● 「ようこそ、仕事中毒さん達」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、無表情。 「ここのところ連戦続き。みんなが楽団以外の仕事が気になるのもわかるけど、そんなに身を粉にされて、うっかりぽっくりいかれたらすごく困る」 アーク本部で何か案件抱えてないと心配なんです。 明日世界がなくなってたらとか、目が覚めたらお外が荒廃してるんじゃないかと思うと、おちおち眠ってられません。 「まあ、人手不足なのは本当。平易な案件は今まであまりお仕事してなかった人達にお願いするようにしてるし……」 やるよ? そういうのも任せて? ちゃんと怪我しないで帰ってくるから! 「層を厚くしたいというのもある。三高平は本拠地だから攻めて来ないでねって言って聞く相手じゃないし。三高平市完全封鎖とか、まだそういう段階じゃない」 何か、雑用でもいいんでお仕事下さい。心が砕けてしまいそうです。 「それでも働いてないと心に隙間風が吹く皆の為に、こんな仕事を用意してみました」 モニターに明朝体。 「別働班」 フェイト減りすぎてて実戦危ないけど、一般人だともっと危ない部署ですね? 「実戦部隊が戦いやすいように、現地まで送迎したり、周辺の一般人をさりげなく避けたり、メンタル弱い子を励ましたり、逃走させないようにしたり、重傷者を搬出したり、アーティファクトやビーストの死体持ち逃げされないようにしたり、戦闘後の痕跡をきれいにしたり――大体わかるよね?」 いつもお世話になってます。 「今回は、全くの新人さんチーム。まともに神秘を見るのもこれが初めて」 だから、と、イヴは無表情。 「中身は、『リベリスタなら誰にでもできる、簡単な仕事』です」 そのとき、リベリスタに電流が走る。 やることは単純作業で、難易度も低く、条件はエリューション化しないリベリスタの強靭な身体くらいなものなのだが、決して心身に優しくない過酷なお仕事。 現場に着いたリベリスタの頭に最初によぎるのは「脱走」の二文字である、通称「簡単な仕事」 ただ、作業が簡単なだけであって、決して楽な仕事ではないのだ。 目標が完遂されるまで、監視つきの一室に閉じ込められておもちゃの検品とか、延々と駄菓子を食べまくるとか、炎天下での農作業とか、断崖絶壁で土木工事とか、先日は後から後から生えてくるかまくらをもぐらたたきのように壊しまくる仕事だった。 場合によっては爆発に巻き込まれたり、おなかを壊したり、精神に異常をきたしたり、ただ単に「死んだり怪我はまずしない」仕事。 モニターに映し出された、お菓子の包み紙。 「これ、今年のハロウィンでばら撒かれた「ささやかな悪意」が撒いてたお菓子の包み紙。これがパズルになってることが判明した」 アークが稼動してから、しばらく定期的に発生していた小さな案件。 子供向けの菓子や玩具に潜んだ、ごく弱いエリューション。 万華鏡でなければ見つけられないほどのささやかな悪意。 ジャックが世間の連続殺人鬼予備軍に呼びかけたのに誤作動を起こして暴れた『魔女』=『ハッグ』によって、潜在的にエリューションの影響下にある女性が多数いることが発覚する。 そして、機会と用途に応じての人攫い集団『楽団(ムジク・カペレ)』 肉の壁にされる子供のアンデッド集団『パレード』 契約書に従い、家族を生贄にして、非道に手を染める魔女集団『ハッグ』 その契約書の化身にして使い魔『グルマルキン』 『グルマルキン』と契約したノーフェイス、『ライナス』 リベリスタ達は、幾度となく、そのたくらみを阻止してきた。 「楽団(ムジク・カペレ)」を壊滅させられた「ささやかな悪意」は、それでも徐々に勢力範囲を増していた。 アークの目の届かないところで、「ささやかな悪意」の根源、契約魔術師カスパールと錬金術師メアリがうごめいている。 「で、押収物の解析も佳境」 牧歌的な町の模様。 四隅には大体四分割くらいされた色とりどりの風船の絵。 