●ヒーロー&ヒーロー ぱるるるる――小粋なエンジン音を響かせて。休暇をバイクツーリングと洒落込む『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)は今正に風である。いや実際何が風なのか知らないが本人の気分はそんな感じのようだ。 「ウェスタン! ウェスタンヒーロー! 太陽より熱くなれ! ウェスタン! ウェスタンヒーロー! 月の――」 その証拠に自作の歌まで口ずさんでいる。ノリノリである。 さて、ロイヤーが山道を下った麓にバイクを止め、「ヤベェ豆ウメェ」と言いながらお汁粉を飲んでた頃―― 「――ワッツ?」 横手の林を駆け抜ける一団がいる。茂みを掻き分け、時には木々を薙ぎ倒し――その身体能力の高さはエリューションだろう。 複数の追う者と、一人の追われる者。しかし腕は追われる側の方が上なのだろう。振り上げた腕を地に叩きつければ、一際派手な音を立てて地面が砕け陥没する。追っ手達は足をとられ、その隙に道へと飛び降りてきたのは派手な衣装に身を包んだ女だ。 「オーヤ?」 見覚えのある顔だ。けれど顔を合わせたことはない、一方的に知っている関係。ロイヤーの反応に訝しげな表情を見せ、ついでそのバイクに視線を向け走ってくる。 「ちょっと、あたしのこと知ってるならバイクに乗せてよ! 追われてるのよ」 追われているのは見ればわかる、けれど――ちょいちょい、と自身の飲んでいるお汁粉を指差した。手が離せないと言いたげである。 「悠長にお汁粉なんて飲んでる場合じゃ――てかなんで缶じゃなくてお椀で飲んでんの!?」 「懐中しるこ持ってきたんデースよ。水筒にお湯入れてきて」 有名店の商品デースよとロイヤー、ちょいとお汁粉の味にはうるさいらしい。どうでもいい話だが。 「ところでアナタ、確かアフロデンジャラス、デシたよネ」 その女の衣装は赤とピンクをど派手に使った戦隊物の衣装。更に髪型はなんとピンクのもこもこふさふさ、つまりアフロである。その正体はかつてカップル撲滅を宣言して暴れ回ったフィクサードであった。 名前を呼ばれて誇らしげに胸を張るデンジャラス。そんな彼女にロイヤーは…… 「TVで見るとカッコイーけど実際街中で戦隊物の衣装とかナイわーマヂ引くわー」 「そんな格好のやつに言われたくないんだよ! 痴女ですかこのやろー今冬ですよ寒くないの? 寒くないんですか?」 言っちゃった。そして言われちゃった。 「うるせー! コスプレイヤー舐めてんじゃネーゾ! ワタシが普段どれだけ苦労してると思ってンダ無駄毛処理に何時間かかってると――」 「おい待ってそれ以上止めて女の子に夢が持てなくなる!」 割り込んだ声は追っ手のもの。気付けば十数名のアフロ達に囲まれており――そのうちの一人、虹色のスーツを着たレインボーカラーのアフロの若い男が一歩前に出る。 「散々リーダーぶって威張り散らしてさ。今更抜けるなんて虫が良すぎるんじゃないスかデンジャラス」 「あたしは自分を大事にするって決めたんだ! もうカップル撲滅なんてする気はないよ!」 フィクサードからの脱却。その決意はかつてのリベリスタ達と戦い触れ合った末の結末。それに納得しない者達との間で緊張が走る――裏切りには報いをと、包囲がゆっくりと狭められ―― 「あ、山口だ」 「だから本名は止めろって! つーかあんた誰スか!?」 アフロレインボーこと山口さんです。そしてそれは長くなるから言っちゃいけないセリフだった。 「ワタシ? ワタシは勿論――悪党退治のスペシャリスト」 お汁粉を飲み干して。抜いた刀と拳銃はヒーローの証。 「硝煙夜に溶けて荒野と化し。荒野照らす刀の煌きは月の如く。悪党悪鬼打ち砕く西方の風――推参! その名もウェスタンヒーロー、ロイヤー東谷山デース!」 そしてドヤッ。周りの目とは対照的である。 「うわぁ……この姿見たら家族泣くわ」 「ホワイ? 先日国に里帰りした時、遠い異国の地でヒーローを斡旋するお仕事に就きましたと報告したらマム泣いて喜んでたヨ?」 「母親に謝れ」 母親に謝れ。 「ええいどうでもいい! パンダーさん! まとめて吹き飛ばすっスよ!」 