● 「うん、見たいなぁと思って」 ピピっと軽い音が響いたと思ったら。 「君、綺麗な脚してるよね」 およそのんびりしたと言っていい口調で。 「隠れててもわかるんだよ」 でも暴いてみたくなるでしょ。と、そいつは言った。 「その手、どけてくれないかな」 そいつの手がひらめくと反対側で、絶望的な音がした。 「大丈夫すぐには切れないように、残してあるから」 礼には及ばないと、そいつが笑うのを睨めつける。 「あはは。そういう顔も素敵だね。あんまり暴れると、大変なことになっちゃうよ」 ゴムもぎりぎりまで切ってるし。 え、嘘。 「嘘だと思うなら、動いてみれば。ちょっと過激に動けば、プッツンと行くよ?」 俺、別に追っかけたりしないし。 そんな言葉信じられるか。 逃げなくては。 脳裏に浮かぶ。 だけど、動いたら。 負荷がかかった、なけなしの残ったゴム繊維が吹っ飛びそうだ。 吹っ飛んだら。 両サイドを切られたズボンにパンツのサイドをかろうじてつないでいるものがなくなったら。 わかりきっている。重力の勝利だ。 下半身を包んでくれる布地は、その衣服としての役割を終えてしまう。 動けないっ。 「ほんとに、綺麗な足してるよね」 和やかな口調。 一月の風は、生足を斬るように吹き抜けていく。 ● 「生半可な覚悟でいくと、こういう憂き目に遭う。どうせやるなら大胆に」 リベリスタ達は、がたがたと席を立って、我先にブリーフィングルームから出て行こうとした。 しかし、扉はがっちり電子ロックがかかって開かない。 「この依頼、是が非でもあなた達にこなしてもらう。座って」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、無表情だ。 「そういうのは、おまわりさんにっ……」 まだまだ寒いし、世の中スーパーウォームビスなのにねっ! みんな着込んでるから、その筋の人達欲求不満なのかなっ! まったく変なの増えて、おまわりさんは大変だ! 「こういうのは、リベリスタに。フィクサードだから」 イヴちゃん、無表情だけど、表情が厳しいぞ。 「フィクサードというか、それ以前に大問題があるような気がするけれど、とにかくこの蛮行を止めてほしいの」 「なぐればいいんだなっ!?」 殴って簀巻きにして、いつもの人たちに引き渡せばいいんだな! いいと言え。 言ってくれ。 いえ、すいません、言葉が過ぎました。おっしゃって下さい。 「がっつりスリットは言ったズボンやスカートはいて、この男めろめろにして、ふんじばってきて」 変態くさい台詞をしゃらっと言う女子高生、今日はマジキツイ。 なぜ!? なんで誘惑しなくちゃいけないの? ねえ、なんで? 「この性別不詳、基本ナイトクリークなんだけど、色々他のこともかじっていて割と有能。困ったことに、見れば性別がわかる人間には情け容赦なく、全力で戦闘する」 何か、つらいことでもあったのかな……。 「ただ好きなものを目にすると、一気にお脳の回転が止まる」 女の脚ほど肉感的でもなく、男の足ほど筋肉質でもなく。 第二次性徴期をスルーした、すんなりほっそりでもいい感じにしまった至高のあんよ。 「ニッチ」 端的に言わないで下さい。 「それに、ただ殴ったのと、向こうの好感度上げてから殴ったのでは、更生成功率とその後の再犯率に差が出るから」 そんな統計が取れるほど、アークはたくさんの革醒者を保護してきたんですね、わかります。 「『楽団』や『蜘蛛の巣』が潜伏している今、リベリスタの損耗率を下げるためなら、どんなことでも採用するべき」 お説ごもっともですが、リベリスタの心も損耗することをどうか覚えていて下さい。 「――損耗するのが、心ならいいじゃない。まだ、再生のめどがあるんだから」 椿やら菊は、散ったらそれまでなのだ。 