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知りたがりアンサー


 少女はふわふわと浮きあがる、翅を揺らして、見つけた悪い物を本の中に終いこむ。
 よいしょ、よいしょ。
 小さなため息に混じった、達成感に『本の虫』は幸せそうに浮かびあがる――と同時に、本が滑り地面に落ちてしまった。
 どこ、どこ、と首を振る。
 ああ、見つからないの。どうしよう。これじゃ、帰れない。


「皆さん、事件なのよ!」

 \ででーん/

 開口一番、『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)の言葉はシリアスな空気が流れていたとしても其れをぶち壊す様な勢いを持っていた。
 リベリスタ達がぽかん、と口を開く。何かのお願いがあると聞いて来たのに、全然『お願い』をする様にも思えないテンションだ。
「犯人は誰だ! 真実は二つくらいありそうだけど、多分一つ! ……言ってみたかっただけ」
 咳払いの後、恥ずかしそうに視線を逸らした世恋にリベリスタは呆れの視線を送るしかない。
 何を言っているのだろうか、この24歳(外見年齢は14歳)。
「さて、お願い事なのだけど、三高平の図書館があるの。閉館日にこっそりとお邪魔して探し物をして欲しいのよ」
 ――つまりは、探偵ごっこをする前ぶりだった、という事だろう。
 背の低い世恋の後ろで何かがもぞりと動く。其れが羽を生やした少女だと気付くのには時間は掛からなかった。
「この子、識別名は『本の虫』。お名前は無いんだけど……付けてくれても構わないわ。
 世界から愛された優しい隣人は人間の悪い夢を本にして持って帰ってくれる優しい子なの」
 悪夢を集めて回るフェイトを得たアザーバイドは首を傾げたまま世恋の後ろに隠れている。
 透き通る様に白い肌、大きな青い瞳を瞬かせた『本の虫』は怯える様にちらりとリベリスタを見つめた。
「――人見知りするの。
 ええと、彼女が落とした赤い表紙の本を探してほしいの。絵本なのよ。
 其れがどうやら図書館に在る事が分かってね。せっかくの休日に御免なさいね、その、探すの手伝って欲しいの。私とこの子じゃ何時間かかるか分かんないから、是非、手助けをお願いしたいわっ」
 それがないと、この子も帰れないからと隣の『本の虫』の頭を撫でる。
「あ、注意事項として幾つか。
 一つ、館内は飲食不可よ。飲み食いは目の前に公園があるから、そこで、ね?
 二つ、本を汚すとか破るとかしちゃだめよ。ソコはキチンとしましょうね!
 あとはー、えっと、ほら、楽しみましょう?」
 たまの休日に探偵ごっこということで、力を貸してくださいな、と予見者は首を傾げて笑った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:椿しいな  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年02月05日(火)22:38
こんにちは、椿です。
のんびりと遊びませんか?

●成功条件
『本の虫』が無くした本を彼女に返してあげる

●場所情報
時刻は朝~夕方。
・三高平にある図書館。閉館日で、人はおらず貸し切り状態で有る為に騒いでも大丈夫です。
1階~3階の通常書籍フロアと地下には書庫があります。書庫の奥には開かずの扉があるとか。
(【1F:児童書、教育関連等】【2F:専門書、地図等】【3F:文学系統、漫画、ライトノベル等】)
1-3F間は吹き抜けがあり、中央に階段が存在しています。広さは其れなりです。
・図書館の前には小さな公園があり遊具等もある程度揃っているようです。

●アザーバイド『識別名:本の虫』
人の悪い夢を、人が起きる前に集めて行ってしまうアザーバイド。フェイトは得ています。
お名前は無く、識別名で呼ばれています。透き通った羽を生やし、身長は120cm程度の幼児の姿をしています。
タワーオブバベルが無くとも意思疎通は可能。人見知りで恥ずかしがり屋です。
帰り路は知っている為、本を見つける事ができればきちんと一人で帰っていきます。

●無くした本
赤くて分厚い本。中身は絵本です。図書館の何処かに存在しています。
誰かが『本の虫』が落とした本を届けた様で、所在地は図書館の何処かに在る事以外は不明。

