● 「アークの皆様、お変わりありませんこと? お話したいことも沢山あるのですけれど、取り急ぎお知らせしたいことがありまして、ご連絡差し上げましたの。 『ナーシサス』というアーティファクトをご存知かしら。 香水のアーティファクトなのですけれど、これをかけられると、自分だけが愛しく、他人が塵芥に見えるようになりますの。 洗脳型ですわね。 私、それを手に入れようとしていたのですけれど、売れてしまいましたの。 いえ、皆様のお手を煩わせる気はありませんのよ? どの辺にあるのかだけ教えていただければ。 え、そちらで対処なさる。いえ、かまいませんのよ。 通報は良識ある市民の義務ですわ」 ● 「蛇の道は蛇」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、感慨深げに言った。 「去年仲良くなった革醒者から、アーティファクトの情報が入った。事が起きる前に、未然に防いで回収」 モニターに映し出されたのは、乳白色のガラス細工の壜だった。 ギリシア彫刻っぽい感じで、題材は青年。 手に花を持っている。 楚々とした感じで、触れていいのか、ちと迷う。 「これ、香水ビン。中の香水の名前が『ナーシサス・ダーク』……察しついてると思うけど、『ヒュアキントス』というアーティファクトと作者が一緒」 画面をよく見ると、花の部分がふたになっている。 中には確かに液体が詰まっている。 『ヒュアキントス』あるいは『サフォー』。 同性限定に効く惚れ薬兼相手を意のままに操るアーティファクト。 耽美趣味のフィクサードによって、美少年同士が感情を伴った恋愛劇を繰り広げさせられちゃうとか。 今回の情報の出処は、この時のフィクサード、「マダム・フラン」だ。 ちなみに、彼女はこのあとリベリスタの説得により更生している。 百合好きのLKK団によって、美少女同士が感情を伴ったきゃっきゃうふふを繰り広げさせられちゃうとか。 今まで、そんな野望を打ち砕きつつ回収してきた訳だが。 まだ、あったのか。 ただ、これ、今までのとちょっと形が違う。 なんか、噴霧器みたいな形してないか? 「この香水と壜が両方ともアーティファクト。『ナーシサス・ダーク』の匂いを嗅ぐと、自分だけが大事になる」 それはどういう……。 「他者への関心が一切なくなる。具体的に言うと、他者に対する支援行動ができなくなる」 おっしゃっている意味がよくわかりません。 「「ナーシサス」の影響下で、戦闘に入ったとする。誰も『かばう』を使わない。他者付与も使わないし、他者回復も使わない」 自分だけが大事になるから。 「これ、とある香水コレクターが所有。現在アークで回収のため、購入交渉中……だったんだけど」 イヴは言葉を切って、はあとため息をついた。 「とあるフィクサードに先に買われちゃった」 え~!? またぁ~!? 「マニアは動きが早い」 いやぁねぇ。 「買ったのは、『LKK団』」 またあいつらか!? イエス・アリス、ノー・ロリータ、パニッシュメント・イン・ロリババア! 幼女のためなら、世界なんか滅びちゃってもいいんじゃないかな。とか考えている、困った革醒者の集まり。 東に幼女っぽいアザーバイトがいれば行って怖がらなくていいと言い、西に幼女なフィクサードがいれば行ってその悪事の片棒を担ぐ。 幼女や少女の色気を完全否定し、その無垢性を崇拝するダメな人達。 幼女に触れるのは、お鼻チンとか、ほっぺのクリームフキフキとか、危険から緊急離脱とか。 一切の性的欲望を排して、ただひたすら無償の愛を注ぐことだけが共通している。 嗜好の多様性のため、非常に多くの派閥を抱え、一枚岩ではないため、壊滅が難しいフィクサード集団だ。 「『殲滅派』」 はいぃ!? なんですか、その物騒な名前は。 