●Knock Knock Knock 白一色のキャンバスの如き空。その空の下、コンクリートジャングルの箱の中でうごめく黒い影がある。 充満する薬品の鼻を突くにおいと、爆薬独特のどこか甘く感じるフレーバーが空間を支配する中。 此度の計略の一端を担う男達が静かに、かつ脈動を始めていた。 ガスマスクと薬品用の手袋を身につけ、信管の薬品と意識を交わす一人の男。 その男が信管の装置の中に薬品を落とし込んだのは、このわずか数瞬の後の事だ。 「――本当にやるんですかい? クロイツァーの旦那。」 手下の男がリーダー格の男の名を呼ぶ。 その声に振り向いた男はマスクの奥に凶悪な笑みを隠して、震える声付きで斯くの如く返すのだ。 「……アァ……。奴らの悲鳴が聞きたくて仕方が無いもんでなァ……。 ククク……。断末魔の響きと、女子供の絶望の声ほど聞いてて気持ちのイイもんはねぇ。 病みつきになるゼェ……? 初めて腹かっ割いて中身覗いたときのあの感覚……。最高だ……。」 狂気の瞳を隠さぬ男が、喜色を隠さずに言葉を投げる中。差し挟む言葉もまた幾つか聞こえるもので。 それは、配下の男のひとりから聞こえてきていた。 「蝮腹の旦那から言われません? 部下が口挟むことじゃねぇとは思うんですが……。虐殺は控えろと。」 挟まれる言葉の指摘。それを男は鼻でせせら笑い飛ばす。 全ては、この時に生きているのだと言わんばかりの自信を持って。 「ハッ! 笑わせる話だ。――蝮腹のジジイは甘すぎるんだよ。 戦場じゃ殺すか殺されるかの二者択一だ。ガキのお守りをしてるような話じゃねぇ。 ――黙って殺せ。満たすんだ。大地を鮮血でな。」 ――『狂眼のクロイツァー』。 爆薬を専門とする此度の戦力として蝮が外国から雇った傭兵の一人だ。 アクアマリンの瞳の蛇が、敵を飲み込む瞳をのぞかせる。赤き舌をチラチラと飛ばしながら。 男は、とかく殺戮に飢えていた。 戦場を渡り歩き、敵の数々を嘲笑と共に葬った悪夢の体現者は、此度の戦いを歓びと共に見る。 思う存分、心の奥底から殺すことが叶うのだ、と。 ●Genocide Party 爆轟が街を支配する。響き渡る火薬の発火音、降り注ぐオフィスビルのガラス、逃げ惑う人々。 ガソリンスタンドが音と共に火を噴き出し、黒々とした煙を止めどなく吐き出している。 赤々と燃え上がるのは近隣都市の送電施設。 周辺都市に電力を供給するこの場所を潰せば、都市の機能は一時的にでも麻痺することとなる。 そうなれば、様々な状況への対処を強いられるアークの機能に圧迫が加わる可能性がある。 それを阻止するためには、当然アークはリベリスタを差し向けることをせざるを得ないだろう。そう踏んでのことだった。 絶望と断末魔が木霊する。略奪と虐殺が行われ、その牙は留まることを知ることはない。 投げられた手榴弾(パイナップル)に車のエンジンが火を噴き出し、激しい爆発音を上げていた。 「キャハハハハハ! 最ッ高だ! 最ッ高の音楽が聞こえるぜ!」 狂った笑いの響く空間。それは、まさしく凶器に満ちた戦場そのものにほかならぬ。 ――オーケストラ。絶望と、爆轟と、断末魔の3重奏が、街を飲み込んでいく。 これにより手繰り寄せるは血濡れし紅の糸。すべての謀略の始まりだ。 真紅に染まる街と、黒く染まる白のはずの空。カレイドに映るのはまさしく悪夢でしかない。 この光景をディスプレイに投影する、万華の導きを受けた巫女は静かに告げる。 「……ご覧の有様よ。作戦目標、『狂眼のクロイツァー』以下部下数名。 ――同情は一切不要。見敵必殺。サーチアンドデストロイ。 相手は本気よ。