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アナタにくびったけ!

●格言
 誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。



                     ――――ウィリアム・シェイクスピア


●恋愛引力マックスハート!
「恐るべき敵が現れた」
『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)の表情は驚愕と戦慄に染まっていた。普段から余り表情の動かない――人形のような彼女の見せた感情の揺らめきに目の前のリベリスタはごくりと息を呑んだ。
「どんな……相手なんだ?」
 言葉は慎重で緊張を孕んでいた。
 三千世界の神秘に相対するリベリスタ。命を賭けた戦いも少なくは無いし、フォーチュナの言葉が常にどんな意味を持つかは知っていた。さあ、開け。試練の扉よ!
「形状は弓のような形。宙にふらふら浮いている。これは魔力の矢を放つ……」
 イヴの言葉にリベリスタは頷いた。恐るべき魔力なのだろう。さあ、何だ!
「これに当たった人は極度の恋愛状態に陥るの」
「……は?」
 イヴの言葉にリベリスタは間の抜けた声を上げた。
「そのままの意味。当たると脳がふやけたうどんになる。
 誰か相手が居るなら、所構わずバカップルに成り下がるし、気になる人が居るならそれが物凄く増幅されておピンクモードに早変わり。
 ここで言う気になるは恋愛じゃなくても。友達でもライバルでも同性でも何でも、こう。ピンクモードの万有引力が一時的に働くの。何て恐ろしい、がくぶる」
 要するに変な矢を受けるとバカップルになったり一時的に錯乱してトチ狂い混乱状態に陥るという事だ。
「……おい。こら……」
 凄まじい疲労感にリベリスタは思わず突っ込む。
 ウサギを抱いた少女はそんな言葉に怯まない。
「しかもそれだけじゃない。誰も相手が居ない人はとにかく悲しくなるらしい。
 レジストも出来ない訳じゃないけど、余程強い心が無いとダメ」
 余りにも酷い話にリベリスタは頭を抱えた。何て言うか……すごく、嫌です。
「嬉し恥ずかし♪ バカップルしたい人とか、気になる誰かが居るけど進展しない人とかにお勧め。お誘い合わせの上、討伐にいくと良いんだよ。あと自爆したい人とか」
 幼女エンジェル。イヴさん、今日はとってもメタでした。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月21日(火)22:26
 YAMIDEITEIっす。
 六月三本目。かなり酷いヤツ。
 以下詳細。

●任務達成条件
 ・アナタにくびったけの撃破

●ハイキングコース
 今回の戦場。六月の日差しの中をのんびりお楽しみ下さい。
 じゃなかった、特に戦場に不便は無く人通りもさほどありません。

●アナタにくびったけ
 エリューションゴーレム。元は弓。
 低空を自由に浮遊し動きます。
 戦闘力はそこそこですが能力がかなり厄介です。
 アナタにくびったけが放つ魔力の矢を受けると対象は頭ン中が真ピンクに染まり、ふやけたうどんのようになります。(幼女談)
  バカップルを始めたり、恋愛対象じゃない友達にドキドキしたり、アウトオブ眼中がやたら素敵に見 えてドキドキしたり、その気がないのに逞しい胸板や誇らしげなおっぱいにドキドキしたりします。
 魔力の矢なので人格豹変レベルの大惨事になる可能性がありますが、悪いのはエリューションなのでその人に罪はありません。尚、この魔力の矢 を明らかにリアルが充実していない人が受けると暗い気持ちが十倍になるようです。

・ハートシェイキングアロー(神複・特殊)
・EX 恋愛万有引力2011


お相手が居る方はプレイングに書くとそういう組み合わせになる可能性が高いです。
 又、お相手が居なくても展開のあやで悲惨な事になる可能性があります。
 魔力の矢を食らった時の状態や反応等をプレイングにかけると参考にされます。
 サポートは適宜ご利用下さい。
 以上、宜しければご参加下さいませませ。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
高原 恵梨香(BNE000234)
デュランダル
★MVP
源兵島 こじり(BNE000630)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
覇界闘士
翡翠 向日葵(BNE001396)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
クロスイージス
セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)
ソードミラージュ
武蔵・吾郎(BNE002461)
■サポート参加者 4人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
岩月 虎吾郎(BNE000686)
スターサジタリー
立花・英美(BNE002207)
スターサジタリー
坂東・仁太(BNE002354)

