●喰らう所までは確定なんで 「後、何とかして下さい」←笑顔 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月30日(水)23:54 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●お客さんも好きねぇ 道理をつくさないこと。道理に合わないこと。 つまり理不尽という言葉は大抵の場合において忌避されるものである事は間違いがない。 確かに因果応報は世の常とは言われるが、因果がないのに応報されるが如き現実は一般的に「はいそうですか」と受け入れられるモノでは無かろうが。三千世界に巣食う神秘なる罪悪はそれでも一向にお構いなしに大抵の場合酷く一方的に、大抵の場合特に何も無い人間を阿鼻叫喚の底へと突き落とす……『そんな現実』に我が身を盾にし敢然と立ち向かうリベリスタ達が『嬉々とした理不尽』の格好の的になるのは今に始まった事では無く。この先解決を見る話でも無く。 「……ふむ、電波の敵ですか。そう考えれば似合いの場所に沸いたのかも知れませんね」 ポツリと呟いた『リジェネーター』ベルベット・ロールシャッハ(BNE000948)の一言は、今日も又――彼女等が『何時もと変わらぬ』皮肉な現場に直面し、その回復を尽くすべく急行しているという事実ばかりを告げていた。 混乱の根源であるスタジオに向けて廊下を走るリベリスタの数は十一人。パーティがブリーフィングで告げられた敵の正体はベルベットが漏らした『電波』という単語に集約されるものだった。 「ったく、かったるくてやってらんねーよ」 煙草を吹かしたアイドルが唇を尖らせて口汚く毒吐き、リノリウムの床に唾を吐く。 「あの、その……すいません、ごめんなさい。全て私が悪いんです。視聴率が低いのも、取材に失敗したのも全部!」 傲慢な事に定評のある情報番組の司会者が定まらぬ視線をキョロキョロとほうぼうに投げながら、周囲の困惑を他所に頭を下げ続けていた。 普段は電気の箱の中でしか御目に掛からないちょっと特別な人々が全く清々しい位にイメージと期待を裏切る姿を現場に晒している。 「いや、めんどくさい所にでたもんだねー」 何気なくつけっぱなしにして眺めておきたいテレビがちょっと楽しめなくなりそうな風景に『七色蝙蝠』霧野 楓理(BNE001827)は半ばどうでも良さそうな雰囲気で力の抜けたコメントを添えた。 「反転とか言うけど、ああ……そうか。あのアイドル君は『ちゃんとした』清純派なんだねぇ」 楓理の言葉、楓理の見方を突き詰めると嘘の世界に舗装された色々な真実が見えてきそうではあるがそれはさて置き。 ……つまる所、この中央キー局のスタジオに今日発生した『電波のエリューション』は人間の性格性質を反転させる奇妙な能力を保有していたのである。虚構の世界を作り出すテレビ局に蟠った情念が生み出したものか、単なる偶然でそういうものが沸いたのかは不明だが、何れにせよ今日彼等にとって重要なのは『それが敵』である事の方であった。 「性格反転なんて……あひる、どう変わっちゃうのかな……こわいなぁ…… 反転しても、あひるのお仕事、しっかりこなして行かないと……! 皆癒しまくるよ……! えいえいお!」 「び、びびってるはずないだろ、こんなの平気だし! 俺には龍治がついてるし!」 先程のアイドルの事例を見れば分かる通り、『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)やら『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)やら『普段は健気で良い子』の方が悪い夢を見せてくれる可能性は高いと言えるだろう。 「どうせ、この矢はあたらんしの。反転が絶対酷い事になってるじゃろうし……せ、せめて自決するのは敵を倒してからじゃな……」 「性格が反転したとして、私の積み上げてきたものが変わるわけでもなく。 