●その他
戦闘はありません。『本の虫』が無くした本は図書館の何処かに存在しています。
探し方によっては非常に簡単に見つかるかと思います。
探索後はのんびりとお好きな本を読んで頂いても大丈夫です。館内飲食不可。図書館の前には公園がある為、お食事はそちらでどうぞ。
世恋はリベリスタと一緒に探偵ごっこで遊べると胸を躍らせて居ますが非常に乙女チック夢見がち思考回路ですのであまりお役には立たないかと。
何かありましたら【世恋】と発言のある一番最新のものを参照いたします。

楽しい休日になります様に。
宜しくお願い致します。
参加NPC
月鍵・世恋 (nBNE000234)
 


■メイン参加者 8人■
レイザータクト
フォルティア・ヴィーデ・アニマート(BNE003838)
ソードミラージュ
鋼・輪(BNE003899)
マグメイガス
匂坂・羽衣(BNE004023)
ソードミラージュ
桃村 雪佳(BNE004233)
レイザータクト
荻原 葉月(BNE004249)
ソードミラージュ
黒朱鷺 仁(BNE004261)
ホーリーメイガス
雛宮 ひより(BNE004270)
インヤンマスター
赤司・侠治(BNE004282)


 探偵帽子を被りルーペを手にした『ネギ娘』フォルティア・ヴィーデ・アニマート(BNE003838)は胸を張り、三高平の図書館前に立っていた。
「真実の旋律は、いつも一つ!」
 一度言ってみたかったんだぜ――なんてご満悦なフォルティア女史の隣で何処となく不機嫌そうな表情を浮かべた荻原 葉月(BNE004249)は瞬く事を止められない。
 大きな図書館と聞いて三高平に来たばかりの葉月は本好きである性分から、『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)の誘いに乗ったと言っても過言ではないのだが、虫探しと首を捻る。
「虫探すんだっけか? 虫ってやっぱ足いっぱいあってキモイのかな?」
「虫――というか『本の虫』というアザーバイド。ええと、この子よ」
 背の低い予見者の背後に隠れるように立っていた幼児。ぎゅ、と世恋のアーク制服を握りしめ不安そうに葉月を見つめている。その背には一般人や革醒者とも違う透き通った翅を生やしている。
 その姿はまるで妖精。リベリスタ側で眠たげに目を擦った『Wiegenlied』雛宮 ひより(BNE004270)が人見知り全開の『本の虫』を安心させるように「ねえ」と優しく声を掛ける。
 初めて遊ぶ子には自己紹介しましょうと『オトナの人』に教わったから、初めてであった心優しい隣人にひよりはへにゃり、と笑って見せる。
「わたしはひよりよ。こんにちは、『本の虫』さん。あなたの瞳、宝石みたい。とっても綺麗ね」
 瞬いて、恥ずかしそうに両手で顔を覆った本の虫に実は可愛らしい物が好きな『百叢薙を志す者』桃村 雪佳(BNE004233)の表情も自然と綻び掛けて、イケナイイケナイ。男らしく、質実剛健。ふう、と息を吐いた雪佳が膝をつく。幼児程の大きさの本の虫と合わせた視線。驚いた様に翅を揺らした彼女に優しく微笑みかけた。
「探し物をしているんだろ。俺達に任せてくれ。必ず探し出して見せるさ」
 雪佳が見るに、この本の虫は人と何ら変わりない。羽が生えているだけであればフライエンジェである『帳の夢』匂坂・羽衣(BNE004023)だって一緒だ。何も異界の生物だと色眼鏡で見る物でもない。優しく、穏やかな出逢いである以上、此れは歓迎できる邂逅なのだろう。
