●誰にでも出来る簡単なお仕事です。 「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。 「お願い。あなた達にしか頼めない」 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。 ●お仕事はもぐらたたき的かまくらの解体です。 モニターに映し出されるのは、見渡す限りの大雪原。 すげえ、地平線の彼方まで雪景色だぜ。 「ここ、元スキー場。流行ってるころはここでかまくらイベントしたりしてたんだけど、それもはるか四半世紀前くらいになって、もはや覚えているのは」 イヴは無表情。 「――E・フォースくらいになってしまった」 はい? 「見てて」 いきなり、すべらかな雪の表面が動いた。 もこもこもこもこ。 ずぼうっと、あたかももぐらたたきの穴からモグラが出てくる勢いで雪の柱がそびえ立ち、一部が自己崩壊。 あっという間に、かまくらの出来上がり。 中には神棚まである本格派だ。 「こうして、乱立するかまくら」 入ってもらえぬかまくらを、寒さこらえて立ててます。 「E・フォースである以上、存在が崩壊を招く。『雪が降ったら、かまくらを作らなければ』 という、従業員の強烈な義務感だけがこの場所に残った結果、かまくらが雨後のたけのこのように生えてくるようになった」 エアリアル競技的に出来た、ゲレンデ一面のこぶ。 いや、こぶにしてはでかすぎる。 「まあ、特に悪さしない。かまくらが突き出してくるだけ。かまくらも所詮は雪だから、皆なら通常攻撃一発で壊れる」 ただ、とイヴは付け加える。 「いつ、突き出してこなくなるかわからない」 はい? 「E・フォースとの根競べ。先が見えない戦いだけど、皆なら乗り越えてくれると信じてる」 いつもなら、ゴールわかってるじゃない。 何個壊せばとか、そういう心の支え、ないの!? 「今回は、ない」 裏切ったな。僕らの心を裏切ったな。 「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」 イヴは、もう一度頭を下げた。 「お願い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月15日(金)22:57 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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● 「拙者、初めての合体攻撃で消耗したので出られませんYO。決して、ミラクルナイチンゲールの人気に嫉妬した訳ではありませんYO――って、脱走王カムバーッ!……!!」 『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)、あくまで本人の非常に洗練された小芝居。 「いやー、初仕事ってことでビクビクしてたけど、楽そうな仕事で何よりっすよー」 八潮・蓮司(BNE004302)、申し送りでもしているかと思えるほど、新人っぽい台詞。 ● 「やったー!ゲレンデでボード滑り放題だー! 仕事だからリフトも動かしていいよね! ボードを漫喫するぞ!」 『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の眩しい笑顔が、昨今のアークの激戦を物語っている。 早く正気に戻してあげなくちゃ。 「今年の冬は雪遊びとか全然出来なかったけど一杯できるね! やったね!」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)の言葉に、「なぜ出来なかったのか」という背景を考えると薄ら寒くなる。 ぽかぽかした、ぶっちゃければ表層雪崩がおきやすい素敵なお日和。 雪山に向かう送迎車両の中、蓮司はうきうきしていた。 (他の先輩方もスノボとかで遊んだりするらしいし、女の子の先輩もいるし……。ウヒョー!こりゃ何か期待できんじゃないすかね?) 