● 今日はバレンタイン。 好きな人にチョコレートを贈って、想いを伝える日だ。 口さがないものは「お菓子屋の戦略だ」等と言うが、そんなことはどうでもいい。 そんな訳で、女子高生ユミもチョコを手に約束の公園へと向かっていた。先日、告白を受けて付き合うことになった彼氏。せっかくだから喜ばせてあげたいと思い、手作りのチョコを作った。学校よりはムードがある場所でと、放課後に公園で落ち合うことにした。 「フフフ、どんな顔で受け取ってくれるかな?」 にやける顔を止めようともせず、ユミは公園へと走って行った。 その時、公園の方から何かが爆発するような音が聞こえてくる。 「花火? こんな冬なのに……」 軽く疑問が頭をよぎったが、それだけだ。 ユミの頭の中はこれから渡すバレンタインチョコのことで頭が一杯だったから。 そして、公園に駆けこんだ瞬間、ユミの身体は凍り付く。 「え……? これ……なに……?」 公園は阿鼻叫喚の地獄と化していた。 あちこちから煙が立ち上り、さながら映画の中でしか見たことの無い戦場のようだった。人々が痛苦の呻きを上げて、地面に転がっている。手足が吹き飛んでいるが、致命傷には至らず死にきれないのだ。 そうしたボロボロの人々が並ぶ中に、ユミは自分と同じ制服を着ている彼氏の姿を見つける。彼は他の人々のようにうめき声を上げることは無かった。代わりに、顔が半分吹き飛んでいた。 「あは、あはは……。そんな顔されるとは思ってなかった、かな。ほら、頭なんか落としてないで……今、くっつけて、あげるね」 ユミは彼氏に駆け寄ると、虚ろな瞳で近くに転がった肉片をかき集める。 状況があまりにも非現実すぎて、頭がついて行かない。 彼氏の頭をなんとか復元すると、持ってきたチョコレートを取り出す。 「ほら、ちょこれーと作って来たんだよ。なにもいわないのはびっくりしてるからかな? あたしだって、この位つくれるんだから」 動かない彼氏に向かって一方的に話しかけるユミ。 しかし、彼から反応が返ってくることは無い。 「たべさせてっていうの? ほら、あーん……」 目の前の悪夢を受け止めきれずに、ユミは必死に彼氏にチョコレートを食べさせようとする。 そんな彼女の後ろにフルフェイスのヘルメットを被ったような奇怪な人物が姿を現わす。彼は手に爆弾を持つと、ユミに向かって叫んだ。 「貴様ら、リア充カップルだな? 爆発しろ!!」 ● まだ冷えの厳しい2月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、ノーフェイスの討伐だ」 守生が端末を操作すると、スクリーンにはフルフェイスのヘルメットを被った人のようなものが姿を現わす。手には爆弾を握っているノーフェイスの姿を説明をしようとして、守生は苦笑を浮かべる。 「現れたのはフェイズ2、戦士級のノーフェイス。識別名、というか自称らしいんだが『バレンタイン少佐』って名乗ってる。大体どんな奴か察してもらえると、俺は説明楽なんだけど……」 この時期になると湧いてくる類の生き物だ。リベリスタ達の顔に生暖かい笑みが浮かび、その上で守生に説明を促した。 それを見て、守生は諦めたかのように説明を開始した。 「このノーフェイスはバレンタインのカップル達に強い憎悪を持っている。そこで、カップルを皆殺しにしようって奴だ。こう言うと馬鹿馬鹿しいが、攻撃能力が高いから放っておくと危険性は高い。確実に倒してくれ」 そう言って、守生はさらに端末を操作し、スクリーンに地図を表示させる。 どうやら公園のようである。 「ノーフェイスはここを襲撃予定のようだ。複数カップルのいる、広めの公園だ。被害が出る前に頼む」 それなりに広い公園だ。現れる時間帯は夕方過ぎとは言え、一般人はそれなりにいる。