「これを組み合わせると、地図が出来上がる。ただ、全体像は実際にパズルを完成させないとわからない」 全く同じ形の長方形のピースをどう組み合わせろって言うんですか? 「この風船の絵。昨年、「ささやかな悪意」の事務所を調べて得たキーワード、「黄色い風船」。この包み紙の黄色い風船をきちんと組み合わせていけば、完成する」 あのお、この風船もなんか色々微妙に違う絵柄に見えるんですけど。 「そこを根気よく組み合わせる」 コンピューターに取り込んで処理するってのは。 「そうしようとしたら、コンピューターが壊れた。ずるできない仕様になってる。とにかくパズルをさせたいらしい」 「ささやかな悪意」にとって、アークへのちょっかいは、全て遊び。 ならば、のるしかあるまいと言うことになったのだ。 「実際は、本物でやると包み紙破れそうなので、画像データからこういうのをこしらえた。正解がわかったら、本物の包み紙を並べて、変化を調べる」 ボール紙にミラー加工印刷された、幼児用パズルみたいなのがいっぱい。 それ、何ピースあるの。 「そんなにない。300くらい?」 どんな形になるかもわからない、図案もない、手がかりといったら、どれもこれも同じに見える黄色い風船四分割を正確にくっつけていくことだけ? 「性質上、ピース一つなくなると、それだけで著しく作業が遅延する」 きもちいいほど、「簡単な仕事」 ですね。 「今回のメンバー、ちょっと困ったチャンばっかりで――」 モニターに出される分布図。 Ⅹ軸に「作戦影響度」、Y軸に「積極性」と書かれている。 「積極的に脱走を図るとの、逃げられるものなら逃げたいってのと、積極的にアーティファクト欲しいのと、機会があったらアーティファクト欲しいのと、力有り余ってるのと、怖くてアーティファクト触れないのと、非常に大雑把なのと、他の細々したことが気になって仕事にならないのがいるから」 だめじゃん。 「どうにかして、仕事させて。今は優先順位が高くないけど、大事な仕事には変わりないから」 でないと。と、イヴは続けた。 「――画像データをずっと整理していた七緒の堪忍袋の緒が切れる」 目の下に隈作って、あからさまに不機嫌そうな七緒さんが部屋の隅にいた。 あ、七緒さん、お疲れ様です。がんばるから、暴れないでね。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月25日(月)21:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「(君達は確かに世界平和の立役者だ、頑張れ!超頑張れ!)」 『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)、声に出せない別働班の辛さ。 「ずっと見張りって、自分で作業をするよりもきつそうな気がするな……とは言え、こちらが先に逃亡するわけにも行くまい」 『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)、見張られるほうにかけてはプロ。 ● 喜平は、打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」を枕に、出口の前で長々と寝そべっていた。 銃器戦闘のエキスパートが輪ゴム鉄砲とかして遊んでると、それだけで怖いです。 『The Place』リリィ・ローズ(BNE004343)が、よいしょよいしょと、入り口のドアにゴムを張っている。 通ろうとすれば人間スリングショットの球になれること請け合い。 (ドアにもゴムを掛けて、簡単に開かないように) リリィちゃん、それはドアに鍵だ。 ドアを背にして立ったアウラールが、挨拶をした。 「これは子供ばかりをターゲットにする、悪意に満ちたフィクサードがこしらえたAFだ。今日の君達の頑張りが、この先かけがえのない子供達の命を救う鍵になる。