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レッツマッスルパーリターイッ

 冬の爽やかな早朝。
 まだ青はない白んできた空の下、ジョギングにいそしむ青年が一人、白い息を規則正しく吐いていた。
 河川敷は車の心配もなく、気兼ねなく走れる上に、空気もどことなく綺麗な気がして、彼としてはお気に入りのジョギングスポットである。
 ――……ほ……ぃほ……。
「ん……?」
 なんだか変な音が聞こえた気がして、青年はお気に入りの音楽を流しているイヤホンを外す。
「!?」
 そして耳に飛び込んできた音声、そして前方の状況に驚愕し、思わず足を止めた。
 えいほ、えいほっ、えいほ! えいほっ! えいほっ!!
 大きな板を担ぐ四人のスキンヘッドマッチョ。小麦色の肌はオイルを塗っているのかテッカテカである。
 しかもほぼ全裸のマッチョである。いや、かろうじてブーメランパンツは履いている。色は、それぞれ金、銀、紅、白……おめでたい。
 青年は、さらに信じられない光景に硬直してしまった。
「ぬーっふっふっふ!」
 変な高笑いをしている男が板の上に胡坐をかいている。
 白いバスローブをまとい、手には大きなブランデーグラス、そして股の上には白いペルシャ猫。
 B級映画の悪いボスそのまんまである。まぁ、そんなボスはマッチョの神輿になんて乗らないが。
「ぬふぅ。チミィ、一緒にパーリナーウッしようじゃないか!」
 バスローブ男が、笑って青年へと猫を撫でていた手を差し伸べる。なお、もう片方の手はブランデーグラスをグリングリン回していた。
 今にも中身のブランデーがこぼれそうだ。
 青年はやっと金縛りが解けた。
「えっ、いや、ちょ、あの、け、結構ですぅうう!!」
 踵を返し、普段のジョギングで鍛えた足を最大限活かして逃亡を図るも。
 シュビイッ! ぐさあーっ。
 のびてきたバスローブの紐に急所を貫かれ、絶命してしまった。その横をペルシャ猫が走っていく。
 なお、悪役のバスローブの紐がほどけて、あらわになった部分を隠すように、金銀紅白の四体の光球が横断幕の四隅を持って浮いている。
 横断幕には、こう記されていた――『見せられないよ!』。

「……と、いうわけだ。僕としてはどうでもいいが、……見てしまった以上、寝覚めも悪いからな」
「なにこれ」
「知るか。正直、存在自体記憶から抹消したいところだ」
 『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)は投げやりな口調で、説明を受けたリベリスタの呟きに応答した。
 新年早々こんなものを見てしまえば、闇璃だって疲れる。
 若干面倒そうな物言いで、闇璃は説明を続けた。
「それじゃ詳しく説明するぞ。全員エリューションだ。勘違い悪役も、神輿の担ぎ手もノーフェイス。横断幕を持っているのはE・フォースだ」
 神輿の上の人は紐で攻撃して、担ぎ手のマッチョは拳で攻撃するそうだ。
「E・フォースは回復役だな。だが、これを先に倒すと横断幕を持つ係が居なくなって、その、み、見たくないものが……見えると……思う……」
 闇璃は心底嫌そうに顔をしかめ、言った。
「えーと、猫は、エリューションじゃないのか?」
「猫は大丈夫だ。普通のペルシャ猫だからな」
 戦闘になれば勝手に逃げるだろう、心配するな。と闇璃は猫について太鼓判を押した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あき缶  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月20日(日)22:57
寒中お見舞い申し上げます。
お世話になっております。あき缶でございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
なんだこれ。そう言いたいのは自分自身です。
相談期間は短めですが、よろしくお願いします。

成功条件:エリューション全滅

●エリューションについて:数は居るけど強くない
・神輿の上の人
悪役について何か壮大な勘違いをしているノーフェイス
バスローブの紐を伸ばして、スキル『ピンポイント』みたいに戦うぞ!
なお、戦闘中はバスローブが肌蹴るので、『見せられないよ!』係(後述)が頑張ります

・神輿を担ぐ人 四人
スキンヘッドマッチョでつるつるてかてかしているノーフェイス
見分け方はブーメランパンツの色(金・銀・紅・白)
スキル『無頼の拳』で戦うぞ!
シャイなのか非常に無口ですが、老若男女関係なく顔面パンチを狙います
美男美女はせいぜい気をつけるがいい!