●恋愛とは高等知性が生み出した最も非生産的で効率的な陶酔装置である
 広いこの世界に、君と僕が生まれ落ちた。
 それは一体どれ程の奇跡だろう。それは一体どれ程の幸運なのだろう。
 宇宙創世より少なくとも数十億年、ビッグバンの単位で人間が時間を語る事は出来ずとも青い星の表面を覆う『時代と時間』の尺度で事実を知っても十分である。限りなく数数え切る事さえ叶わない、刹那と刹那の連続、交差、瞬き程の時間と時間が重なって運命の相手と出会えたならば。それは少なくとも天文学的な見地で小数点のつく、圧倒的な低確率を引き当てた事に相違無い。
「恋は愚者の知恵であり、賢者の愚行である。英国の評論家はそう言ったものだけれど――」
 すっかり夏の気配が漂う六月の空の下、『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)の薄い唇が皮肉気に笑みの形を刻む。
「こんなハイキング日和の気持ち日にエリューションがいるにゃんて……まったく困ったもんだにゃあ」
 緊張感を感じさせないのんびりとした調子で『日向ぼっこ猫』翡翠 向日葵(BNE001396)が背筋を伸ばした。
 大きなリュックを背負い、お弁当のおにぎりと水筒を持ってきた彼女は完全にハイキングの心算である。
 良く晴れた晴天、緑萌える野辺――今日、さるハイキング・コースを行くのは彼女以下合計十二人のリベリスタ達である。
 背格好も年恰好もまるでバラバラなのは何時もの事。全く統一感の無い連中だが目的だけは別である。
 リベリスタ達が『仕事』と認じるのは此の世の神秘との対決である。
 人知れず闇から闇へ崩界の要員を葬り去るその様は彼等の決意と運命を良く表……
「ふやけたうどん頭って試してみてぇな。バカップルの気分が解るかもしれねぇし……あわよくば相手が出来たらハッピーだ」
 ……『黒狼は恋する夢を見るか』武蔵・吾郎(BNE002461)が気楽に言った。
「ラブラブしにいこうぜ!」
「午後一時三分分。俺はアークのリベリスタ。敵『アナタにくびったけ』討伐依頼に参加中。現在交戦地へ向かっている」
(穏やかな日差しの中を二人……何て素敵な時間でしょう)
 シリアスに表情を引き締めながら一定の間隔でぶつぶつと自分に言い聞かせる『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)の横顔を傍らを寄り添い歩く『ミス・パーフェクト』立花・英美(BNE002207)が紅潮した顔で見つめている。
(……は! 恥を知りなさいえいみー! じゃなかったひでみ! ミス・パーフェクトは敵を討つためにある! お弁当、喜んで貰えるかしら!)
 ……訂正の傍からダメなのは言うまでも無いだろう。どうも今日ばかりはその『目的』の一致も怪しいようだ。
 ああ、全く。今日も今日とてこの現実世界(ボトム・チャンネル)にエリューションが現れたのは変わらないのだが。
 それが持つ要素も、意味も、他のモノと変わりはしないのだ。だが、それが司る能力が――リベリスタ達を浮き足立たせるものであったならば。その被害が現時点で全く深刻さを欠くレベルにあるならば。かように緊張感が欠落するのも致し方ない所だろう。
「さて、パーフェクトゲームをしようぜ!」
「はい、コーチ!」
 ……何だこいつら(´・ω・`)
「心を射止める弓かぁ、めっちゃ欲しいぜよ……」
 坂東・仁太(BNE002354)が心底しみじみと呟いた。
 そう、彼等が今日討伐を仰せつかったのは人の心容易に侵す魔力の弓矢。エリューション。
 俗化した所で言うならばローマ神話に登場する愛の神クピードーの持つあの最も都合の良いアイテムである。
「だぁーもぉ、やぁだー! 静さんが居ないなんて!」
 何かが起きそうな事件だから恋人の不在に『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)が地団駄を踏むのも分かる所。
 老いも若いもそれなりに瑞々しさを残した者が多い――リベリスタ達がそれに並々ならぬ興味を持つのは当然だ。
「……う、別に恋人とかはいませんが、学校に通って紅茶館を経営して……
 別に充実してないわけじゃないから、余計怖いなあ……」
『フィーリングベル』鈴宮・慧架(BNE000666)の言葉は確かに頷ける所である。
「矢を食らっちまったら、その状況に流されても良いんじゃないか。そっちの方が面白いだろ。こいうのは楽しんだ方が得だよな」
 所謂一つの『キューピッドの矢』ならば幾らかはマシなのだが、今回のそれはどうあれエリューション。無差別で無分別で矢を当てた者と者を『訳の分からない形』で暴走させるというのだから、『うめももFC(非公認)会長』セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)の気楽さは、うら若き乙女の身の上としてはとても見習える所では無いだろう。
「……まぁなにより、俺の本命は梅子・桃子だ。そう簡単に他の人間に本気で惚れるなんて考えられないけどな」
 本命が二人居るのは根本的にどうなのだ。お前の惚れてるのは大悪魔だ等とツッコミ所は多々あるが兼ねてよりそれを公言するセリオである。
 根拠の無い自信の源はその辺りにあるのだろう。
 女三人寄れば姦しいとは良く言うが、実際の所女だろうと男だろうとこれだけ浮かれれば大差無い。
「……コホン」
 緩みに緩みきった空気を『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)の咳払いが振り払った。
「いいこと? リベリスタが全てに優先するのは立ち塞がる敵を打ち倒し、任務を遂行する事。
 それ以外の些事に構う余裕はないわ。恋愛や遊びにかまける余裕などどこにもないわ。勿論、今日もね」
 年甲斐無く実に真面目一辺倒といった融通の効かない少女である。
 猫のような目をきゅっと吊り上げて、腰に手を当てて。今日も今日とて任務に向けた心構えのようなものを語っている。

