●ファウンテン的なやつ 「チョコレートファウンテン、ご存知ですよね。ご存知でなくてもいいんですけど」 「嗚呼知ってる、チョコが噴水みたいになるアレだろ? ビュッフェとかに増えたよな。特に今の時期は」 「ええ、まあそういう時期ですからね、増えるのも已む無しというか。それで、ですね。そのチョコレートファウンテンの装置……家庭用のだったそうですが、それが革醒したそうです」 資料片手に語る『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)の言葉に、幾人かのリベリスタ――特に女性は、僅かに身を乗り出したりあからさまにそわそわしだした。 そりゃあそうだろう。チョコレートファウンテンのE・ゴーレムである。興奮しないほうが無理というもので。 「あ、すいませんまだ話は半分です。……で、それがただサイズアップしてチョコ噴出するだけならイヴ君にでも書類放って好事家のリベリスタ集めれば済む話なんですが、その。このチョコレートファウンテンが噴出するのは」 革 醒 し た カ カ オ 豆 で す 。 謎の既視感。走る頭痛。何だろう、この壁を殴りたく鳴るような感覚は。 「まあ、カカオ豆自体に戦闘力はありません。皆無です。精々が精々、転がり落ちてくる勢いで人を弾き飛ばすとか、しめやかに爆発四散するとかその程度で」 「十分あぶねえじゃねえか」 「でも厄介なのは、チョコレートファウンテンを撃破しない限り延々と溢れてくる点と、このカカオ豆を加工したら一般人にはとても振る舞えない物が出来上がるという点で……」 「おいつまりまさか」 「ええ。撃破が遅れれば遅れるほど、『のちのちに』影響が出るでしょうね」 「……最悪だ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月26日(火)22:23 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●絶望をおたのしみください 「チョコが出ないチョコファウンテンなんて、クリープのない珈琲みたいな物だよ。ありえない」――『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)(14歳) 「どうせそんな事だろうと思ったわよ!?」――『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)(15歳) 「どんな方向に革醒したら今回みたいなのが出来るんですか?!」――四条・理央(BNE000319)(18歳) 一切の欺瞞無く言ってしまえば。今回、絶望に頭を垂れたのはティーンエイジャーの女性陣だった。逆に言ってしまえば、ティーンエイジャーの女性陣「だけ」だった。 むしろアンジェリカ、君のその発言はブラック派の多くを敵に回すことになる。その、代表例としては俺とか俺とかあと俺。 全くの欺瞞がない。あのフォーチュナは確かに事実だけを羅列した。持ち上げて落とした感はあるけど、でもちゃんと最後まで説明したので何の問題もありません。 安心しろというよりは明らかに絶望しろと言っている気がしないでもないが、こうして少女達が呆れと絶望とあとなんか夢みたいなのの前に膝を折るとか興奮するよね。 ほら、冬はチョコ食べるもんじゃないよ。某漢方医療的な人は「チョコと小麦粉は陰気が溜まるから冬食べるモンじゃない」(参考文献:某囀り集めツール)なんて言ってるし。どこまで信じていいかは個人に任せるけども。 だから安心して撃破に勤しんでほしい。立ち上がれ少女。 「ファウンテンは確か英語で泉だとか噴水という意味だそうですね。見た目もそれっぽい形をしています」 一方、特にひねるところも無いので豆知識(カカオ豆だけに)を披露するのは『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)である。メイドらしくというべきか、彼女の落胆は対象の名称詐欺にではなく、出現時期が遅すぎることに対する不満だった。 まあ、こんなカカオで作られたものをバレンタインで渡されたら相手は何か嬉しいやら悲しいやら泣くべきなのかもわからないが。 ついでに言ってしまえば、このデスメイド無駄に家事力高そうだからタチが悪いっつーかなんつーか。 貰い手とか居るんだろうか。所属先の男どもか。