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<相模の蝮>殺る気のある連中

●暇なんです
「あー暇だ……暇だぜ……暇だぜこんちくしょ――!」
「大将ーうるせぇんで静かにしてもらえませんかー?」
 廃棄されたビルの部屋で、事務椅子の上に立ちながら男が叫んだ。
 彼の名は草野・総一。茶色スーツをラフな形で羽織りながら、事務椅子を器用に脚で回転させる。暇なのである。
「まぁ暇なのは今だけなんだけどな。そろそろ打ち合わせ通りのお仕事の時間だし……トシ、準備は出来てんだろうな?」
「ええ、そりゃあ完璧に。でも大将ー? カレイド・システムとかなんとかが向こうにはあるんでしょ? あんなものあるんじゃこっちはもうどうしようも……」
「あぁん? カレイド・システムだぁ? あんなもんは別にどーてこったねーんだよ。今度は連中も驚くだろうしなーケケケ!」
 ……はぁ? という声を、トシと呼ばれた小太刀を持つ男性が洩らした。が、事情を知っていそうな総一は気にせずに事務椅子の回転速度を上げる事に集中している。暇なのである。
 その時、部屋の入り口が勢いよく開かれた。開いた主はやけに焦った口調で、
「大将ー! 一階の倉庫でゴキ、ゴキブリが! このビル、ゴキブリが大量に――うぉ、何してんすか?」
「おお、カズか。見て分からねぇか? ――世界記録に挑戦してんだよ!」
「いや何言ってんすかアンタ」
 焦って来た割には冷静なツッコミを行うカズ。頭に犬耳の様な物が見えると言う事は彼はビーストハーフと言う事だろうか。しかし総一は気にせず事務椅子回転続行中。何度も言うが、暇なのだ!
「あーお仕事の時間まで暇だ! 暇すぎる! 暇すぎるので――」
 事務椅子を素早く回転させつつ、その上でパラパラ踊りを実行させると言う妙な方面に器用な事をしながら、草野は言葉を紡ぐ。
「皆ー今度のお仕事は暇を吹き飛ばす勢いで行くぞ――盛大に、派手になぁ!」
 物騒な言葉である。

●暇な連中をぶちかませ
「皆、聞いてほしい。またフィクサード事件だよ」
 目を伏せながら『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が言葉を発する。
 右腕には資料を抱えているようだ。淡々とした様子で彼女は集まったリベリスタ達へとその資料を配りながら説明を開始した。
「ある繁華街で大量に殺人が起ころうとしている。それを起こすのが勿論フィクサード。以前にも確認された事のある奴みたい。資料を渡すから確認してね、もしかしたら会った事のある人もいるかもしれない」
「――それで、俺達はその繁華街に向かえばいいのか」
 イヴから手渡された資料に目を通しながらリベリスタ達が問う。
「ううん、違う。やってほしいのは、“この事件が起きる前”にフィクサード達を襲撃してほしい」
「……どういう事だ?」
「このフィクサード達を調べてみたんだけどね。どうも今は、廃棄された人気の無いビルに引きこもって準備しているみたい。だから、今すぐこのビルに襲撃すれば一般人の被害をあまり気にすることなく戦闘が出来るよ」
 一息。
「相変わらず、何を考えているのか分からないとろがあるけど……それでも、放ってはおけない。皆、頑張ってね」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:茶零四  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月30日(木)02:03
 前作、【<相模の蝮>やる気の無い連中】の続編となります。今回は皆本気モードです。
 なお「もしかしたらこのビルにリベリスタが来るかもしれないなー」程度の警戒は抱いています。
 かなり強く設定していますので、お気を付け下さい。では敵の詳細です。
【勝利条件】
 草野・総一に対し、殺害・捕縛・撃退のいずれかを成し遂げる。
 ただし、撃退の場合に限り状況次第では失敗の可能性があります。具体的に言うと何人も逃がしちゃうと失敗です。草野一人だけ逃げられたら“場合”によりますが成功です。