 ――嗚呼、言っている事は格好いいし、実に男らしい雪佳なのに、可愛い物や優しい雰囲気の者が好きだというから可愛らしい。内心パラダイスですね!
「羽衣っていうの。本の虫――って何だか呼び辛いわね。お名前、皆が考えてくれるから好きなの選んでね?」
「お名前?」
 目線を合わせ、その年よりも幾分か若く見えるかんばせに幸せそうな笑みを浮かべた羽衣に大きく丸い蒼い瞳を瞬かせる『本の虫』。そう、世恋が連れている子のアザーバイドはあくまで識別名で呼ばれている。個体としての名称ではなく、その種族その物を区分する際の名前なのだ。
「ん~。どんなのがいいでしょう……。本の虫。ホンノムシィ……HONNNOMUSY……」
 むぐぐと指を唇にあてて悩んでいる『純情可憐フルメタルエンジェル』鋼・輪(BNE003899)。もしもし、輪ちゃん。おーい……。
 フリルとレェスを纏った可愛らしい幼女は大きな黒い瞳を瞬かせ、悩んでいる。葉月が虫の外見を考えてボトム・チャンネルでいう所謂害虫の類を嫌ったのとは別に輪はぬめぬめしたもの等は大好きだ。つい、思わず虫取り網等を片手に持っている位には大好きだ。
「ハッ! そうです、略してハニーちゃん! ってのはどうでしょう?」
「羽衣からは……んー……、つづり、ってどうかしら? 貴女は皆の夢を優しく綴ってくれるから」
 虫大好きな輪ちゃんからの提案は『ハニー』、羽衣からは『つづり』。両者の名前をたどたどしく口にする本の虫に傍でその様子を見ていた今回の保護者枠――いえ、素敵な神父様枠の『渡鳥』黒朱鷺 仁(BNE004261)が「リード」はどうだろうか、と提案する。本の虫が他の名前に興味があるならば心に留めておこう考えても居たのだが、一応の発言。
「リード、読む……本にまつわる名前も良いが私としては彼女の仕事は護る事だと思う」
「まもる、こと?」
「ああ、このアークに護りたいから戦う者達が居る様にトリテレイア……いや、ブローディアの呼び名の方が私は好きだな」
 守護と受け止める愛。夢を護り、代わりに辛い夢を持っていく君に相応しいと提案する『凡夫』赤司・侠治(BNE004282)の意見に『本の虫』は首を傾げてどうしましょう、とリベリスタを見つめる。
 嗚呼、その様子だけなら本当にボトムの少女らと何ら変わりないのに。
「ぐりゅっく……とか、どうかな」
 幸せ、って意味だよと微笑むひよりに落ちつきなく、目線をあちらこちらさせる本の虫に優しく微笑み、ぽんと頭を撫でた雪佳の視線はその隣に立っていた成人には見えない今回の依頼者へと移る。
「俺は瑠璃の青さからラズリとかどうかな、と。世恋は何が良いと思う?」
「ひえっ、私? んー……、そうね。ハニーも可愛いしリードも素敵。ブローディアも格好いいし、グリュック、ラズリ、つづり……どれも捨てがたいわね」
 けれど、と予見者が選び取るのはやはり彼女の蒼い瞳に関した名前。ラズリ、でどうかしらと隣のアザーバイドのまん丸お目目を見つめた。
「ラズ、リ」
 お名前、と小さな隣人は微笑んだ。肩に掛けたヘッドフォンが揺れ、コードがフォルティアに合わせて波打った。輝く金の瞳は此れからの事が楽しみだと言う様に、幸せそうに細められる。
「よーし、任せるんだぜ、ラズリくん、僕たちMATがこの難――かどうか分かんないけどさっ!――事件、解いてみせるっ!」

 \M・A・T!/

 名付けて三高平アーク探偵団。勝手に名乗ったけど、別に構いやしないだろう。
 ――さあ、探偵ごっこを始めよう?


