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Dulce de chocolat

●バレンタインカフェで休日を
 ――St. Valentine's day.
 それは愛の誓いの日と呼ばれる年に一度の祝祭の日。
 街はそわそわと浮き足立ち、賑やかな装飾やフェア商品で溢れ返る。それは三高平の或る商店街も例外ではなく、通りにはバレンタイン特有の甘い香りと甘い雰囲気に満ちていた。

 そんな街の一角には今、期間限定のカフェテラスが開店している。
 『Dulce de chocolat』という名を冠する其処は、チョコレート色の看板と鮮やかな赤のリボン装飾が目を引くお洒落なカフェだ。店の内装も実に凝っており、ひとつずつの席がふかふかの猫足ソファという豪奢な仕様になっている。
 お勧め商品はとろりとチョコが溶け出すガトーショコラに、何重にも層が重ねられた絶品オペラ。
 ビターなホットチョコには、冷たいホワイトチョコアイスが良く合うし、他にもチョコ包みのマシュマロ盛り合わせや、チョコタルトも美味しい。
 特製のチョコレートフォンデュには添え付けの苺やスポンジケーキ生地を浸して――。チョコのメニュー以外にも季節のフルーツを添えたチーズケーキや、ティースタンドに重ねられたマカロン、拘りのローズティー等も楽しめるらしい。

「ということで皆、めいっぱい甘いもの食いに行こうぜ! チョコレート!」
 『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)は千切れんばかりに尻尾を振り、商店街で貰ってきたリーフレットをリベリスタ達に見せる。その隣には『サウンドスケープ』斑鳩・タスク(nBNE000232)が立っており、興味と遠慮が交ざった表情を浮かべていた。
「俺も甘い物は好き。でもこれ、全体的に女の子向けの店っぽいけれど……良いのかい?」
 こう見えてタスクも年頃の少年。恥ずかしさがあるのか、耕太郎に小声で問いかける。
 しかし、耕太郎は然程気にしていないといった様子で大きく頷き、ガトーショコラやホットチョコの写真をびしっと指差した。
「だって、この店のチョコってすっげー美味いらしいんだぜ。ここで怯んでたら勿体ねーじゃん?」
「そうか……それもそうかもしれないね」
 限定だぜ? と、あまりにも耕太郎がさらりと言うので、タスクも乗り気になってきたらしい。
 男子のおひとりさまは流石に恥ずかしいが、同志がいるなら話は別。耕太郎自身もみんなで行けば怖くない、という精神でリベリスタを誘ったらしい。
「俺達には縁がないけど、こういう雰囲気の良い店ってデートにも良いよなっ!」
「うん、縁がないけどね」
「う……何か、自分で言って置いてちょっと凹んだ」
 肩を落とした耕太郎の肩を慰めるように叩き、タスクは改めてチョコレートカフェへの思いを馳せる。
 メニューを眺めるだけで、こんなに甘い気分になるのだ。チョコレートや友人と過ごす時間はきっと、穏やかで楽しいものになるに違いない。
「とにかく、折角のバレンタインカフェだ。楽しい時間を過ごそうぜ!」
 気を取り直した耕太郎も顔をあげ、仲間達へと屈託のない明るい笑みを向ける。

 目指すは街角のチョコレートカフェ。
 そうして、今――名実ともに、甘くて幸せなひとときが始まる。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:犬塚ひなこ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年02月21日(木)23:26
●概要
 バレンタイン限定カフェで一日を過ごしましょう、というお誘いです。
 メニューはOPに挙げた通り。他にもカフェっぽいものなら大抵はあります。

 店の内装は落ち着いたチョコレート色。
 机はアンティーク風で椅子もソファ仕様になっていて居心地良さげ。
 お洒落なBGMも流れており、甘くて穏やかな雰囲気になっています。
 お友達とのお喋りや、恋人同士でのデートにお勧め。独り身だけどチョコカフェのメニューを楽しみたい!という方も遠慮なくどうぞ。