【戦場】
 廃棄された三階建てビル。草野達は二階にいます。二階からは出てこようとはしません。
 机や椅子、良く分からない書類などが大量に散乱しています。広さはおおよそ10m×10m。高さは3.5m程。入口は人が二人通れる程のドアが一つだけあります。
 東方面の壁には窓が一面に存在しています。戦況が不利になるとここから脱出される可能性もありますので、気を付けてください。
 また、一階は受付や倉庫(倉庫に裏口あり)などがあり、三階は二階と同じような構成です。上の階に昇るための階段はありますが、非常階段やエレベータなどはありません。単純な構造のビルですので迷う事はありません。

 周辺には似たような構造のビルがいくつかあり、人が働いていたりもします。普通にドンパチ始めると、警察呼ばれる可能性は十分にあります。そしてたまたま近くに警察署がありますので、通報されてから一分ぐらいで警察が到着します。
 警察が来るとフィクサード側は退却行動を開始します。
 なお時間は昼頃です。

【敵】
 詳細不明×1 クロスイージス×2 デュランダル×2 ホーリーメイガス×1
 合計6名。ホーリーメイガスを除き全員がジーニアス。

 草野・総一
 味方からは“大将”と呼ばれる。ジョブは詳細不明。今回は本気モード。
 ショットガンを持ち、遠距離スキルを使って攻撃してきますが、今回は服のどこかにナイフを隠し持っているのでいざとなれば近距離スキルも使ってきます。
 意外に冷静な所があります。味方の指揮能力にも優れ、掛け値無しに強いです。特殊なアーティファクトも持ちます。草野の発言した“良い物”とはこれの事です。
 今回の騒動理由は「暇だから」と言っています。最低ですね。……ですが、それはポーズで、他にも何か理由があるようです。
【所持特殊スキル】
 ・狩人の目:草野専用スキル。常時発動系です。相手がどこにいるかさえ分かれば、全てのスキルの命中率が大幅にアップします。さらにCT率もアップ。
 ・銃弾反射:草野専用スキル。つまり兆弾を使用します。銃弾の種類や当たった壁の具合に関わらず狙った風に兆弾させる事が可能になります。さらに三回まで兆弾させる事が可能です。
【アーティファクト:観客視点】
 ・観客視点:コンタクトレンズ型のアーティファクト。名称は“観客視点”です。草野が願えばリベリスタ全員の位置情報を、自分が見えていなくても正確に把握する事が出来ます。ただし、集中できる環境下でなければ発動できず、把握できるのは自分を中心とした半径20m圏内のみです。

 トシ
 防御に優れたジーニアスのクロスイージス。フィクサード側の前衛の要。
 生真面目な性格で、堅実な戦い方をする。武器として毒を仕込んだ小太刀を持っています。
 また、リベリスタ達が来るのが判明した場合、即座にオートキュアーとハイデフェンサーを発動します。

 カズ
 ビーストハーフ(犬)のホーリーメイガス。
 どこか抜けている性格の持ち主。前回のホーリーメイガスとは別人。
 接敵や自身に攻撃が向いたのに気付くととにかく逃げる。ただし、戦線離脱はギリギリまでしない。
 非戦スキル【猟犬】・【集音装置】を持つ。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
デュランダル
兎登 都斗(BNE001673)
覇界闘士
★MVP
宮部乃宮 火車(BNE001845)
ナイトクリーク
譲葉 桜(BNE002312)
クロスイージス
キャプテン・ガガーリン(BNE002315)

●暇
「……大将ー椅子の上で回って遊ぶの止めてくだせぇ」
「しかし断る!」
 廃ビルの中。事務椅子の上に立ち、器用に脚だけで椅子を高速回転させながら大将こと総一は回る。
 トシに睨まれたが軽くスルー。総一は回り続ける事を選択したのだ。暇なので。
「しかしさっきから、やたらパトカーの音が聞こえますね大将」
 声の主は犬耳が付いているカズ。
 彼の耳は遠くへと過ぎ去っていく警察車両の警報音を捉えていた。遠ざかると言う事は自分達が原因では無いようだが。
「んーなんかあったのかねぇ。ま、ここに来る訳じゃなさそうだし問題は何も……」
「ああ後ですね、大将ー。なんかこのビルに向かって複数人が近付いてきてるみたいなんですけど――全力で走りながら」
「それは早く言いやがれバカズ――!」
 椅子の上での高速回転を持続しながら総一は愛用のショットガンを壁へと構え、即座に引き金を絞り上げる。
 同時、いやそれよりも一瞬早く――ビルの正面玄関の扉が荒々しく開かれた。