頑張ってくれ、期待してるぞ」 冗談抜きで、アウラールの目の前で死んだ子供が辱められて何人も何度も死んでいった。 「微力ながら、今回は俺達が君達の作業に付き添わせてさせて頂く。宜しく頼む」 『放浪天使』伊吹 千里(BNE004252)、人数分の色違い座布団用意した。 これから床に這いつくばって作業をするリベリスタへの暖かい思いやり。 (いなくなったら、すぐわかるよ?) あたたかい、おもいやり。 「この傷は何の傷ですか?」 扉の傷を指でなぞりつつ、千里はそんなことを聞く。 「――歴戦の戦士がつけた傷ですね。逃げ切れた人は――?」 訓練されたリベリスタと呼ばれるもの達は、首を横に振る。 誰も逃げられはしないし、別働班が逃がしはしない。 「――私にそんな事させないでね?」 虎美がぼそりと呟いた。 腰に下げられた二丁拳銃は伊達ではない。 水を撃ったように静かになる別働班。あんときはなーと思い出話に花が咲く別働班。 キャリアの差。 今は、俺が、俺たちが別働班だ! ● 「リベリスタさんのお手伝い。ボクはまだ出来ることが少ないから、こういう事で役立てるのは嬉しいよ。楽しくできたらいいね。楽しい場所だと、みんな笑顔で居られるから」 『The Place』リリィ・ローズ(BNE004343)、心が洗われすぎて目が眩む。 「へー、コレがアークの伝統的……伝統的? よ、よく分かんないけど続けられてきたお仕事なんだよね。今の私にも出来る立派なお仕事だし、最後まで頑張るよ!」 『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)、間違ってはいない。 ● 「君が、ピース、仕分けてくれな」 テイジの前に、箱が置かれた。 緑っぽいの、黄色っぽいの、緑と黄色半々なの。 「頑張って皆を引っ張れば早くお家に帰れるから頑張ろう!」 と、テイジを励ますルナだが、 (――定時って何だろう?) まだ、ボトム・チャンネルについて詳しいことは分かりません。 「そんで、二人で組んでな」 虎美が大きく頷く。多分それが一番効率がいい。 「ザッパに先を行かせ位置を決めたら、パラノに位置を修正してもらう」 スピードと正確性。 「細かい事が出来ないとか逆に神経質すぎるとか別にそんなのは良いんだよ。助け合う為のチームなんだ」 うえーっとお互いを見る二人。 はっきり言って、こういう事態にならなければ、絶対知り合うことなどないタイプ。 「大丈夫。互いの出来ない事をフォローしていくだけだよ。最初は難しいかもしれないけど大丈夫!」 そんなことを、異世界文化コミュニケーション実践中の異世界人に主張されて否とはなかなか言えない。 メキョ。 ハソンの手の中で、ピースが折れる。 「なんだって折れるか」 『スキン・コレクター』曽田七緒(nBNE000201)の口元が激しく引きつる。 「な、七緒さんっ! 見て、茶柱立ってる!」 セルフシャッターに偽装されたフィンガーバレットを手に取らせてなるかと、千里は七緒の手に湯飲みを持たせた。 「おむすび、いかがですか!?」 「ピースのお試し品作ってもらいました。ぐにぐにです。まず、これで練習してもらうようにします。この間のお手伝いが役に立ったみたいで嬉しいのです。今、まおが届けてきます」 クリ☆スタ様、お怒りを御静め下さい。 「落ち着いて、焦らずゆっくりやればいいんじゃないのか。」 喜平は言うが、急に増大した力をハソンはもてあましている。 「この一つ一つが子供の命だと思って、出来るだけ丁寧に扱ってくれな」 頭の上にか弱いひよこを載せて歩いている男が言うと、破壊力が違う。 つつっと、リリィがよってきて、ハソンの手をそっと握った。 「握手しよう。あ、ちょっと痛い。力抜いて。そう。上手」 にこっと、リリィは微笑んだ。 「今、ボクの手は痛くないよ。壊れてないよ。大丈夫。優しいキミなら、出来るから」 あれ、なんか、急に前が見えにくくなってきた。 リリィ、マジエルフィンの称号を与えましょう。 