そちらへの配慮も必要だろう。一応、人気の無い場所の位置は把握しているが、ノーフェイスが素直にそこに来ると決まった訳ではない。 「このノーフェイスを誘導するなら、一番有効なのは『ラブラブなカップルを演じる』ことだ。実際に付き合っていなくても、それっぽい振る舞いをしていれば簡単に釣られるはずだ。もちろん、付き合っていても構わないけどな」 この性質を利用すれば、被害を最小限に抑えることも可能である。 ノーフェイスはなんとなくカップルっぽければ襲撃を仕掛けてくるので、作戦は立てやすいだろう。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月28日(木)22:51 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 「ここは止した方が良いかな……」 「そうね、ちょっと騒がしそうな雰囲気だし」 公園に来たカップル達は三々五々、場所を変えようと席を立つ。 「何故だかはよく分からないが」、公園の中にいる金髪の少女に目が惹きつけられてならない。艶やかな金髪をして、その瞳は緑とピンクのオッドアイ。目立つなと言う方が無理な風貌ではある。しかし、それ以上に人々の心へ訴えかける何かを持っていた。加えて、彼女の目立つ姿に引き寄せられてか、妙に人波がざわついている。こんな場所では、ムードもへったくれも無い。 そうして、公園からは次第に次第に人がはけて行った。 公園から去って行くカップル達の姿を確認して、『つぶつぶ』津布理・瞑(BNE003104)は満足げに微笑んだ。 「ま、こんなものかしら」 ● 「付いて来て欲しいのです……涼さん」 「あ、あぁ……分かったよ」 恥ずかしそうに声を絞り出す『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)に、『パニッシュメント』神城・涼(BNE001343)は頷くと、ゆっくりと後をついて行く。 如何にも「バレンタインデーを迎えた初々しいカップル」と言った雰囲気だ。 しかして、これはこの場に現れようという危険なノーフェイスを捕えるための演技である。 (私は恋愛経験処か初恋もまだだけど……バレンタインデーにチョコを渡す代理告白なら何でも屋のお仕事で経験があるわ。だから……大丈夫) (これは役得だぜ! でも、どんなんがカップルっぽいんだろうな。下手打ったら後で土下座だな、こりゃ) その一方でそれぞれ内心では、不慣れな状況に対してアレコレ考えながら演技をしているわけではあるが。中々に複雑なものである。 そして、人気の無い広場まで来るとエナーシアは振り向く。 小さな手に握られているのは、可愛らしくラッピングされているハート形のチョコレート。照れからか、口元を隠すようにしている。 涼は上目づかいに自分を覗いてくる彼女の表情に、演技と言うことも忘れてどきりとしてしまう。 そこへエナーシアはチョコレートを差し出す。 最初はおずおずと。 しかし、確かに真っ直ぐに突き出して。 「あう、その……う、受け取って欲しいのです」 「あ、ありがとうな」 一瞬、虚を突かれたような表情を浮かべるものの、差し出されたチョコレートを受け取る。 「エナーシアと一緒にいることができるだけで嬉しいのに、チョコまで貰っちゃって良いのかな?」 自分より幸せな男など、この世界にはいないといった風情ではにかんだ笑みを浮かべる涼。 その言葉に恥ずかしそうにうつむいてしまうエナーシア。 バレンタインのカップルそのものの2人。隠れて彼らの様子を伺っているリベリスタからはぱるぱると妬ましげな視線が集まる。 「お似合いでうらやましいのう。ちなみにわしはチョコはもらえんかったぜよ……」 「この時期は色々妬ましいですからね……。