●突入の、少し前
 ――時刻は僅か一分前に遡る。
 目標の廃ビルの近く、潜むように身を隠す『きまぐれキャット』譲葉 桜(BNE002312)は遠ざかるパトカーの音を確かに聞いた。
「……上手くいったみたいですねー」
 手に持つ携帯を閉じ、ポケットに入れながら呟く。
 これからの戦闘に警察の介入は邪魔となる。故に、事故をでっちあげて少々遠くに行ってもらったと言う訳だ。
「おーし、俺も結界張り終わったぜ」
「お疲れ様です。では後は――突入だけですかね」
 さらに、周囲の人間に対する備えとして『不退転火薬庫』宮部乃宮 火車(BNE001845)は強結界を張り、『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)は廃ビルを眺める。
 今の所誰かが出てくる様子は無いが、
「じゃ、そろそろ行こうか。時間かけても仕方ないしね」
『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)が言葉を紡げば、皆が頷く。
 ここからはスピードが重要となる。彼らが立てた作戦は、二階から直に突入するのと、三階から二階へと降りて強襲する班に分かれているのだから。
「ああ、そうそう突入したら一階入り口に簡単なバリケード築きたいんですけど……構いませんかね? 敵の逃亡を邪魔したいですし」
「いいんじゃないかしら。でも、時間が無いし手早くやった方がいいわね」
 七布施・三千(BNE000346)の言葉に『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が返答を。逃げ道を塞ぐのは悪い事では無い。もっとも、二階から直に逃げられる可能性もあるが、その時はその時だろう。
 さて、これで本当に準備は終わりだ。後は駆けるのみ。
 闘いが、終わるまで。
「世界のためとかお題目掲げるつもりはないが……」
 動き出した『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)が、廃ビルの正面入り口に向けて走りながら言葉を呟く。
「やっぱ相容れないぜ」
 そして扉が荒々しく――開かれた。