●ご注意
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオなので全員の描写は確約できませんが、出来る限り力を尽くします。
・やりたいことを一本に絞って書くと描写率も上がります。
・誰かと一緒に参加する場合はお相手さんのフルネームとIDを、グループで参加する場合はグループ名を【】で括ってプレイング冒頭に記載して下さい。
・公序良俗に反した行為や趣旨に著しく反するものなどは描写出来ませんので、ご了承ください。

●参加NPC
犬塚 耕太郎(nBNE000012)
斑鳩・タスク(nBNE000232)
 二人ともカフェ内で好きなものを注文して楽しんでいます。お声掛け頂ければ席にもご一緒しますので、お気軽にどうぞ。
参加NPC
犬塚 耕太郎 (nBNE000012)
 
参加NPC
斑鳩・タスク (nBNE000232)


■メイン参加者 28人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クリミナルスタア
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
デュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
スターサジタリー
八文字・スケキヨ(BNE001515)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ダークナイト
山田・珍粘(BNE002078)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
ホーリーメイガス
レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ホーリーメイガス
宇賀神・遥紀(BNE003750)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
ダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)
ダークナイト
館伝・永遠(BNE003920)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
デュランダル
双樹 沙羅(BNE004205)
クロスイージス
リコル・ツァーネ(BNE004260)


 揺れる心、伝えたい想い、繋がる気持ち。
 チョコレートに乗せて、交わすカップに籠めて――これから紡がれるのは、甘い甘い時間。

 チョコフォンデュとローズティー、揺れる仄かな香り。
 隣同士、他愛も無いけ話に花を咲かせるレイチェルと那雪の手が不意に重なる。
 どきどきと自然と高鳴る鼓動を抑え、レイチェルは彼女の手に指を絡めた。冷たい掌が重なる先には仄かな思いが募っている気がする。
「ごめんね、手、冷たいかもしれないけど。……でも、ほんわかする」
 小さく笑んだレイチェルの掌を取り、那雪はその手を温めるためにそっと息を吐きかけた。
「あったまった……?」
 首を傾げて問う那雪に頷きを返し、レイチェルはありがとうと告げる。そうしてテーブルに置かれたプレートへと視線を戻した二人はフォークを手に取り、甘い味わいを楽しむことにした。
 先ず、レイチェルが自分で一口。
「やっぱお勧めされてるだけあるわっ♪」
 口に運んだ瞬間にとろける味に舌鼓を打ち、彼女は那雪へとお裾分けをする。はい、あーん、と差し出されたフォークを運んで貰えば那雪の口元にケーキの欠片が付いてしまう。
「あら、汚しちゃった?」
 レイチェルはそのケーキを指先でそっと拭い、口先に差し出して促す。ほんの少し悩んだ那雪だったが、すぐにぺろりと指先の甘さを舐め取った。そして、お返しにと苺にチョコを絡めた那雪はレイチェルの口許に甘い心地を運び、問い掛ける。
「甘酸っぱいの、恋する気持ちに、似てるんですって……。そんな味、した?」
 紡ぐ言葉も何だか甘く染まったように思え――二人の間に暫し、和やかな時が流れてゆく。

 久し振り、と挨拶を交わして向かいに座る沙羅とタスク。
 頂戴とチョコを強請っては見たが華麗に断られ、代わりにタスクから渡されたのはメニュー表。沙羅は年相応に不貞腐れ乍も、目の前の少年に問う。
「元気にしてた? ボクはね、あれから色々あって楽しいよ」
 何処か楽しげに語られる話は血腥く、凄惨なものもあった。殺伐とした話だけれど、それでも君は未だ自分を嫌いではないと言ってくれるのだろうか。そんな疑問を沙羅が向けると、タスクは笑う。俺が未来視でどれだけそんな光景を視ていると思っているんだい、と投げ掛けられた視線は挑戦的に見えた。
「それより沙羅も注文しなよ。甘いの、好きなんだろ?」
「まぁ、折角のバレンタインだしねっ」
 未だ、拒絶されてはいない。
 そう感じた沙羅だったが――。この後暫し、彼は魅惑のメニューの数々と格闘することになるのだった。

