝蛇 蘭子。対しているのは僅かなリベリスタと、時村家に従う護衛の者たち。 ――数も、質も。語るに及ばず。 始めこそ幾らか戦えていたようだけれど、結局は一方的に畳の上に鮮血を散らされて。 その只中に、8人は飛び込んでゆく。 「これ以上好きにはさせん! ここがお前たちの行き止まりだ!」 と、風斗。 「先達はほぼ全滅か。実に暴力組織らしいやり方で清々しいじゃない。ハハ、ハ……あ、無理、機関がギチギチ痛んで、笑えねぇ」 怒りに身を震わせながら、『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は顔の筋肉を歪ませた。 「ぜったいに、ぶちつぶす!」 「なんだい、また新手かい? 懲りないねぇ。血を捧げる覚悟は済ませて来たのかい……」 「あらお久方ぶり、今度は凄い気合いの入りようだわね」 嘲るように言った蘭子のそれにも怯むことなく、『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は銃を構えながら言い返す。 「前回の決着……と行きましょうか? 色々ときな臭いけどね、今回の件は……」 「ん、あんたたちはこの前の……。ふぅん、偶然ってヤツは憎いもんだねぇ」 「偶然? 確かにあなた達に当たったのは運命の導きかも知れない。けど……」 『戦うアイドル女優』龍音寺・陽子(BNE001870)が、情報のリークを匂わせようと切り出す。が、蘭子はそれを、言い終わらぬうちに左手の指を立てて制止した。 「おっと、いい気分に水を差すんじゃないよ! アタシは今、十年来の級友に再会したような気持ちなんだからさ。どうせお互い、安い言葉で分かりあえるほど器用に出来ちゃいないんだろ? とことん互いを見極めようじゃないか!」 続けて彼女が饒舌に語り終えるのを待つことなく、名も無きフィクサードたちが動き始める。 ――仕事、なのだから。至極当然のことなのだけど。 「やらせないわ!」 既に集中の極みにあったエナーシアのショットガンが立て続けに咆哮を放つ。スズメバチの群れが襲ったかのような無数の射撃。 手下フィクサードたちの元から、派手な血飛沫があがった。 「いやいや、流石と言うべきか。それに比べてうちは躾がなってない……」 雷頭 貫一が心無い称賛と共に、いかにも嘆かわしそうに告げる。 「ま、いいさね。喋ってる暇も惜しいのは間違っちゃないからね」 告げながら蘭子は柄に『紅柳』と彫られた長脇差を抜き放つ。漂う鮮血の臭気を吸い込むように妖しい輝きを増す刃。そんな蘭子の目の前に、風斗が真っ先に飛び込んでゆく。 「お前が大将だな。オレは楠神風斗。しばらく付き合ってもらうぞ」 同時に喜平は辺りに澱む血の匂いを警戒し、壁や天井に向けて『スーサイダルエコー』をぶっ放す。 「……狙い違わず、終わりを砕け!」 と。 余計なことは何1つ語らず。 言うべきは、もっと因縁浅からぬ奴のすることだから。 ●妖刀『紅柳』 「とことん……とは言ったけど、こっちもお務めでね。時間がないから最初からトバしてくよ!」 紅柳を一閃。風斗はすかさず身を捻るも、鎖骨から胸元にかけてを切り裂かれ、蘭子との間を赤く染める。 「くっ! だが、そう簡単に壊せると思うな!」 狙われるのが自分ならそれで良い、と。 「わたしも一緒に! 蘭子さんと……以前の決着をつけるんだから!」 風斗に並ぶように前に出た文の足下から、明かりに照らされた影が伸び、人型を取る。同時に喜平の足下からも、影が厚みのない体をむくっと起こした。 「おや? 誰かと思ったら、この間のワンコちゃんじゃないか!? 名を馳せるようになったようだねぇ……。それに、そっちの眼帯も随分話題にゃ上ってるみたいだしねぇ」 余裕ともとれる笑みを浮かべる蘭子だったが、その側近たる火巫 拳や貫一からはそうでもないらしい。 「「姐さんっ!」」 短く声を上げ、駆け寄ろうとする2人だったが、その行く手を、ランディと陽子が遮った。 「てめぇの相手は俺様だろうが。拳よ、存分にやり合おうぜ?」 破壊的な闘気が彼の全身を包み込む。 