イヴは無表情。 「だから、外見年齢と実年齢にギャップがある女性を殲滅するのを第一義にしている派閥」 うっわ。殴りがいのある連中っぽい。 「統計から行くと、割と後衛が多いんだよね。該当者。だから、通常のおびき出しだとかばわれるから、損耗率が低い」 前にガンガン出ていくのは、連中にとっては願ったりってことか。 「でも、これを使うとできる」 誰もかばわないなら、紙装甲の後衛職ががら空きだ。 「あいつら、幼女にとっては、この上なく安全と言ったら安全なんだけど」 幼女最優先で、自分のフェイト投げうつからね。 「今、フィクサードがウロウロしてると、『楽団』にお持ち帰りされる可能性がある」 あ~。 「ので、今回は、速攻アーティファクトを奪取。速やかに捕縛」 モニターに映し出されたのは、むくつけきゴリマッチョ数人。 「殲滅派。覇界闘士が四人、インヤンマスターが四人」 ――ほかにいくらでも道はあったろうに。なんでこんなになるまでほっておいた。 イヴは無表情。 表情に現したら負けだと思っているようだ。 「現場は、オークションがあった私設美術館の駐車場。ある程度の面積あるから、できるだけ拡散して」 その方が、影響も受けにくいってことか。 「先回り。できるだけ『ナーシサス』をかぶらないように気をつけて。何しろ、ブレイクフィアーとかイーヴィルは効かない」 なんで!? 「BSじゃないから」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月14日(月)23:17 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「またでたー!」 『緋月の幻影』瀬伊庭 玲(BNE000094)が、一声上げる。 LKK団である。 「殲滅派」という、かなり物騒な武闘派集団だが、アークのお嬢さんたちの緊張感が若干薄い。 「まったく、懲りぬやつらじゃのぅ……ゴリマッチョには興味はないがの!」 玲のボスは、こいつらの殲滅対象。ボコらずしてどうする。 「バロックナイト来日で日本が偉い大騒動だってのに、LKK団は相も変わらずか」 緋塚・陽子(BNE003359)は、渋い顔だ。 13年前だって、R-TYPEに立ち向かってったのはリベリスタばかり。フィクサードは頭低くしてやり過ごしてました。 「まぁ、ここでくたばって楽団の戦力にされても困るし、程々に締め上げるとするか」 「まったくしようのないお兄ちゃん達め……」 『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)は、LKK団「執事派」にしばらく保護されていた。 であるから―― 「存分に骨抜きにしてくれる……」 ツボを心得ていらっしゃる。 「あの人達、ルメを見る目が怖くて苦手なの……」 慈愛に満ち溢れた眼差しなのに。 ちょっと見た目が筋肉質でいかついだけなのに、ゴリマッチョ差別いくない! (でも、罪のないロリお婆ちゃんを殲滅するのは止めないと……) 無差別いくない。 (倒した後どうしたらいいのかな……見た目相応になるように、洗脳して……あ、想像はやっぱ怖いからやめよう) 見た目相応の怖い洗脳って、どういうことなの。 ルメちゃん、その辺り、詳しく。 「なのはな荘のみんなと一緒なのです、なのー♪」 『純情可憐フルメタルエンジェル』鋼・輪(BNE003899)が、「ナーシサスをとってくるよ!」と、決意表明。 「今回の香夏子は、ルメ子さんを守るために来ました!」 『第31話:新婚さん、ごちです!』宮部・香夏子(BNE003035)さん、なかよし女子、ごちです。 「あとカレーが食べたいです!」 なのはな荘の住人は、みんな、カレーが至高の食物と洗脳されている。 「ほらほら、香夏子ちゃん。