・『見せられないよ!』係 四体
神輿を担ぐ人の「見せられないよ!」な気持ちが発露したE・フォース
『見せられないよ!』横断幕の四隅を持って、神輿の上の人の見せられない場所を隠します。
なので、残り一体になると幕が張れず、酷いことになります
スキル『天使の歌』を歌う二体(紅・白)と『ブレイクフィアー』を使う二体(金・銀)がいます

・猫
ごく普通の白ペルシャ猫
戦闘が始まったら勝手に逃げます

・ブランデーグラス
XO等級ブランデーが入っています
こぼすと、とっても勿体無い

●戦場
冬の早朝の河川敷
人通りはまばらですが
用心するに越したことはないでしょう
草野球が出来るレベルの広さです

それでは、Let's muscle PARTY TIME!!
(サンバの音楽にあわせて)
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
デュランダル
石川 ブリリアント(BNE000479)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
スターサジタリー
麗葉・ノア(BNE001116)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
プロアデプト
ヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)
覇界闘士
ジョニー・オートン(BNE003528)

●スタイリッシュ英雄アクション……スタイリッシュってなんだっけ。
 朝もや烟る早朝の河川敷で、通り過ぎる木枯らしになびくマントがあった。
「招待するんなら、俺達からってのが筋だろう?」
 銀の目をまだ淡い白い光に反射させ、青の蜥蜴半獣人は呟く。
 彼の視線は、右奥から聞こえる不穏な声の主に向けられていた。
「さぁ、往こうか。Let's――Party!」
 奔る――。
 走りながら煌めくナイフを引きぬいて、『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)は駆けた。
 その速度、称号を名乗るに相応しき目にも留まらぬ超高速。
「破ああっ!!」
 切りつけるは光る紅の球。連続の刺突はまるで炭酸の飛沫のように光り輝く。
 急襲にどよめくはエリューション共。
「な、なにごと!?」
 と神輿の上のバスローブオッサンは叫ぶ。にゃーっと膝の上のペルシャ猫が驚き飛び降り、走り去る。
「曲者じゃー。出会え出会えーぃ」
 ようやく静止した鷲祐を視認し、やっと敵襲と理解したオッサンは喚く。
 海外B級悪役の首領みたいな格好なのに、とっさの言葉は悪代官なあたり、生まれ育ちがよく分かる。
 エイホエイホと掛け声の勇ましかった担ぎ手は、冷静に神輿の担ぎ棒を折りたたみ、簡易テーブルのようにして神輿を台に変えた。
 紅の球以外に居る、金銀、白がふよふよとした浮遊運動を速めだした。
「イッツァパーティターーーイァッ!」
 絶叫が聞こえ、敵は鷲祐だけかと思っていたエリューション共は、声の方を見た。
 無表情な褐色の少年めいた人物が、びっくりしたような目のまま口を大きく開けていた。
「良いセンスだ! 筋肉! 肉体美! 肉厚な力士は至高ですが、引き締まった筋肉美もそれはそれで良い物……眼福です」
 無表情のまま、筋肉への意見を叫ぶ『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)の視線は、担ぎ手のブーメランパンツのもっこりに注がれていた。
 そのまま、うさぎの視線は神輿の上にいるオッサンの足と足の間に向かう。
 そしてゆっくり歩み寄り始めた。
「よっしゃあハローハロー初めましてお前良い趣味してるな肝心のご本尊が期待外れで無い事を祈りますぜ後名前教えろ神輿の上の人じゃ語呂悪いです取り合えず首領って呼ぶ?」
 句読点ゼロでワンブレスで言い切った。 