●挟撃
「――むっ!」
 全力疾走でビルへと突入した『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)がまず目にしたのは入口に向かって飛んでくる無数の銃弾だった。
 散弾――それを確認した彼は、反射的な動きをもって銃弾を回避する。
「っ! もう撃って来たんですか!」
 三千が入口に素早くバリケードを築きながら、視線を階段の先へと向けた。銃弾が飛んで来たのはそこからだ。恐らく、いや確実に二階から跳弾を用いて攻撃してきたのだろう。
 と、何やらその二階から声が聞こえてきた。
「大将が銃撃った反動で椅子から転げ落ちた――!」
「ほらまたそうやって遊んでるから!」
「うるせぇ――! とっとと迎撃準備しろお前ら――!」
 ……何やってんだこいつら。
「……なんか揉めてるみたいだね」
「向こうさんの事情はしらねぇが、とにかく走るぞ!」
 都斗と火車の声が紡がれる。同時、火車はラジカセを取りだすと即座に電源を入れ、ハードRock系の音楽を鳴り響かせた。目くらましならぬ耳くらましと言った所か。
 故にこそ“耳”はともかく“目”は誤魔化せない。
 聞こえる。銃撃音と“反射音”が。散弾が再びリベリスタ達へと降り注ぐ。
「うーっ、痛いですけど奇襲処理おしまいですっ!」
 先程の狙いは桜だったようだ。咄嗟に横に跳ね、防御態勢を取ったためにダメージは少ない。
「この部屋ですね!」
 階段を上がったすぐ傍、そこに部屋へ通じる扉を最初に見つけたのは孝平。
 扉は内向きに少しだけ開かれている。跳弾が飛んできているのだから、閉められている筈が無いのは当たり前だが。
「フィクサード諸君、この地上で巡り合った運命だ! 最期まで戦おうではないか、この地球の使徒、キャプテン・ガガーリンと!」
 意を決したガガーリンが内部へと踏み込めば、武器を構えるフィクサード達の姿が目に映った。
 前方に四人、後方には犬耳の者が一人とそして、
「久しぶりだな、草野氏――いや、先日は何もなかったので初めましてというべきかな?」
 草野・総一が居た。
 ショットガンを構え、不敵な笑みを見せている。
「んーあー……そうだな、そうだったなぁ“初めまして”だなぁ?」
 どうも先日のやり取りを覚えていたらしい。ガガーリンの言葉に軽く返答をすれば、
「そして“さよなら”だなぁ!」
 引き金を絞り上げた。銃声が鳴れば、一瞬遅れで響く歪な“反射音”。
 さらにその音を皮切りとして敵の前衛も動く。扉付近でリベリスタ達を半包囲する形で布陣すると、各々の獲物を構え、襲いかかる体勢だ。
「くっ、後衛には当てさせませんよ!」
 奥歯を噛み締め、孝平は放たれた散弾の軌道上に立ち塞がる。
 その軌道の最終地点にいるのは三千。どうも相手は後衛から潰す事を考えているようだ。
 理にかなっている戦法と言える。だからこそ、身を呈してでも攻撃を通す訳にはいかない。
「桜ちゃんの投げナイフは、100発10中位はするですよーっ!」
 と、言う割には正確な射撃を桜は相手の後方に位置していたカズに叩きこむ。
 投じられるダガー。慌ててカズは横に跳び跳ねるようにして回避する。そして再びそこへ投じるダガー――気付けばカズは窓際に追い詰められていた。
「……! いかん、バカズ! そこから離れろ!」
 その時総一が気付く。ビルに入って来た時に使った“目”の結果ではリベリスタは八人いた筈だ。
 しかしここにいるのは四人だけ。明らかに少ない。
 集中し“目”を使う。己の目は届かずとも、観客の目は舞台の全てに届く。
 それが故の“観客視点”。舞台(ビル)の全てを覗いた末に、見つけた。残りの四人。
 その位置は――
「名付けて、斜堂流ハンマーダイブ!」
 突如として響く男の声。振り向けばそこには、鉄槌をカズに向けて振り抜いている状態の影継が居た。
 彼の居る場所はカズの隣にして窓際。どうやってそこに現れたかなど今更愚問。彼は壁をすり抜けてきたのだ。そう、

 三階から二階へと。

「うぉぉおお――!」
 雄叫びが聞こえる。これまた男の声だ。
 しかし声は部屋からではなく外から聞こえる。具体的に言うと、窓の直ぐ外から。
 視線を向けるよりも早く、ガラスが割れた。
「暇つぶしに来てやったぞおらあ!」
 ――火車だ。三階から二階への窓ガラスをぶち破っての突入。中々の無茶をする。
「おお小僧! よく来たな――帰れ!」
 火車を小僧呼ばわりし、銃口を向けた……ら、銃口を既に向けられていた。
 ミュゼーヌの持つ銃だ。それは、総一の顔面に定められていて。
「御機嫌よう。今度こそ、仕留めて上げるわ。泣いて命乞いするなら――」
 言葉と共に、放つ。
「今の内よ!」