アフロ戦闘員達が道を開ける。奥からゆっくりと姿を現したのは、全身ツートンのパンダカラーにがっちりした肉体を押し包んだ五十歳間近の大男。そのアフロ模様からアフロパンダーの名を持つ男だ。しかし屈強な肉体に優しさを合わせ持つ彼ならば、先の戦いの後でフィクサードを抜けていても不思議ではないのだが…… 「ォォォ……ボクメツ……ボク、メツゥ……ォォオォオ」 …… 「コノ人、こんなキャラでしたっけ?」 全員目を逸らしている。 「初めてガールフレンドが出来たって喜んでたんだけど……その、『末永く良いお友達でいましょうね』って言われたらしくて」 「うわ悪女やん。さすがのワタシも引くわー」 引くわー。 「フン、今こそアフロブラック師匠から授かった最強技を見せる時!」 「アフロブラックってソレ普通のアフロの人じゃね?」 ――説明しよう! EXアフロスター! カリスマ的アフロ力で周囲の視線を惹き付け虜にする。一度見たら視線を奪われ、その一挙手一投足に注目せざるをえない。 「アフロの魅力に取り付かせる最強技! あたしのアフロに釘付けになるがいいわ!」 「ソレってサー、アフロの相手にも通じるワケ?」 ―― 「使えねーよアフロブラック師匠ー!」 使えないのはお前だ。 敵はパンダーにレインボー。そしてアフロ戦闘員十二名。対するヒーローは二人だけ。けれど二人は余裕の笑みを浮かべている。歌すら口ずさむほどに。 「ウェスタン! ウェs「アフロデンジャラース! 嵐になれ! 嵐を呼べ!」 「おま、かぶせんナヨ! ナニその歌、嵐になれって言っておいて嵐を呼べってどういうことだ。どういうことヨ」 「人の歌に文句つけんなよ! こういうのは勢いがあればいいってお婆ちゃんが言ってた!」 「作詞お婆ちゃん!?」 本当に余裕だな。 苛立ちの声をあげて突撃してくるアフロ達を前に―― 「力は信用していいんでしょうね?」 「ロンモチ。背中は任せマーシたヨ」 笑いあい。背中合わせに二人のヒーローが動き出した―― ●↑の要約:フィクサードが現れました。足手まといが戦場にいます。 「長げーよ! そしてどうでもいいよ!」 「まぁ現状はそんな感じだ。では、お前達がこれからやるべきことはなんだと思う?」 軽く告げるなぜかコスプレ仕様の『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)の問いかけにリベリスタは。 「このまま暖かいお汁粉でも飲みに行くとかはどうだろうか」 「いいね面白い。だがノーだ。フィクサードを追い払いなんかリベったデンジャラスとおまけを救出することだ。ドゥーユーアンダスタン? 復唱の必要は?」 くそっ。ロイヤーも伸暁もいらっとくる。 「わかっていると思うがロイヤーはフォーチュナ、戦闘力は皆無だ。放っておくとこの後、パンダーの突進に弾き飛ばされ、落下してデンジャラスと頭をぶつけ合ってダブルノックアウトする」 本当に役立たねぇ。 「あんな見た目だが敵は強力だ。特にパンダーは悲しみの心によって能力が異常なまでに増強されているからな。理屈はたぶんアフロ力とかそんなだ」 どんなだ。 「まぁなんとか救出してくれ。こいつらは戦隊や戦闘員なので、お約束を守るのが狙い目だな。あとヒーロー達は前のめりだから撤退とかしないので。今後の為にヒーローのやる気を損なわないように工夫してくれよ」 なんでだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月24日(日)23:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●オープニングフェイズ――正義のアフロ! リベレンジャー! 「バラけてかかるッスよ!」 デンジャラスとロイヤーを囲むアフロの数は14人。戦闘員は戦力としては低いが、自分への攻撃を防ぐ壁と思えば十分だ。レインボーは部下に指示を出し自身は安全な立ち位置へと移動した。パンダー一人で十分だろうが、念には念をというやつだ。 ――結果的には重要な意味を持つことになったわけだが。 