蓮司が女の子と思っているのに智夫も含まれていたりするのだが、人の幸せな幻想はなるべく長くキープしてあげるのが親切だ。 (カイロ持ってって、配ったら気配りできる奴って思われて何かのフラグが立つとか……まあ、ねぇな。とりあえず、寒くねーように防寒着と移動用にスキー持ってくか) そんな車内。 「脱走王がストライキ。あはは、本来僕のキャラは脱走王だったはずじゃないか。何で出てこないの。この先ミラクルナイチンゲールなの、ずっと?」 と、自己表現方法模索中の智夫の虚ろな笑いは通常営業だったのだが、ちゃんこだ、コーヒーだ、力士だ、お兄ちゃんだなどというリベリスタのおしゃべりに掻き消えていた。 ● 「そうそう参加者全員の携帯番号を聞いて、登録しておこう」 『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)、雪崩が起こった時に、着信音で埋もれた人の場所を特定するため。訓練されたリベリスタ。 「かまくらができてアウラールが赤いコーンを置いたら速攻で【アーク社員食堂出張所Bistro ARK】の看板を立てよう」 『灼熱ビーチサイドバニーマニア』如月・達哉(BNE001662)、娘から娘の操を守るパパの会。 「力士には憧れますよね、異性として」 『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)、かまくらと来たら神事でお鍋で、ちゃんこで相撲で力士。順不同。 ● かまくらが、雨後の筍のように生えてくる。 もぐらたたきゲームのようだね、ゲレンデが波打っているよ。 「服装は埋もれたとき発見しやすい、明るい濃い色を選ぶ!」 常識と叫ぶフィンランド人・アウラールは、AFの作動状況を確かめる。 雪崩が起きること前提である。 「かまくらを完全に破壊する、脱走者を出さない、目一杯雪を満喫する。全部やらなくちゃいけないのが訓練されたリベリスタの辛い所だね!」 ジャキンっと檄鉄が挙げられる、虎美の二丁拳銃。 「初心者コースにこぶを作り、初心者の皆さんや子供たちを恐怖のどん底に陥れるなんて、ひどいやつ! あたしが全部叩き潰してやるわ!」 『蜜月』日野原 M 祥子(BNE003389)が、明らかに遠近法が狂っている――身長2.5メートルガチムチバイデンに最適の石造りのスコップを軽々と振り回す。 「哀れなプロレタリアが遺した妄執に、敬礼! 諸君らは見事務めを果たした。後は我らに任せ、眠れ」 クソまじめな顔した『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)が斜面に向かって敬礼。 「作戦を説明しよう。戦場を大きく爆破ゾーンとぶん殴りゾーンに分けて構築する。後衛火力を持つ者は前者、前衛打撃を主体とする者は後者、芸人魂が疼く者は両方突っ込めばいいじゃNight!」 ノリが軽いぞ、ロシア人! 「それと、同志如月を始めとしたお料理スタッフが、かまくらを1基拠点として使用するらしい。うっかりふっ飛ばさない様に、目印をつけておかねばな。私も食べたいし」 あの辺か~と、目星をつける。 「ここ、赤いコーン立てとくからな。壊すのは一番最後な」 「目印、この赤い旗なんかどうだ? 鎌と槌のデザインが超KOOLだぞ?」 アウラールが赤いコーンを埋めた所に、ベルカの提案にノーサンキューして、達哉は【アーク社員食堂出張所Bistro ARK】と看板を立てた。 「そんな訳で、今日はちゃんこ鍋!」 予算内で収める。基本です! 「力士の方の常食ですわね」 アーデルハイトの頬に陶然とした笑みが浮かぶ。 「武士と双璧をなす日本の戦士階級にして神官。一見して肥満にも見えるその体躯は筋肉の塊。ああ、何と逞しい……」 うっとりと言葉をつむぐ奥方様の熱を帯びた瞳は遥か西方、領地守護職の御夫君を見ている。 彼が筋骨隆々の巨躯である為、奥方様が重度の筋肉フェチであることは知る人ぞ知るである。 「不撓不屈の精神を宿し、礼儀を重んじ、足を踏み締めれば瘴気を祓い、膂力は巨獣を投げ、体当たりは荘厳なる神殿をも揺るがし、高位の力士は帯剣も許されたという――」 間違ってはいない、東洋の神秘。 