えっと、ノーフェイスらしい影はまだ来ていません」 木の陰に潜んでいる『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)と風見・七花(BNE003013)だ。ここに現れるだろうノーフェイスを迎え撃つためにこんな場所にいる訳だが、バレンタインらしいことを出来なかった無念が募るばかりだ。ましてや、演技とは言え目の前であんなものを見せ付けられているのだ。そりゃ、精神衛生上よろしくない。 「もっとラブラブとかちゅっちゅっとかして! ああん! 見てられないわね! 七花ちゃんうちとちゅっちゅっしましょ! 作戦的に必要よ!」 「必要無いです。ほら、あっちでもやっていますから!」 目の前の景色に何かを持て余した瞑は七花にモーションを掛ける。 七花はそれをかわして別の方向を指差す。その先には、また別の『恋人達』の姿があった。 「チョコ有難う。やっぱり雅からのチョコが一番嬉しいよ」 「ありがとう! 大好きな人と、こうやって一緒にいれるなんて夢みたい……」 5月の空のように『合縁奇縁』結城・竜一(BNE000210)が爽やかな笑顔でチョコレートを受け取ると、『下剋嬢』式乃谷・バッドコック・雅(BNE003754)は花のように破顔させる。 「寒かったろう?ほら、マフラー。一つしかないけど、なあに、一緒に巻けば暖かいさ」 「うん……そうだね。あ、チョコ以外にもお菓子あるの。食べる?ふふ、食べさせてあげよっか」 竜一と雅は1つのマフラーで繋がり寄り添う。 とても幸せそうな光景だ。 これを演技でやっているのだから、リベリスタと言うのは多芸なものだ。もっとも、これが演技で無かったら、竜一は魔氷拳でも受けた状態で三高平港の埠頭へ浮かんで然るべきだと思う。オサレなモード系でポップでキャッチーな顔の内側では、 (偽装だよ! 仕方ない! 依頼だもの! うへへへっ! 雅たんの頬つんつんぷにぷにすりすりむぎゅむぎゅくんかくんかぺろぺろ……止めに入られない限り、どこまでもいくぜ! 仕方ないよね! 仕事!) とか考えている訳だし。 (アレは「偽装だよ! (中略) 仕事!」とか考えておる顔じゃの……) 物陰に隠れながら『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)は2人の様子を分析する。及んでいる行為に関しては物足りないが、GOサインを出してしまって良いものか。 (やはり狙い目は神城×ガトリングペアか。うぶそうじゃし) 気分は脚本家かオーケストラの指揮者か。 カンペを2人に向かって投げつける。 (そこでKISSだ。ケー・アイ・エス・エス。キッス! これは仕事じゃぞ! 妾も仕事ゆえ仕方なく言っておるのじゃ!) 無言でサインを送るシェリー。 涼とエナーシアは困ったような表情を浮かべて、逡巡した末にキスをするためのモーションに入る。 バレンタインの空気は魔物だ。 否応も無くムードが盛り上げられる。 涼とエナーシアの仕草はまるで本物の恋人のよう。ためらいがちに顔を寄せて行く姿は、まだ気恥ずかしさが抜けない初々しい恋人達そのものだ。 そして、2人の唇が、互いの息も届くような距離まで近づいた時だった。 「ノーフェイス、来ました!」 近くで轟音が聞え、式神でそれを捉えた七花が対応を促す。 『空気を読まんか、ノーフェイス! そんなんだから、モテんのじゃ!』 ● 「情報と違って思いの外に数は少ないが……カップル発見した。これより作戦行動に移る」 防弾スーツを思わせる服に身を包み、ノーフェイスが姿を現わす。彼らの姿はまさに訓練された兵士。一糸乱れぬ動きで、リベリスタ達への攻撃を開始した。 「カップルを1匹見かけたら30匹はいると思え! この公園は我々が制圧する!」 