イシュクがアークにたどり着けたのは、ある意味奇跡だ。 とある神秘事件に巻き込まれ、革醒直後リベリスタに保護されたのだから。 「怖いんです」 がらりと変わる内外の環境変化に対応できる革醒者は幸いだ。 心身のバランスを崩して、犯罪に走るものも少なくない。 変わってしまった自分を愛せないものも多い。 「ほら大丈夫だよ、何かあったら俺達もいるから」 崩壊した常識を再構築するのに、必要な行程ともいえた。 「あと1ピースだけ頑張って嵌めてみようか。そしたらお茶にしよう」 どうせ一回の休憩で終わる作業とも思えない。 「――私達も怖かったりするのかな?」 今回の別働班のお仕事は、フュリエのアークのお仕事見学会も兼ねている。 その分、他の面子がベテランというシオマネキ状態でお送りしております。 「ら、ラ・ル・カーナから来たフュリエのミステラン、ルナだよっ」 怖くないアピールが、全身から溢れている。 ルナの意気込みを他のフュリエも共有していた。 ラ・ル・カーナまで来てくれたリベリスタとは仲良くなったけど、それ以外のリベリスタとも仲良くやっていきたい。そのために次元を超えてきたんだから。 「他の子共々宜しくお願いしまーすっ!」 習い覚えたボトムチャンネル・地球・日本国・三高平市的挨拶。 ルナの真剣な様子にイシュクはつい吹き出した。 「――不安なのは、あなた達も一緒ね」 新たなところで、ともに生きていくのだ。 「よろしくお願いします」 ● 「ベテランの私も逃げようとした事ぐらいあるよ。頭撃たれたのもいい思い出。私にそんな事させないでね?」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)、あのゴム弾の痛みを忘れない。絶対にだ。 「大丈夫です。まお達が支えます」 『もぞもそ』荒苦那・まお(BNE003202)、天井から幼女が見てる。 ● トウソウの目がさまよいだしたのを、見逃したり、聞き逃したりするリベリスタではなかった。 アウラールが、そそそっとその背後に近づき、耳打ちをする。 「トイレに行きたくなったら、付き添うから遠慮なく声掛けてくれ。何、気にするな。簡単な仕事は何気に激務だし、倒れないか心配だからな」 無駄に暖かいまなざしアンド肩ぽん。 あああ、華麗な脱走王デビューしようと思ったのに、先生おトイレに行きたいですと言えない幼稚園児扱い!? 視線が痛い。じっと見つめてくるルナの視線が痛い! 違うよ、おトイレじゃないよ、逃げようとちょっと思っただけなんだよ。 視線が痛い。逃げるために四方は法三次元的に張り詰めた直感に引っかかる視線。見上げると、天井に逆さに張り付いた幼女。 野太い男の悲鳴。 「まおは、まだ何もしていないのです」 うん。まおちゃんは悪くないよ。 きっと心にやましいことがあったんだよ。 「いつ終わるのこれいつ終わるのこれ定時に帰りたいの労働基準法とかどうなってんのこれいつ終わるのいつ終わるのいつ解散になるの……」 今まで積み重ねてきたキャリアが、革醒によっておじゃんになってしまった。 もう、なんていうか、燃え尽き症候群気味。 疲れ果てたOLのようのことを呟き、手が止まり始めたテイジの横にちょんと虎美が座った。 「ちなみに定時は終わった時だから頑張れ私らも帰れないから超頑張れ☆」 花が咲くような笑顔だ。言い切った。 実働班と別働班は一蓮托生。 全部終わるまでは、帰れないよー。 「駄々こねようが逃げようとしようが現実は変わらない帰るのが遅くなるだけ」 終わるまでが簡単な仕事です。大丈夫。リベリスタはHPとMPとBSに気を使えばずっと働き続けられるって偉い人が言ってないけどそういう気概で働くといいんじゃないかな大丈夫だよ先輩で過労死で死んだリベリスタはいないはず。 「くそう、打ち上げは焼肉の予定だったんだがなぁ……キャンセルか」 喜平のAFに表示される、焼肉やからの直前予約確認メール。 それは、三高平でもいい焼肉屋さんと評判のお店じゃありませんか。 