 図書館の中は広大だ。通常書籍フロアの1階から3階。その地下には書庫まで存在している。
「探偵ごっこ、余り推し量るのはと久慈やないが、せいぜい頭を捻らせて貰おう」
 む、と仁は何処を探すかな、と共に行動している予見者へと視線を移す。探偵仁神父。彼には一つ最大の謎があった。そう迷探偵の推理を阻む最大の謎が。
(――月鍵は、資料では成人女性と聞いていたが……)
 彼等の目の前に居るのは如何見ても中学生位の少女だった。大丈夫です、三高平では良くあることです。現に一緒に居る羽衣さんだって、年の頃は成人でもどう見ても幼女――おや、誰か来たようだ。
 じ、と見つめる仁の視線にラズリに興味があるのかしら、と予見者は自分の羽にひっついていたアザーバイドを仁の方へと向かせる。人見知りの所為か未だ自分から近寄らないアザーバイドとて、名前をくれた素敵な友人たちとは仲良くしたい様だ。
「あ、ああ、そうだ、コレを見せようと思っていた」
「わあ……!」
「活字も良いが、写真も良いものだぞ。どうだ?」
 きらきらと大きな蒼い瞳を輝かせたラズリに仁は頭を撫でながら自身の娘を想いだす。年はラズリの方が下に見えるがこんなに純真では無かったような――嗚呼、邪悪ロリっていうジャンルでしたね。娘さん。
 写真集を抱きしめて、嬉しそうにお写真、と笑うラズリとは少しでも心の距離が近くなった気がして安心した様に仁は頭を撫でてやる。は、と気付いて序で、隣に立っていた世恋へと渡された写真集。
 子供は片方が何か貰ったら拗ねてしまうから。142cm程度の彼女に視線を合わせ、腰を下ろした人から写真集を受け取って、何処か形容しがたい表情を浮かべていた。
 月鍵世恋(24)……(笑)。

 ふわり、と浮きあがり、猫のぬいぐるみを抱きしめたひよりは周辺をきょろきょろと見回していた。
 1階の書架からぐるん、と見て回る彼女の視線はゆっくりとゆっくりと本棚を上から下まで見て回る。目的の赤い本を探さないととしっかりと目を凝らす。探偵作業をしていても、唇からこぼれるのは大好きな歌だった。
 古くて、ちょっとカビ臭い。『本』の臭いがひよりを包み込む。嗚呼、なんて楽しくて幸せな場所なのだろう。ぱたぱたふわふわ。ゆっくりゆっくりと探し回る彼女は一度とてとてと歩くラズリの元へと降り立った。マイナスイオンを発するひよりは小さくて羽が生えているからラズリと仲良くなるのも早くって。
「ねえ、ラズリも、飛べる? それなら、怖くないなら、一緒に」
 ね、と手を伸ばし、小さな掌を握って二人で浮かび上がる。一階の書庫を上から下まで、ゆっくりと。ひよりが唄う曲はラズリが知らないボトムの歌。美しい声で少し調子外れに歌う『妖精の曲』に合わせてラズリも歌う。
 きゅ、と握りしめた掌に力が入る。
 読みたい本があったら、一緒に読もうね。後で、沢山沢山遊ぼうね?

 赤い本。分厚くい絵本だと言う特徴に注意して、彼はゆっくりと神秘の知識へと浸かっていく。あくまで場所を探す様に、その中身は見る事がない様にと気をつけて侠治は切れ長の瞳を細めた。
「何か、見つかりそう?」
 本棚に視線を遣りながら問うた羽衣にこの階にはないかな、と頭を掻いた。もしも本物を探り当てたら、その中身は知らないで居たいと思う。夢を守ると言う優しいアザーバイド。悪夢を本の中に隠す行為を無碍にしたくないから。ストイックな雰囲気を纏った侠治の心優しさに気付いてか、世恋と目線を合わせて羽衣は微笑んだ。
「そう言えば、識別名は何故本の虫、なんだ? 由来は確か紙魚だったな。もっぱら言葉としては熱中する人の意味合いなのだが」
「夢を集める事に熱中するからそうやって付けたのでした」
 私のネーミングセンスです、と無い胸を張る予見者に、素敵だわと微笑む羽衣。面識ある二人は何処かふわふわとした時空で生きている様にも思えて侠治は緩やかに笑った。

 ――所でMATの皆さん。推理は進んでいるのでしょうか?
「手掛かりは赤色の表紙と分厚い事、それに絵本か」
「え、ええ。後は……そうね、アザーバイドのものだから見れば直ぐに解る、はず」
 世恋に推理を任せ、相槌を打ちつつ生温かい目で見守っている仁お父さん。お父さん、その子、24歳です。推理に現場を理解する事は適切だ。推理と言える推理じゃなくとも仁お父さんはなるほどな、と優しい視線を送っている。
 