「そして貫一さん、君の相手はボクだよ」 言いながら、先手必勝とばかりに踏み込んだ陽子の拳は貫一の頬を擦り、纏いし炎が皮膚を焦がす。 「いきなりとは手厳しい。陽子さん……でしたか、女の子を傷付けるのは趣味じゃないんですが……」 頬を指先で一撫でした貫一は、いつの間にかもう一方の手にナイフを握っており、言葉とは裏腹に躊躇なく陽子を斬り付ける。 同じく拳もランディの挑発に乗り、その真正面に立つと、業火に包まれたパンチを叩き込む。 「今回ばかりは、この間以上にマジなんでさァ……」 前より遙かに重い拳固が炸裂し、ランディの膝が折れそうになる。 「でーくん!」 一瞬のことに、円陣の中心から叫ぶニニギア。だが、すぐに落ち着きを取り戻すと、天使の歌声を響かせた。 幹部クラス2人の様が他の者たちを刺激したのか、調子付いた手下たちがリベリスタらを銃撃。 「時村のお爺様には……手を出させやしない!」 恵梨香の手に宿りし魔界の炎。それが雑魚たちの間で弾け、敵を纏めて呑み込む。そして再びエナーシアの銃撃乱舞。 「「「ぐはぁっ!!」」」 相次いで雑魚どもが斃れゆく。辛うじて余力を残した者もいたけれど、直後、壁を蹴った喜平が放ったショットガンの強襲が、最後の1人となった名も知らぬ者に逝き場を与えたのだった……。 「だらしないねぇ……これなら、うちの若い衆の方が使えるよ」 身内ではないせいか、辛辣な言葉を掛ける蘭子。その手の紅柳が、血の匂いに反応したかのように妖艶な紅の輝きを増していた。 (あれは……彼女が傷付けずとも、流れた血の分だけ力を増す?) エネミースキャンによる分析も相まって、恵梨香は迷わずその予測を皆に伝えた。 「そう。当たりだよ! 今のコイツは少~し痛いかもねぇ!? 覚悟をし!」 蘭子は見知った文を標的に定めた。知った顔には情が移ることがあるからだろうか!? 紅柳が一閃。長い刃が小柄な彼女の柔肌を貫……いや! 間に風斗が割って入ると、その左胸より少し下辺りを、刃が抉る。 「ぐっ……これしき……」 一瞬で途切れそうになった意識を無理やり押しとどめ、運命を手繰り寄せる風斗。 「アークはな……お前らみたいな理不尽からみんなを護るための組織だ……だから倒れるわけにはいかない……オレは、アークのリベリスタだ!」 「男だねぇ……」 そこから先はリベリスタとフィクサード、互いの誇りと力とを掛けた削り合い。 文から立ち上る気糸が締め付けるも、麻痺させるまでには至らない。尚更、戦いは激化し、静かな筈の日本家屋が、まさに血で血を洗う凄惨な戦場と化した。 「命を賭してんのはてめぇらだけじゃねぇ……俺だってそうさ。だが、俺がくたばったらあいつはどうなる? てめぇが逝ったら、残ったもんはどうする!?」 強引に拳の間合いを奪い、斧を打ち込むランディ。直後、目の前まで肉迫して語りかける。 「構わんさ……姐さんさえ無事なら、な」 小声で呟く拳。そしてランディの身体を抑え込むようにして蘭子の元へと押し出す。 「そのまま放すんじゃないよ!」 紅柳の妖しい輝きが、背から肺へと斜め上に貫いたのだった……。 ●重なることなき覚悟 雷の如き衝撃が全身を駆け巡る。それは――瞬間を目の当たりにしたニニギアのこと。が、そんな彼女を思ってか、ランディは力強い意志を以て運命を引き寄せる。 すかさず、トドメとばかりに細身のナイフを向けた貫一に、それを上回る反応速度で燃える拳を叩き込む陽子。 「相手はボクだって、言ってるでしょ!」 その間に天使が抱擁。その息吹の力で彼の傷を癒す。 直後、貫一の元から思考の渦が弾けた。 「一足、遅かったようですね……」 「そうだよ。今の攻撃だけじゃない。あなた達は遅すぎたんだよ……だってボク達がココにいるのは、襲撃を知らされたからなんだから。つまり、あなた達は誰かに売られたんだ!」 「ざけんじゃないよ! どうせ、あたし達を動揺させようって肚だろ? 騙されないよ!」 言いながら紅柳を振るう蘭子。だが、流水の如き捌きでその刃先をいなす。 「落ち着いて聞いて! 