リベリスタの殺害も相手は視野だし、相手もそれを狙ってきているもの。 手加減一切不要。……したら逆に殺られるわ。全力でこれを、打ち滅ぼして。」 巫女のオッドアイの瞳が光る。 それと共に今、静かに戦端が開こうとしていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月30日(木)02:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●Battle of Tactics これは、カレイドが写した未来の少し前の話になる――。 汝、運命に抗うか。それとも、運命に従うか。抗いし者達の標を、ここに記そう。 乾燥した風が、肌を撫ぜる。梅雨時の都市に似つかわぬ、痒さすら伴う荒涼とした風だ。 ある者は翼に風を孕ませ、またある者は都市をただ一心に駆ける。それは、死をもいとわぬ戦士たちの戦列だ。 カレイドの未来を変えるべく走るは、一名の軍師率いる戦団。 軍師の名は、『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)だ。 戦いは、戦闘前から既に始まっていることを彼はまた知っている。 それは、戦いの絶対法則。天、地、人を知りて戦略と成す、どこまでも深淵なる知略の戦。 事前の情報を元に戦士たちに指示を飛ばす。一刻も猶予は許されぬと思考がまた進む。 「――良し。ここで散開、包囲殲滅の形を取る。 ポジション毎ツーマンセルで組み、敵を間引く者は散開、路地裏を経由しクロイツァーの部下を各個撃破へ。 間引きを行わぬ者は本隊としてタイミングを図り、 部下を発見しだい叩きながらオレと共に直接クロイツァーを叩く。――散開!」 コンセントレーションにより明瞭となる意識。指示は鋭く、また早い。 心の片隅にある一刻の猶予も許さないという焦る気持ちが、紫煙に手を伸ばさせる。 煙をくゆらせ、男は戦場の空気をただ見つめた。――成功と、仲間の無事を祈って。 その一方で、戦場に意識を飛ばすもう一人の男がいた。 白衣に身を包み、その下に戦闘服を着込む狂眼の男だ。彼もまた、戦略を形に変える傭兵の一人である。 深き爆発物の知識と、戦略に対する哲学。空間の湿度を肌に感じながら、男もまた謀略を巡らせた。 男もまた、曲がりなりにもプロアデプトなのだ。 「――良し。送電施設に爆薬を仕掛ける。指示ポイントへお前らは向かえ。 ……仕掛ける際は炸薬の指向性に気をつけろ。向きを間違うと計画が台無しになる。 尚、発見した場合はプロアデプトはトラップネストを撒け。前衛、クリミナルは追撃。『奴ら』は必ず来る。 ――必ずな。 ……よし、殺れ。」 命を下すのは部下総勢7名。炸薬を仕掛けるための捨て駒だ。 男からすれば、死んでも構うことがないただの駒たち。胸中は、既に殺戮へと向いていた。 耳にしたいのは賛美歌という名の断末魔。それが、男の心底の望みだったのだから。 手にする数多くの手榴弾とグレネード弾。それを手慰みに操りながら、思考は一心に走った。 策謀と計略が、今戦いの火花を上げる。勝つのは希望か、絶望か。 ●Bang Bang Bang 男が最後に視界に収めた物は、差し迫るアスファルトの地面だった。 鈍い衝撃音と共に鈍い音二つ。ドサリという音と共に、部下が落ちる。 音の一つの主。それは、雪白 桐(BNE000185)。 マンボウと呼ぶには余りにも薄く、剣と呼ぶには鈍重なる異型の剣を繰る戦鬼。 その戦鬼は表情を一つも変えること無く、声を投げた。 「――私は完了。 そちらは?」 「こっちも完了だよ。余裕!」 投げた声の先は浅い傷を負うもう一人の戦鬼。