 何この子……という雰囲気が、担ぎ手マッチョの間から醸される。
『うさぎの奇行には注意しないとな……』
 鷲祐は隣の好色ババア的発言を連発するうさぎを横目で眺め、額を押さえた。
 次の瞬間、うさぎは無表情に、半円状の刃を紅白へと容赦なく振るった。
「あ……猫ちゃん……。行ってしまわれました……」
 結界が張られる前に何処かへ走り去ってしまったペルシャ猫を見送り、『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は残念そうに呟く。
「Party timeとか心弾む響きがございます」
 ブーメランパンツマッチョの神輿だが、若月の表情は穏やかである。
「名状し難き邪悪なノーフェイスです。こんなのにヤられたら成仏できず即座に怨霊になる事でしょう」
 と、『』風見 七花(BNE003013)が、闘志を燃やす傍らでも、若月の微笑は揺るがない。
「寒空の下、屈強な殿方達が肌をあらわにして御神輿を担ぐ……伝統の御祭の様で趣を感じます」
 イッツ、ポジティブシンキング。
「いや、ともかくも、猫がエリューションビーストじゃなかっただけ良かったぞ。とはいえ……」
 『エリミネート・デバイス』石川 ブリリアント(BNE000479)の顔は複雑だ。
「今日ほど自分の戦闘スタイルを呪った事は無い!」
 何が悲しゅうて、ブーメランパンツのテカテカマッチョやら、バスローブのオッサンと刃をかわさねばならないのだろうか。
「ふ……何をどうこじらせてこうなったかは存じ上げませぬが、ノーフェイスであるからには討伐するのがアークのつとめであります」
 ニヒルに笑い、『ギャロップスピナー』麗葉・ノア(BNE001116)は言った。
 そう、エリューションを狩るは彼女らアークの務めなのである。
 いや、それ以上に。
「つーかアークならずとも公然猥褻罪だわりゃー! 討ち果たしてやまん!」
 ずさささーっと神輿から一定の距離をとり、ノアは叫んだ。
 ジャキンッ。
 ノアは一二式多目的投射器(所謂パチンコ)を、手首から立ち上げる。
 次の瞬間、魔弾が紅の光る球へぶち当たった。消し飛ぶ紅。
「Yeaaaaaaaah! Let's paaarrrrrtyyyyyy! ごへっ」
 バスローブの紐とは思えない硬さでノアの胸を強かに叩かれる。
「好き勝手してくれたものだっ。よっぽど殺戮パーリーがお好きなようだな!」
 バスローブのオッサンが叫ぶ。ぐりんぐりんと怒りに任せ、ブランデーグラスが振り回されるが、かろうじてこぼれていない。
「かかれぇいっ」
 一斉にリベリスタに襲い来るマッチョ!
 早朝からヒジョーに爽やかではない!
 何発もの無頼の拳を受け止めながら、『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)は大きな声でマッチョに言う。
「この季節! しかも早朝に、ブーメランパンツオンリーとは敵ながら見事! これが俗にいうカンフー・マサツというスタイルでゴザルか!?」
 おそらく、彼が言いたいのは乾布摩擦であろう。ジョニーは、NINJAなメリケン人なので御勘弁願いたい。
 ばさっ。唐突にジョニーは衣服を脱ぎ捨てた。
 ぎょっとするリベリスタ女性陣。
「ならば拙者も脱ごう。師匠の教え、その壱! 『敬意を払え』でゴザル!」
 たくましい裸体があらわになり、ジョニーはその勢いのまま、足を振り上げ、弧を鋭く描いた。
 かまいたちが白の光球を切り裂く。 
 乱戦となり、無頼の拳をいなしつつ、『』ヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)は瞑目する。
「………どうしてこうなったのだろうか」
 こんなエリューションだから、こんなメンバーなのだろうな。ヒルデガルドはどこか諦めの境地であった。
 彼女の一撃で白が墜ちる。
 バスローブの中身を守る横断幕は、既に下半分が風ではためき、ちらちらと中を垣間見せていた……。