理想が、信念が、技術が、経験が。必ずや為すべき事を為さしめてくれることでしょう――」 そしてどんな事故を招くか分からないという意味では相変わらず不必要なまでにネガティブに自身の技量を疑いまくる『不誉れの弓』 那須野・与市(BNE002759)然り、冷静で生真面目に凛とした視線を前にだけ向ける『Trapezohedron』蘭堂・かるた(BNE001675)についても改めて言うに及ばないといった所なのであった。 「面白い相手ですね。非実体の敵と戦うのもいい経験です。まぁ、私は攻撃しませんが――」 「性格反転するって想像難しいけどどーなんだろね」 ベルベットの言葉に相槌を打った楓理は彼女に倣うようにチラリと『清廉漆黒』桃子・エインズワース (nBNE000014)に視線を投げていた。 「たとえ! 私は反転しようとも圧倒的に天使! ヒロインになるべく生まれてきたももこさん――つまり、天使!!!」 人の波を逆行するように現場に急行するリベリスタ――彼等がこれから待ち受ける『危機』に想いを馳せる一方でニコニコと笑顔を張り付けたままの桃子は何ら普段と変わった事も無く、まさに王者の風格を見せていた。 「何か、世紀末に覇とか唱えてそうだしね」 「大丈夫です。桃子様は私が庇います。私はPTの生命線足り得る桃子様をかばい続けます。 ……ああ、でも私も自付とかで忙しい身ですし。攻撃しませんが。間違いなく反転一発位は通してしまうかも知れません。 コンセントレーションですが。命中上がっても攻撃しませんが」 「いいんじゃないの」 不必要なまでの自信と不必要なまでの動じなさは彼女のホーリーメイガスたる自覚と資質を疑うのに十分であると言えるだろう。何となく呟いた楓理にベルベットが『理屈に合わない』事を言ったが、そこはそれ面白がりの二人の事。肩を竦めるまでで精々なのである。 きゃーきゃーわーわーと騒がしい廊下を一直線に駆け抜ける。 混乱の現場が近付くにつれて人の姿は減り、運命の時間は見る間にその姿を露わにする。 封鎖されたドアを蹴破ってリベリスタ達が飛び込んだスタジオには何処かで見たバラエティのセットが広がっていた。佇む――七色の煌きを世界に零す神秘の子はゆらりと体の向きを変え、飛び込んできた闖入者達にその注意を向けていた。 「コメントに困る形してるなぁ。サクっとパニッシュ☆ しちゃおうぜ!」 両手をクロスさせ中指、人差し指、親指を立てたお決まりのポーズを取った『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)がこれまた何時もの台詞を軽快に放つ。この人の場合、Masahikoの舞台上でおいやめろばか言うな―― 「――パニッシュ☆」 イラッ★ 「性格が反転する光線らしいですよ、奥さん。怖いですね?」 「いっそ性別が反転してくれればよかったんだけど、そうすればお姉様との性別の壁越えられたのに……」 心なしか薄笑みを湛えた『第32話:反転香夏子さん』宮部・香夏子(BNE003035)に水を向けられ、ある意味『物騒』な事を口の中で呟く『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)はまだ大分余裕めいているようだ。 「香夏子は食らってきたほうがいいと思うわよ……その怠惰なカレーを直してきなさい! 働き者の香夏子……なんか想像するとちょっと気持ち悪い気もするわね……」 「あ、はい、前に前進ですね? 今日も久嶺さん荒ぶってるぅー」 無責任な掛け合いはどうも緊張感が無く、そんな紙面の都合の間にも奇妙なる電波体はリベリスタ達を己が敵と認めていた。 油断全開とか言う勿れ。戦隊ヒーローの変身中に攻撃してはいけないルール等はこういったシナリオにはとても大切な事である。 漫才を邪魔するなんてもっての他だ! 兎に角、パーティは動き出した電波体に各々めいめいの構えを取る。 敵はエリューション。