そこらの相撲ギャルが五体投地する気迫である。 「私用で【相撲の腹】に参加できなかったことは一生の不覚――っ!!」 力士を取り巻く神秘が一斉に活性した時期があり、【相撲の腹】と呼ばれている。詳しくはWEBで。 爆砕闘気と見まごう激白から、優雅に奥方様は微笑まれる。 「それでは、始めましょうか」 蓮司の女の子先輩とキャッキャウフフな夢にぴしりとひびが入った。 周囲を見回せば、ちゃんこ部屋の隣にはテントが設営され、『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)が「まぁ、かまくら壊すのは皆に任せて、俺はコーヒーを作ってようと思うわ」とか言ってるし。 「相手が雪であれ手は抜かん。リベリスタ生命に賭けて一つでも多く打ち倒す」 『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)が、過剰な気を吐いている 「リフト動いたから上行くぞ~」 蓮司は、訳も分からず吸い寄せられるようにスキーを装着し、リフトに乗った。 ● 「さあ、後はお楽しみの時間だ……! われわれの業界ではご褒美です!」 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)、「われわれの業界」と書いて「シベリア」と読む。 ● 「さ、さみぃ……」 (いや、それはわかってたけど、何かヤバくね?) 冷えた空気に晒され、蓮司が正気に戻ってみると―― 「YEAH! 最高にHIGHな気分がHIPにHOPなWINTERだぜBABY! COOLなゲレンデをHOTにHEATさせるイカしたGIRLの登場だ! BROTHER知ってるだろEXCELLENTなCHARISMA!そう、MAI†HIME! YEAH!!!」 (美少女スノーボーダー舞姫ちゃん颯爽登場♪) なにがやばいって、『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)がノリノリである。 「ゲレンデはかまくらを作る場所じゃない! ニューヨーク仕込みの華麗な滑りで、Eフォースの妄念を浄化してみせるわ!」 そんな舞姫を笑顔で見守る快、困惑する蓮司。 下から、切れ切れに聞こえてくる声。 「ここ、出られないのかな~? おーい、出して下さいよ。ねぇえ?」 なんで、手足ぐるぐる巻きにされた可憐な美少女が、かまくらが生えてるエリアの転がってるの? ねえ!? 「大きなかまくらが生えたり消えたりしてる。アハハ、大きい……」 『おっけー!! 目印置いたぞ~! 滑ってこ~い!!』 (え? 人間がマーカー?) 蓮司の問いに答えてくれる人はいない。 「ヒャッハー……ぁぁぁああああっ!?」 MAI†HIME――舞姫は、盛大に転けて雪だるま状態で谷底に直滑降。 上がる雪煙。 「ん? ここを滑れ? いいよいいよお安い御用」 快がニコニコしながら、滑降開始。 取り残される蓮司。 ふと人影を見つける。アーデルハイト。飛んでる。 「祖国の建設家が「まるで夢の国」と評した光景を、日本の職人達が築き上げた芸術を破壊することは不本意だけれど、この素晴らしい存在を貶めぬために――」 バチバチと爆ぜる雷光。長く伸びる金色の鎖が、かまくらを端からぶち割っていく。 「コースが一転、かまくらモーグル!」 キャッホーッと叫んで事態に順応している快は、頭のねじが緩んでいる。 (極限まで膝のバネを使い衝撃を吸収しつつ、こまめにエッヂを切り替えて滑り降りる。コブでジャンプしてかまくらに着地し破壊!) 「うわっははははー くずれろくずれろー!」 雪煙の向こうから、ベルカのつき抜けた笑い声と閃光弾。 というか、ダメージゼロはどこまで撒いてもダメージゼロだ。 「どーだっていいんだもーん! 冬のせいなんだもーん!」 暖かい静岡南部では本領を発揮できない寒冷仕様の体。氷点下からが活動温度だ。 爆風に乗って、720ターン。 「すっげー! こんな派手なエア決めたの、初めてだぜ! アイキャンフラーイ!」 そんな快に閃光弾。