「ヒーローは負けまセーンよ。天が味方していマースからネ」 何かを予知したのか、ロイヤーが笑って天を指差した。天の返答は張り詰めた空気を切り裂く降り注ぐ銃声。 「ぎゃっ」「フーー!」「ソウルフル!?」 連続する銃弾に戦闘員達の悲鳴が重なる。部下を盾にしてなんとか被害を避けたレインボーが顔を上げた先―― 「毎度お騒がせ、キャッシュからの――パニッシュ☆」 飄々とした声音の奥から派手な音を立てて特撮ヒーロー風デザインの大型バイクがタンデムで飛び込んだ。群れるアフロを蹴散らし戦場に飛び込んだそれに目を奪われれば、人垣を越えて次々と騎兵隊の如く現れる戦士達。 「待たせたな!」 羽無きその身が天より飛来する。現れる様々なカラーの戦士達にレインボーが指差し叫んだ。 「何者だ!」 お約束その1。 「怒りの迅雷唸らせて平和を守るぞ! 蒼きアフロ、リベブルー!」 ポーズと共に幻想纏いを起動させれば、青のスーツの上から強化外骨格が形成される。龍を纏うヒーロー姿に青いアフロが形成されれば、今の『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)はアフロ戦士リベブルーなのだ! 「なんかそんな感じのアレで! 黄色いアフロ、リベイエロー!」 なんかそんな感じのアレでアフロを装着した『第34話:戦隊の掃除しない方』宮部・香夏子(BNE003035)。アフロを装着しても変わらず突き出すあほ毛がとってもチャーム。 「地獄の業火が悪を焼く! 漆黒アフロ、リベブラック!」 自信に溢れた笑みは年の功? いやいや自宅の姿見の前で幾度も繰り返し練習した努力の証。『闇夜の老魔導師』レオポルト・フォン・ミュンヒハウゼン(BNE004096) 、そのポーズの一つ一つがキレッキレスタイリッシュ。 「私は日陰の守護者! 灰のアフロ、リベグレー!」 どこか影を背負った表情で『凡夫』赤司・侠治(BNE004282)が深く言葉を吐く。過去に想いを寄せ、言葉に力を紡いで。展開した符はありきたりな未来を護る力だ。 「蒼穹に輝く翡翠の月、正義の光で地上を照す! 緑アフロ、リベグリーン!」 極めた運転技術でヒーローバイク『アースチェイサー』を乗り回し、『蒼輝翠月』石 瑛(BNE002528)が口上を上げる。ところでわざわざアクセサリーでグリーンアフロ(猫耳付き)を用意したこの子を褒めたげてください。 「流れる熱い血に燃える正義の心! 赤アフロ、リベレッド!」 最後に石瑛のバイクの後ろから飛び降りて『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004) が真っ赤なアフロで口上を上げた。さり気なくヒーロー二人を庇える位置に飛び降りたのが出来る子の証。 「お、お前達は一体!」 「我々は三高平の平和を守る正義の使者!」 狼狽するレインボーに侠治が答えれば、全員が揃って後を告ぐ。 「アフロリベレンジャー!」 そして決めポーズ。心なしかドヤ。 (……昔息子のテレビ番組に付き合った事を思い出すな) 侠治が懐かしい光景を振り返る間も、敵のお約束は続いていた。 「リベレンジャーだと――っ!」 「リベリスターズでもいいですよ」 石瑛の言葉に「いやそういう問題じゃなくてね」と突っ込みつつ。 「ヒーロー戦隊リベリスタでもいいよな」 「いやだからそういう――ってお前は誰だよ!」 言われて訝しげな表情の男。 「あ、俺? 俺は白ヒーローだそうな」 ほれ、と腕に巻いた白バンダナを指差す。 「相変わらずデースねMr.翔太」 クスりとロイヤーが笑えば、『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)がうんと頷き答えた。 「そっちこそ相変わらずのようだな。流石はウェスタンヒーローだぜ」 かつてロイヤーがアークに所属する前、ウェスタンヒーローとして現れた彼女と協力(という名の接待)したリベリスタの一人に翔太がいた。 