そんな事が言えるほど散らした人達がいるんですね、わかります。 「――ある意味、性別不詳ってそこらへんの負担、免れてる気がするんだよね。免罪符としてはましな方だと思うけど?」 帰ってきて、僕たちのエンジェル。ヨゴレは他の野郎フォーチュナに任せて、かわいい女性フォーチュナの皆さんはいつまでもピュアハートを忘れないで。 「この……性別不詳、性別不詳のあんよが大好物。ジャストミート15歳プラス15歳、マイナス5歳まで守備範囲」 うわ~。9歳から30歳って、その微妙な守備範囲設定、困っちゃうなー。 「これ、支給品。好きなの選んで。返さなくていいから」 せめてものボーナス。 イヴは、そう言って、各種サイズデザイン取り揃えたボトムがぎっしり詰まったダンボールをテーブルの上に置いた。 「全部スリット入れてもらってるけど、先に勝負かけとくことを推奨する。あ、生脚で。タイツやストッキングやレギンスはいてると破かれるよ」 提供:三鷹平市商工会議所。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月27日(日)22:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「何ゆえにこれが変質者の相手をせねばならなくなったのか。かようにして性癖とは厄介なものであるのだが……」 『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)にわからないなら、答えは簡単。脳内嫁のお導きだJK。 「これは」スカート等穿くことは無いのだが、任務ゆえ致し方なし」 スリットの入りが甘いのは、甘さではなく覚悟の表れ。 (衣服が刻まれる前に、自らの太股に呪刻剣を突き立てる) 許せない一線というものがある。 (相手も名にし負う変態ならこれも相応の覚悟を示すまで。相性の悪さだけは如何ともし難いが身体に触れさせるわけにはいかん……) 触らせるくらいなら、自分で切り刻んでやる。 願わくば、変態が流血上等だったりしませんように。 「身体の一部に執着を見せる人は数あれど、ここまで限定的なのは珍しいね」 『鷹蜘蛛』座敷・よもぎ(BNE003020)の言葉に、一同微妙に目をそらす。 割と、そうでもないかも。みたいな? 関わらないで済めばそれでいいんだよ? 世界は清く正しく美しく。 「…もしかして私が知らないだけかい? 奥の深い世界だ……」 こうして、また世界を別の角度から見る革醒者が一人増えてしまった。 「スリットは深いものを。……ただ、いざという時に引き付けられるよう、少しだけシャーリーが破けるような余白を取っておこう」 大事な何かをなげうって、世界を守るよもぎに励ましのお手紙を、三高平市役所留めで! 「なんだろう、大切なものを穿き忘れたような違和感が襲ってくるよ……」 イチジクの葉っぱって奴じゃないかと思うよ。 「脚線美がお好きなのですね」 ボトムが十二単になっている『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)の足元でバチバチ音がしている。 神秘ではない。服の中にしまっているお尻尾の摩擦による静電気の放電だ。 「男女の境目的な部分、というのはよく分からないですけど、ボクはもうちょっと筋肉が欲しいです……。ボクの理想は大地を踏みしめるような力強い脚なのです」 ほっそりとした体つきを見ると、もっとご飯を食べなさいと十人が十人思うだろう。 おしりのとこだけぽこんとなって、色気よりかわいげが増している。 『関帝錆君』関 狄龍(BNE002760)は、フォーチュナの言葉に反論を唱えたく思っていた。 一応、念のため。 (心という器、一度ひびが入れば二度とは……!) ご飯粒ではくっつかない。 (まあマジエンジェルの頼みなら仕方ねェ。それに性別不詳の立ち位置微妙さ加減は分かるし……いや、正直に言おう) 「こう言う状況、待ってたぜ☆ 覚悟完了ぉ!!」 一度はやりたいよね、ハニートラップぅ! 『悪いがイヴたん、支給品は不要だぜ。なぜなら自前の衣装があるからなァ!』 ブリーフィングルームで、無表情の首肯を貰った (スリットと言えばこれだろ……ザ・チャイナドレス!) 王道です。スリットといえばチャイナ。チャイナといったらスリット。 上海ノワールの時代から、暗黒街のエキゾチック・ビューティのユニフォームです。 切り込みは腰のくびれのトコまでがっつり入ってます。 「これでどんな変態でもイチコロだぜ!」 「……例えば、色男が女性と褥を共にしたとして」 『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)は、透けそで透けない60デニールの黒タイツのたるみを直しながら呟く。 「『既に全裸の女性』と『己の手で脱がせる必要のある着衣の女性』……どちらにより燃え上がるでしょうか?」 女性を最も美しく見せると巷で評判のベトナム民族衣装、アオザイ。 採寸箇所十数箇所、上半身の超絶タイト、3キロ太ったら着られないコンシャスさと腰から下をひらんひらんと翻る足首までの裾の対比が美しい。 たっぷりとした薄手の白い長ズボンを合わせるのが当たり前なのだが。 うさぎさん、それはいてませんよ? スリットアバラ下からなのに。突風注意ですよ。布が軽い分。 「そんな訳で黒タイツ着用です」 あざとい。 まるで、自分の魅力を知り尽くして利用する邪悪ロリのようだ! ● 「どっちだかわからない」シャーリー・チャーリーは、無防備な笑顔を浮かべた。 「男の子だね。かわいい」 『Average』阿倍・零児(BNE003332)の頬に朱が上る。 (僕はれっきとした男ですけどね。男ですよ! 時々女の子と間違われたり、女の子の服とか着てたりしますけど、男ですからね!) 本格的に第二次性徴期が来るまでの辛抱だぞ~。 (……うわー、なんで僕こんな事ばっかしてるんだろう) 考えちゃダメ! 自覚した時点で名誉女子か選任リベリスタへの道が敷かれちゃう! 平均的にみてもがっつりスリットのはいったスカートを、泣く泣くはいて精一杯の虚勢をはる。 (こう見えて平均的には自信があるので、男っぽく筋肉質すぎでもなく、女っぽく肉感的でもない足がスラリ) ほ~ら、平均的な小5男子の脚だよ。 (……ああ、こんなの何の自慢になるんだ) お知らせです。横からパンツ見えるとアレなので履いてません。 平均的小学男子のパンツをママが買うとき、「横からチラ見え」を考慮して買うか? そんで平均的小学男子が、『スリットからはみ出すんで、パンツも支給してください!」と言えるか? ましてやそれをママに頼めるか? 自分で買いにいけると思うか? きわどい下着買ったなんて広まったら、へたなお色気依頼行くより恥ずかしい。 そういう事情だよ。言わせんなよ。察してあげて。 「かわいいけどね。うん、かわいいね」 ひゅるりら~。 一月の風は冷たい。 がんばったけど、えっちっちだって、紳士になるお年頃だよ。 (えーいもういいやとりあえず性別不詳の人はいっぱいいるし男の僕が心配する事なんてないんだ、うわーん! こんな格好してて、賢者モードで戦闘されるとそれはそれで虚しいものが……) 零児の胸に、ぽっかりと穴が開きました。 ふと、シャーリー・チャーリーと『もぞもそ』荒苦那・まお(BNE003202)の目が合う。 シャーリー・チャーリーは、暖かな微笑を浮かべて、まおに向かって微笑んだ。 「こっちは、女の子。おめかし。