『素兎』天月・光(BNE000490)。 苦し紛れの一撃を身に浴びはしたものの、人参を薄く圧延したかが如きその鋼の刃が、また男を落とし。 縛り上げた男達を足蹴にし、さらに間髪を入れること無く雪白は、アクセスファンタズムで連絡を飛ばす。 まずは一つ絶望の種を潰し、希望への道を築いて。美しき戦鬼たちは狂眼の元へと駆けた。 連絡を受けた一人の男。『まごころ暴走便』安西 郷(BNE002360)。 この男の麻痺を伴うスキルの一撃が、今まさに放たれようとしていた。 高速の刃が相手を正確に捉えたのは、まさにクロスカウンター気味の数瞬の交錯。乱撃が男を昏倒させる。 しかし、この男も無傷というわけではない。 男の動きと同時、相手の男が放った最後のスキルが、男の喉元を高速で引き裂いた。 呼吸の苦しさと大量の出血。口に血の味が滲む。それが意識を混濁させ、体の自由を縛る。 「ガハッ……!」 傷を追った仲間。その傷を気にすることも許さぬ戦場。その目まぐるしいほどのダイナミズムの中で。 もう一人の黒き乙女、『闇猫』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は寸分違わず敵の四股を撃ち抜く。 敵を引かせ、これ以上の損害を出さぬために。殺害すらも、本意ではなかった。 「……お願いします、引いてください。」 敵は何も語ることはなく。ただ、顎で「行け」と指し示すにとどめ、それ以上を語ることも、また無い。 仕事は果たした。これ以上を為す必要は無いのだという、矜持の境界線。 今は時がひたすらに惜しい。敵の一人を縛り上げ、出血もまたそのままに男と女は、駆ける。 道化の一撃が男の事を捉え、打ち倒すにはそんなに時間を要しない。 術式の主は影に溶けこんで儚い漆黒の翼をはためかせ、自らの影を繰る乙女のそれである。 彼女の名こそ『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)。漆黒の闇より降り立ちし天使の一柱である。 しかし、その安息の時もつかの間。物陰より一気に潜み繰る敵の魔の手が、クリスを襲おうと狙う。 それに警告を飛ばしたのは、金の髪を持ちし歌唱人形(ソングドール)の清らかなる鋭い声だった。 歌唱人形の名こそ、『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155)。此度の戦列に加わりし一人だ。 彼女の透視の力を持つ瞳が、物陰の悪鬼を正鵠に撃ち抜く。 「そこの物陰から来ますわ!」 見破られたことに気が付き、舌打ちする部下の一人。しかし、強襲気味の刃がクリスの喉を引き裂く。 口に広がる血の味。2連撃も覚悟した、次の瞬間――。男が式神の一撃によって、崩れた。 安全とともに吹き込まれるのは、ブレイクフィアーだ。出血が止まり、傷口が消えていく。 「仲間を危険にさらすのは好きじゃないっちゃんね。 手出しはさせないっちゃーん。」 そんな、何処かアンニュイな雰囲気すら漂わせる一人の乙女。 式神の主とは到底思えぬ、どこにでも居るような雰囲気を漂わせる乙女。 彼女の名こそ『十徳彼女』渡・アプリコット・鈴(BNE002310)。彼女もまた、リベリスタだった。 酒呑の仕込杖が男の一人を瞬殺する。刃の尺は1尺5寸。うまく抜ければお慰み。 居合の一撃と共に相手の気絶が確認されれば、乙女と男達はクロイツァーの元へと、ただひたすらに走った。 部下は全て落とした。あとは、狂眼の男を残すのみである。 定めに抗う者たちの前奏曲が奏で終えられ、いよいよ戦いの協奏曲が奏でられ始めようとしていた。 