● 怪人映画を見た後は、なるたけ頭空っぽにしてお眠りなさい。 布団の外にわだかまる不穏な気配は、けして気のせいではないのだから。 気をつけないと、さらわれる一般市民にされちゃうよ。 ● 夜中に起きていて、アークに近所に住んでいるという理由だけで、緊急招集。 パジャマで良いからそのまま来いとはあんまりだ。 「いろいろ傾向は違うだろうけど、みんなには怪獣映画を見てもらう」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、ブリーフィングルームの机の上に古今東西の怪人映画リストを載せた。 劇場に出てくるのから、笛吹いたり、鞠ついたり、屋根の上で高笑いしたり、覆面したり、爪生やしたり、坊主だったり、鉈持ったり、色々大変だね。 モニターには、定番から意欲作までずらっと並んでいる。 サムネイルの中で動く小さな映像は、どれもこれも人のスリルとサスペンスを煽り立てる。 というか、イヴさん、依頼の内容をまだうかがっていません。 「怪人映画を見た夜。怪人のことを考えながら寝ると、布団からはみ出したところを掴まれて、怪人にさらわれる」 両手バンザイをしてみせるイヴ。 それ、あれですか。さらわれる一般市民ですか。 そういう都市伝説、聞いたことありません。 「ないと思う。これ、撮影中止になった低予算怪人映画のネタ」 あ~。確かにロケとかいらなそうだね。 ていうか、そいつら、去年の奴ら? また、企画、ぽしゃったの? 「あとはクランクインするだけってところで計画中止になってたもんだから、異様に盛り上がっていたスタッフ・キャストのもやもやが実体化した」 だから、E・フォース。と、イヴは補足した。 「正確に言うと、今まさに発生した。撮影中止になった残念会でもやもやのエリューション化確認。もはや、別働班が残念会に乱入して残念会をポジティブにして、うやむやにするのも無理」 そういう地道な活動してる人もいるんだ~。 アークはリベリスタも一般職員も頑張ってます。 「発生は間抜けでも、事件は凄惨、世間に与えるインパクトも甚大。密室連続誘拐事件。楽団大暴れの今、これ以上人心を荒廃させるわけには行かない。そういう訳で今から至急に対策をとる。今から、このE・フォースを呼び出す。怪人映画を見て、頭を怪人で満たしながら布団からいろいろはみ出させながら寝て」 なんか、身も蓋もない。 「楽しんでもらって構わない。とにかく、没頭できるものにして。ちなみに、リストの横についてるのはアーク職員による『これ見シュラン』」 参考にして良い。と、イヴ。 「E・フォースの性質上、1対1で寝ているところを不意打ちされた上で戦ってもらうことになるけど、発生したてでベースが実体験というわけでもないから、そんなに強くない。がんばって倒して。怪人映画の常で何回か復活(リバイバル)するけど、これだけ人数がいれば全員負けるってことはないと思う。後で宿直室の修理代とか請求しないから安心して」 信じてるから。と、イヴ。 「じゃ、宿直室に機材一式とお布団ひいたから。40秒で支度して」 ポテトチップスとコーラとピザ、今回はOK。と、イヴは最後に付け加えた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月14日(木)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「……ネグリジェ……寝巻き……」 メガネくいくい、●REC。銀色の気糸が絡みつき、ミリ単位で裁断する。 『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)の人妻黒ネグリジェ健全な貴婦人仕様と、『雪暮れ兎』卜部 冬路(BNE000992)の赤い襦袢姿を納めた記憶媒体は虚空の彼方に吹き飛んだ。もはやサイレントメモリーもかなわない。 「女の勘です。」 『絹嵐天女』銀咲 嶺(BNE002104)は、にっこり笑った。 