「今からがんばれば、予約の時間に充分間に合うよ」 実働班は、猛然と働き出した。 ● 「一歩運命違ってたらフィクサードしそうな人達ですが、世界を守ろうって気はあるんですよね……? それなら仲間です。同士です。協力は惜しみませんよ」 『放浪天使』伊吹 千里(BNE004252)、とりあえず、お茶くみ。 「どんな貧弱なボウヤも優秀なソルジャーに仕立て上げるんだって。意味が分からないけどとにかくすごいのね。アーシェも来たばかりだけど頑張らないと」 『夜明けの光裂く』アルシェイラ・クヴォイトゥル(BNE004365)、違うとは言い切れない。 ● 「肉かぁ肉ねぇいいよねぇ肉ぅあたしも行こうかなぁ皆が差し入れてくれた食べ物みんな食べちゃったしぃ一人で焼肉空しいもんねぇ」 ぶつぶつ言いながら、折りたたみ椅子を三つ並べてベッド代わりにしている七緒は、おむすびをほおばっている。 焼肉があるとしても、どう考えても12時間以内に終わるとは思えない進行速度。 今は、飢えを満たして、焼肉用に腹をこしらえるのが肝要と思っている。 第一、今、おさんどんさんが侍ってくれちゃっているので、割と機嫌がうなぎのぼりだ。 (曽田様は熱中するとご飯も忘れちゃうようなので、きっと仕事終ってすぐだと何も食べてないとまおは思いました。なので、待ってる間にちょっと食べてもらいます) 人間、腹減ると怒りっぽくなる。 アルシェイラは、いそいそと荷物をほどく。 「ムイムイの実とか、ラ・ル・カーナの天然水とか……料、理? そのままでおいしいよ?」 七緒は、きょとんとしたアルシェイラの顔をカメラに収めてから、差し出されるラ・ル・カーナ直送生鮮食料品に手を伸ばした。 しぴーんしぴーん。 喜平の手から輪ゴム。ギャザの手の甲が赤く腫れあがる。 ぽと。落ちるピース。 七緒の顔が引きつる。 「あっ、茶柱ですよ、七緒さん!」 千里。それ、後一回までな。 (他の人の邪魔にならずに当てられるか不安なの。いえ、アーシェはいいほうに考えるの。手加減されてても先輩リベリスタのすごい一撃よりはわたしがやった方が怖くない) 先っぽが吸盤の矢の方が、きっと喜平の輪ゴムよりましだと思うよ、がんばれ、アルシェイラ。 「お土産ほしいの?」 ギャザの横に座る虎美。 テイジがこわごわと様子を伺っている。 「持って帰れるのは、経験と連帯感だね。歴戦の面々も結構経験してるお仕事。それに選ばれるって事は期待されてるって事なんだ」 リベリスタは自分で仕事を選ぶ。 モチベーションが上がらない現場ほど、成功率は低く、損耗率が高い。 「物はあげれないけど、いきなり爆発するような物はいらないよね。それで死んでも労災出ないよ?」 いきなりオンになるモニター。 ぶっ飛ぶパンプキンヌガー、ぶっ飛ぶアイスキャンディー。 砕ける天井。割れるガラス。ひしゃげる机、壁に激突する椅子。 別に我慢大会で簡単な仕事がある訳ではない。リベリスタでないと死んでしまうから、やっているのだ。 「わたしはお話を聞いただけだけど、簡単なお仕事も放っておいたら危ないし、わたしの想像を越えた酷いヒトが迷惑かけてるから必要なんだって」 アルシェイラは、今まで起こった神秘事件について懸命に学んでいる。 「この世界は広くて、色々なヒトがいて、リベリスタは世界を守る事を「選んだ」ヒトなんだって――だから、すごいな」 別働班ではなく、実働班を見てそう言う。 選んだんだね、すごいね。 ぱさぱさぱさぱさ――。 ギャザのポケット以外のところから出てくるピース。 「だしてくれてうれしいです。でも、めっ」 天井の幼女が目顔で叱った。 スーベニアは憂鬱だった。 このピースは持って帰ると危ないらしい。 というか、あらゆるものは持って帰ってはいけないらしい。 スーベニアの記憶はざるで、なにか印象に残るものがないと、多分今日のことは一週間もたてばほとんど忘れてしまう。 身につけた技術が低下することはないようだが、人の顔は覚えていられない。 