勝つのはリベリスタか、狂眼か。 戦いの幕が、上がる。 ●Blood and Bound 時に、これは狂眼との戦場へ駆け付ける途中の出来事になる。 アスファルトを水の叩く音が響く。防炎の為に水をかぶる音だ。 一部のメンバーの防炎対策の服が濡れる。相手のことを計算に入れての対策の装備だ。 濡れた服。それは火を防ぐには心ばかりの効果があるだろう。それがまた目的でもあるのだ。 戦士たちは狂眼と相対する。酒呑、渡、クリス、雪白、天月の5名が本隊として相対した。 狂眼は笑う。全ては計算のとおりだ、と。 「ククク……。来たか、リベリスタ……。 楽しませてもらうぜェ……? 存分になぁ!」 「……問答無用。行くぞ!」 酒呑が声を挙げたのが開戦の合図となったのは、偶然だろうか。否。 初手に動くのは狂眼だった。5名全体に放たれるのは意識の奔流だ。 意識の爆発が5名を吹き飛ばし、押し下げる。 しかし、すかさずそこに飛んだクリスの天使の息が傷をふさいで止め、戦線を維持、押し上げた。 一撃目の様相を見て手榴弾を取り出す狂眼。そこに酒呑のピンポイントが飛び、手榴弾を撃ち落とす。 その隙を見計らったように、戦鬼は哂う。 「弱い者虐めが好きらしいですね? たまにはご自身がいたぶられてみますか?」 そこに飛ぶのは桐の爆砕戦気からのギガクラッシュ。しかし、狂眼もまた劣らない。 スキルの一撃をバックスタブで威力を和らげ、再び手榴弾を取り出した。男もまた、哂う。 「ハッハッハッ、冗談キツイナァ? ……黙って死ね。餓鬼が。」 この熱戦のさなかで、男もまた笑っていた。すぐに表情はもとに戻っては居たが。 声を上げた次の瞬間。タイミングのピタリと合ったソニックエッジの二連撃が、男を貫いた。 体の融通が利かなくなる。しかし、それもまた織り込み済みだ。狙いは他にある。 男の手の手榴弾が、2つ、3つと瞬間的に増えていく。 「なかなかの手練じゃないか……。 楽しませてもらうゼェ……?」 響く男の声。そこにすかさず駆けつけるのはレイチェル、安西、讀鳴の3名からなる第二部隊だ。 全部隊の到着を察知した渡が、守護結界を展開する。守りの盾が全員を包み、強固な盾として全員を包んだ。 それに合わせるかのように放たれたのは、結界を食い破るほどの暴威。神々の槍だ。 チェインライトニング。古の叙事詩に謳われる神々の怒りが戦士たちすべてを焼き払う。 その間にも手榴弾の数は増える。3から6、6から12へと。それは、死へのカウントダウン。 気糸によって一つの螺旋を描く手榴弾。それは徐々に分解され、より強力な炸薬として変化していくのがよくわかる。 レイチェルの直感が、危機を痛いほどに伝えた。彼女は叫ぶ。 「……あと30秒で、来ます! 『爆懺』です!」 戦士たちの間に戦慄が走る。残された時間は、30秒と少ない。 魔の30秒カウントダウン。手の空いたものは味方をかばい、余裕のある戦士たちは猛攻を掛ける。 果たして、間に合うか。 それとも、悪夢の再現か。 ●Thirty Second to Midnight 戦士たちに残された時間は、残り30秒。 落とせなければ相手の一撃でこちらが吹き飛ぶことは明白だ。 「ソニックエッジ!」 安西が怒りと共に一撃を打ち込む。攻撃は音の世界を超え、相手に深々とダメージを与える。 そこに合わせるように飛んだのは、レイチェルの神気閃光だ。光の爆発が狂眼を包む。 衝撃で体の動きが鈍ったのが、分かった。この時を逃せば、後はない。 戦士たちは、一気に攻勢に転じることを、決めた。 これ以上手を与えることは許されないと。 「目障りだ……! 吹き飛びやがれ!」 空間に展開されるガンポッド。