どれ程愉快でもこのボトム・チャンネルの治安を乱し、世界を崩界に導く者! 「性格反転……? そんなのへっちゃらだよ!」 故に――『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)は、はしばぶれーどを手に気を吐いた。 前を見据えた『極普通の女の子』はその剣で敵を指し示し―― 「わたしがわたしでなくなるなんて、BL嫌いになったときぐらいだし! 丁度ここには男子が二人、いい感じじゃないの! 反転なんかに負けない!」 ……しぇんぱいは? 「しぇんぱい!!!」 ●知ってたgdgd 改めてこのリプレイのタイトルを見て頂きたい。 うわあ! 性格が反転する電波を喰らってしまったぞ! ……うむ。 うわあ! 性格が反転する電波を喰らってしまったぞ! うわあ! 性格が反転する電波を喰らってしまったぞ! うわあ! 性格が反転する電波を喰らってしまったぞ! 大事な事なので二回と言わず三回言いました。 つまる所、ある意味で――gdgdという名の展開は最初から約束されていたものであった。 常識的に考えてどうなのと問いかけたくなる惨状はこと今回の任務については『当然』であり別段驚く程の事でも無い。 そんな訳でカメラを引いて現場に戻してみるならばそこでは―― 「というわけで、作戦です! 私は後衛! 桃子様のすぐ近くで行動しますよ! ははは! 安心してくれて結構ですよ! 桃子様には指一本触れさせませんから! この私の目が! 黒い限り!!! 正義の味方は誰かを守ってこそですものね! 毒電波なんかに負けません! 負けませんとも! 力の限り頑張ります!」 ――やたらに力を漲らせた恐ろしく煩いベルベットが怪気炎を上げていた。 日頃の冷めたピザのような中二病ぶりが嘘のように語尾の悉くにエックスクラメーションマークを点灯させる彼女は清々しいまでの鬱陶しさを全開に桃子の盾として立ち塞がっていた。「あー……」と笑顔を若干引き攣らせた桃子が我が事で無いが故に若干引いているのも、ベルベット・ロールマツオカには気付く余地も無い。 「私はプロアデプトですから! 読みが外れても泣かない! 挫けない! ファイト! 私!!!」 ……七色の電波体の放つ毒電波は早々に戦場を席巻していた。 反転という名の暴力に晒され、まさにこの世の理不尽を体感しているのはベルベットだけでは無かった。 済し崩し的に始まった戦闘に目をやればそこには躍動するかるたの姿がある。 「はは、これにも耐えるか! いいぞ、素晴らしい! 実に忌々しい!」 高笑いと共にボルテージを上げるテンションは生来のかるたには備わっていないものだ。 普段は冷静で感情の振れ幅が少ない彼女は今まさに凄まじく『感情的』な存在へ姿を変えていた。 世界の保持を第一とし――何者にも感情移入しようとしないBorderlineの女は、少なくともこの瞬間触れる悉くを心底愛し、同程度に憎んでいる。自己を殺し効率と結果を重視するそのスタイルさえ、効率を度外視しこの時間を『楽しむ』という過程の重視へと変えていた。 「いいぞ! もっと抗え、私を――」 鋭い台詞と共に繰り出された生死占うその一撃は電波体を叩きその表層をノイズで乱す。 「――楽しませ……楽しいとかそういう問題ではありません。私は為すべきを為すだけです」 ……目を爛々と輝かせた少女の表情がアッパーからダウンに戻っていた。 攻撃の炸裂と同時に跳ね返ってきたカウンターウェーブの意味は苦虫を噛み潰したようなかるたの表情が物語る。 自分が何をしていたか何を言っていたかを明々白々に記憶している彼女は何とも言えない罰の悪さを感じざるを得ない。少なくとも『己かくあれかし』と思う姿から程遠い姿を晒す羽目になるのは彼女と言わぬ誰にとっても『しんどい』事に変わりはあるまいが―― 「ふええ……な、何でこんな所にいるんですか? 僕どうなっちゃうんです?」 ――かるたにとって『幸い』だったのは当然ながら現場で悲惨なのは彼女だけでは無い事だった。 