 アンティークな装いと甘い雰囲気に少女の心は最高潮。
「フツ、すごいよ! 椅子ふかふか!」
 蕩けるチョコレートフォンデュにタルトの彩り、艶めいたオペラ、それからホットチョコの良い香り。たくさんの幸せ成分にはしゃぐあひるを見守り、フツは此処に来て良かったとしみじみ思う。無邪気に笑う彼女に手を引かれ、こうして連れ回されることすら楽しいひとときだ。
 どれから食べるか迷うね、と瞳を輝かせるあひるの姿を見るだけで、わくわくが伝わってくる気がした。
 二人は席に腰掛け、たくさんの話をしながらカフェメニューを味わう。
「フツが食べてるの……美味しそう。……それ、一口だけ」
「オウ、いいヨ。あーん」
 他愛ない遣り取りも大切な時間のひとつ。たくさんのチョコレートも、交わす言葉も全部が甘い。それからフツとお出掛けできる事が、一番の幸せ。そう感じたあひるは、不意に彼に問うてみる。
「この後のご予定は? 良かったら、あひるの家でお茶でも……」
「あひると一緒に過ごしたいからな。ぜひお邪魔させてもらうぜ!」
 積極的なあひるも可愛い、と思いながら快く答えたフツの笑顔を見せ、少女もほっと胸を撫で下ろす。
 この後に渡すチョコレートを鞄に隠し、 頬を染めたあひるは今、幸福な心地に浸っていた。

 今日はいつか恋人と来る為の下調べ。
 だが、一人では味気ない故に悠里は自分のテーブルに少年フォーチュナを誘った。
「タスクくんは普段って何してるの? あんまり依頼以外で見ないから聞いてみたいな」
「……室内でゲーム。未来視の仕事。たまに散歩、かな。そういう悠里は?」
 問われた事に答えたタスクは逆に彼に問い返す。歳が離れている故に話し辛いかとも思ったが、少年は然程気にはしていないようだ。それに安堵した悠里は小さく笑み、質問に答えた。
「僕は大体家事をしたり、暇な日は格闘の訓練したりかな」
 成る程、と頷きが返され、二人は暫し他愛も無い会話をして時を過ごす。また話してくれると嬉しい。そう悠里が告げると、少年も同意し――そして、小さな約束が交わされた。


 賑わうカフェのヘルプ女給。それが今日のエナーシアのお仕事。
 今日に私用なんて全然無かったですし、と何でも屋としての誇りを保った彼女は慌しく飛び交う注文をさくっとこなし、カフェの手伝いを華麗に行っていく。
 そんな中、店のリサーチに訪れ、カフェメニューを楽しんでいるのは快だ。
「期間限定と聞いたら、機会を逃すのは勿体無いよね」
 店で一番流行っている品を注文し、快は真剣に考える。こういったメニューをリキュールやブランデーと合わせる楽しみ方も有りかもしれない。そう検証する彼は不意に、女給として働くエナーシアの姿を見つけた。
「やあ、エナーシアさん。忙しいみたいだね」
 快がひらひらと手を振ると、彼女は営業スマイルで対応する。明らかな知った顔だったが、其処は表に出さないのがプロとしての態度だ。多分。
「今は通りすがりの只の女給なのですよ?」
 にこりと微笑んで注文をとるエナーシアに、スイーツリサーチ中の快。
 其々違う過ごし方ではあるが、これもまた、ある意味での甘いひとときのひとつだったりするのだ。

