●スクレイルとは グランドキャニオンをご存じだろうか。 アメリカ合衆国に存在する国立公園にして、世界遺産の一つである。 遥か太古からの地層を視る事が出来る、風光明媚な観光名所として知られる地だ。 では、 そのグランドキャニオンで最も危険な生物が何か、知っているだろうか? それは英語名で“スクレイル”。 日本名で―― “リス”の事である。 ●ブリーフィング 「厳密に言うと危険なのはリスそのものではなく、リスが持つ“狂犬病”です。 万が一噛まれたら、六時間以内に血清を打たないと命に関わる事もあるとか……」 言うは『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)だ。 リス。最小で十三センチ。最大で一メートルの個体が居る、中々に多彩な大きさを持つ種族だ。日本にも何種か生息しており、愛くるしい外見からリスを好む者も大勢いる。しかし、 「アメリカのグランドキャニオンでは触れてはいけない動物に名を連ねる存在らしいです。まぁ野生動物ですし、さっきも言った様に狂犬病持ちに噛まれたら最悪死にますからね。日本では法律が徹底されて狂犬病持ちはほぼいないとされますが――と、話が逸れました。戻しましょうか」 和泉がブリーフィングルームに備えられたモニターを操作すれば、映像が映り。 「三高平からそう遠くない森の中でリスが大量発生しました。これらのほとんどは無害なリスなんですが……一部はエリューションと化しています。数にして七体ですね。これらを全て討伐して頂きます」 彼女の言によるとフェーズ1が六体。 フェーズ2が一体の編成であるらしい。そしてこのリスらの特徴は、 「狂犬病……ではありませんが。これらのリスの歯には毒があるようです。その為、噛まれた場合は高い確率で毒が体に付与されます。通常のリスに紛れて奇襲してくる性質もあるみたいですので気を付けて下さい。そして――」 直後。映像を切り替えれば、巨大なリスの姿が映る。 大きい。 見れば即座に分かる程に。通常のリスとは明らかに異なるリスが一匹だけいる。 十倍以上あるだろうか。とにかく大きい。成程、これがフェーズ2か。 「その通りです。フェーズ1とは戦闘力にも差があり、更に強力な毒も持ちます。 所謂ボス格ですね。逆に言えばこれさえ倒せれば、かなり楽になるとは思いますが」 リスは本来可愛いものだ。 しかしながらそれは“小さい”サイズであるが故にこそ。あまりにも大きすぎれば、それはもはや愛でる範囲を超えた、人への脅威になりかねない。ましてやこれ程大きければ尚更。 倒さねばならない。必ず。なんとしても。 覚悟を決めるリベリスタらに対し――和泉は言葉を続ける。ちなみに、と前置きしてから、 「えーと……あと、備考として。この個体は非戦のステルス完備です」 ……はっ? 「ですので目視でエリューションだとは分かりません――まぁ目視すれば分かりますけど」 矛盾してる! 矛盾してる!! 矛盾して無いけど矛盾してるだろソレ! 「しかもこのフェーズ2はどうやら己が通常リスの中に完全に紛れこめていると思っている様で……えっと、通常リスに紛れていきなり襲いかかってくる攻撃をしてくると思います。分かりますけど」 この個体はアホなの? 「かもしれませんね。ともあれ、力は確かに強いので深い傷を負わない様に気を付けて下さい」 それでは以上です、と彼女は言葉を締めくくった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月25日(月)21:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●お前の様なリスがいるわけ「ちくわ大明神」ないだろおい誰だ今の 「こんにちはーCO2一杯出す方の伊藤でーす。突然なんですが……」 森の中、『いとうさん』伊藤 サン(BNE004012)の声が響く先にはリスの大群。 一匹やたら目立つ個体も含めて、伊藤は言う。やたらニッコリした顔で、 「火・遊・び♪ しにきますた! ヒャッハー!! 汚物は消毒だッ――! レッツァパァリィィ――!」 双の拳を砲として。業火の属性を含んだ精神弾をリスへとぶち込んだ。 