●欲望絡み合う清々しい朝
「フッ、嘗てはビキニパンツを纏い<銀>(シルバー)の名を掲げた俺だ。今更テンプレートなマッチョに怯んでいられるかッ!」
 鷲祐が銀のE・フォースを突き殺す。
「ならば、貴様もワシの神輿の担ぎ手にならぬかね」
「なるかあ! 大体、朝っぱらからブランデーなど……」
「ほぉ。この男は、ブランデーに対して、胸に一物おありのご様子。ぜひ、本音をお聞かせいただきましょう」
 某映画のマフィア一味の親分みたいなセリフを吐いて、バスローブのオッサンは鷲祐を見つめた。
「いいか、ただ構えているだけでは面白いだけだ。アクションが大事だアクションが。例えば……『目の前で相手を見下したように零してやる』とかな……」

 ポワワワーン。

 外の夜景が一層目立つ深夜の高層階。おそらくはホテルのスイートで、バスローブの男は、下卑た笑いを浮かべながら、失敗した部下の土下座を見下ろしている。
 次は必ず。と誓う若い青髪の青年の顎を、ホテルのふんわりした白いスリッパで掬い上げ、
「このウスノロが」
 と言い、男は手にしていたブランデーを犬猫にやるように、青年が這う床へと注ぎ落とした。
「舐めろ」
 屈辱に震え、銀の目で首領を睨み上げながらも、逆らうことの出来ぬ哀れな青年は赤い舌を床へと伸ばし……。

 ポワワワーン。

「みたいな?」
 と首を傾げるバスローブのオッサンに、鷲祐は噛み付く。
「ぐおおおおおクソッ!! 飲みてぇッ!! 違うッッ! なんでその失敗した部下が俺設定なんだよ!」
「この想像はフィクションであり、実在の人物には一切関係ゴーザイーマセンッ♪」
「白々しいんだよー! くっそ、作戦無視してこのオッサンから切り刻みたいっ」
 ぐしゃぐしゃと髪を掴んで鷲祐が喚く。
 わめきつつも、神速の足で、オッサンからのバスローブ攻撃は避けた。
 攻撃を避けたはずなのに、怒り付与された気分だ。
「くそ、当たりなさいよ」
 ぼそっと隣で聞こえた不穏な言葉に、鷲祐はぎょっとした。
「うさぎぃいい!?」
「彼はバスローブの紐の狙い撃ちで、こっちの男性陣の服や下帯を切って、パーティを更にマッスルゴージャスにするつもりなんだから、乗りなさいよ」
「乗るかっ」
 オッサンも困惑。
「いや、その」
 うさぎは食い気味に問い詰める。
「え? そうでしょ? マッスルゴージャスにするつもりですよね!? そうですよね! そうだと言え! 是非!」
「ち、ちがうもん」
 もんって何だ。
 一方、マッチョの容赦無い顔面パンチを喰らい、ブリリアントが叫ぶ。
「ぬああっ! か、顔は! 顔だけは堪忍してー!」
 おやくそくを理解した上の発言である。
「覚悟の上だ。戦場に立つ者が顔に傷が入るのを恐れてどうする」
 凛とした顔に拳をめり込まされながらも、ヒルデガルドは気丈だ。
 アホみたいな攻防ではあるが、戦っている以上、消耗もする。
「癒しの息吹よ……」
 若月の聖神の息吹が、リベリスタを励ました。
 七花の雷鎚が荒れ狂い、金のE・フォースが消えそうになっている。
 マッチョが無言のまま身振り手振りで、これ以上ダメと訴えるものの、ジョニーは全く動じない。
「倒すことによって、『見せられないよ!』が『見えちゃうよ!』になってしまうが、だからどうしたでゴザルか! ニンジャはその程度のことでは、動揺などせぬ!」
 激しいかまいたちにより、とうとう横断幕を掲げる者は消滅した。
 はさり、と落ちる横断幕がかろうじてオッサンの股間を守ろうとするも。
「おっと、うっかり」
 無表情でうさぎがマッチョに振るった刃の余波で、横断幕は細切れと化す。
「いやん」
 おっさん、口の割りにはあまり恥らって居ない。
 マッチョ一同が無言で、顎を落とす。
 あの横断幕フォースは、マッチョ達がオッサンの見たくないものを見せたくないという気持が発露したもの。
 その切実な願いが、今花と散ったのである。
「こら! 貴方達何時までブーメランパンツ何て履いてんですか! 担いでる人が曝け出したんだから貴方達もそれに倣いなさいよ!! ほら脱げ今すぐ脱げ! 脱ーげ! 脱げー!」
 うろたえるマッチョに、脱衣を命じるうさぎ、容赦がない。
「……」
 神輿の上にある『ご神体』を一瞥し、眉をひそめたヒルデガルドだが、視界から外して冷静を保つ。
 容赦の無いリベリスタに、今更おののくマッチョへと、ヒルデガルドの非情なピンポイント・スペシャリティが贈られた。
「ぬおおおっ、爆砕戦気からの戦鬼烈風陣!」
 古風な太刀に見えるスキル発動を補助する媒介デバイスを振りかざし、ブリリアントは叫ぶと思い切り得物をぶん回した。
 巻き起こる嵐がマッチョを飲み込む!
「私も皆様の行動に合せ支援させて頂きますっ!」
 若月が魔力の矢をマッチョへ突き刺す。
「撃つべし、撃つべし!」
 魔力の矢に並走するノアの魔弾。
 マッチョとて、やられっぱなしではない。気を取り直して、その自慢の拳を唸らせる。
「師匠の教え、その弐! 『傷つくことを恐れるな』 痛みを乗り越えた先にこそ、強さはある! いくらでも殴ってくるが良い!」
 顔を真っ赤に腫らしながらもジョニーは気丈に叫び返した。
 ジョニーの真っ赤に燃える拳も唸る。
 めきいっとマッチョをぶっとばし、ジョニーは高らかに言った。
「何度でも殴り返してやるでゴザル!」