●潰える
「くっ――トシ! お前はそのまま前面押さえてろ! あとバカズ! お前はテキトーに逃げ回りながら援護しとけぇ――!」
「は、はい!」
 総一は己に迫る銃弾を間一髪で回避すると、即座に味方に指示を出す。が、総一以外のフィクサードに焦りが広がっていた。
 入口付近で足止めしておけば彼らが有利だ。何せ後衛の大将が強力。場を持たせておけば勝てる――筈が、いつの間にやら挟撃状態。
 予想外の展開だからこそ、彼らは焦っているようだった。
「今度は逃がさないからね」
 窓の外より侵入した都斗が、逃げ回るカズに対して輝くオーラを纏った一撃を加えようとする。残念ながら走り回っている所為かギリギリでかわされてしまったが。
「孝平さん回復します!」
「有難うございます、では行きますよ……!」
 三千の回復支援を受け、孝平が跳躍する。
 狭い部屋の壁を蹴り、天井を蹴り、敵の包囲を掻い潜る。そして逃げ惑うカズに迫り、
「もらいました!」
 手持ちの大太刀で――薙ぐ。
「カズ! チッ、こっちの後衛が先に潰されたか……!」
「余所見してんじゃねぇぞ!」
 炎の拳が総一に向けて走る。明確な殺意の乗った拳だ。
 以前のショットガンの礼……という事だろうか。勢いのある一撃が向かうが、
「大将……!」
 トシが割り込む。小太刀を盾に見立て、火車の一撃を総一の代わりに受けた。
 全体指揮を取る総一に攻撃を通らせては危険。そうトシは判断したためである。
「てめぇらにはもう好きにはさせねぇよ!」
「援護するわ!」
 しかし、そのタイミングで影継が鉄槌を振るい、ミュゼーヌが引き金を引く。これもトシは防御。
 小太刀で銃弾と鉄槌を受け止めた。その結果――己の強化措置を破壊された挙句“弾き飛ばされた”。
「なっ!?」
「驚いている暇は無いぞ、むぅぅん!」
 影継の攻撃で再び扉付近へと戻されたトシ。そして、それを見計らったかのようにタイミング良く、全身の膂力を乗せた一撃を放つガガーリン。
 無防備なトシの背に向けられたそれは、彼の意識を奪うに十分な威力を持っていた。
「トシもやられるとは……!」
「成長してるんですよ、以前よりもね!」
「この間のお返しも含めてますしねー!」
 孝平と桜が武器を構え、総一を見据える。勝機だ。リベリスタ側が押している。
 トシが倒れた事によって敵前衛も浮足立っている。今がチャンスだ。
「けどなぁ、舐めんな小僧ども!」
 連射する。ショットガンを構え、適当に引き金を連続的に引き続ける。
 当たる場所は壁。本来ならば無駄弾だ。しかし、総一の場合は話が別。
 散弾が反射する。彼の意思によって、散弾は全て跳弾と化した。
「これは……!」
 誰かが呟く。放たれた散弾の反射先は、各リベリスタへと向かっていた。
 しかもただ向かっているのではない。防御を掻い潜れる位置に反射してから向かっているのだ。それは“観客視点”とは違う彼のもう一つの“目”が成せる技か。
「おいおいちゃんと狙えよ……!」
 散弾に耐えた火車が言葉を紡ぐ。
「下手な鉄砲が前当たった場所はなぁ……ココだ!!」
「ハッ! そんなに狙ってほしけりゃあなぁ……死ねや小僧!」
 目が向く。狙いは指差した先、額。
 銃口を構え、狙いを定め、引き金を引く――この動作をほぼ一瞬で片付れば、
「――!」
 火車の額から盛大に血が舞った。以前受けた傷の場所と同じ、額からだ。
 血が流れ、視界が赤に染まる。散弾を受けた反動で頭を始めとして上半身が後方へと傾いていく。
 ああしかし、しかし――だ。
「……で?」
 片足に力を入れ、傾く上半身の体勢を無理やり立て直せば、
「それがどうしたぁあ!!」
 叫ぶ。心の底から、溢れんばかりに。
「チッ、タフすぎるだろ……!」
「火車さん、一旦下がって!」
 総一が火車に気を取られた一瞬、ミュゼーヌは残った前衛フィクサードも纏めて狙い、銃を乱射する。