狙いは無論エリューション化したリスらである。己の強化を施した上での弾は見事に着弾。通常リスらの混乱と興奮が若干広がるが、 「ほら、ナッツだよー。行くよー! 投げるよー! それっ!」 『Wiegenlied』雛宮 ひより(BNE004270)がリスの気を引くべく投げたナッツがそこで功を奏す。マイナスイオンの雰囲気と共に放たれたソレは、混乱よりもリスらの食欲本能を優先して呼び覚ましたのだ。 結果としてリスらの一部がナッツに殺到。エリューションリスは流石に引っ掛からない様だ……が…… 「……いや、一匹だけ。あのバカでかいリスだけはナッツに引っ掛かっているみたいですな。 アホですか。いや、アホなんでしょうな」 『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)の視線の先。 フェーズ2たる巨大リスが、ひよりの投げたナッツを必死に頬張っている姿を見て嘆息。まさかあそこまでアホだとは。 というか、なんだ。アレだ。まさか本当に己の事を普通のリスだと思っているのだろうか? まさかまさかそんな事は無いと思うが――しかして、 「――お 前 の よ う な リ ス が 居 る か ッ!!」 某世紀末漫画風の絵タッチになって、九十九は言う。いや、言わざるを得なかったッ! むしろよくぞ言ってくれた九十九ッ――!! が、当のリスは、 ――えっ? まさかぁまたまた御冗談を。 みたいなふざけた反応を返している。どうしようあのリス、マジで。 「くっ……そ、それにしてもりすかわいい……! おばかみたいに引っ掛かってる所が……! くぅッ!」 胸の奥がきゅんきゅん来ているのは『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)だ。 この場が戦闘の場でさえ無ければ即座にもふりに行ったであろう。ナッツを必死に頬張る姿など彼女にとってはど真ん中ストライクで。あまりの愛くるしさに、一瞬我を忘れかけるが、 「でも……残念だけど、ときめいている場合じゃないのよね。 この子達を退治しないと、いずれは大変な事になってしまうんでしょうし……!」 「そうだね……出来ればもふもふしたいけど、僕達が頑張らないと……!」 依頼の本質を忘れはしない。趣味と仕事は話が別だ。 ミルト・レーヴェ(BNE004277)もまた、その意見に同意する。 若干の名残惜しさはあるものの、即座に気持ちを切り替えてリスらに相対。 倒さねばならぬのだ。エリューション化した、生物は。 「ひっひっひ……そうさなぁ。殺さなあかんのは人間のみにあらず。 狂犬病持ちの動物なんぞ、そら大層険ってもんですなぁ」 言うは『√3』一条・玄弥(BNE003422)である。 彼は足袋に草履を履いて、準備を万端としながら此処に来た。 いつも通り、人を殺すのと同じ様にしながら。言葉を紡いで。 「ほな。危険は早いとこ排除して、お銭をいただきまひょか。人も動物も“やる”ことに大して変わりはありませんぜ」 「せやなー……あ、ちなみにわし、狂犬病はおろかエコノキックスもないでー 健康・安心のビーストハーフ。わしはとっても安全ぜよ!」 『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354) ちなみにエコノキックスとは寄生虫エコノキックスによって人体に引き起こされる感染症で……まぁとりあえず危険な病気の事である。ビーストハーフ全般にこれは無いのでビーストハーフ諸君は安心して欲しい! 野生の動物には時たまあるが。 「えええ――!? マジで!? マジなのか!? 野生のリスさんがそんなおっかにぇー生き物だったなんて……このわたしの目をもってしても見抜けなかったんだぜ! つまり! 全然知らなかったッ!!」 その時。『ムエタイ獣が如く』滝沢 美虎(BNE003973)の叫びが森に響く。 どうやらリスの狂犬病所持の事に関しては初耳だったらしい。そんな危険だったとは……と心中で納得するが、 「でも、だからと言ってリスさん見境なく片っ端から駆除するってのはちょっと酷い気がするし…… エリューションだけを速攻でやっつける方向でっ! 