●女性だから出来たことだと思うんです
 飛び交うバスローブの紐、魔弾、魔の矢、マジックミサイル、嵐、気糸、刃、斬撃、拳。
「ええい、チラチラみせよってからにアレか! 心理的光学迷彩で狙いを絞らせないとかそんな狙いか!」
 見ないようにしつつも、やはり狙いをつけるときに視界の端に映る、本来ならばモザイク処理が行われるべき部位について、ノアは苛立ち紛れに叫んだ。
「てやんでえ! こちとらこうみえて18禁超えて二つだ。今更やだみれなーい♪ なんぞとカマトトぶれるか!」
 ノア、怒りのアーリースナイプ。
 貫かれ、倒れるマッチョ。
「ふふん、笑止! そんな『モノ』で我らをとめられるものかー!」
 メメタァ。
 最後のマッチョがブリリアントのメガクラッシュで吹き飛ばされた。
「うぅう、ぬるっとした……。えぐっ……斬撃してるはずなのに感触がやわらかかったよぉ……」
 仕留め手が、遥か遠くへと逝ってしまったマッチョを遠い目で眺め、呟く。その目は潤んでいた。
「貴様が悪だというのなら、俺は敢えて正義を掲げよう。貴様が悪だというのなら、その吟詩を見せてみろ!! 全力で打ち砕いてやる。そして、その身にきざ――!?」
 オッサン一人になったことを確認し、鷲祐は格好良く決めようとしたのだが。
「これにて、取り巻きは終了だな」
 地を這うような不穏な声が、鷲祐に続きを喋らせなかった。
 ヒルデガルドが、河川敷をゆっくりと進んでくる。
 ざあっとまるで預言者が進むが如く、鷲祐を含む仲間一同は彼女に道を譲る。
 俯き気味で表情を見せぬまま、誇り高きヴァンパイアは神輿の真ん前に立った。
「ひぃっ!」
 恐ろしいオーラに、怯えた所詮はショボいエリューションのオッサン、恐慌を起こしながらバスローブの紐で彼女を狙うも。
「っ」
 ぐっさりと紐に貫かれても、ヒルデガルドは一切動じない。
 おもむろに足を振り上げ。
 ドスッ。ドスッドスッドスッ。
 パーフェクトなる連続の股間への踏み潰し!! クリティカルヒット!
「「「ぐぎぇえええっ」」」
 なお、三人分聞こえたのは、見ただけで痛みが理解できた男性陣のものが含まれているからだ。
「よくも今まで汚らわしき物を見せびらかせてくれたな。このまま使い物にならぬようにしてくれる」
 泡を吹いて気絶しないのは、大人の事……いや、エリューションとして強化されているからである。
「OH……い、いや。師匠の教え、その参! 『容赦するな』たとえ敵が残り一人になろうとも、手を抜くことは許されぬでゴザルよ!」
 と言いつつも、ジョニーは目をそらした。同じ男として、流石に同情に値した。
「ごべえっ」
 思わずオッサンの手からブランデーグラスが落ちる。
「! MOTTAINAI!」
 とっさにジョニーがグラスに飛びつく。ナイススライディングキャッチ。
「でかした。後で飲もうぜ!」
 鷲祐がジョニーを称える。ぶっちゃけ、飲まずにはやってられんというのが本音か。
「このような冗談のような存在が二度と現れないように、プシュケーもプネウマも魂魄も破壊してみせる!」
 七花が殺到し、虚無の手で、オッサンにとどめを刺した。