今日の出会いを諦めなくてはならないのだろうか。 「ほらほら、七緒ちゃんも食べて食べて! 何も口にしないと身体だけじゃなくて心まで参っちゃうよ? 美味しいものは身体と心の栄養源ってね!」 ルナがじゃんじゃん勧めてくるのに、七緒はついにギブアップ。 「――七緒さん、おなかはくちくなりましたか」 「うん」 椅子の上に仰向けに転がっている七緒を見下ろす、天井のまお。 「新しいリベリスタ様達が頑張ってる所の記念写真を撮ってもらえないでしょうか?」 今日の記念にとまおは言う。 「きっといい思い出になると思います」 「ピース持って行かれたくなかったらぁ、働けぇってぇ?」 七緒は、にたぁっと笑った。 「了解」 ● 「さあ、労働歌を歌おう」 「大丈夫。怖くないよ」 「楽したいならひと使え。帰りたいなら今がんばれ」 「癒しのエンジェルにも堪忍袋に限界あります。私キレさせたら大したものですよ」 「なんでベテラン達が未だに集まるのか教えてあげる」 「-かける-は+を期待」 「掛け算と聞いて」 「フジョシッ!?」 「……そういう目で見てくれれば何もしなくても効果がある、ってどういう意味だろう?」 「ホリメのお仕事って何だかしってますか」 「一番はやっぱり腹が立つから。パレードとか目にすると理屈抜きでとにかく許せない」 「リベリスタさんたちのお手伝いは楽しいの」 「癒すこと?」 「彼らと戦えとは言わない。それは私らみたいに慣れた面子がやればいい」 「世界には神秘で癒せない瑕疵もあるんですね……フフ。もう全部壊して作り直したらいいんじゃないかなあ。とか」 「でも少しでも私らの話で感じるものがあるなら力を貸してほしいな?」 「誰かに頼ってもらえる、頼りにされるのは、嬉しい」 「……そう先が長くない可能性も在る俺だから、後に続いてくれそうな誰かが居る気配がするだけで気分は上々よ」 「そんなこと、いっちゃやだ!」 「ニンゲンの考え方も知らないと」 「別働隊って大変なんだなー、これまで支えてくれた事に感謝しなきゃな」 ● そして、ついにパズルは完成したのだ。 別室で、別のリベリスタが、『本物』を並べている。 「――正解。一枚の紙になったってさぁ。今度はこれがどこかを探さなくちゃいけないけど、それは別の連中の仕事だぁ」 七緒がお疲れーと言ったとたん。 歓声が響いた。 「ほれ並べぇ。写真撮るよぉ。あたしの場所空けといてよぉ。一緒に映るんだからぁ。え? これ? セルフシャッターとフィンガーバレット兼用。危ない? 大丈夫大丈夫、振動でわかる――」 カメラ、どこ? え? あんなとこに隠しカメラ!? これか。どこから撮ってんのかわからない写真の正体は、これかぁ!? ● みなさん。作業終了に際して、校長先生――じゃない、先輩からのお話です。 「まぁリベリスタなんて好きにやってる連中と違い、理不尽で面倒ばっかりに直面しちゃう訳よ。今日のパズル然りな」 今、みんなの気持ちは一つだった。 口が同じ四文字を形作っていた。 「だけど其れをやり遂げた事は本当に素晴らしいと思う。今日世界を救ったのは間違いなく君達だよ。うんうん」 しばしの沈黙。 「打ち上げの件は本当に実行する、キヘイウソツカナイ」 わーい、打ち上げは焼肉だぁ! 幹事さん、領収書の提出忘れないでね。自腹になるから。 「ご飯にしよ。クノアのお粥とか好き?」 打ち上げの意味がよく分かっていないリリィがニコニコしている。 「実働隊の人も、みんなの分も作るよ。お仕事の後は、美味しい物」 ね? と笑うマジエルフィンになんと言ったらいいの。 これからお肉食べるからお粥はいりませんなんて言える人手を挙げてみろ銃殺だ。 OK、諸君。 焼肉には行く。リリィ嬢のお粥食べた後で。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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