とってもかわいいね」 男女差別はしません。どっちもかわいいです。 立ちはだかるならまじで殴るけどそうでなければかわいいねぇ。 「――早く帰りたいのです」 ふわふわお扇子で口元を隠しながら、まおはちいちゃく呟いた。 「足を見せてほしいのか?こういうのはどうだ?」 『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)、ズボンの脇スリットのファスナーを開けて見せる。 びきびきっと、シャーリー・チャーリーのこめかみに青筋が浮いた。 「いや、そういうのいらないから。まじで」 (イラついて、シャーリーさんが本気出したら少し戦闘。2・3回剣を交えたらスリット集団にバトンタッチ) そんな風に考えていた時期もありました。 損耗率・低の依頼とはいえ、リベリスタ10人も送り込まれるフィクサード、シャーリー・チャーリーの美貌が、ヅカ系男役と称されるには訳がある。 男役トップにのみ許されている、ダンスシーンの巨大な羽飾り。 それを髣髴とさせる極彩色の気糸が牙緑を物理的につるしあげ、精神的につるしあげ、社会的につるしあげた。 「人の性癖を笑うなかれ。身を滅ぼすよ」 スリットのファスナーは破壊され、パンツのゴムに致命的な打撃。 シャーリー・チャーリーの気まぐれ、細い気糸一本が牙緑の社会的生存をかろうじて支えている。 いい子にしてな。ちょっとでも動いたら、落ちるぜ、下に。 何もかもが。 「変態っているんだなー」 はためくスカートを押さえながら、鶏の羽根を酷使して飛んでいる『悪銭』九段下 八郎(BNE003012)、職業・アニキの着せ替え人形。 スカートの両脇には、ギリギリパンツが見えるレベルのスリット入り。 もっとも、ボクサーパンツなので、減点対象だ。 せっかくの甘ロリなのだから、かぼちゃぱんつ、せめて、白いこっとんぱんつ。 百歩譲って、フリル満載・パンツじゃないから恥ずかしくないもん・アンダースコート。 大丈夫、アニキなら持ってる。きっと用意している。今度聞いてごらん。 (アニキも大概アレだと思うけどよ。上には上がいるんだなあ。しかも実力もあるってなると――) プランプラント季節外れの風鈴のように揺れる牙緑の姿に戦慄が走る。 三下そろばんが、今後の戦況を予想する。 (め、面倒クセエ……!) その一言に尽きる。プロアデプトじゃないもん。 なんか視線。 見てる。シャーリー・チャーリーが、八郎を見てる。 「わーちょっと待った! 待ったー! 俺さ、ほら、八郎って言うんだ! どう考えてもオト●だろ!?」 いやあ、世の中には源氏名ってもんがあるから。 「な! 性別不明じゃなきゃ興味ないんだよな!! 俺よりも他に狙うべき相手がさ! ヒイイイめっちゃ見られてるぅぅぅ! た、たすけてーけがされるー!!」 安心して。全年齢対象だよ。 が、すっかり慌てふためいた鶏程度の飛翔力は、そのまま地面にどってん。 「アニキィ……俺……ぐすっぐすっ」 したたか尻餅うった腰の所を小さなおててで押さえて、ぐすっぐすっと鼻を鳴らす八郎に、シャーリー・チャーリーは、うふん? と小首を傾げた。 「大切な人がいるの?」 八郎は、こくんと頷いた。 自制心が弱く、ゆるくて、残念な八郎に、十年も仕えさせてくれた大事なアニキだ。 「人のお手つきには、興味ないかな」 のんびりした口調で言う。 「かわいいし」 残念、ここまでのリベリスタは、シャーリー・チャーリーを誘惑し切れなかった。 だけど、君たちの努力を無駄にしない。 シャーリー・チャーリーは誘惑のフィールドに足を踏み入れた。 アークが誇る性別不詳な人々が、ナイスあんよでテンプテーション・パラダイスなのだ。 アークは、フィクサードのリベ落ちを推奨しています。 ●はいはい、真打、真打。 