そこから放たれるスキルはまさに鉄の雨と呼ぶにふさわしい。 狂眼のハニーコムガトリングが鉄の雨を降らせる。身を抉る猛攻。暴威の嵐の中で。 クリスの天使の息が吹き込まれる。 これがおそらく、発動前のラストだ。 回復を受けてそこから間断を入れずに飛んだのは、渡のポイズンシェル。 「その身に食らえっちゃ!」 体に毒が食い込む。 その影を縫うように、剣を盾に突撃をかけた雪白の破断の一撃が狂眼を捉え。 鬼神は哂う。ただ表情もなく、声のみで。 「少しは痛みが理解できましたか?」 声は時として空に響いて、ただ虚空に消える。返す刀は、さらに曲芸師のようだ。 天月を乗せた刃が振るわれる。彼女に勢いを与えるその刃が、音速を超えた世界へと彼女を誘った。 射出された天月が放つ、ソニックエッジ。瞬間的に音を超えた刃は、ソニックブームすらまとって先へ向かう。 「ハートヒート!ブレインクール!熱くなりすぎたのは君の敗因さ!」 言葉の数瞬後。乱撃の刃が、ざくりと食い込んだ。狂眼の身が揺らぐ。 口から血を吐き出す男。視界がぐらんぐらんと揺れてくるのが意識できる。これ以上は限界か。 ――しかし、最後のフェイトを絞って、男は立ち続ける。 「カハッ……! クソッタレ……! 死なばもろともダァッ!!」 残された意識の中で。あと、ラスト10カウントを残すスキルの一撃を放つべく。 自らのフェイトをかけて放つ、爆発する気糸の一撃を、ひたすらに念じて。 絶対に発動させてはならない。その一念で発動を潰すべく、さらにアデプトアクションがレイチェルによって放たれる。 痛打の一撃が正確に狂眼を捉え、抉る。そこに重ねたのは目を狙ってのピンポイント。 目を穿たれ、痛打の一撃が意識を混濁させる中。男はただ一念を持って念じていた。 ――4、3、2――1――! 手の開いた仲間がペアとなる仲間、そしてより多くの仲間を守るべく動いた瞬間を狙うように――。 『爆懺』が、起動する。 炸薬そのものと化した気糸が全ての戦士の首を的確に締める。 防御すらも完全に無視し、抵抗すらも無意味と化す完全なピンポイント爆撃。 気糸からはカウントが響く。絶望の3カウントが、地獄への手招きにすら聞こえる。響くのは、希望と絶望。 3、2、1――点火。 全ての戦士が次に目覚めるその直前の最後に目に収めたのは。 完全に倒れ地に伏す男と、爆轟で赤く染まる、白いはずの空だった――。 ●Last Journey Home 戦士たちの活躍によって送電施設は守られ、狂眼の男もまた倒れた。 被害の少なさもまた幸いなことであり、カレイドに予言された略奪や殺戮もまた、ない。 運命の力で目覚め、周辺をまた見渡したその時に広がっている物。 それは、傷だらけの仲間たちと既に物言わぬ骸となった狂眼の男だ。 たしかに傷は負った。仲間の体もまたボロボロで、何とか立てるかどうかという者も多い。 『首の皮一枚つながった』という表現が的確な程、限界に近い者も、少なくはなかった。 しかし、凶行もまた止められた。傷は多いが、何処か心は晴れやかだ。 「……帰ろう。」 誰が言ったかは分からない。しかし、戦士の一人がつぶやく。 その言葉に肯定の意を返す仲間たちは、また方舟への戦列を歩みだした。 歩みのおぼつかない者にはまた肩を貸しての戦士の帰還。その心中をまるで示すかのように。 雲の切れ目からは、明るくも温かい陽の光が差し込んでいた――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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