ショック・雷陣・虚脱・無力・ブレイクが発生しました。 着地失敗。雪中三点倒立。 そんな爆破ゾーンを、蓮司は見ていた。 (さっきスノボで滑ってた先輩がかまくらにぶつかって、そのまま誰かにかまくらごと吹き飛ばされて、その上雪崩に飲まれたように見えたんだけど) エグザクトリィ。君の戦場把握能力は一定水準に達しています。 『滑っていいぞー』 下から滑ってくるのが当たり前という、軽いノリの声がする。 足元に着弾。流星のごとき大量の弾幕。雪原にヒビ。 『え、スノボ組? 彼らは犠牲になったのだ……』 至極冷静な声もする。 ズゴゴゴゴゴゴ……。 緩む表層雪、大音響、爆発、一定周期の振動。 「雪崩だ~っ!!」 蓮司は、滑降した。命が懸かってる。 (俺としては、「うひぃ、さみー」とか言いつつかまくら潰して、戻ったら先輩方がお疲れ様ーとか言ってくれる、そんな心温まる光景を待ち望んでたってのに) 涙が凍って、銀の粒になる。 「おっしゃあ、狙い通り!!」 「雪崩!? 僕の仕事は料理だけだからそういうことで! うわあああ、せめて娘に連絡だけでも取らせてええええ!!」 「ミラクルナイチンゲール、仲間のピンチだ! 君の力が必要なんだ!」 「例えもの凄く寒くても、仲間がピンチなら回復に勤しむのがミラクルナイチンゲールの務めです! キラッ☆」 ホワイトアウト。そんな声が聞こえた気がした。 ● 「パティシエのかまくらの隣に私も虎美ハウスを確保。お兄ちゃんとの愛の巣を作るんだ…!」 虎美、兄の恋人から兄のDTを守る妹の会。 「このあとデートなのに、タヌキみたいな日焼けするわけにはいかないのよ」 祥子、スキーウエアに長靴、帽子ゴーグルマスク着用して、日焼け止めもばっちり塗って、日焼け止め対策。女子なら当然の装備。 ● 蓮司は、暖かなものを感じて目覚めた。 白い天井。かまくらの一つらしい。 「目、覚めました?」 毛布を持った天使が、体を優しく包んでくれていた。頭の下の柔らかい感触は、おひざまくらではないでしょうか。 「疲れちゃいました?」 思わず蓮司がうなづくと、きゅっと手を握ってくれた。 「大丈夫、みんなでやればきっと出来ますよ」 ああ、なんか心温まる。 「先輩。えっと――」 「ミラクルナイチンゲールです」 ああ、これが待ち望んだ展開。 「新田さん掘れたよ~」 そこへ祥子が、かまくらに掘りたて冷凍シュゴシンを運んでくる。 「思ったより早かったですね」 「勘よ、勘。超直勘で発掘よ」 「さすがです」 「せっかくイージス的に先輩の新田さんがいるから、魔落の鉄槌のお手本を…と思ったけど、今回はあきらめる。次に、どこにかまくらが出るか当てられるか実験してくるわ」 残念という祥子に、ミラクルナイチンゲールは、にこと笑った。 「いってらっしゃい」 頭の上で交わされる会話に、蓮司の胸はホワンと温かくなった。 (そうそう、こういう感じだよ。望んでたのは) 「八潮さんも、お鍋食べてくるといいですよ。コーヒーも沸いてますし。休まないとお仕事できませんから。ね?」 「ミラクルナイチンゲールさん。――俺、まだがんばれそうな気がします」 「にこ」 お鍋の匂いに誘われてかまくらを出た蓮司には、「守護神かな? 違う、違うなぁ。守護神はもっと『シュゴシンッ』 って叫ぶもんね」という低く呟く声など聞こえなかったのだ。 「いや、疲れるね。お鍋、おいしいよ」 虎美は、ちゃんこ鍋の椀を蓮司に渡すと、蓮司の横に空間一人分をあけて座った。 そして、蓮司と自分の間に椀と箸を置いて、別の椀の中身を口に運ぶ。 「あの、この隙間は……」 虎美の目にハイライトはない。 「やだなぁ、お兄ちゃんはいるよここにいるよダカラ席モ二つイルンダ……」 え? オカルト? 「いるんだ。そこに、虎美の兄ちゃん――竜一はいるんだよ」 したり顔のアウラール。その場にいる全員が、なれた調子で、うん、いるよねー。と応じる。 え? 見えないの俺だけ? 美味しいはずのちゃんこ鍋が、腹のどこに入っていったのかわからなかった。 ちゃんこ鍋の隣に、コーヒーテント。 「食後のコーヒーは? これ、魔法瓶な。