「そんなシャボン玉みたいな体表してるくせに近づかないで下さい!」 アラサーの医者がまるで何処ぞのショタの如き一人称『僕』でその目に涙を溜めている。 僕どうなっちゃうんです? というより現場を録画して素面の本人に見せたらば死にたくなる事請け合いのそのシーンは彼にとって本意であろう筈も無い。強欲と無欲、強気と弱気、勇敢と卑劣、あらゆる対比するものを愛し受け入れるアンバランスな男は今、新たな境地を手に入れようとしていた。見た目と態度がそぐわない、そんなアンバランス。 「人間外見が全てなんですよ! どうせやられるなら美人のおねーさんとかが――」 取り敢えず役に立たない楓理は日頃の『人間中身(ないぞう)が全てである』という良く分からん主張さえも捻じ曲げて無様な醜態を晒し続けていた。 げに恐れるべきは毒電波。 第三十二話『反転香夏子さん』はっじまるよー。 「白は正義、かの汁の如く濁った色の食べ物は食べ物に非ず! 名を口にするのも憚られましょう!」 全日本カレー党員たる香夏子がシチュー党の急進派となって演説をぶっている。 反転するのは性格であって嗜好ではないとか言ってはいけない。プラシーボ効果も薬の内で要するに細けぇ事はいいんだよ! 「今日も頑張って……働けることに感謝を…… 皆さん、急いで任務完了させましょう! こんな危険なエリューションはすぐに破壊しないと…… 一刻の猶予もありません! 私が前に出るので援護お願いします!」 「何だかやっぱり気持ち悪いわ……」 確かにドン引きする久嶺の言う通り勤勉で真面目な香夏子というのは書いていても壮絶なまでの違和感を感じる異質である。 びびびのび! 「ああ……息をするのも面倒くさいです。カレーもぐもぐしながら見ていていいですか?」 「やっぱアンタはそうでないとね……」 開幕からgdgdを極める現場は非常なる乱戦めいた展開を望んでいた。戦いはめくるめく展開を変え、電波が飛び交い狂ったり戻ったりリベリスタの側も忙しい。性格の切り替わりに精神の方がついてこず、露骨な疲労の色を隠せない者も少なからず居た。 「……おお、まるでこうなる事が決まっていたかのようだ!」 「……そーですね……」 桃子の台詞に早晩疲れ顔のベルベットが頷いた。 電波体は総ゆる攻撃を軽減する強烈な防御力を持っていた。 求められているのは持久戦である。骨の髄までリベリスタを弄り倒してやろうという悪意がそこに透けて見えるのは――言うまでも無い! 「ハァ……キャンキャン煩いわね。性格反転が何? こんな時こそ慌てず、冷静に行くものでしょう。突っ立ってないで! 早く武器を構えなさい! そこ何座り込んでるの!立ちなさいこの貧弱! どいて、あなた邪魔!」 「ヒィ!」 普段のふわふわとした雰囲気は何処へやら、勝気で強気な姉御肌へと姿を変えたあひるが僕とか言ってる楓理を叱咤した。 「あらあら、野蛮なのはいけませんわね……」 口元に手を当て、上品にコロコロと笑う久嶺が彼女には妙に不似合いに『おっとり』とあひるを嗜めた。 「ワタクシこんな危ない物、怖くて撃てませんわぁ……」 「あ、はい。そうですね。いいえ、異論なんてありませんよ。全然」 此方は此方でドン引きする香夏子(今通常)のその口調は凍っている。 手にしたライフルを恐々と放り出し呟いた久嶺がつい先程何と言っていたかをリプレイするなら―― ――さぁー、敵はくたばれ! ギルティドライブ! 全くこの有様だったのだからそれも已む無し。 「兎に角、あひるさんも少し落ち着いて深呼吸を……」 「うるさい! 真っ直ぐ行ってブッ飛ばす! マジックアローでブッ飛ばす!」 久嶺の言葉をあひるが見事に一蹴した。彼女の鋭い眼光は即座にへたれ尽くした楓理に戻る。 「長期戦なら多少の支援はしてやれるわ……でも期待しないで。 自分の力で何とかすること! ボサッとしてないで! 甘えないで! EPが切れた? あなたの手に持ってる物は何? それで殴りに行きなさい! まだ体力にも余裕あるでしょう!」 