いやあにくいねえ(棒読み) 「チョコレート……ファウンテン……? あの豆を吐き出してるのは仕舞い忘れた節分の豆撒きマシーンではないのです?」 そんなものあってたまるか。全国の鬼役のおじさま方からの一斉抗議が目に見えるわ。 モニカに負けず劣らずの毒とトンデモ具合の光る『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)――自称・一般人――の視界に映るそれは、確かにチョコレートファウンテンには見えようはずもない。 豆を吐き出すファウンテンなどあってたまるか。そんな叫びを吐き出すのもご尤も。だがこれは現実だ。 一般人の相手としては相応しく無いのだろうが、昨今の日本では一般的なベース存在なので我慢してほしい。こんな革醒の仕方、今後出てくるであろうE・ゴーレムに比べれば甘っちょろいのである。 ……そう、『今後』に比べれば。 含みはしたけど特に深い意味などなかった。 あと、去年さんざっぱら三高平学園に隠したチョコを蹂躙された過去を、俺は未だ忘れていないことをここに記す。 「それにしても、何故、レストランの中ではなく駐車場に……?」 外に出たかったのだろうか。そんなズレた感想を漏らす梶原 セレナ(BNE004215)の視界、というか表情に浮かぶハテナマーク。 因みに彼女、チョコまみれになることを多少なり危惧しているようだがなんつーか安心して頂きたい。 チョコなぞ1グラムも 出 な い 。 因みに、夜倉はポケットに入れていたチョコが溶けて洗濯を余儀なくされたという過去があるとかないとか。無いんじゃねえかな。 「うわぁ……僕、ゴーレムって初めて見たけど……ホントにでかいなぁ……」 そんな中、一服の清涼剤の如き反応を示したのは誰あろう『バイト君』宮部 春人(BNE004241)。数少ない男性陣のやるべきことをきっちり押さえてきたこの子は本当にもういい子だね。 熱意とかそういうのとか感じるよ。若々しさ、っていうのかな……今後、アークの任務で歪まないことを切に願うばかりである。まあ、何でこんなことを言うかって言うと。 「エリューション、抹殺すべし。慈悲はない」 両手に構えた刃を振るい、決断的エントリーを果たした『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)……もとい、アップリカート=サンのせいである。 ほぼ反射的に「ガンバルゾー」などと禍々しきチャントが聞こえてくるのはご愛嬌だ。コワイ! そして彼自身、何故そんな義務感に囚われたかを一切説明できない。スゴイコワイ級の出来事が起きているのは間違いない。 「って言うか、夜倉が話を持ち掛けてきた時点で怪しいと思ってたのよ!」 焔、あろうことかフォーチュナの人格攻撃に走りだした。まあ彼女、確かに包帯の依頼でロクな相手と出会ってないのはわかるが、その、仮にもほら先生なんだから、と言ってはだめだろうか。だめだろうな。 「チョコを出さないなら、お前に存在価値なんてない……!」 アンジェリカはこのザマである。大丈夫なのだろうか、この子は本当に。 「ドーモ、カカオファウンテン=サン。アップリカートです」 ピガー、と聞こえた気がした。カラダニキヲツケテネ! ●希望なんてあるとおもったか ファウンテンの頂点から、ごろりとカカオ豆が現れる。ファウンテンの階段上の構造をラグビーボールが如きカカオ豆の複雑なバウンドが連続し落下する。これでは落下位置が予測できない! 「真っすぐ行ってぶん殴らせないって? ……ハッ、上等っ!」 拳を固め、焔が猛然と突進――するかのような鬼気を発しつつ、踏み止まる。無為無策に前に出てしまえばいつもと変わるところはない。 下手をすれば身動ぎ出来ぬまま弾き飛ばされて敗北へとひた走るザマにならないとは言い切れない。 初手は何処までも狡猾に、次手に賭ける一撃を蓄えんが為に。乙女の拳は、安くはない。 「イヤーッ! イヤーッ!」 他方、謎の義務感に駆られていたアップリカートはためらわなかった。 頭上にエントリーを果たしたカカオ豆のボディチェック(鉄山靠的なアレ。体当たり)をすんでで躱した彼の目にはセンコめいた光が……いやさすがに灯っちゃいないが、ツヨイ・ザンエイ・キリ(多重残幻剣らしい)を叩きこむ動作に迷いはない。 彼に接近を果たした数個のカカオ豆はしめやかに爆発四散! 「チョコ……期待してたのに……!」 自らの勘違いとはいえ、少女的な夢想を全てひっくり返されて黙っていられるほどアンジェリカは大人しくはない。 