これで、嶺のフリースのパーカーと短パンのセット、着圧タイプのつま先無しのニーソックスに、おろし髪というご自宅リラックスモードも、『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)の芋ジャージの上に半纏を着込み、顔一面の美白パックという別の意味でのご自宅リラックスモードも、『純情フリーダム』三禮 蜜帆(BNE004278)の健全パジャマ姿も撮影できない。 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)の盗撮カメラ破壊から始まる、チキチキ怪人映画鑑賞会、楽しんだ順から本物怪人プレゼント大会、いぇい! 基本アイテムは、ポテチとピザとコーラですが、 「映画といえば、コーラとポップコーンでゴザルよな!」 『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)には、ポップコーンが支給されたし、 「コーヒーないんだ……」 と、悲しげにしていた『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)には、魔法瓶いっぱいのコーヒーが差し入れられる。 シュピーゲルの奥方様にも、ホットミルクとクッキー。 リベリスタの半分が優しさでできているのと同様、アークの一般職員さんの半分も優しさでできている。ほんとだってば。嶺ちゃんに聞いてごらん。 皆、明日の朝を市役所前広場で迎えたりしないように。健闘を祈る! ● 琥珀のチョイスは、特撮だった。 巨大なクロワッサン型のパン怪人が現れた! 人々へパン・ザ・ミサイルを強制的に投げつけて次々と食わせていく。 「毎日がパン食になってしまう!」 「パスタが食べられないわ!」 「日本人は米こそが主食だろ!」 あらゆる兵器がパン怪人達を倒そうと使われるが、パンは全てを取り込んでしまう。 「奴らには効きません!」 「人類の食文化の発展もここまでか!」 パンに世界征服されてしまうと思われた。だが地球は人類を見捨てなかった。 細菌が賞味期限を過ぎてしまったパン達の体を蝕み始めたのだ。 「みるみる崩れていく!」 「腐ってやがる……遅すぎたんだ……!」 崩れ落ちたパンだったものを掃除するという労力を費やしたが、人類の食生活は守られた。 パン食文化圏では全く脅威にならないかもしれない怪人は、いつの間にか画面からフェイドアウト。 メロン味やカレー味のクロワッサンが、映画館で大手パンメーカータイアップで売り出されたりしたことが評判を呼んだりした方が話題になった映画だ。 「クロワッサン……いいか、見るので充分だわ」 コーヒーをすすりながら、琥珀は呟いた。 竜一は、ホラー系リストに目を凝らす。 「人食い博士とか脳みそ食わせたりショッキングでわりと好きなんだけど、あれは怪人というより殺人鬼か……。顔にピン刺さりまくった魔道師のも好きだが、あれはちょっとグロいので……」 色々あーだこーだ悩んだ挙句。 「ここは王道でいこう。そう! 王道VS王道! ツメの悪夢の住人VSナタの湖畔の殺人鬼! これだね!」 王道と王道がバーサスすると、途端に溢れるB級感は、なぜだろうなぜかしら。 それでも竜一的には、パワー系と頭脳系のぶつかり合いに手に汗握る大興奮。 「うおおおお! たぎってくるうううう! 二大怪人のガチンコバトル!」 革醒者的に言えば、デュランダルにクロスイージスと覇界闘士のごった煮に、ナイトクリークにプロアデプトにソードミラージュにダークナイトのごった煮。 共に、ダークナイトが下地なのはいうまでもない。 ひゃっほーと歓声上げつつ鑑賞。 ラストシーンに満足し、抱き枕をぎゅっとしつつ、夢路に旅立ったのだった。 アーデルハイトの選択は、心優しき王に仕える四人の怪人が、時に擦れ違い、時に手を取り合い、暗躍する怪人と戦い陰ながら街を守る物語。 それぞれが一張羅にマントを羽織って仮面を被り、レイピアを携えている。 「近頃はこのような作品が多いですね。スタイリッシュと申すのでしょうか」 ミルクが冷めないうちにとカップに口をつける奥方様だが、四畳半の和室におられると違和感というか申し訳ないというかお布団で寝られますかと、心配になってくる。 誰にも正体を知らせることなく命を懸ける姿に、アーデルハイトの目が細められた。 (私は生まれたときから魔物である。多くの物語において吸血鬼は悪者であるのだから) 無愛想ながら勇猛な巨漢に、伴侶が思い起こされて、口元に笑みが浮かぶ。 冷静沈着ながら心は熱いリーダー、皮肉屋ながら人情家でもある優男、未熟ながら正義感の強い若者。 一族の誰かに似た登場人物。あるいは、アークの誰かに似ているといってもいい。 (光に照らされて王道を歩むのではなく、影に紛れて王道を歩む。その矛盾こそが誇らしい) 穏やかな笑顔を浮かべ、アーデルハイトは慣れない寝具に身を横たえた。 「怪奇映画って苦手なんじゃよ。嫌いとかじゃなくて、そのう、ここ怖いの。だが仕事じゃし、私は義務を果たす事に躊躇はせぬ! ……せめて、あんまり怖くないのを」 そう言って頭から布団をかぶっちゃう冬路ばあちゃまには、お子様向けリストが渡された。 なのに、何でエログロB級ホラー見るのかな。 宇宙から来た怪物が人間と混ざってモンスターが増えていく、客観的に見ればチープな作りとお約束の展開。 だがしかし、神秘にどっぷり手を染めてきた人生な上に、怪物はエリューションで見慣れていて、安っぽいクリーチャーにかつての自分の戦闘記憶から視覚効果を自己補正。 ドアなら、開きませんよ? 不埒者が一人混じってますので。 窓や壁の隙間が気になったり、白い壁のちょっとした陰影が顔に見えたり、遠くから絶叫が聞こえたりする――のは、竜一とかジョニーとかベルカの歓声だったりするが、そんなこと、極限状態の冬路に思いつく訳がない。 飲み物はオススメのコーラとポテチを交互に口に詰め込み、びくびくむしゃむしゃ耳ぴこぴこ。 物音の度に布団を被り震えるが、助けは来ない。 「うわああん、眠れないんじゃけどおおお!!」 そこを何とか、がんばって寝るんだ。というか、自然が呼んでいる。 「開けて。あの、呼ばれたから、一緒についてきてほしいのじゃ~」 インターホンに泣きつく。 リベリスタのお姉さんに付き合ってもらい、「いるよね?」 「いますよ~」 をしつこく繰り返しつつ、それでもドアの隙間とか背後とかちらちら目線がさまよう。 「間に合ったのじゃ。危なかった」 足の下に水溜りを作らなくてすんだ。不名誉なミドルネームの危機が去った。 「怪人はロマンがあっていいわよねー」 蜜帆は、うふっと笑った。夢見る少女で許されるお年頃である。 「夜になったら格好良い怪人が私をさらいに来るの。そして面白くない現実とおさらばするのよ! ……でも私、今は楽しいからそんな必要ないわね」 (とにかく、怪人を出すためにも全力で楽しむわ!) ポテトチップスと、ピザありったけと、コーラ。もちろん食べきれるかどうかなんて考えてない。 「――っしゃー! 全力で観るわよ!」 『暗黒紳士vsコマンダー』 オープニングから、口に押し込むピザ。 『あの特殊部隊の隊長が再び帰ってきた!』 またかよとか言ってはいけないシリーズ最新作である。 『生贄によって悪魔召喚を目論む暗黒結社の怪人によって、隊長の息子がさらわれてしまう!』 軍、そして政府、さらには裏世界のドンや宇宙人の今まで出てきたエネミーキャラを巻きこみ、ついに第四次宇宙大戦が勃発! 『隊長は息子を助けることができるのか!』 広げすぎた風呂敷を果たして畳めるのか! と、上映前から話題騒然だったのだが。 (……やだ、吹き替えと脚本が秀逸すぎるわ) 蜜帆のハートをがっちりキャッチだ。どきどきハートだ。胸キュンだ! (生身で宇宙に出るとか隊長どうなって……えっ!? 本当に人間なの!? こんなの怪人映画じゃないわ! ただのアクションよ!) ていうか、怪人なの、暗黒紳士じゃないし。隊長だし。 とにかく、画面から目を放すことなく、ラストまで見る。 「歯磨きー……無理!? 歯は命よ!?」 アークのお姉さんに付き添ってもらって向かう洗面所。すれ違う冬路と別のお姉さん。 まだ、怪人の出る時間じゃない。 「宿直室ってこうなってるんですかぁ~」 嶺は、怪人モノなんだけども恋愛モノ。 最初は持ち込みのローズマリーのハーブティーをすすっていたのだが、じきにそんな余裕がなくなっていく。 マッドサイエンティストに造られた男の怪人と、美少女アンドロイドの報われない恋の物語。 