黒のロングタイトスカートにヒール。 脚を開くとオープンするスリットは、両サイドに股関節の2cm上まで。 Vラインが際どいけどパンツは見えない。 そんな絶妙バランス『0』氏名 姓(BNE002967)のあんよは、この寒風の中、生足しっとりである。 出かけに保湿クリームすり込んで来たからな! 角質浮き? なにそれ、美味しい? (似合ってれば恥ずかしくないでしょ。無い胸張ってもいいじゃない! ……チッ、寒いけど) 「こんにちは、ナンパしようと思って。良ければアークにいらっしゃらない?」 左足に重心を預け、右足を軽く開き、シャーリーの目の前に立つ。 「あは! みせてあげるよ? でも此処じゃ駄目!」 折角ならおどるところを見たくない? 「……Shall we dance?」 飛び蹴り、回し蹴り、踵落とし。 (歩けばちら見え、脚を振上げれば大胆に。ヒールの踵を食い込ますのがポイント!) フェチ的な意味で弱点抉りながら、仲間と交互に前に出る。 百――花だか葉だかよく分からないけど――繚乱。とくとごらんあれ! 「今日の俺はニッチだぜ……水でも熱湯でもない、ぬるま湯をかぶってきたからな!」 狄龍。それ、一体どんな効能があるんだ。君をじゃじゃ馬にさせたりしない。 「お望み通りのしなやか脚線美を披露してくれる」 お手柔らかに! いや、とんでくるのはあんよなのだ。 「女にしては骨っぽい脚」ではなく、「男にしては肉感的にむっちりした脚」! 足技と一括りにしちゃだめだよ、中国四千年! 「喰らえ、見えそで見えない足スタブ!」 男の力強さとも女のしなやかさとも違う。 日本に馴染んでかたぎの学生になってしまった弟分へのトラウマは、男ゆえか女ゆえか。 (ヘソの位置と喉は見せません!) チャイナのマオカラーは、性別不詳に優しい! (性別不詳で今日もゆく!) うさぎは、太もものタイツを少し引っ張って見せた。 「奮発して良いのを買いました。良い艶してるでしょ?」 黒ストに詳しい友達がいます。 「けど私の場合、この下の色艶にも自信……ありますよ? ねえ……確かめて……みます?」 しゅしゅしゅしゅしゅ……。 衣擦れの音。 「……良いんですよ…? 好きな様にしちゃっても」 ここに君の親友がいたら、ごひーどころの騒ぎではなかろう。 泣き出すな。多分泣く。 「ちょっとずつ半端に破きますか? それとも、我慢できずに全部捲っちゃいますか?」 すげえふっきれっぷりである。 うさぎさんになにがあったの。あ、親友にナニかはあったか。 「そだ、靴も脱いじゃいましょう」 立ったまま膝を曲げて脱いだりすると、とんでもない角度になるが、幸い、ベストアングルになるには下から覗き込まなければならず、シャーリーチャーリーはうさぎより背が高かった。 「あははぁ、サービス満点だねぇ」 シャーリー・チャーリー、のんびりと言う。 「戦ってる内に前布と後ろ布が捲れたり太ももに巻き込まれたりしちゃいますね。お尻と…それから、前も…太ももの付け根までなら、許容しちゃいましょ」 しちゃうのかあっ!? 娘さんだか坊ちゃんだかよくわかんないんだけど、もっと自分を大事にしなくちゃいけないよ!? 親友とそんなことまでおそろいじゃなきゃいやだなんて、女子高校生じゃあるまいし!? どうも反応が芳しくない。 壱和は意を決した。 怖いので半分だけ身を乗り出して、スリットから脚を見せるように。 「いっぱいはいてるでしょ?」 一目瞭然。 そういわれたら、脱がざるをえないじゃないですか脱げとは言われてないけど。 ズボンを持ち上げて脚をちょっと持ち上げ。 シャーリー・チャーリーは頷いてみせるが、ご満足ではないらしい。 ズボンを一枚取って次の防衛ラインへ。 (見られるとすごく頬とか全身が熱くて……。