頑張ってみよ――!」 何の罪も無いリスを巻き込むのは良心が痛むか、なるべくエリューションにだけ狙いを定めてみる様だ。 リベリスタらの周囲を激しく走り回るリスの集団。これらに紛れて攻撃をしてくるリスは面倒だが――リベリスタ諸君ならば、やれない事もないだろう。それにどの道、やるしかないのだ。 気持ちを新たにすれば今ここに。リスらとの戦闘の火蓋が切って落とされようとしていた―― ちなみに。巨大リスは動きながらまだナッツ食ってます。フェーズ2ェ…… ●フェーズ2「ちょううめぇ! やばい! ナッツちょううめぇ!」 リベリスタ達はまず、二人ずつで組を作り、背中同士で向き合った。 それはなるべく死角を消すべくの行動である。縦横無尽に走り回るリス達からの奇襲に対抗すべくの布陣と言えるソレは、ニニギアと仁太。九十九とミルト。玄弥と美虎。伊藤とひより、でそれぞれ構成されている。特に、 「くっくっく……残念ですが無駄ですぞー。私に不意打ちは効かないんですなこれが」 「ニニギアはん、ちっこいリスが来るで! 気いつけや!」 ESPによって研ぎ澄まされた勘を持つ九十九と、ビーストハーフ特有の反射神経を持つ仁太の二人は、リス達の奇襲を完璧に読み切っていた。自身に近い周囲に声を掛ければ、その者達もワンテンポ遅れて回避や防御に努める。 二人と違って完璧に防ぐ事こそ出来ないが、それでも無対策よりは大いに奇襲に対応出来ていたと言えるだろう。他にも、 「――とっとぉ! 中々すばしっこい連中で御座いやすなぁ!」 玄弥は常に視界を一点に留めない事で対処をしている。研ぎ澄まされた目――超直観の能力をもってすれば、エリューション化したリスだけを見続ける事も不可能ではないだろう。音に関しては目の範囲外である為、特に気を付けている様だが、上手く行けば相当の効果を生み出す筈だ。躱わした先で暗黒の影を放てば、正確にリスを包み込んで衝撃を与える。 「わっ……わっ……! カリコリ食べてるの、かわいい……!」 また、ひよりも同様の効果をもってリスらに挑んでいた。 ナッツを投げ、数多のリスの注意を引きながら。マイナスイオンの落ち着く雰囲気をなるべく広く届けんとする。戦闘が同時に行われている為、残念ながら然程の効果は得られていないが、それでも一匹二匹。餌がある事も相まって、興奮が落ち着く個体は居る様だ。 されど――それで全て上手く行く訳では勿論ない。前述したように奇襲を完璧に防げているのは九十九と仁太のみ。その他のメンバーはあくまでも奇襲の効果を軽減しているだけだ。故に、 「――!!」 反応間に合わぬ勢いで奇襲を行えるリスが現れるのだ。 ソレは金切り声を挙げてひよりの首筋に噛みつかんとする。背中合わせの布陣とはいえ、死角が常に0ではない。彼女が気付いた時にはもう遅し。一瞬の隙を突き、飛び付かんとするリスは明確な殺意と共に歯を突き立てる―― だが。 「あ、あれ……? いたく、ない?」 痛みが来ない。 何故だろうか、と思考すれば。答えは直ぐに分かった。庇った人物が、いたのだ。それは、 「やぁやぁ大丈夫かい……ひよりさん」 ――伊藤である。 背中合わせの彼が、ひよりへと届かんとする凶刃を捌いたのだ。 彼は言う。焦る顔で何か言葉を紡ごうとする彼女に、大丈夫。と、軽く返して、 「それにね、男ってのは……」 親指立てて、笑顔と共に。 「――女の子の前じゃあカッチョよくしたいものなのさッ!」 言い放った。 そうだ。こんな傷が何だと言うのだ。 たかがリス。小動物の噛みつき程度可愛いものだ――少なくとも、彼はそう己の“意地”を張り通す。ドヤ顔で。 「で、でも大丈夫なの……?! なんかすっごい勢いで噛みつかれてるけど……!?」 「ハハハ大丈夫大丈夫こんな程度――あ、ちょっと予想より毒の勢いが強い。これはもう駄目かも分からんね」 「伊藤さぁ――ん!?」 あたふたしながら伊藤を気遣うひより。伊藤は顔が青くなりながらもアハハと笑い流す。毒が回っているんだろう。 ともあれ、だ。 「右から来るわ、仁太さん――回避をッ!」 ニニギアの声が飛んだ。見れば、来ているのは大型のリス。フェーズ2だ。 その巨体からは思い寄らぬ程、速い。地を駆けて、突進の構えでニニギアらを吹き飛ばさんとする。