「う、うう、分かりました……」 涙目の楓理がガクガクと膝を震わせている。 彼氏も彼女の豹変振りを見たならば……あ、ダメだ。アイツは「オゥ、そんなあっくんも頼りになるな!」とか受け入れそうだ。 徳が高かった……包容力が無意味な程に高かった……(敗北中) 「大体、うちの彼氏はBo'zとか何なの? 受けるの? 死ぬの?」 ……戦い(ギリギリChocolop)は続く。 「やあ、やあ。近き者は目にもみよ。遠き者は安心せい、すぐに届けてやる。 我こそはアーク一の弓の名手。姓を那須野、名を与市じゃ! わしの矢は百発百中じゃ。一キロ先の的にも見事当てて見せようぞ!」 中には戦闘的なメンタルとしては普段より『いい方向』に働いている与市のような者も居た。 彼女は十分な技量を持ちながら自分を信じる事が出来ないという一点のみにおいては余りにも致命的な欠陥を備えた戦士である。しかして、源平の戦いにその名を刻んだ那須与一の如き名を持つ射手はこの瞬間――まるで彼そのものであるかのように振舞っていた。至上のネガティブが至上のポジティブに変わった瞬間、彼女の狙いは宣言通り決して外れる事の無い神業へと昇華する――でも。 びびびのび! 反転しても『別に愉快』でない(←酷い)ならば別の手段をとるまでの事である。 著者の個人的欲望に塗れた怪光線は折角活躍の時を迎えた与市の運命を妙な方向へと捻じ曲げる。 直撃した者、何故か皆『邪悪ロリ』に変わるとかのたまう著者の個人的(略)は少女の瞳の『片方』に極めて昏い光を宿していた。 「……のぅ。わしはこの隻眼、隻腕がどうしてもコンプレックスでのぅ。 ……急にとてもよい考えが閃いての。皆同じにすれば良かったんじゃな。 大丈夫じゃよ。どうせわしの矢は当らんのじゃ1¢シュートで左目や腕を狙っても外れるからの。 安心して的になると良いのじゃ。な、良い考えじゃろ?」 ……言うに及ばず攻撃時のカウンターウェーブで性格がネガティブに戻っているオマケつきである。 「わかる、わかるなー! その気持ち! でも取り敢えず任務の方手伝ってもらえるとSHOGO嬉しいなー、なんて」 「分かるならそこに居直れ……!」 宥めすかす翔護に与市が過激に反応する。 まさに仲間割れすら始まりかねない酷い状況を無責任な電波を放つメンタルシェイカーがかき回し続けている。 (理由は兎も角)傷を負った者あり、(理由は兎も角)心の傷を負った者多数。フェーズ3に到達しようかという圧倒的なエリューションの攻勢の前にリベリスタ達は消耗を隠せなくなっていた。要するに嫌になってきたという事だ。しかし、そんな微妙な空気を叩き直すべく『熱い』声がパーティを『激しく』激励した。 「諦めるなみんな! 流した汗と涙は決して裏切らないんだ! 熱くなれよ。熱くなれ。もっと! もっと!!!」 ……又、暑苦しいのが増えたと思ったらそれはさっきまでパニッシュ☆ していた翔護さんその人であった。 何かこうビジュアル系(?)的な雰囲気とは真逆にその風情は『面倒臭い子一等賞』ってなもんである。 「諦めるなよ! 諦めるなお前! どうしてやめるんだ! そこで! もう少し頑張ってみろよ! 駄目駄目駄目駄目諦めたら! 周りのこと思えよ! 応援してくれてる人達のこと思ってみろって!!! あともうちょっとの所なんだから!! もうちょっと! 頑張れるだろ! なあ! Never Give Up!!!」 「……SHOZO?」 「あはは、ベルベットさんが言えた義理ですか!」 「サディストですね、桃子様」 「何故立たない!? さぁ、もっと熱くなれ! ハートを燃やそうぜ!!」 「!!! 感動しました! 香夏子、まだいけます!!!」 厳しくも優しい熱血指導でシラケ世代の若者達にカツを入れる――SHOZOもといSHOGOの声に(反転)香夏子が瞳を輝かせた。 「おっとっとごめんよーちょっと手が滑っちゃったーてへ☆ SHOGOさん(熱血)をドンして霧野さん(ショタ風味)とぶつけちゃえー!」 