恥ずか死ぬっ) にこにこ。 シャーリー・チャーリーは、穏やかな顔に見えるけど、目が怖いことに気がつく。 ドロリと溶けた蜂蜜のような目で見てる。 まともに見たら、蜜の中で溺れ死ぬ。 「綺麗なあんよ」 (綺麗って言われたら、嬉しいですけど……っ) 褒められたらちょっとだけ、伸ばして脚を組んだり。 拍手される。ちょっと嬉しいが積み重なる。 啼かせるばかりが能じゃない。 調教って、そういう風にするもの。 「そんなに見ないでくれるかい……あまり、自信のある足ではないんだ」 過去の出来事によって、よもぎは男性にトラウマがある。 いかに、シャーリー・チャーリーがヅカ系でもほんの少し恐怖心が隠せず、目を背ける。 「――欲望のために犯罪を犯す者の心理は特殊だ。それを理解すれば今後の仕事にも活かせるかもしれないからね」 震える声の下からのぞく探究心、あるいは好奇心。 「……単純に、よりにもよって何故、と思ったのもあるけれど」 うわぁ、直球にして核心をえぐる質問きたこれ。 咳払いしてもだめだよ、よもぎ。 「性別を明確にしない人の種類は三種類」 シャーリー。チャーリーは歌うように言いながら、人差し指が立てる。 「一番目、そういうのどうでもよくなっちゃった人~。状況に流されるタイプが含まれる~」 中指が立てられる。 「二番目、そういうのから目を背けたい人~。わたしのあにもそうでした~」 薬指が立てられる。 「あたしは三番目。美味しいとこだけ持って行く貯めこうなった欲張りな人~」 束の間、白くなる空気。 「――なんちゃって」 きゃはははははと、シャーリー・チャーリーは笑い出した。 「近頃物騒だからね。はぐれとしては、アークに保護してもらう前に、せっかくだから、噂の『最後の晩餐』を味わっておこうかと思って」 なんだと? こっちが寒風吹きっ晒しの中、自分の中の何かと折り合いつけようと腐心しながら、確実に大事な何かをゴミ箱に叩き込んでここに来てるっつーのに。 アークの覚悟ってのはなぁ、夢の国のパレードじゃねえんだぞっこらぁ!? よし、それでは、セットの方もお受け取り下さい。抱き合わせなので返品不可ですいいから受け取れ。 ぼこぼこぼこぼこぼこぼこ。 壱和は、ジト目攻撃。 (この辱め、全てこの瞳に) わんこ系オチビちゃんの殺意のまなざし、我々の業界ではごほうびです! 「今なら、まだ見ぬ技へ昇華できそうです……泣いてないですし。泣いてないですしっ!」 涙による連撃頂きました。連撃属性付いてない? こまけえことはいいんだよ! 「貴殿は少々、いや、ハードコースで精神を鍛えるべきだと思うのだ、アークで」 惟の脳内会議の結果です。異論は認めない。 「これの好みからは外れるが、見目はいいのだから、変態な部分さえ何とかすれば……?」 なんで最後が疑問系なのかな、惟。ねえ? ――反省したら、三高平に引っ越しておいで。 ● 「はーい、今回のは特別サービスでしたー。本当はいきなりこんなにデレたりはしません」 うさぎは、熱のない無表情。 「だから『次』は自力でちゃあんと段階を踏んでアレ位デレさせて見せて下さい」 なのに、言葉にだけ熾き火が残っている。 「まさか出来ないなんて……言わないでしょ? ね?」 言葉は甘いのに、実がない。 シャーリー・チャーリーは、腰から体を折ると、うさぎの耳元で、くんくんと鼻を引くつかせた。 んべ。と、舌を出す。 「やぁだ。お手つきには興味ないって言ったでしょ」 違うの? と、シャーリー・チャーリーは目で笑う。 「当て馬はごめんだよ」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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