 けれど。

(――任務を、やり遂げないと。やり遂げれば、……が、少しでも――)
 少女が思い浮かべたのは自分の頭を意地悪く撫でる大きな手である。
 任務自体はいざ知らず、その理由に幾らか何らか微妙なモノが混ざっているのはお説教を受け流すリベリスタ面々にも分からない所であった。
 ……恋愛とは高等知性が生み出した最も非生産的で効率的な陶酔装置である。詮無きが故に甲斐がある。
「病気ね、全く。恋患いとは良く言ったわ」
 こじりは小さく鼻で笑った。悪意がある訳では無い。彼女の冷笑癖は年齢のはしかで癖である――
「患う、何を?
 体が熱を帯び、自分の思い通りに行動することすら儘ならない。
 風邪の様な病気。誰にも縁がある、大衆病だわ。
 気だるくて、苦しくて、辛い。処方が誰かを求める事、それだけ何てナンセンス」
「ね、こじたん! こじたん! 今日ってスゲーデート日和じゃね? てか運命じゃね? これって運命じゃね?」
「煩い。ゴ御厨」
 彼女は漸く自らの傍らで騒がしい少年――『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(BNE000004)に反応を返した。

 ――どちらも、現代医学では治せないとか。ま、よく似てるわよね――

 溜息は、相変わらずクールさを感じさせるモノだった、けれど?