貴女とアタシは似ているから分かる……任務は命に代えても遂行し、価値を示してみせる。だからこそ、話を聞いて冷静に判断して頂戴!」 恵梨香が畳み掛けるように告げた。そして続く文も、蘭子の内なる情に訴えかける。 「蘭子さん、あなたにとって大事なことって何なの?! それは、他の人を泣かせてまで、叶えたいことなの?!」 が、その一言は彼女の琴線に触れたらしく、瞬時に口を噤んで紅柳を振るう。傍にいた影の従者もろとも文の胸元が大きく切り裂かれ、血飛沫が豪快に舞う。 「この程度じゃ、わたしは、絶対逃げたりしない! わたしだって、わたしだって命賭けてるもん……誰かを泣かせないと叶わないことなんて、命を賭けて叶えることじゃない!!」 フェイトの力を信じ、絶え絶えの呼吸を整えるようにして絞り出す。 先ほどとは逆に、今度は何か思うところに嵌まったらしい。蘭子たちは2人の幹部ともども幾分ムキになって刃を突き出す。 ちっ! 再び壁を蹴り、攻撃の機会を窺っていた喜平が、そのまま間に飛び込み、身体で刃を受ける。その刃を掴み、至近から散弾を放つ。 「此処に満ちてるのは血風だけじゃない、分るか? 魂だよ……世界を護って散った奴らのなぁぁ!!」 同情している訳じゃない。が、名も知らない奴らの行いだって無駄ではないことを知らしめたかった。 「それに比べて悪党の同盟なんてオセロみたいなものよね、少しの変化で直ぐに引繰り返る。リークしたヤツは今頃、他の企みに動いてるかもね」 エナーシアは1$シュートで幹部たちを牽制しつつ、別方向から揺さぶりをかける。 が、彼女たち3人は頭を振るように攻撃の手を止めはしない。 やむなくニニギアは天使の歌声を響かせ終えてから、台詞を続けた。 「ただの推測とは思わないで、事実から判断して! いったい何が大事な人の為になるのか……」 そして、当然のようにランディも。 「俺は、俺の大事なモンのために大事なモンと一緒にここに居る。お前さんは……何処にいる?」 「ええい、まったく煩いガキどもだね。もうあんた達の寝言戯言は聞き飽きたよ!!」 すべてに蓋をするように、蘭子は着物を肌蹴て肩を露わにする。任侠ならではの気合いの証か。既にその肌はあちこち傷だらけではあったけれど。 「姐さん! あっしらもお供しやす!」 彼らの道とリベリスタたちの道、2つの道が重なることは……ない! ●終焉を告げる音色 そこからはもう、会話は成立し得なかった。 このままじゃ心を折られそうになる……と、蘭子が聞く耳を自ら封じたから。 その凶刃が振るわれる度、リベリスタたちは激しい消耗を強いられる。しかも互いの力を察し、攻撃を1点に集中。囲まれた文が、傷つきながらも一か八か、ダンシングリッパーで勝負を賭ける。 「なっ!」 予想だにしていなかったのか、刃先が蘭子の胸元を貫き、さらしを真っ赤に染めた。 (今……このあたしが信じてるのは、あの人からの指令。ただ、それだけさ!) 運命の力は彼女の元にも降り注ぐ。ふらつきながらも、しっかりと床を踏みしめる蘭子。 「まだ……これから、だよ……」 と、再び紅柳を握り直したその時、敷地の何処かから笛の音が響き渡った。 「……時間を掛けすぎたようだ。どうやらここでおひらきかねぇ」 「姐さん! 誰かが殺ったんですかね?」 「さぁね。あたし達が行けなかったんだ。他の奴らも無理……と思いたいけど、あの人たちだけで殺れたかどうか」 そんな会話に耳を欹てていた恵梨香が口を挟む。 「なら、お互い痛み分けってことで終わりにしましょう。代償は互いの命の保証……」 「…………仕方ないね、退くよ」 かつての時とは逆に、蘭子が幹部2人の肩に捕まりながら時村邸を後にする。 ――去り際。 「あんた達……アークが気に入らなくなったら、いつでもウチの組に来なよ!」 分かりきった返事など、求めちゃいなかったけれど。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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