 そして、現れたのは本日の『迷』探偵。フォルティア女史であった。
「こういう普通の所に紛れてて図書館の秘密を書いた地図とかがある筈だから探そう!」
「なん、ですって……!?」
 突っ込みが、居なかった。葉月助手くんはと言うと本に夢中でフォルティア探偵には適当は相槌を返している。ツッコミさん、貴重です!
「宝の地図探しっ! きっと開く鍵とかが何処かにあるはずなんだぜ!」
「いや、普通に無いだろ……」
 呆れながらも図書館の本の量に感動を覚えていた葉月はキチンとフォルティアに返答してあげている。
 助手君が良い子で、いやはや、フォルティア女史……良い助手を持ったね。所で何故『ネギ』娘なのかは突っ込まないでおいた方がいいのだろうか。
 哀しげに金の瞳を瞬かせ、ぐるり、と仲間達を見回した。
「葉月助手くん! 僕はこんな情報のないフロアに居られるか! 地下に潜らせてもらう! だから何か情報あったら僕に教える様に! だぜっ!」
 だっ、と走り出すフォルティアにゆっくり歩きながら、葉月は付いていく。瞬いて黒い瞳を開いては、其れに楽しげについていく輪ははて、と首を捻った。
「第一の殺人――?」


 地下の書庫は埃被っていて、けれど上では見れない様な貯蔵が多く羽衣は驚いた様に黒い瞳を開いた。
「世恋は本好き? 羽衣は大好きなの。特に幸せになるお話しが大好きよ」
「皆がそのお話し通りに幸せになればいいのに」
 ね、と二人で微笑み合う。
 高い所が気になるなら、と世恋と共にぎりぎりまで浮かびあがって本棚の上などを見て行く。埃被った其処に何か新しい発見があるかもしれない、と皆が通った道筋も羽衣はしっかりと確認した。
 ふわ、と浮かびあがっていたひよりと手を繋いだラズリが羽衣を見つけ、手をひらひらと振る。
「ご本、見つかった?」
「ううん、まだ。けど、大丈夫、必ず見つけるわ。羽衣は約束を破らない」
 ね、と胸を張ってラズリの頭を撫でると嬉しそうに、きゅ、と手を握る。ひよりとラズリと羽衣。少女――一人成人女性だが――達と言う図は心温まる物があると同時に、私もああ見えるのかな、と自分の幼さを再確認した予見者が其処には居た。
「あるだろうか……」
 ふと、1階の貯蔵と同じ絵本の棚を見ていた雪佳が声をあげる。なあに、と黒い瞳を瞬かせた輪が歩み寄れば彼の手には絵本が握られている。様々な絵本を手にとってはあれではない、これではないと選ぶ様子に首を傾げた輪の手に握られたのは昆虫図鑑だ。ウスバカゲロウの羽を見つめて綺麗だなあと輝かせていた視線が雪佳に移り、雪佳は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「幼い頃に母が読んでくれた絵本を探してる。読んでる途中に母が感動して泣いてしまっていたんだ」
「リンも読んでみたいです~」
 ――けど、目線はタテスジグンバイウンカに向いていた。うっとり。
「リンくん、何か見つけた?」
「昆虫図鑑ばっかり。でもとっても素敵ですよ?」
 一度集合したリベリスタ達の持ちよった意見交換。やっぱり怪しいのはあの開かずの扉だと気になったフォルティア探偵が本に夢中の葉月助手を引き摺って行く。ラズリと手を繋ぎ、お友達になりましょうと告げる輪の手をきゅ、っと握りラズリはおねえちゃん、と微笑んだ。
 嗚呼、虫ですもんね! こんな外見でも虫だもの。可愛い可愛い、大好き。きゅんきゅん!
「現場で事件は起こっているんだぜ! こういう時は『密室』があやしいって僕聞いた事がある!」
「さっきはお前が明らかに死亡フラグだったけどな」
 勝気そうな蒼い瞳を向けた葉月にへらりとフォルティアは笑う。童話やライトノベルを読みたいなあと本棚をチェックしながら道程を歩んできた葉月の意識は本に向いている。貸出出来ますよ。一杯読んで元気になってね葉月たん!
 開かずの扉の前で瞬きを繰り返し不安げに仁へ視線を向けたラズリに彼は今までの冒険の話を教えてくれ、と問うた。色んな夢を集める話は、何処かたどたどしくて、物語にしては余りに聞けたものでは無かったけれど。
「いいな。年甲斐もなくわくわくする」
 頭を撫でつけて、褒めればアザーバイドはきらきらと瞳を瞬かせる。開かずの扉に耳を澄ませ、扉をチェックするフォルティア探偵の背中を見つめながら、とんとん、と侠治は予見者の肩を叩いた。
「なあ、これ……。これだろ? ラズリの本って。後で、渡してくれないか?
 ラズリは困るだろうが……彼女にも休息は必要じゃないか? 少しだけ、な」
 侠治の優しさに、瞬いて、頷いた。――が、扉の前ではフォルティア探偵が大暴れしていた。