「悪を滅ぼすのって気が滅入るのよ。嫌な事も沢山あるし」
 抹茶パフェを掬いながら、魅零は隣の少年と暫し話し込む。ストレスには甘い物。その意見が一致し、タスクと魅零は互いに頼んだ甘味を味わっていたのだが――。
(そ、そうだ。何、ナチュラルにパフェ食ってんだ私!?)
「あれ、どうしたの?」
 本来の目的を思い出した魅零に対し、タスクは首を傾げる。そしてテーブル上に出されたのは彼女お手製のちょっぴり形の悪いチョコレート。贈り物の包みを渡し、魅零は今日告げたかった事を口にした。
「あのあのあのあの、と、友達、から……!!」
「魅零の友達から俺にってこと? ふぅん、誰からだろう。ありがとね」
 盛大な勘違いをして受け取ったタスクに魅零は涙目。
 だが、言い直すことも出来ずに彼女は顔を真っ赤にしたまま「いいよ、義理だもん……」と呟く。そんな挙動不審な魅零にきょとんとし、タスクはどうにも腑に落ちない感覚を覚えるのだった。

 甘いものは正義。
 其処に性別は関係なく、男だって思い切り楽しんでも良いのだ。そんな心意気を掲げる男子勢は多い。
「耕太郎、これ! 美味しそう」
「おー、本当だ。色々シェアしようぜ、夏栖斗!」
 タルトにココアにオペラ、一度に食べられないメニューも分け合えば問題なし。食べながらレシピを予想し自分の喫茶店の参考にしようと考える夏栖斗は楽しさ満喫中。そんなとき、彼の中に悪戯心が芽生える。顔にチョコついてるぜ、と耕太郎に告げれば少年は尻尾をびくんと震わせ慌て出す。
「ええっ、何処だ!?」
「うそうそ、ほんとお前って面白いなあ」
 可笑しげに夏栖斗が笑うと耕太郎は不貞腐れてしまう。其処へ現れ、二人に声を掛けたのは竜一だ。ぼっち行動プロフェッショナルを自負する彼も流石にこの時期にチョコカフェは厳しかった。
「というわけで、お勧めを聞きにきた」
 苦味系はナシで、と付け加えた彼に耕太郎が勧めたのはホワイトチョコのアイス。クリーム入りホットチョコを頼むという竜一にぴったりな一品だ。
「甘いもん食うと幸せだなあ。バレンタインとか舌打ちせざるを得ないが」
 竜一は不意に呟くが、チョコに罪はない。其処にタスクも顔を出し、暫し和気藹々とした時間が過ぎた。
 彼らのテーブルには未だ席が空いており、虎鐵も楽しげな雰囲気に引き寄せられて来る。今日はリア充でござるな、と笑う彼はホットチョコレートを頼み、バレンタインらしく甘い話題の話を振る。
「こーたろーもそろそろ恋をする年なのではないかでござる」
「って言ってもなー、相手が居なきゃ始まらねーじゃん?」
 耕太郎が真剣に悩み始める中、虎鐵は人生の先輩としてアドバイスを送った。
「恋はいいでござるよ! 人生の糧とか経験値とかがぐんぐん上がってる気がするでござる!」
 ぐっと拳を握る虎鐵の話を少年は真剣に聞き入る。
 その隙を狙って竜一が手付かずのメニューを狙っていたり、夏栖斗が大いなる妹愛を語ったり――そんな風にカフェのひとときは流れて行き、様々な思いや楽しさが巡っていった。


 男子でも甘い物は外せないし、ボーイズトークも悪くない。
 何時も通りメールでの遣り取りから待ち合わせた亘とタスクは其々にメニューを頼んでテーブルを囲む。
「そういえばタスクは誰か気になってる子とかいないのですか?」
「うん? 俺にはもう嫁が居るよ。パソコンの中に三人ほど」
 何処か冗談めいた答えが返り、亘は思わず驚く。けれど、彼は可愛い故にラブレターやチョコを貰ってても可笑しくないと告げればタスクはどうかな、と曖昧に笑った。
「それよりも亘はどうなんだい」
 不意に友人から自分の事を聞かれ、亘は表情に浮かんだ照れを隠ししつつ小さく呟く。
「……まぁ、いつも通りです」
 誤魔化しながらも、亘は何故か素直になってしまう自分が居る事に気付いた。
 けれど、それはきっと――二人が友人同士だからだ。