●あろーがあたってしまったわ
 ――私の名前はこじり。素直になれない女子高生。シャイでクールな中二体質の愛されガール♪
 日常は結構ストレスが溜まるから、そんな時私はリベリスタとしてエリューションの討伐をする事にしている。
 頑張った自分への御褒美ね。自分らしさの演出とも言うかしら。

 あろーがあたってしまったわ。

 チガウ……今までの男とはなにかが決定的に違う。(E能力的な意味で)スピリチュアルな感覚が私のカラダを駆け巡る。
(やば、超カッコイイ)
 ときめきは胸の高鳴り。
 顔が熱い。息さえ出来ない。降って沸いた運命は少女の小さなハートを甘く締め付けるのだ。
 そう、今までは何とも想って居なかった――筈――の傍らの少年に、対して。怜悧な彼女はこの瞬間、間違いなく恋に堕ちていた。
「ねえ、御厨くん。この後、目取って良い?
 ううん、深い意味はないのよ? ただ貴方の視線が誰かに奪われる位なら私が先に奪っちゃえとか、そんな。
 あ、でもそうね、そうよねそれは不公平よね。うん、別に良いのよ? 私は御厨くんに目取ってというか、娶って貰えるなら吝かでは無いと言うか、寧ろ本意と言うか。そうよね、そうすれば御厨くんの目が見えなくっても私がお世話して上げられるもの。
 ねぇ、ナイスアイディアだと思わない? 新居は白い家がいいな。小さくてもいいから庭が欲しいの。
 それでね、ペットは犬を飼って子供は二人で……え? 御厨くんが望むなら、勿論野球チームが作れたって構わないのよ、それでね(略)」

 ――死にさえも似た静寂にやたらに饒舌な、やたらにテンションの高いこじりの大声が響き渡っていた。
 アナタにくびったけ、その恐るべき魔力を目の当たりにすれば恐れぬ理由等一つもない。
 明らかに悪いモノでも食ったかのような彼女に顔を寄せられ、胸にのの字を描かれて。『攻められると逃げ出すへたれ』の夏栖斗はごくりと息を呑んだ。
「いや! 言ってる事、ヤバイから! 僕じゃなくてもビビるから!」
 異議は却下。
 かくして戦いは始まり、そして酷い展開を見せていた。
 絶対に食らってなるものかと注意を払っていたこじりがあのザマ(笑)なのである。
「な、何てヤツなの……」
「何か大変な事になってきましたが……何とか頑張ろうえいえいおーです!」
 恵梨香の端正な顔立ちが蒼褪めていた。引き攣りまくった顔で慧架が拳を握った。
 今尚、大声で飛ばすこじりを無かった事にするかのように声を張った。
 あれは最早魂への陵辱である。『こじりにその気が完全に無かったかどうかは別にして』(※ここ重要。テストに出ますからね)我に返った彼女は言うだろう。「死にたい……」と。
「あー、さっさと倒す!」
「んじゃ! ボク行くぞぉ!」
 玲の言葉が実現したならば、向日葵の一撃が弓を砕けたならば苦労は無かったのだが……続く戦いもそう簡単に進みはしない。
 被害を受けているのは当然、こじりばかりでは無かった。
 そして被害が増える程に戦場には『ふやけたうどん脳』が増えていくのである。
「ね、御厨くん。キスして……くれる?」
「無理だって! 後で絶対殺すじゃん!!!」
 つまり、戦いそっちのけでこんなんなってる役立たず。
「高原ちゃんはわっしが守るぜよ!」
 見事格好をつけ切った仁太が恵梨香の前に立ち塞がった。
「坂東さんっ!」
「うおおおおおおお!」
 響く悲鳴、裂帛の気合。
 ぐらりと崩れた仁太を支えて受け止める恵梨香。
「……手の、届く範囲の女の子が傷つくのを見過ごすなんて漢やないやろ?」
 力無く微笑む彼に少女は小さく息を呑む。あ、流れ矢だ。ぷす。
「……か、格好いい……で、でも、そんな、アタシなんて……っ、室長が居るのに、どうしてこんなっ……」
 漏れてるぞ、恵梨香君。
「……っ、英美、大丈夫だったか……?」
「あ、はい……でも、アウラールさんが……庇ってっ……」
「俺はいい。お前さえ無事なら、この位……いや、この身が滅びても!」
 おー。かかっとる、かかっとる。
「アウラールさん!」