「じゃじゃん、ラズリちゃんの本です。発見者は――」
 ちらり、向けた視線に侠治が視線を逸らす。瞬いて、よかったね、と微笑むひよりはそういえば、とぎゅっと赤い本を抱きしめたラズリの本を見つめて首を傾げる。
 人の悪い夢を集めた本。それはタイトル等はあるのだろうか。閉じ込めた夢ごとに変わるのか。ボトムの人間が読んでも大丈夫なのか。単純な興味がひよりの胸に過ぎった。勿論、輪も興味津津。
 後で外で作ってきたサンドウィッチを食べようね、と周囲と約束してどうなのかな、と近くのソファに座ってラズリへと問う。
「ん、と、いっぱいいっぱい本にね、絵が書かれてく、けど……皆が読んだら頭がいたたってしちゃうの」
「じゃあ、読めないんですね。ちょっとだけ残念……」
 でも、仲良くなれただけでそれで幸せ、と笑った輪に皆頷いて見せた。後はのんびりしよう、と絵本を持ってきた仁の読み聞かせに楽しそうにお話しを乞うラズリ。ひよりの選んだ本も一緒に読んで、それで、それで、と幸せそうに微笑んだ。
 自身の好みの本を選んで、楽しげに本を呼んでいる世恋達の様子を見つめながら本の第一発見者である侠治はのんびりと読書を楽しんだ。

「ブローディア、とっても素敵。あとね、あと、ぐりゅっぐ!」
 告げて、微笑んだ声にひよりは笑って手を振った。幸せが訪れます様に、と提案した名前。気に入ったの、と微笑んで、今日読んだ絵本の事を楽しげに話す。
 嗚呼、けれどお別れの時間だから。手を振って、「夢に遊びにおいで」と雪佳は声を掛ける。じんわりとラズリの瞳に涙が浮かぶ。
「ねぇ、楽しかった? 貴女が今、心から笑ってくれるなら、羽衣は嬉しい。元気でね。また、逢いましょう」
「また来てねー……」
 声にして、涙が滲む輪はなんちゃって、と笑う。ぐすん、と涙を呑みこんで、手を振るとラズリも輪ちゃん、と手を振った。饅頭を手渡して、コレでも食べて頑張れと頭を撫でる仁にラズリは幸せそうに微笑んで、その場を後にする。
 帰り路は知ってるから、また、会おうね、とお願い事をするように告げて、少女はその場から姿を消した。
「いい休日だったな、君はどうだった? ラズリ」
 帰っていった小さな少女を想いだし、働き者の小さな守護者に感謝を込めて侠治は呟いた。
(――君はきっと『俺』の悪夢も隠してくれたんだろうな、有難う)

「あ、月鍵。頑張ったご褒美だ」
 手渡された饅頭に最後の最後まで幼女扱いだった世恋は複雑そうに笑って饅頭を手に取った。
「……甘い」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れさまで御座いました。
 探偵ごっこなのです。沢山のお名前案有難うございました!どれも素敵なお名前ばかりで、椿、感動なのです。
『ラズリ』ちゃんと付けさせて頂きました。
 ラズリちゃんとの楽しい休日、ゆっくりと過ごして頂けましたでしょうか?
 みなさんが遊んで下さるので、椿も楽しく書かせていただきました。

 お気に召します様に。
 ご参加有難うございました!