 今年のそあらさんはチョコレート作りに大忙し。
 ぴゅあな想いを詰め込んだ特別な贈り物にめいっぱいの心を籠めたりと、とても頑張りました。
 なので、今日は自分へのご褒美の日。ふかふかソファに座って、そあらが頼んだのはいちごみるくフレーバーのホットチョコ。甘酸っぱい味を楽しんだら、次はチョコフォンデュプレートの到着だ。
「フォンデュのいちごはあたしが制するのです」
 しゃきん、と表情を引き締めてフォークを手に取ったそあらは魅惑のいちごへとチョコレートを絡める。ひといきに口に運べば、とろけて滴るチョコといちごの酸味のハーモニーが堪らなく美味しい。
「あたし、これだけで大満足なのです」
 淡い微笑みを浮かべるそあらの表情は、嬉しさに満ちていた。

 薔薇の香りとショコラの風味に包まれて、交換するのは互いの品々。
「んー、おいし! タスクくんもどうぞ。はっぴーばれいんたいーん♪」
 たくさんの味を楽しみたいから、これが贈り物の代わり。そう言った旭から、あーん、と一口分のオペラが差し出されるも、タスクは「そういうの恥ずかしい」と微妙に照れてフォークを奪い取り自分で食べてしまう。
「……美味しい。じゃ、僕からも」
 お返しにガトーショコラを旭へと差し出した後、タスクは空になっていた紅茶を旭のカップへ注いでやった。ありがと、と少女が告げ、今日だけの贅沢としてもうひとつ追加の品を注文する。
 そして、旭はめいっぱいの甘さにほんわりとした気分を覚え、淡く微笑んだ。
「幸せだねぇ、タスクくん」
「まぁね。でも、旭からは普通にチョコが貰えると期待してたんだけど、ね」
 残念そうな表情を見せる少年だったが、彼は未だ知らない。
 くすくす笑う旭の鞄の中には、今日の贈り物であるサブレがちゃんと入っている事に――。

 今日のニニギアのコーディネイトは甘めのショコラ風。
 チョコレートブラウンのワンピースに、彼がくれた白いケープと白リボンを合わせて。折角のバレンタインだかから、今日はいつもより積極的にすきすきオーラを出そうと決意するニニギア。
 そんな彼女に対して、ランディはバレンタインを覚えていなかったという不覚振り。
 だが、それでも甲斐甲斐しく傍に居てくれて、こうして誘ってくれた彼女には感謝を覚えるほど。
「わぁぁ、おいしそう」
 メニューを見て瞳を輝かせるニニギアの様子を見守り、ランディは息を吐く。カフェ内の空気と雰囲気には甘々しさを感じてしまったが、彼女が幸せならそれで良い。それに一緒に居られる事が何より嬉しかった。
「ニニはこういうの好きなんじゃないか」
 チョコケーキとミルクティーを勧め、ランディは注文を済ませる。暫し後、二人はテーブルに並んだ品に舌鼓を打った。すると、ニニギアはふと思い出したように悪戯っぽく告げる。
「あ、でもランディは後でもっとチョコを食べる予定があるんだから、おなかの隙間を残しておいてね」
「分かってる。……ほら、口についてるぞ」
 答えたランディは彼女の口元を拭いてやり、穏やかに流れていくひとときを満喫した。
 甘い物は苦手でも、共に過ごす刻は有難い。すてきなおやつと、甘くて幸せな時間。めいっぱい楽しもうと決め、二人は互いへの想いを深めてゆく。