が、ニニギアの声が寸での所で間に合ったか。掠める程度でなんとか回避する事に成功した。 「くッ……な、なんてドヤ顔のリスなの……! ああ、もふもふ、もふもふしたい……!」 回避した先でフェーズ2に視線を向ければ何故か、どや? どやっ? という感じでリベリスタ達を見ている。なんだこいつ凄い腹立つ。まさかまだバレてないとか思っているのだろうか? あぁそうなんだろうな。だがもふもふだけは可愛くて仕方が無い。 ……ツッコミたい。バレバレだってツッコミたい! もふもふしたい……けど、ああ我慢我慢……! 例え心中でいくら強く決心しようとも、目の前で精神的殺人毛玉と言うべきもふもふが動きまわれば、ニニギアの心も揺れ動くものだ。もふもふの感触を知る者ならばこの気持ち、理解して頂けるのではないだろうか。もふもふとはそれだけの価値があるものであり、故にこそもふもふなのだッ――!! 「だあああ! 玄弥、気をつけて!! まとまったもふもふがこっちに来るよッ!」 と、熱くなった所で。美虎が背後の玄弥に警告するは、リスだ。 小型エリューションリスが二匹、一斉に襲いかかってくる。逃げる事は出来ない。後ろに味方がいるのだ。 だから、 「とらぁ……!」 逃げない。 待ち構え、玄弥の背に体重を預ける様に重心を後ろへ。 直後。飛びかかってくる二匹のリスに対して、 「でぃす!」 脚を出す。背中合わせ。だからこそ自由に動けぬ故に。速度を出す為に脚で迎撃する。 左の脚を回して上げて。ハイキックの形で一匹穿ち。 「とらく!」 そのままの勢いでもう一匹巻き込む。 速度を付け、武器として。雷撃の属性を纏えば、 「ちょんッ――!」 邪魔な木の枝ごと一刀両断せん勢いで薙いだ。 ついでに、 「かーらーのー! とらカッタッ――!」 「ヂッ――?!」 近くに居たリスも巻き込んでおいた。よしッ! 「これ、上手く行くと、いいんだけどな……!」 瞬間。ミルトが試みるは幻影だ。 自身の周囲。そこへ出現させるは巨大なサイズの――カラス。 マイナスイオンの効果が少々効き辛かった為、幻影による脅かしを行おうと言うのだ。唐突に現れた巨大な存在に、リスらには瞬時にして動揺が広がる。 ――が、そこまでだった。動揺を広がらせる事こそ成功したが“動かない”幻影にはそれが限界。また、小さめのリスらにとって五十倍近いサイズ差のある者の唐突な出現は、危険よりも先に状況を認識出来ていない“困惑”の感情を伝播させた。 あわよくば他者の攻撃に合わせて出現させたかったが……静止幻影が攻撃したように見せるのは難度が高すぎる。動いている幻影ですら難しいだろう。元より、それは“非戦”の技術なのだ。驚かす事は出来るだろうが、それ以上の活用は至難である。 「なれば……仕方ありませんな。いくつか巻き込んでしまうでしょうが……」 九十九が往く。銃を片手に、狙うは目視できる全てのエリューション。 極限の集中を見に施す己の強化は、彼の視界をコマ送りの世界へと変動させていた。 1・2・3のコマカット。止まっている様な世界で彼は引き金を引き絞って、 「くっくっく。私の銃弾からは逃げられませんぞ? まぁ、そうですな……」 連続射撃音。テンポよく打ち出された銃弾は右に左に前に下に。カットが変わる度に一発放ち、リスを捉えて。 「悪く思わないで下さいよ――とは、言っておきましょうか」 一斉着弾。 コマ送りの彼の視界に、衝撃で吹き飛ぶ複数のリスが映る。 「いえーい!! 環境破壊いえーい!! 良いの子皆はマネしちゃ駄目だぞアタークッ!!」 更にそれに次いで伊藤が放つは業炎の属性を含む、銃弾。 森の中で火を放つとはなんて事を……! と本来なら成る所だが、神秘の攻撃は便利だ。副次的に火が広がる様な事は無い。ノー環境破壊。素晴らしい。 しかして。その攻撃にたまらずリスが襲いかかってくれば、 「させるかァッ! カウンター環境破壊アタークッ!!」 炎を纏った右拳をカウンター気味にぶち込んだ。環境破壊すげぇ。 小動物相手に本気の一撃など、まるで悪人。フィクサードの様な行為だが、彼はそれに対して思考する。リベリスタという言葉は便利だと。 正義の為と言う免罪符――それが、ズルイ所だ。やっている事に変わりは無いと言うのに。