「今回も付き合うぜ、なんたって俺達はヒーローだからな」 また頼むぜ指揮官と声をかけるあたり、ロイヤーの扱いにもっとも手馴れていると言えた。 「よもやこの歳にもなって戦隊ヒーロー物ごっことは……良いですな!」 ある意味もっともやる気のある男レオポルト。そんな彼らをデンジャラスはまだ怪訝そうに見つめていたが―― 「志が同じなら力を合わせピンチを跳ね除けるものだろ?」 「可愛い女の子のピンチに現れなくってどうする!」 疾風と夏栖斗のサムズアップにあっさり納得。ヒーローとはそういうものだから。 ヒーローが到着しても数の優位は変わらない。じりじりと範囲を狭めるアフロ達。そんな中で石瑛がロイヤーへと駆け寄りキラキラと輝く何かを渡した。 神妙な顔で頷く石瑛。何かを理解したロイヤー。 「フッ、今回だけデースよ」 一寸後そこにいるのは――ゴールデンアフロのロイヤー。二人は今日この時だけ、西部拳アフロイヤーなのだ! ●ミドルフェイズ――結成! 西部拳アフロイヤー! 「何て数だ! 二大ヒーロー、力を貸してくれるよな?」 疾風の言葉に任せてと頷いて、デンジャラスが拳を振るう。焔纏う拳がアフロをなぎ倒せば、鼻を鳴らしてロイヤーを一瞥。 「負けてられまセーンよ!」 叫んで駆け出すへっぴり腰。返り討ちにせんと戦闘員が迎え撃てば―― 「――ソウルフル!?」 ロイヤーの刀が当たった瞬間に氷像と化し錐揉み状に吹き飛んだ。 「ワオ! ワタシもやるもんデース」 「おーおーやるやる」 ドヤ顔のロイヤーに相槌を打って、背後で翔太が刃に付いた霜を振り払う。当然ロイヤーの力ではなくタイミングを合わせた翔太の攻撃である。 ――たく、ロイヤーの奴は。まぁ付き合うとするか……楽しいしな。 翔太、やる気はないが付き合いはいい。非常にいい。 「彼女はいるが昨年の聖夜前から音信不通だ。気持ちはブルーだが妬みで誰かを傷つけて良い道理はない。何故なら私はヒーローだからだ!」 ブルーってそういう意味なの!? コンバットナイフを構え疾風が駆け出す。次第にその身に雷を纏い、練り上げた気が鋼の肉体と化し。迅雷の如き鋼の突進がアフロ達を吹き飛ばした。 「ヌゥん……!」 呼吸がマナを取り込み体内で増幅し始める。大気の振動にその力の強さを察してアフロ達が組み伏せようと駆け出すが……得物のことごとくが防御結界に阻まれる。独鈷を構えた侠治がその力を盾として。 「よし、やれ!」 強い符の念が敵を弾き飛ばせば、高まった魔力がレオポルトの詠唱と共に形を現していく。 「我紡ぎしは秘匿の粋、エーテルの業炎……焼滅するが良い、Sturmflamme!」 放たれた業炎がアフロを更に焼き焦がした。 「ォォォオオ――!」 雄叫び上げてパンダーが動き出す。その進路は二人のヒーロー! デンジャラスといえど今のパンダーの突進を受ければひとたまりもない! 「さっさと終わらせよう! 可愛い彼女を待たせているからな!」 夏栖斗の叫びに一瞬で突進の角度が変更された。カップル撲滅の意思は暴走をも凌駕する! 全力の速度から繰り出された巨体の肩からの突進に、夏栖斗の身体が軽々と弾き飛ばされた。デンジャラスの叫びに空中で姿勢を取り着地する。 「可愛いお姉さんを守るヒーローっていうのもカッコいいだろ」 口元を拭って笑みを見せれば、迂闊に惚れっぽいデンジャラスの気を引いてしまっていたり。 「アフロと言えばソウルですよね。ソウルに大切なのはティアーズ&スエットだそうです」 いつも笑顔を絶やさず元気いっぱいに。アクションスターに憧れる少女は愛嬌を振りまいた。 「汗と涙と熱いソウルを、そのハートに響かせてみせましょう!」 「穿てッ! 灰の烏よ!」 符は自身の力の基礎。攻撃も守りも全ては基礎から派生するもの。幾度も繰り返してきた、故に侠治にとってそれは最も使いこなしてきた信用に値する力。 符の烏がロイヤーを支援する。そのロイヤーの刀に合わせて石瑛もまた術式を組み立てる。 派手な爆発を、その方が楽しいですからねと微笑んで。 「近づけさせませんよ!」 「くそ、ちょこまかして当たりゃしないッス!」 香夏子の動きに翻弄されてレインボーの魔術が空を切る。