「どうせ私は一人身ですよ。一人寂しく、パフェを食べてますよ……」
 珍粘、もとい那由他からは何処となく負のオーラが漂っていた。しかし、其処は那由他だ。彼女は可愛い物が大好物。食べ物の形だって、見ると可愛いものばかりではないか。
「そんな可愛い物を貪り喰らう……良いじゃないですか!」
 半ば自分に言い聞かせるようにして、那由他はメニューをかっ喰らう。あくまでおしとやかに。
 そんな中――犬科同志の絆は、甘い物好きの絆として今日、更に深く強まっていた。
「おお、同志犬塚! よもや貴様も甘い物が好きだとは思わなかったぞ」
「美味いもんは何でも好きだからな。今日は楽しもうぜっ!」
 この時期は美味いチョコが楽しみだと語るベルカに対し、耕太郎も快いサムズアップで答える。良い店を教えてくれたことに礼が告げられれば、少年は得意げに尻尾を振っていた。
「さて、どれを頂くかな……」
「ミーノ、ちょこはあまいのすきっ。ホットチョコレートをのむの~」
 迷うベルカの傍、不意にメニューを指したのは耕太郎に同席していたミーノだ。おお、と目を輝かせるベルカはビターのホットチョコを頼み、敢えて冷たいホワイトチョコアイスにも挑戦することに決めた。
「うーっふ、あったまるー。そして冷たい!」
「あ、俺も一口欲しい!」
 甘い味に舌鼓を打つベルカを羨ましそうに見つめる耕太郎。和気藹々と巡る時間の中、リコルは食したオペラの美味しさと甘さへの感動を味わっていた。
「このオペラ、素晴らしゅうございました。紅茶も薔薇の香りがして……」
 淡く微笑むリコルは、まだ三高平に来たばかり。耕太郎達はいつ頃からアークに居るのかと問い、返答を聞く姿勢は興味でいっぱいだ。其処へ話し声を聞きつけた那由他が加わり、耕太郎やタスク達に奢ってあげます、と告げる。
「え、でも……良いの?」
「子供が遠慮なんてしないしない。大人ですよ、私は」
 タスクが問い返せば、那由他は心配ないとばかりに胸を張った。耕太郎はぱっと目を輝かせ、周囲の仲間達に元気良く言い放つ。
「みんな、聞いたか。全部奢ってもらえるって!」
 ちょっとした勘違いをする少年にリコルがくすりと笑みを零した。始終聞き手に回っていたリコルだったが、不意に浮かんだ思いと願いを小さく口にしてみる。
「よろしければ、わたくしとお友達になって頂けますか?」
 すると、耕太郎は「勿論だぜ!」と答え、満面の笑みを浮かべた。
 そうして賑わうカフェの一角、黙々と奢り品を食べるタスクの傍に永遠が遠慮がちに座る。
 賑わう様は微笑ましく、友達の輪が広がっていくのは実に楽しそうなことだ。その様子を見つめた永遠は、少年に以前の礼を告げた後におずおずと問う。
「タスクさんは三高平で初めて喋った方ですから、良ければ僕もお友達になりたくて」
 思ってもよろしいなら、と紡がれ掛けたその言葉を遮り、タスクは首を横に振る。
「何言ってるんだい、もう友達だろ」
 当たり前のように言ってのけ、タスクは永遠に真っ直ぐな眼差しを向ける。叶うなら、これからも沢山想い出を一緒に綴りたい。そう思うのは友人として同じ気持ち。
「友人って、とても素敵でございます」
 そう呟いた永遠の双眸は何処か柔らかく、ゆるりと細められた。

 甘い雰囲気とリア充達の存在にエーデルワイスの心は荒れ模様。
「メニューのここからここまで全部プリーズです!」
 やけ食いを決めて頼んだは良いも店員はドン引き。しかもツケが利かないとあって、結局は騒ぎすぎて出入り禁止にまでなってしまった。次こそはデストロイの決意を抱き、エーデルワイスは秘密裏に誓う。
「ここで私が退けられようと、第二、第三の戦士たちがこの店に立ちはだかるのですよぉ!」
 店から踵を返し、去っていく姿。
 それは何故だか、とても哀愁漂う悲しげなものに見えた。