曲がりなりにも彼女はイタリア人である。イタリア人に対して食の歓びを妨害したとあっちゃ普通死ぬ。 期待が強ければ強いほど、その絶望も大きくなり、結果として多量の血を流させる結果となりうることは語るべくもなし。 彼女が呼び出した紅の月は残されたカカオ豆を余さず砕く。だが、カカオ豆とて無為に砕かれるのみでなかったことは書き添えておかねばなるまい。 流れ弾気味に後方へと逸したカカオ豆が、理央の胴を強かに打ち据える。驚愕すべきは、それを受けて尚陣地の展開に費やした彼女の意地だが、危惧すべきは、彼女の動向に沿うメンバーが存在しなかったことにある。 と言っても、カカオ豆に押し戻された程度どうということがない、というのは事実であるが、しかしこれはこれで、まあ。どうなんだろうねえ。 「排出口は頂点だけかと思ったらそんなことはなかったのだわ。っていうかどうなってるのかしら、あの構造」 アンジェリカの紅月に残らず壊されたカカオ豆を視界の端に収めつつ、排出パターンを理解したエナーシアは小さく毒づく。 落下の軌道を考えれば、最も効率がよいのは勿論最上段からの落下だ。不規則なバウンドを繰り返すことを加味しても、それは変わることはない。 しかし、中段からも遠慮なく排出され……いやいや、噴出口ねえだろどうなってんだそれ。マジで。 「踏ん付けてすっ転んでサービスシーンなんてそうは問屋が卸しませんよ」 転がってきた残骸を忌々しげに踏み砕き、モニカは殲滅式自動砲を構える。狙いは目前敵一体。外すほどの距離でも無く、躱されるような体躯ではない。 問題ないと引いたトリガーは膨大な質量の弾丸を吐き出し、明確に中心部に叩きこまれた。 準備態勢に入るセレナと春人をよそに、状況を理解し前に出ようとした焔の耳に叩きこまれたのは異常なまでの情報量を有する大音声だった。 意味を成さない音が、異常な響きで叩き込まれる。理解の外にあるそれを耳に入れるのは、いくら頑健な意思を持つ者でもそう容易く抗いきれるものではない。 残風脚のクリーンヒットと引き換えに、彼女は一瞬だが、膝をつくことを余儀なくされる。 ……そう。ここまで何だかんだとネタ臭いと言ったって、それは一個のエリューションとして立ちはだかるに相応しい勢いなのだ。 ただ立ち尽くしてやられる程に、甘い存在では無い、ということ。 「うわぁ、恐いなあ……倒せるかなあ……」 弱気になるんじゃない春人。大体において君は重要だから、その、役割とか。 ●絶望を楽しむ勇気を持てとかそんな。 数発目のカカオ豆の襲撃を首の皮一枚で躱し、理央は戦線へと舞い戻った。既に彼女の尽力によりその世界は絶対的異界と化し、他者の干渉を許さない。 裏を返せば、他者の被害を見ること無く戦闘行動を行うことが出来るということでもある。 そして、彼女が先ず行わなければならなかったのは、思うように戦いを進めることが出来ずにいた近接メンバーの運を浄化することであった。 ……と言っても。全員の士気がある意味高かったこともあり、ダメージ効率は想定を大きく上回っていたと言えるだろう。だが、それを超えて相手のカカオ耐久力も高かったということに他ならない。 マシンガンにより手首を強かに打ち据えられたアンジェリカの紅月は十分な威力を発揮することが出来ず、カカオ豆を撃ち落とすに留まった。 拳を固めた焔はしかし、打ち込もうとした拳を大きく逸らし、あらん限りの力でアスファルトを砕く。直前までの狙いは完璧だったはずだが、しかしそれは彼のファウンテンには関係ない。 「グワーッ!?」 ミラージュ・キリ(ラ・ミラー略)を渾身の勢いで放とうとしたアップリカートを突如出現したカカオ豆が襲う! アブナイ! 「ヌゥーッ!」 だが、弾き飛ばされたなら前進すればいい。一発の単体攻撃に頼るより十発の複数攻撃に頼るべし。彼にメンター(師匠)が居たかは別として、これぞ彼のインストラクション・ワンである! 独自のリベリスタ・シャウトを放ったアップリカートは全力のツヨイ・ザンエイ・キリ! 足元に転がったカカオ豆とファウンテンの一部が爆発四散! 「ガンガン回復に専念しますから、皆さん攻撃を!」 そんな酷い話の流れでもぶれずに誠心誠意動くのは春人の献身的行動による。彼が居なかったらこの依頼はよりケオスに塗れていたことだろう。彼の存在は実際大きい。 「半月遅く鬼は内とまいりませう」 エナーシア、今更だけど鬼を内にとか、そういうこと言うからアークは変態ばかりだと言われるんだぞ(歓喜 「こんな姿を見られたらと思うと、神秘界隈以前に社会的にアレですね。