 ちん、ちろりろりん♪
「そ、そのおべっ! 弁当でしゅ! つ、作ってきたんですが、この後……!」
 矢が当たった訳では無い。無いがミス・パーフェクトの頭ン中も彼に釣られて一気に茹る。だって元々好きなんだもん。
 まぁ、良いのだ。この辺は普通のカップルだから、見目にも悪くは無いし。
 問題は暴走度合いの高い連中である。
「さあ、わしのこの胸に飛び込んでくるが良い!」
 そう言って筋骨隆々たる巨体の前に両腕を広げたのは『眼鏡っ虎』岩月 虎吾郎(BNE000686)である。
 老いも若いも男も女も彼の山の如き愛の前に区別は無い。
「B(ビースト)・L(ラヴ)ッ!」
 裂帛の気合と共に吐き出された地鳴りのような声に世界が揺れる。倫理が揺れる。
「あーなんかぼーっとする。ワクワクドキドキ……この期待感! これが愛というものか!」
 胸を打たれた吾郎が熱っぽい声を上げた。
 悲しいかな魔力の矢の影響が加わればこの荒唐無稽なる展開も案外実現してしまう。
「年を重ねた渋さってのも中々いいよな。
 虎吾郎とか落ち着いてて優しい系で結構傍にいて悪い気しねぇしハグのしがいもあるしなんかもうーハグしたいなーしてもいいかー?」
「いいとも、B(ビースト)・L(ラヴ)ッ!」
 虎吾郎を見つめる吾郎の目が何だか熱い。同じ吾郎でお幸せに、でいいのかこれは? まぁいいや。
「いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うおっ!?」
 惨状に本気で嫌がり逃げ惑う慧架。身の危険を感じた彼女は思わず手近のセリオを盾にする。
「お嬢さんこの戦闘が終わったらお茶でもどうですか?」
 効果は、劇的だった。
「あ、いや、その……」
 慧架の方は慧架の方で盾にした負い目から取り敢えず困る、困る。
「お茶なら、お店の方で……」
「キミの紅茶が飲みたいな。その笑顔は本当に素敵だ。キミの笑顔を守るためならなんだって出来る」
「えーと!」
 何故、こんな所に来てしまったのか……半ば涙目の慧架は手をぎゅっと握るセリオに本当に困った顔をした。
「梅子のようにキュートで、桃子みたいに素敵だよ」
「キッパリバッチリお断りします★」
 その、一言を聞くまでは。
 ……女子の褒め方が地雷過ぎていっそ面白いレベルである。
 戦いは続く。どさくさに紛れて被害も出る。
 余りにも非現実的な光景にぐらぐら揺れる頭を振って、夏栖斗は考えた。
(いつも僕をゴミとかよんだり、早く掘られて来なさいよ! とかこのメンヘル腐女子……ふれあいといったら僕が駄椅子になることとかさ)
 別人のように自分にしなだれかかり、一刻も離れたくないと頬を擦り寄せる彼女に唇をぎゅっと噛んで。
 こうじゃないのだ、こじりは。こんなに可愛いこじりはこじりであってこじりではない。

「あれ……なんで僕こんな女好きだったりするわけ?」
 言葉は『無意識の内に』漏れていた。恣意的? いやいや、無意識の内に漏れていた。
 リ・ピート(もう一度)。

 ――あれ……なんで僕こんな女好きだったりするわけ?

 アングルを変えて。

 ――あれ……なんで僕こんな女好きだったりするわけ?

 最後にもう一回。

 ――あれ……なんで僕こんな女好きだったりするわけ?

「三回も、やめてぇええええええええ――!」
 戦場に夏栖斗(さらしもの)の悲鳴が響き渡る。
「お願いだからさっきのは忘れて……」
 恵梨香は殆ど涙目である。
 面々の心に傷を残したこの日(ふういんしてい)の出来事が幕を引くのはもう少しだけ先の事。

 ――ガシッ! ボカッ! 弓矢は死んだ。シリアス(笑)

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIです。
 安全な場所から他人の運命を好きに操るのが好きです。
 多分、皆精神的には重傷。肉体的には判定通り。

 MVPはまぁ御覧の通りです。
 これ以外には無いでしょう。社会的立場と魂の代価では余りに安い(笑)