「竜一、大丈夫!? 貴方達何をするのよ!」 「大丈夫。それにあんな奴らに雅を傷つけさせてたまるか!」 竜一と雅は演技を継続しながら戦闘を行う。 カップルに見える限り、連中はここでの戦闘を続けざるを得まい。予想通り、ノーフェイス達は怒り心頭で攻撃を開始した。 「クッ……互いに庇い合うカップルだと? 真剣に許せん! 存分に爆発させてやる!」 ノーフェイス達の妬みの心が神秘の力を集めて行く。 生成された神秘の爆弾がリベリスタ達の元へと投げ込まれて、火を噴きあげる。 神秘の弾丸が撃ち込まれて、公園は戦場と化した。 爆風の中でエナーシアを庇っていた涼は咳き込みながら不可視の刃を構える。 「ふぅ、まったく……リア充を爆破したい? 俺もだけど本当にしたらスゲェカッコ悪いぜ?」 エナーシアを後ろにする涼の周囲に魔力を帯びたダイスが浮かび上がる。 「っつーことで大人しく散りな……!」 涼の言葉と共に手近なノーフェイスに向かってダイスは飛び込み爆花を撒き散らせる。 「いいですか? 爆発させてもいいのは……」 七花が行う導引に従って、魔法陣が形成されていく。 それは異界より魔の炎を召喚するためのもの。 魔法陣が完成されていくにつれ、彼女の身体にも魔術刻印が浮かび上がる。体内の魔力が活性化されていく証だ。 そして、彼女の力ある言葉と共に、魔法陣は完成した。 「有害アザーバイト、重犯罪者フィクサードカップルだけです!」 魔炎が炸裂してノーフェイス達を吹き飛ばす。爆発はしてないから良いということにしておこう。 「己……リア充の味方をするか、小娘」 「リア充? いいえ、リア獣です。な~んてな」 おどけた言葉と共に仁太は巨大な銃をノーフェイス達に向かって撃ち込む。 戦場は瞬く間に破壊と言う名の支配者に制圧される。 「実に無粋ね。爆発するのは腐った性根だけにして貰いませうか、部下3人の少佐さん」 エナーシアも凶悪な外見の対物ライフルを取り出すと、次々にノーフェイス達の急所をめがけて弾丸を放つ。本来であれば装甲化された車を破壊するために用いられるような代物だ。如何にエリューション化を果たしたノーフェイスと言えど、そうそう耐えきれるものではない。 派手に爆発音が鳴り響き、リベリスタとノーフェイスの交戦は続く。 ノーフェイスの持つ文字通りの火力は高かった。 しかし、リベリスタ達の火力も決して負けてはいなかった。 ましてや、リベリスタの側には補給線が存在した。 ノーフェイスにとってあまりに皮肉な結果ではあるが、決め手となったのは互いを慈しむ心であった。 「カップルへの憎悪か。ふっ……俺にはよく分かるさ。だが、だからこそ、俺が止めて見せねばならない」 ノーフェイスを見る竜一の瞳は何故か遠くを見ている。 彼らの姿に、遠い昔に失った何かを思い出したのかも知れない。 「だって……ほんとに爆発させたらネタで終わらないから虚しいだけじゃないか!!!」 「虚しいから爆発させてるんだよ!」 「だったら、愛を知らぬお前達に教えてやる。何故俺が立ち上がれるかをな!」 気合と共に竜一は刃に込めた力を解放して振り抜く。 すると、破壊のエネルギーがノーフェイスを雲散霧消、文字通り爆発させた。 気が付けばノーフェイス達は満身創痍だ。 「リア充め……!」 「別に恋人がいるわけではないがリアルなら充実しておるが何か? 義理でも渡してやろうか?」 「ちゅーかな。たとえリア充を爆発させた所で自分がリア充になれるわけやないんよな。……ところで、お前さんら仲間同士ですらチョコ渡さんかったん? 上官に上げたりとかそういうの」 「やったら、より虚しくなったわ!」 シェリーと仁太の言葉に、逆ギレを起こすノーフェイス。 ノーフェイスの内、一体の顔がちょっと赤らんでいるような気がするのは多分気のせいだ。 