●朝日差す中、兵どもが夢の跡
 マッチョや完全に肌蹴たバスローブを引っ掛け、だらしない体をさらすオッサンの死体が残った。
 うさぎはマッチョのブーメランパンツの紐を引っ張って遊んでいる。
「邪悪の根源を断ち仕事を終えたのに達成感ではなく、脱力感とやるせなさを感じるのはきっと気のせいですよね……」
 七花がうつむいて、ぽそりと切なげに言ってみる。
「もしフェイト持ってたとしても斬るべきだったと思う!」
 ブリリアントは何度も頷いた。
「もはや何も言うまい」
 ヒルデガルドは、血に染まった靴を川の水で清め、惨状から目をそらした。
「何時でも祭の終わりは寂しゅうございますね……」
 しんみりと、あがってくる朝日をまぶしげに見つめる若月。
「あ、猫ちゃんはまだ近くにいらっしゃるでしょうか……お帰りになるお家がないのならば、自宅にお招きしたいのですが……」
 とすっかり若月は、冒頭に逃げ出した猫に意識を移していた。
「さてと、せっかく朝早くから河川敷にいるわけでゴザルゆえ、拙者は川沿いを走って帰るでゴザル」
 ジョニーはスチャッと爽やかに手を挙げた。
「朝日が拙者を待っている! サラダバー!」
 と言い置いて、颯爽と駆けていくメリケンNINJA。
「サラダバー……腹が減ったな……」
 いつでも腹ペコなブリリアントは、彼の間違った別れの言葉に、食欲を誘発され、呟く。
「帰って朝飯にするか……」
 ちびちびとブランデーを舐めながら、鷲祐が疲れたように呼応する。
 とは言え、誰も深い傷を受けず、比較的スムーズにエリューションを排除できた。
「結果としては、文字通りの朝飯前な依頼でありましたが……。本官は、カツ丼を腹に詰め込まれたような気分であります」
 ノアは、当分もうこんな敵の依頼は勘弁したいと思いつつ、あんな変なものが頻発したら別の意味で世も末かと思いなおした。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
いつもお世話になっております、あき缶でございます。
この度はご参加、誠にありがとうございました。

しかし、横断幕を速攻排除されるとはまさか思って……
いや半ば予想はしていましたが本当にそうなるとは……皆さん最高ですね!(サムズアップ)

敵より濃ゆいリベリスタの皆様、お疲れ様でした!