冷えてきたら飲めよ」 翔太がかったるそうに魔法瓶を差し出してくるのを呆然と受け取る蓮司。 「翔太って、面倒臭そうに他人の世話を焼くところが、萌えだよなぁ……というわけで、クリームたっぷりでお願いします!」 アウラールが元気に注文するのに、俺もと便乗する。 「リクエストには出来るだけ答えるよ」 「では、ミルクティーを」 奥方様のポリシーの動かざること、古城の如し。 きちんとポットで入れる翔太もえらい。 「触れる者に生きる力を与える――それが芸術だと思います。遥か東の果て――日本に来てよかったと、私は心から思えるのだから」 心づくしで体を温めるアーデルハイトが蓮司に微笑みかけた。 「八百万の神々もご照覧あれ――と申すのでしょうか」 蓮司は、頷いた。 (ああ、ここはほっこりできるかもしれない) そう思った矢先、ぴりりっと目覚まし時計のアラーム音。翔太は、背後を振り返る。 「優希、支度しろ。帰るぞー!!」 いきなり、何もないと思っていたところから雪の塊が立ち上がった。 「かまくらを破壊するという任務はどうした! まさかサボりか、親友であろうと寒空の下へ引きずり出してくれる!」 まだ壊し足りないという優希に、翔太は時計を突きつけた。 「いやほら優希、俺達バイトだよバイト。労働時間オーバーはいけないだろう?」 アークでは連続勤務が過ぎると、ワーカホリックが疑われ、カウンセリングを受けさせられます。 「何? 労働基準法に抵触するのは良くないな。壊し足りんがバイトらしくキリをつけるとするか」 ころっとトーンを切り替えた優希は、ブラックで。と、最後のコーヒーを所望する。 「じゃ、メインは、がんばれ」 使い物にならんのは連れて帰る。と、サポート四人は山を下りて行った。 蓮司はその背を見送りつつ呟いた。 「俺……これが無事終わったら、温泉に行くんだ……」 ● 「ビストロの前にかまくらができたら営業妨害だろ!?」 「ぼんやり座って遠くを眺めてみたっていいじゃない」 「こんなもぐらたたきは大好きだ! こんな仕事サイコー!」 「おやつはパウンドケーキとかシフォンケーキだぞー!」 「体重戻った? な、何の事でしょう?」 「ここから出すなー、私を番号で呼べ! 12番だぞ!」 「かわいいだろ、これがうちの娘」 「リベリスタって仕事で全国に行くけど、途中で立ち寄る道の駅で買える、地元の奥さん達が作ったお菓子や弁当、あれはうまいものだよなぁ……」 「あースゴイ富士山見えるんじゃない?」 「お兄ちゃんと一つの寝袋とか映画のワンシーンみたい」 「今まで動いて汗だくだから、座ると冷えて寒くなる」 「でもこうやって脚を絡めると……ほら暖かくなった!」 「なあに、弾丸が切れたとて……これがある!」 「大丈夫!嫁はいつもこんな形で自分に絡んでくるナンパ野郎を殴り飛ばしてた!」 「そう、歩兵最良の友・シャベル! 今日の務めは肉弾幸だーっ!」 「飯が出来たぞー!」 「あまり寒さを苦にならないという事は……ゲフゲフン」 「いつかケイオスを柱に括り付けて、北から順に日本のうまいものを食わせてやろう。二度と馬鹿なことを考えないで済むように」 「ураааааа!!!」 ● ちゃんこかまくらも破壊。蓮司は何とかやりきった。 「いや、しかし先輩方すげーわ。こんだけタフだから、とんでもねーバケモンと戦えたりするんすね」 そんな蓮司に、「先輩方」は曖昧に笑う。 「……俺にもやれっかな。あ、いや、やれるかじゃなくて、やらなきゃダメってのはわかってるんすけどね。結構遠いかな、と」 大丈夫。と、「先輩」は笑う。 「……さて、訓練されたE・フォースと第二ラウンドといくか」 アウラールは、ぼそりと呟く。 蓮司が気がつくと、皆きっちり武装している。 「俺達は、タフなんじゃない。タフになったんだよ。で、蓮司もタフになるんだ」 俺達のリベリスタ道はまだ終了してないぜ! 「帰りは、温泉と道の駅!」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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