壱也(正気)が正気ならざる行動で場の混沌を加速させた。 「ハッハ! いいぞ! この胸にドンと飛び込んで来い!!!」←SHOZO 「いや、その僕は遠慮したいような……ああッ!?」←ダメ楓理 「気にするな! 先生が全て受け止めてやる!!!」←続行 「――ああ、嫌だ! いちいち熱(苦し)い!」←流れ弾で戻った 「うひょあああ突然縮まる距離、近いっ! どきどきロマンスの距離! 近い! 近い……近すぎないですか……? なんですか急にどうしたんですか…… やだ、やめてくださいよ……わたしそんなの萌えたいのに萌えれないじゃないですか……あ、やだ違いますよ…… ……恥ずかしいですし……それを見て他の人がどう思ったりするか考えたことありますか……? ホモは隠れてしましょうよ……ね……萌えてないです……」 楓理同様流れ弾で反転したこの女はもう誰が加害者だったのかを覚えていないに違いない。 「あの……その……ちょっと切り落としてもいいですか……?」 何を!? 「戦闘中で、その……痛いと思いますけど……ちょっとギガクラッシュとかで……」 「お姉ちゃん、楓理さんたちに一体何をして…… ……!? そっ、そういう、え……えっ……おとなっぽいことは隠れてやれって! ほらこっちで戦お、お姉ちゃん!」 「でも切らないと……」 壱也の袖を方向性の更におかしくなった木蓮が引っ張る。 「はっ!」 その木蓮と言えばふと思いついたようにカメラの方に視線をやって―― 「不潔だっ…。私だったらあんなこと……っ! べ、別に変なこと考えてないからな!? そうだ! 考えてないぞ! か、か、彼氏なんて別に好きでもなんでもないし! 基本的にあいつ生活力ないし! 何かトレーニングとかばっかしてるし! 家事出来ないし! 女心分からないし! べ、別に好きじゃないし。付き合ってあげてるだけだし。わ、わ、私は――」 手をぶんぶか振り回す度、木蓮のたわわな乳が揺れる。その胸ポケットからポーンと床に零れ落ちた生徒手帳には『この上なく彼いい男に映ってます』ってな珠玉の一枚が覗くのだから最早語るに落ちるとかもうどうでもいい話である。 「うわーん!」 「……わたしなんで前衛なんですか……怖いですし…… 戦いたくない……痛いのいやですし……回復しないでくださいよ倒れたいんです…… なんでわたし自己再生あるんですか……わたし座ってていいですか…… ダメならHP残ってるけど今から倒れますね……無理ごめんなさい……」 しぇんぱい! 「しぇんぱい!!!」 「はははははははは! 面白い! いいぞ、その調子だ!」←元気なかるた 壮絶なまでに酷ぇ空間はいちいち全ての状況を語るのが馬鹿馬鹿しい位に迷走に迷走を極めていた。 果てぬ戦い、尽きぬ戦い。苦難と辛酸を極める今日の任務はしかし――その瞬間、次の局面を迎えていた。 「……あっ、手が滑ったー」 手が滑ってどう防御を外すのかは知らないが! 「きゃあ――!」 幾度目かメンタルシェイカーの放った毒電波がベルベットの横をすり抜け、指差して大笑いしていた桃子に直撃した。 「――――」 戦場から音が消え、まさに誰かが息を呑む音が響き渡る。 俯いた桃子は身体を震わせてやがて面を上げ――時間は完全に凍り付いた。 ぎゃああああああああああああああ――! 耳を劈くその悲鳴が誰のものだったかを報告書を手にした貴方は知る事は無い。 その後、何が起きたのかを報告書を読む貴方が知る事は出来ない。 まことしやかに色々な噂が語られた。 或いは十人の内の誰かは冗談めかして『事実』を口にしたかも知れない。 されど、頑なに閉ざされた『真相』は無明の闇に葬られた『消失』そのものに違いなかった。 ――メンタルシェイカーは死んだ。スイーツ(笑) |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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