アフロ戦隊とは一度手合わせした身、たいした成長をしていないレインボーの攻撃を受けるような香夏子ではない。逆に高めた呪力のステップが不吉の力となって周囲のアフロごと呑み込めば、レインボーの焦りも募るばかり。 「お前らなんとかしろ――って」 レインボーが部下を振り返った時、その異様な光景に気が付いた。部下達の動きがあまりにも鈍い。 「ど、どうしたンスか」 そこまで言って気付く。周囲から流れる生歌に。 ♪ヒーロー!(HERO!) 奮い立つ祈り うごめく闇を千切る風 ヒーロー!(HERO!) つながる絆が 勝利導くパワー! 笑顔でごまかす年でもないけど 若さに任せてぶち当たれ 「しまった――もうテーマソングの時間か!」 お約束2。劇中でヒーローソングが流れたら負けるの法則である。 見れば開幕パニッシュなどで活躍しつつも脇からこそっと入場していた『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)が自作ソング『西部拳アフロイヤー』を歌っていた。 「急げみんな! もうすぐ大サビに入っちゃうぞ!」 ヒーロー達を指し示せば、頷き合って揃う足踏みがクライマックスへの序曲となる。 ●クライマックスフェイズ――強力合体! アフロコンビネーション! 「いいんだぜお前たちもリベっても! まじ肉食系女子多いし。敵対するよりは一緒にヒーローしようぜ!」 「冗談じゃねぇスよ! ……ところで本当に肉食系女子多いの?」 夏栖斗の言葉に食いつくレインボー。 その隙に疾風がロイヤーの突進に合わせて虚空を穿つ射撃を行い、ロイヤーの刀で切り伏せた形で戦闘員が全滅する。 「ちぃ、だがパンダーさんがいればどうとでもなるッス。俺はここを切り抜けさせてもらうッスよ!」 舌打ちして術式を組み立てる。性格はともかく実力はあるレインボーが四色の魔力を紡ぎ―― 「ウィークポイントはここッスよね!」 ロイヤー目掛けて放つ! 当然ロイヤーでは耐え切れない! だから翔太がここにいるのだ。魔力を剣で切り捨ててロイヤーの前で立ち塞がる。 「ロイヤーは最高の指揮官であり、そしてウェスタンヒーローだろ。敵の攻撃は俺が受け持つ、遠慮せず攻撃していけ」 笑う翔太の後押しを受けロイヤーが駆ける。その後ろで唱えられる詠唱には気付かずに。 「まだまだ魔力の重みが足りませんな」 レオポルトが紡ぐ魔力もレインボーと同じ術式。けれど、紡ぎ、重ねる、一つ一つの魔力の重みが遥かに違う! 「我紡ぎしは秘匿の粋、エーテルの四重奏……喰らえい、Walkürenritt!」 ロイヤーの刀に合わせて、迫る四重の光にレインボーが引きつった悲鳴を上げた。 「観念おしレインボー!」 デンジャラスのピンクのアフロと、ロイヤーの金色のアフロが迫り来る。 「イヤだね! ここは逃げるに限るッス!」 そんな二人に背を向けて、ぼろぼろのレインボーが足を――動か、ない。 「香夏子は脇役に徹するのです」 気糸を放ち、手足を振るい、小さな身体全部を使ってレインボーの動きを封じるのは香夏子。 「くそっ離せ!」 「離しません! おニューのアフロにかけて離しません!」 断固とした決意と共に身をていして防ぐ! 焦ったレインボーが魔力を紡ぎ出す。魔力の塊は香夏子に向けられ―― 「止めは任せましたよ、ヒーローさん二人に!」 頭部に叩きつけられた。何かが崩れ落ちる音。 ♪(Western!)ひろがるコロナ (Dangerous!)とどろく嵐 結成だ 西部拳 アフロイヤー! アフロイヤー! SHOGOの生歌のサビに合わせて。 「デンジャラス!」 「ウェスタン!」 二人のヒーローが攻撃を合わせるアフロコンビネーション! レインボーの意識が霧散し、泡を吹いてその場で崩れ落ちた。 喜ぶヒーロー達、その横で。 「……アフロがなければ即死でした……さらば、相棒です」 地に落ちたぼろぼろのイエローアフロに香夏子は手を合わせた。 「疾風さん危ない!」 石瑛の叫びに半歩身を引く。その結果が疾風への直撃を紙一重で避けさせた。 「くっ」 疾風のナイフを弾き飛ばし、レオポルトの術式を潜り抜け、香夏子の気糸を振りほどき――パンダーの突進を食い止める者は。 