まあ、見られる心配は無いんでしょうけど何が嫌だって私が嫌です」 そりゃ、天下の大御堂重工の最凶メイドが足踏みとか俺としても見たくない。しかもフル火力で。しかも! フル火力で! 「停止ボタンが無いんだもの、多少手荒になっても仕方ないわよね?」 理央の放った光により何とか動きの精細を取り戻した焔の拳は、今度こそしっかりとファウンテン本体を強かに打ち据える。みしりと音を立てたファウンテンはしかし、それでも崩れる気配も無く立ち尽くす。ただ排出に特化した存在であるが故か、彼の存在は異常なまでに耐え続けていた。 或いは、彼らの全力全てを受け止める気で居たのか。いや、流石にたかだかチョコレートファウンテンにそんな真意があるとは思えないのだが。 「何だかやたら狙われてる気がするんだけど、ボクが何をしたっていうのかな!?」 カカオマシンガンを弾きつつ立ちまわる理央が、困惑気味の声を上げる。確かに、何だかよく分からないが狙われる比率が異常に高い気もする。 まあ、複数のカカオを食らっていたらそれだけで戦線離脱もありえたことを考えればまだ寛大な方なのかもしれない。リベリスタは数が多いからあんまり的を絞れないんだね。仕方ないね。 静かに弓を引くセレナの表情には一切の陰りが無い。狙うはただ一点。確実に中てなければ自爆されるであろう、死角に潜り込んだカカオ豆だ。 あれが爆発したら、それこそ陣形が崩壊する。全体を狙っていても、死角に入ったらその限りではない。ならば、一つとて撃ち漏らす気にはなれなかった。 ライトで一つ一つ照らしていたのだ。その弓の軌道から外れることなどほぼ有り得ない。弾いた弦の先に現れた姿は、残さずその矢に打ち崩された。 「離れて下さい! 撃ちます!」 僅かな隙を逃さず、杖を掲げ魔力を集中させた春人は収束されたそれを叩きこむ。だが、射線に飛び込んだカカオ豆がそれを許さない。硬質な音を発しつつ、カカオ豆は砕けた。そして、視界を遮った存在苛立ちこそしないが、ままならないものを感じるものである。 「今更カカオなんて問題ないのよ!」 炎を纏った乙女の拳……ああ、なんかこう全力ビンタ的なものを感じなくもない焔のそれは、確実にファウンテンを貫通した。内部から連続した爆発を起こすほどの熱量は、ただ事ではないダメージを感じさせる。 しかし、まあそれを超えて、いろいろと。 「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」「イヤーッ!」「ピガガーッ!」 アップリカートのミラージュ・キリが連続して放たれ、次々と叩き込まれる! 僅かずつだが着実に崩れる排出機構は詰まり、内部爆発を引き起こす! スゴイ・ヤバイ! 「これ以上間を持たせて面倒になるのは御免被るのだわ」 「13の次は14へ行け、ということです。……つまり」 『これで終わりなのだ』、とエナーシアとモニカの声が相乗する。終幕目掛け一直線に駆け抜ける弾丸は、頂点を、或いは排出口を次々と吹き飛ばす。 「チョコを出さないチョコファウンテンなんて、こうしてやる……!」 弾丸により拡がった亀裂に、アンジェリカの命を削った爆弾が据えられる。最早致命的なレベルまでダメージを受けたファウンテンに、それに対し抗う能力などあろうはずもなく。 「俳句を読め。介錯してやる」 最後はきっちりアップリカートがもっていきました。チョコレートファウンテンはしめやかに爆発四散! ●で。 「ソレで、アレ。どうする?」 「……事後処理、ボク達だけでしないといけないって事は無いよね?」 「チョコレートにして皆で美味しく頂きましょう。食いきれなきゃ夜倉様へのお土産にでもしますよ」 女性陣の会話がさりげに恐い感じがする。ブリーフィングルームの包帯がブルっているのが目に見える。 「纏めてカカオマスにしてあげませう」 「アッハイ、ヨロコンデー」 エナーシアの言葉に、思わず自分がやれと言われた気がして直立不動になるアップリカート。マジで何処で研修された。フュリエのせんしがひかったのか。 「この際チョコを食べられれば何でもいいよ!」 ……因みに、そんな心の叫びを聞き届けたのか、アンジェリカには後ほど高級チョコが渡されたそうです。 カカオ豆の処理? コマケェ事はいいんだよ! |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|