何の違いがあるのだろうか。苦悩するかの様に彼は思考し、そして、 「いえーい燃えてるかーい!! 火は全てを浄化するッ! 燃ぉえてるかーい!?」 「伊藤さんさっきからテンション高いの……どうしたの、どうしたの……?!」 考えるのが面倒くさくなったのでとりあえず火炎をリスにぶち込んでおいた。酷い。 ひよりはそんな伊藤と背中合わせの状態で、癒しの歌を紡いでいく。皆の傷を塞ぐべく。 「しかしEリスって言うと……なんだか友達の事を連想しちゃわざるを得ないわ…… ぜ、全然違うんだけど、似通ってるのよ……!!」 と、高位存在からの息吹を具現化させて癒しとするニニギアはなんとなし。知り合いのリベリスタの事を脳裏に思い出していた。どことなく似ている感じがしたか。想起した様だ。ともあれ、 「ほい――これでちみっこいのは皆殺しに出来たでぇ。後は……」 玄弥の放った影が、最後のエリューションリスを呑み込んだ。 否。正確には小型の、だ。後一匹。本番が残っている。見れば、配下が全滅した事を察してか、ひっそりと逃げようとしているが――大きすぎるのでバレバレだ。バレバレなのは終始だが。 「一番でっかいのを殺して、終いにしましょか」 「逃がさへんでぇ!! ていうか紛れて逃げれると思うとるんか!」 故に追撃する。低い姿勢のまま踏み込んで、赤く染まった爪で玄弥がリスを切り裂けば、続く形で仁太が、 「そもそもそんなでかいリスがおるかっちゅうやッ! わしがリスのビーストハーフってぐらいに無理があるやろ――!!」 心の底より本音を叫んで、禍々しい巨銃から連射する。 頭部連続ぶち込んで。何故ばれた!? という顔のフェーズ2に容赦なく攻撃を加える。 「逃がさないよ! もふもふするまで逃がさないよッ――!」 直後。フェーズ2を包囲すべく回り込んだミルトは、吸血せんとして接近する。 彼個人的にはあまり多用したくないスキルだが、仕方ない事態だ。もふもふする絶好の好機。いや本当に仕方のない事態だ。これを逃せばもはやもふもふの機会は失われるだろう。故にもふもふすべく、歯をリスに突き立てる。仕方ないんだこの気持ちは! 「ヂッ!!」 しかしボスとしての意地か。それとも防衛本能か。 最後の反撃とばかりにリスもミルトに歯を深く食い込ませる。肉を抉り、骨に到達せんとする勢いで―― 「そこまでだあああッ――!! 隙ありッ! とらアッパ――!!」 「せめて墓標ぐらいは刻んであげますとも。ええ“馬鹿此処に眠る”みたいな感じで」 さりとて美虎の言う通り“そこまで”だった。彼女はリスの下に入りこみ、脚に力を入れて真上に跳躍する。宣言通りアッパーの形で。防御ごと気でぶち破るべく。そして九十九の精密な、動く針穴すら穿たんとする一撃もがフェーズ2の目を捉えれば。 「ヂッ……ヂッ――!!」 凄まじい衝撃がリスの体内を駆け廻り――直後。フェーズ2はその巨体を地に倒す。 愛すべきアホの子は、朽ちたのだ。 ■フェーズ2(故)「何故ばれたんだ……!?」 「やれやれ……ま、どんな馬鹿であったとしても。命を奪ったんだ。 ……供養ぐらいはしてやらないとね」 「犠牲になった普通のリスも埋葬しておいたの。ナッツ、折角だから置いておくの……」 戦闘は終わった。さすれば、リスの死を悼むべく彼らの死体をリベリスタは埋葬する。 如何なエリューションとは言え命は命。おやすみなさい、と伊藤は心中で言葉を呟き、ひよりはナッツを添えて供養とすれば、 「ああ……もふもふ……もふもふしたかった……! 私も胡桃とドングリ備えておくわ……ぐすっ」 「“愛すべき馬鹿此処に眠る。もしかして:アホの子”……と。これで良いですかな。安らかに眠れ……」 後衛向きで会った事が災いしたか、もふもふ機会が失われた事に悲観するニニギア。もふもふ…… 一方で九十九は言った通り墓標を刻んでいた。馬鹿で無ければもっと強敵だったろうに。 さぁ、ともあれアークに帰還しよう。 愛すべき馬鹿との闘いは、終わったのだから―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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