触れればへこむ華奢なアンドロイドに怪人は抱きしめることも出来ない。 朝日の指す中、半地下の濃硫酸のプールに二人が初めて抱きしめ合いながら落ちてゆくシーンは、肉体の崩壊と精神の昇華が美しい音楽と幻想的な映像で表現され、嶺は備え付けのティッシュを次から次へ引き抜いて、目元をぬぐっては、傍らに山を作るしかない。 エンディングまでたっぷり楽しんだ嶺は、胸のどきどきが消えないうちに、お布団にもぐった。 ジョニーは、ポップコーンを口に押し込みつつ、CG以前の火薬とスタントをふんだんに使ったアクションに、ハラハラしている。 ニューヨークの刑事が、武装怪人集団が占拠したビルへ単身乗り込む割とステロタイプ。 (禿げかけた駄目オヤジが、捕らわれた妻のために、ボロボロになりながらも前に進もうとする姿に、拙者、感動してしまったでゴザル!) 都合よく回復したりしないところがこの作品のいいところだ。 「通信教育で習ったカラテ」 という設定はいかにもアメリカで日本人ならプークスクスだが、NINJAであるジョニーには一切全く気にならないというか、通信教育、独学万能! な感じである。 「俳優の息遣いまで伝わるようでゴザル!」 この映画、リスペクトに値する! 妻を助けてハッピーエンド。きちんとこの作品で完結するのが古きよき時代の映画である。戻ってきたり、新たな敵がタイトルロールの後にシルエットだけ現れたりしないのだ。 「いやぁ面白かったでゴザル。良い映画は何度見ても飽きぬでゴザルなぁ。満足したところで、拙者は寝るでゴザルよ……」 標準サイズのお布団から足が盛大にはみ出ちゃうけど、気にしない! 修行! 映画大好きのベルカの今夜のチョイスは、 「ちょっと変化球だが、今まさに旬のゾンビ物で行こうかな」 どう旬なのかは、脇に置こう。 (別に飛ぼうが走ろうが泳ごうが構わんし、究極的にはエンタメであるべきだが、やっぱり私はクラシックな物の方が好きなのだ) ウォーキングデッドという奴ですね、わかります。 「すなわち、極限状態に置かれても醜い争いを繰り返す人間! だからこそ本性を剥きだしにし、争い合う人間!」 人間は、平等に分かち合うことは出来ないんだよ。 ショッピングモールに溢れる死体。 (ただ「地獄が死者で一杯になったから」と言う黙示録的な暗示に留められ、終末世界における人間模様を描く為の舞台装置としてのみ置かれたゾンビ! 「結局は人間が一番恐ろしいんじゃよ…」 と言う作り手のお説教にごもっともですとうなだれる、そんな90分!) だが、人間はそれに抗う。 ゾンビに向けて投げつけられる、モロトフカクテル。食器売り場の包丁。記念コインと塩を口にねじ込まれて沈静化する死体は、ネタがわかりにくいかもしれない。 ゾンビ達を容赦なく庭仕事用のガスバーナーで燃やす主人公達。 赤々とした炎に照らし出される、生にしがみつく表情。 炭と化した動く死体を踏みにじる靴には、スポーツ用品売り場で見つけた登山用アイゼン。 (ショッピングモールは全部俺たちのモンだー! 立て篭もりシチュエーションばんざーい!) 人が『怪人』になる過程が描かれた90分ともいえた。 ● 枕元にパジャマ。蜜帆は寝る時は下着派である。本人が言ってるんだから間違いない。 (……ふふふ、来るなら来なさい。怪人が来るのが凄く楽しみだわ。どう説得してやろうかしら。ここは隊長みたいにすべきね、うん) そして、痛みと共に寝覚め、足元にわだかまる黒い影。 「――隊長!?」 戦う覚悟をしてなかった蜜帆の意識、ブラックアウト。 「タイマンだろ?」 竜一は、竜一の足首を握ってわだかまる長い爪の影に、にまぁっと笑った。 (タイマンは望むところじゃん、デュランダル的に考えて) 「こいよ、怪人! 武器なんて捨ててかかって来い!」 無茶言うなよ、自分は二刀流じゃねえかよ。 「教えてやろう。俺はアメコミヒーローも好きだ! なので――」 惜しげもなく武器に注がれる生命力。 自分が倒れる前に敵が倒れればいいという、映画の影響がないとは言えない捨て身戦法、ホッケーマスクはお入用ですか。 「ぶっ倒すぜ!力技でな!」 怪人、てめえの生死を問うぜ! アーデルハイトの深夜の来訪者を見つめる眼差しは、冴え凍る月のようだ。 