 カフェの一席、向かい合う二人。
 はい、どうぞとリンシードから風斗へと渡されたのはバレンタインのチョコ。
「む、チョコをくれるのか。これは……嬉しいな」
 ありがとう、と彼が礼を告げると不意にリンシードは不服そうな表情を浮かべる。
「な、なんですかその顔は……私だって女の子なんですから、これくらい当然でしょう」
「いや、オレだって男だし、可愛い女の子にチョコをもらえたら嬉しいぞ!」
 慌てて弁明する風斗だったが、彼女は自分が子供扱いされているような気がして気になるのだという。子供ではなく一人の戦士として見て欲しい。自分も覚悟があって戦い、実力も風斗と肩を並べて戦えるくらいに強くなった。だから――。
「これでも、私を戦友とは、認めてくれませんか?」
「わかった。……すまなかった!」
 リンシードの話を神妙に聞いていた風斗は唐突に己の額をごつんと殴り、頭を下げる。
 思えば、確かに自分は心の何処かで彼女を子供扱いしていたかもしれない。護ることと護られること、それは表裏一体だ。それが分かった今、今後は肩を並べる戦友として頼りさせてもらうと約束をした。
「……だが、一人の人間としてのリンシード・フラックスの身を案ずることは許してくれ」
 これだけは譲れないと語った風斗は彼女を真っ直ぐに見る。
「心配してくださるのはいいんですけど……背負いすぎないように」
 潰れちゃいますから、と告げたリンシードだったが、その表情は不思議と快いものに見えた。

 ライバル店の視察、もとい見学も兼ねて遥紀は店内を見渡した。
 向かいに座る少年に以前の運命視の仕事の礼を告げ、遥紀はメニューに目を通す。折角だから別々のものを、と彼が提案するとタスクも頷き、其々の注文を決めた。
「そういえば、恋の縁は斑鳩は直ぐに出来そうだよね」
「どうかな、そういうのってイマイチぴんとこないんだ」
 そう答える少年に、間違いなく将来有望だと告げた遥紀は思う。きっと娘をお嫁に出す父親の様な気分で見護るのだろうと語れば、タスクは思わず突っ込みを入れてしまう。
「いや、それ意味分かんないから」
「……ん? 何がだい?」
 きょとんとする遥紀に呆れるタスク。二人の間には、何処か微笑ましい雰囲気が満ちていた。

 ぎゅう、と抱き締めた温もりは確かに此処に在る。
 片隅のソファの上、ルアは自分だけの特等席であるスケキヨの膝で、共に居られる心地を噛み締めた。
 こんな小さな体で色んなものを背負い、傷だらけになって戦って。それでも、信念を貫いた彼女の姿はとても美しくて、眩しい。
 無事に帰還して、共に過ごす今を大切に想い、スケキヨもルアを抱き締め返す。
「スケキヨさんと一緒だと安心する。ごめんなさい、ちょっぴり泣いちゃった」
「大丈夫だよ、ルアくん」
 嬉しくて涙を一粒零した彼女の頬に手を伸ばし、スケキヨは雫を拭ってやった。
 こうすることでルアが少しでも安らげれば、と思ったが癒して貰って居るのは自分の方かもしれない。穏やかさと安堵の心地に包まれながら、彼らは想いを確かめ合う。
 そして、キャンドルの火が揺らめく中、二人はケーキとマシュマロを互いの口許へと運んで交換する。
 とろけるような甘さとすぐ傍の彼の香りが混ざって、ルアの心もほんわかと蕩けてゆくよう。
「……大好き」
 囁いて、手を伸ばして――二人が交わすのは、チョコよりも甘い口付け。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
バレンタインカフェでの一日、如何だったでしょうか。
とてもとても甘い時間で犬塚も執筆しながら楽しませて頂きました。
耕太郎とタスクへのお言葉や贈り物には感謝を。思い出も品物も、大切にさせて貰います!

ご参加とお気持ち、どうもありがとうございました。