 それは先程、総一が壁に無造作に壁へ撃ったのとは違う。ある程度の狙いを付けながらの物であり、蜂が刺すような連続射撃を全て相手に叩きこむ。
「この間みたいに逃げさせはしねぇぞ!」
「テメェら……さっきの俺の攻撃のダメージは……!?」
「ボクの回復は付け焼きの刃じゃないよ。回復得意。天使だしね?」
 影継の放つ電撃を右腕で受けながら視線は都斗へと向ける。
 飄々とした様子で言ってのけているが、実に面倒な相手だ。何せこっちの回復役は既に潰れている。に対し、リベリスタ側はいまだ健在。それも二名。
 ……潮時か。
 状況は不利。それは認めよう、間違いなくこのままでは負ける。故に逃げさせてもらうとしよう。
 電撃を受け続けている右腕を払い、左手で銃を構えれば、再び銃撃を開始する。
 逃げるために。
「ぐっ! これは……待ちなさい!」
 反射し、襲い来る散弾の嵐。総一の考えている事に気付いた孝平は逃走の妨害をしようとするが、跳弾に邪魔される。
「逃がす訳にはいきません……!」
 その時だった。総一に向けて、走る影がある。
 三千だ。跳弾が体を抉る物の構わずに走り抜け、総一の服を掴んだ。
「ぬ、おっ!? この、離せ!」
「離し、ませ、んっ!」
 全力の力を持って足止めを図る三千。
 苛立ちが募ったのか、総一は懐に隠し持っていたナイフを取り出し――
「っ――くぅ!」
 三千の右胸部分へと突き刺した。思わず手が服から離れてしまう。
 これでいい。少し邪魔されたがもう邪魔する者はいない。後はこの窓から脱出するだけだ。
 ――そう思っていたのに。
「おい」
 目の間に立ち塞がる人間がいる。額を血に染めた男だ。
 あと一歩で、
「死んでろぉおお!!」
 あと一歩で逃げれると言うのに――!
「ぐ、ぁお!?」
 炎の拳が再び総一に向かって放たれる。相も変わらず殺気も上乗せ状態だ。
 腹に、胸に、顔に。拳が振り抜かれ、ダメージが蓄積する。
 さらにそれとは別に、衝撃が加わった。
「最後の一押し……決着を付けようではないか!」
「痛い目、見せてあげますよー!」
 十字の光と漆黒のオーラ。それが見えた時にはもう息も絶え絶え。
 ああ分かった分かった――俺の負けだ。認めよう。俺は死ぬ、間違いなく死ぬ。死ぬが――な。せめて一緒に逝こうぜリベリスタさんよぉ……!
 そう思い、最後の力を振り絞って銃を持つ手に力を入れる。殺せるかは分からない、だがこのまま死ぬのは御免だ。だから――
「いいえ、お断りよ。逝くのなら――貴方一人で逝きなさい……!」
 そんな思考をしているのを察したのか、総一が引き金に掛けた指に力を入れるよりも先に、ミュゼーヌが自身の銃の引き金を引いた。
 狙いは、火車が攻撃を受けた場所と同じ、額だ。
 一発の銃声が狭い部屋に鳴り響く。

「――」

 断末魔の声を挙げる事すら出来ず、たった今――フィクサードの命が一つ潰えた。
 力無く、人の体が冷たい床へと崩れ落ちる。それは同時に、闘いの終わりも告げていて。
「全く……アークを舐めすぎだぜ、お前ら」
 影継が小さく言葉を洩らす。
「ショットガン程度でなぁ……」
 死体となった総一を指差し、火車が言葉を贈る。表情は笑みで、額から滴る血をぬぐおうともせずに、言い放った。
「止まると思ったら、大間違いだぜ?」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 フィクサード集団の撃破、成功です! おめでとうございます!
 三階から迂回して挟撃案にしたのはお見事でした。正面からぶつかり合ってたらもっと重傷者は増えてたでしょうね……
 草野以外は捕えられました。カズは……生きてるのかなぁ。

 MVPは以前と同じ所撃ち抜かれながらも“大将”を殴り飛ばした火車さんに。
 ちなみに草野と違って額撃ち抜かれても無事(?)なのはあくまでもフェイト消費してるからです。

 まぁなにはともあれ、依頼成功お疲れ様でした。