「夫のいる婦人に対して夜這いを仕掛けるのならば、相応の覚悟をなさいませ」 その所業、万死に値する。 そもそもお仕事でなければ、進入なんて許しませんよ。 旦那様に叱られてしまうではないですか。 (名も無き怪人よ、貴方の前に立つのも、また怪人なのですよ) レイピアを構える影にくれてやれるのは、流れた血から生成する黒い鎖だけだ。 夢の中で追体験してた最中に、足首に鈍い痛み。 頭を戦闘仕様に組み替えている内にずるずると布団から引っ張り出される。 とっさにつかんだ杖を指針に噴き出す気糸。 「いいところだったんですよ……っ!?」 嶺は、鋼の少女の影に、くすん。と、鼻を鳴らした。 冬路は、必死でビビりつつ起きていようとするけれど、うとうと。 耳だけぴょこんと出ている布団饅頭状態で、いつの間にか意識ロスト。 でもビビリは勘がいいのだ。野性の血が残っているのだ、三割くらい。 「ふ、ふふん。画面の向こうならともかく、目の前に出たのが運の尽きじゃったな!」 言ってることはかっこいいけど、びびってるだろ。冬路、びびってる。 涙目で一太刀入れル。斬って流れる、エログログチュグチョ。 「斬り倒せるのなら、怖くはないわ!」 でも足はガクブル。内股なんだもん。おトイレは、怪人倒してからね。 「何だ、お主は!?」 ジョニーは、言った後に自分が大事なことを忘れていることに気がついた。 (あ! 怪人を倒すのが今回の任務でゴザったな! すっかり忘れてたでゴザル) 映画鑑賞は手段です。目的ではありません。 (ぬぅ、先手は取られたが、まずは落ち着いてカラテポーズという名の金剛陣。主人公も『ピンチの時ほどクールにいるもんだぜ』 って言ってたでゴザル) ヤクザ映画見た後の昭和の男が皆ヤクザになって映画館から出てきたように、NINJAはすっかり通信教育カラテマンになっていた。 「映画ばりのカラテを繰り出すのでゴザル! 拙者、カラテやった事ないがな!」 「カラテチョップ!」 という名の業炎撃。「カラテキック!」 という名の斬風脚。「カラテパンチ!」 という名の土砕掌。 信じる心が力になるのだ! 「不意打ちだと!? ビスハには効かん! 来るなら数持って来い数をー、うしゃあー! 頭を潰せー!」 ベルカも被暗示効果が高い――カンフー映画でアチョーと叫ぶ様な、没入が激し過ぎてすぐその気になってしまうタイプ。 ヒャッハー状態でさっきにぎらぎら燃えたお目目はアサシンどころかイマキルマジキル露骨にKILLである。 目に入った者、皆コロース!! (そんな部屋があってもいいじゃNight!!) いや、割とそんな部屋ばっか。 「痛いって。本気で殴るなって!」 不意打ち一発は覚悟して寝たけど、やっぱり痛いよ、ふざけんな。 「逃せば第二第三の怪人が現れるのがセオリー――」 クロワッサンのバターの匂いがする影。 「絶対に負けるわけにはいかないな!」 道化のカードを具現化させる。 ここで負けたら、明日の朝に道化になるのは、琥珀の方だ。 ● 怪人の断末魔。 リベリスタは、念積体の全滅に成功した。 ● 翌日、黎明。 蜜帆は、急激にゆすり起こされた。 「気を確かに! 自分の名前言える!?」 ごしゃごしゃと音を立てて、銀色のエマージェンジーブランケットで包まれる。 「え? はい? 三禮 蜜帆よ?」 「意識確認、自己認識確認! 通常プロトコルで医療エリアに搬送します!」 「え? どうしたの? お布団? 隊長?」 「あなたは、今から2分45秒前に急に密室から消失、今から2分08秒前に突然市役所広場に出現したの!」 「ああ、こんなに冷え切って! 何でこんな格好で! 怪人の仕業ね、怖かったでしょう! もう大丈夫だからね!」 ストレッチャーでの搬送。アークのお姉さんのブレイクフィアーと天使の息吹を浴びながら、いえ、自分で脱ぎましたとは言えない、蜜帆15歳・寝る時は下着派の、2月のある朝の出来事だった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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