「まあ、爆発させるんは気持ちいいからお前さんら爆発させるがな!」 仁太の言葉を合図に、シェリーは同時に魔炎を撃ち込む。 「さあて、終わりだ。妬むしかできねえやつは地獄に落ちるのが相場ってもんだぜ!」 先ほどまでのしおらしい演技はどこへやら。 雅の口調が荒々しいものに変わる。 それが彼女の選んだ生き方。 神秘に彩られた闇夜のドラマ(運命)を支配するクリミナルスタア(花形)の輝きだ。 「てめぇらノーフェイスに言った所で仕方ねぇが、そんな執念があるなら他の所へぶつけやがれ!」 雅の言葉と共に放たれた弾丸はただの弾丸ではない。 暗黒の淑女が下す、絶対的な断罪の魔弾だ。 ノーフェイスの身体に穿たれた弾丸は、その身にはっきりと呪いを刻み込む。 「グ……クリスマスに結成された、我らが小隊も……もはやここまでか……」 「はぁ、しょうがないわねぇ……。どうせチョコも貰えないからって、クリスマスとか初詣とかバレンタインとか、イベントの日にちょくちょくやってくるんでしょ」 ため息をつくと瞑はチョコレートを投げて渡す。 「ほら、うちが後で食べようと思ってたチョコが残ってるからこれで我慢して消えなさい!」 リーダーと残ったもう1体がチョコに向かって反射的に駆け寄る。そもそもチョコ自体が目的だったわけではないが、身体が反射的に動いてしまうのだ。男って悲しい生き物よね。 しかし、チョコを拾って2人は愕然とする。 「1つしかないけどね!」 ノーフェイスがチョコを拾う隙を突いて、瞑は距離を詰めると両手のナイフでノーフェイスを同時に切り裂く。もはや常人には何が起こったのかすら理解出来ない早業だ。 「最後に少しくらいはカッコ、つけさせてもらうぜ!」 涼の手の中でサイコロが躍る。 転がすように手をノーフェイスに向けると、ダイスは勢いよく飛んでいく。 出る目は既に確定していた。 「ば、爆発するのは、我々の仕事では……!」 派手な爆風が舞いあがり、ノーフェイスの肉体は爆発四散した。 南無三。 ● 「今日の演技は忘れろ」 それが戦いが終わった後に雅が発した第一声だった。 全力で「恋する乙女」を演じていたのだ。そりゃ、恥ずかしいというもの。 「お似合いやったと思うけどな、ヒュウヒュウ~♪」 仁太が茶化して口笛を吹くと、雅は猫のような眦を吊り上げて睨み付ける。 その横ではエナーシアが照れくさそうな顔で、涼にチョコレートを渡していた。 「……ぜ、ぜんぜん演技だったのですよ? 東北ではお世話になったのだし改めてチョコどうぞなのだわ、神城さん」 「え!? マジで!?」 喜色満面の笑みを浮かべて感情を表現する涼。 エナーシアの文法が、明治の文豪のようになっているのはただの照れか、他の要因があるのか。 「被害は出ませんでしたし、そろそろ引き揚げましょうか。ブラックコーヒーでも飲みたい気分です……」 周囲の状況を確認した七花はアークの処理班に連絡を取っていた。 これ以上ここにいると、自分もリア充を爆発させる側に回ってしまいそうだからだ。悲劇、惨劇よりも砂糖で口の中がじゃりじゃりの方がマシだというのに。 それを呼び止めたのは瞑だ。 手には先ほどノーフェイスにばら撒いたのとは別の、リベリスタの人数分のチョコレートが握られていた。 「バレンタインだもんね。一緒に戦う皆にチョコ作ってきたよ! 守生ちゃんにも出がけに渡して来たしね。実のところ、うちもあげる相手が居ないだけなんだけどね」 得意げな微笑みを浮かべる瞑。 バレンタインにチョコを贈る相手やくれる相手がいない。それは悲しい話ではある。 それでも、諦める必要は無い。 やりようによっては、楽しむ術などいくらでもあるのだから。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|