「全てのカップルを憎むか。思春期の少年の如き逆恨みを何時まで持ち続けている?」 パンダーの突進が侠治の身体を捉え傷つける。けれど侠治は倒れない。屈しない。運命を燃やし立ち続けるその意思! かつて大事な伴侶も息子も失った、幸せを懐かしむ気持ちも羨望もある。 ――だがこれは問題に向き合わず逃げ続けていた俺自身のツケだ! 「俺は力を他者を恨むより活かす事に使うだけだ!」 叫び振るう独鈷がパンダーの額を打ち付けた。苦痛と共にその足が止まり―― 「後は頼む!」 侠治の叫びに呼応して走る夏栖斗、そしてもう一人。 「ロイヤー! 君の力が今必要なんだ!」 振りかざす刀、虚空を抜ける鋭い蹴撃。二人の動きが重なり、貫く――! 一際大きな叫びと共に、パンダーの巨躯が壁にめり込んだ。 「う、うぅ……」 パンダ-の顔つきが変わっていく。それは暴走状態の解除を示し、同時に現れるのは自暴自棄になった悲しい男の表情。 「誰だってヒーローになれる素質は持っている。誰かのピンチを救うためにこの力はあるんだ」 男の前に立ち、夏栖斗がヒーローを熱く語る。 「君たちだってその血に流れるヒーローへの憧憬が在るはずだ!」 叫び――反応の無さにちょっと戸惑う。 そんな夏栖斗の肩を叩き、ちっちっちっと指を振る。代わりに前に立ったのは翔護。 「そう、オレには君の気持ちが痛いほどわかる! 散々気持たされて結局メアドもくれなかったり、気が付くと全裸で放り出されたり! 女の子って本当にままならないよ!」 なんか違くね? そんな周囲の視線を知ってか知らずか、熱いパトスを振りまく翔護。 「でも気づいたんだ。オレ達に足りないもの……それはキャッシュ!」 やっぱ違くね? そんな周囲の視線を知ってか知らずか、なぜか表情を変えるパンダー。 「キャッシュがある限り、君を見てくれる女の子がきっといるのさ!」 感動の締めくくりとばかりに朗らかな表情を見せる翔護。そんな彼に肩を叩かれ――パンダーは感動の涙を一粒流した。 なんでだ。 ●エンディングフェイズ――悲しみに満ちたメンズに再び愛の光を灯す、男の社交場。 「自分にもっとも合うと思う人を見極めるのも大切だぜ? その熱意があればまた見つかると思うぞ」 翔太の言葉に鼻をすすって頷いて。そのパンダーの手を取って、石瑛が微笑む。 「あなたの愛を待ってる人、こんなに広い世界だもの。どこかに必ずいるよ」 それは石瑛が好きなミュージカル風に、強い想いがそうならなきゃ嘘だと力説するのだ。 「探しに行こう! 砂からダイヤを見つけるように。出逢えたらきっと奇跡が起こるよ」 「うんうん、だってそういうお店だからね」 SHOGOは座ってろ。 「無茶するなぁ」 夏栖斗が傷の少なくない侠治を支えている。 「なに、意思を貫くというのはそういうものだろう」 男達の笑いが夕焼けに木霊する。 その姿をデンジャラスはしばらく羨ましそうに見やっていたが。 「デンジャラスさんはこのあとどうするんですか?」 石瑛の言葉にうーんと唸る。 「何だったらアークに来るか?」 翔太の言葉にそれもいいかと呟いて―― 「歓迎するよ。よろしくね」 「是非アクションクラブにも来てくださいね♪」 疾風が、石瑛が笑って受け入れる。 「――キャラかぶってるんでイヤなんだけどなぁ」 ロイヤーが小さく素の呟きを吐き出し。 「歌でも歌って帰ろうぜ。ウェスタンヒーローってな」 そして皆で帰るのだ。調子のよいヒーローソングを口ずさみ。 一行が帰路につく。 同時に、一部の有志が男の社交場へと足を向けた。こっそり後をつける香夏子もいる。 そんなリベリスタ達の姿を視界に収めて、レオポルトが大きく息を吸った。 「あっこれにぃてぇ~~ 一・件・落・着ゥ~~!」 ――おあとがよろしいようで。 ――あ、レインボーが泡吹いたままだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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