カレーですよー」 輪が、はいとごく普通にカレーライスを差し出す。 出すのか、出せるのか、恐ろしいな、なのはな荘! 「みんな楽しく頑張りましょー、ふぁいと、おー!」 ● 「喜べLKK団、アークが誇る幼女達がお前達にお願いしに来たぞ」 これぞ、都市伝説。『アーク・私刑前の晩餐』 赤毛の綺麗なお姉さんから、クイズです。 「だが、アークには外見幼女で実年齢還暦越えも多い。お前等が持つらしいロリ・ソムリエの力でここに集まった幼女達の中でロリババァが誰か見極めて見せろ!」 陽子のあおりはもちろんハッタリである。 今回のチームに、見た目年齢と実年齢が乖離しているリベリスタはいない。 うっかりひっかかったら、そこから動揺を広げてやろうという目論見だ。 「間違えたら幼女達に集中攻撃されるぞ。つか、ロリババァを見極めれない奴はLKK団じゃ粛清くらわねーか?」 それを聞いたLKK団の人々は鼻で笑った。 「――もとより」 その目がかっと見開かれる。 「LKK団に名を連ねる者、宿敵を識別するためのリーディングは必須!」 派閥の壁はない。 「ここに、年齢詐称の、葬るべき対象はいないと判断する!」 無駄にハイスペック。 「ちいぃっ! 間違えたらツインストライクでお仕置きしてやろうと思ってたのによぉ!?」 うわ~、LKK道、まい進しててよかった。 その辺の幼女趣味なら、即死だぜ。 「私のこの顔ね。犬で言うと……2歳に当たるのよ」 『上弦の月』高藤 奈々子(BNE003304)さん、いきなり何をおっしゃいますか。 「少女なんかよりもずっと幼くて無垢なのが、私よ!」 ちょっと無理ないか、その主張!? 犬の2歳は、おとなだろ!? 「アイム・アリス。ノット・ロリータ。パニッシュメント・イン・マッチョガイ! ロリババア系新ジャンル・ベビーねーさんを宣言!!」 成長速度が速くて体の成長に心が追いついてないタイプですね新しいです、じゃねえよ! (もちろん本音じゃないわ、私は、常識的な大人の女ですもの。これはあくまで相手に打撃を与える方便なのよ) これで動揺するなら、もうけだ。 (自分の気に入らない人を殴りつける派閥なら、気に入らないからという理由で殴りつけられる覚悟も出来てるわよね。それが筋ってものよ) 奈々子、筋は通す女。 というか、奈々子が崇拝している「彼女」は、こいつらの殲滅対象なのである。 断固阻止に決まっているではないか。 「――うむ。貴様が犬から生まれて人間化したというなら、その話信じなくはない」 やっぱ与太話だってわかりましたか、ですよねー。 「というか、干支三周り目で、アリスを名乗るとは片腹痛いわ!」 別方向で怒り出した。結果オーライ! 「あー、そうですカー。アリス趣味たんなんでちゅねー」 言葉の拳を握り締め、ゆがんだハートを下から上へと突き上げろ! 輪、突貫。 ゴスロリ衣装の重ねられたチュールレースが宙を舞う。 (メタルフレームアーマーも水着っぽくて捨てがたいけど、やっぱりひらひら~やふりふり~が好きそうだし) これがある意味正しい武装だよ。相手に殴らせないのが最大の防御! 非情! 高速回転アイアンホイール、おじちゃんたちの頭の上を飛び越えて。 (香水の効果でルメちゃんが影響されちゃうと回復的にピンチなのです。だから早めに葉月さんから香水を奪っておきたいところです) うふっと笑う微笑が黒い。 おじちゃんたち、オンナノコがそんな顔するのよくないと思うな! 「ね、その香水、りんにちょ~だい♪」 更に、玲も続く。 「この妾が相手をしてやるというのじゃ、感謝すると良い。莫迦共」 通過させる訳には行かないと、その前に立ちふさがる覇界闘士・睦月は、顔を曇らせた。 「罵倒され、喜ぶ業界人なのかや? 主のようなものは踏んでやるわ」 でも靴で踏むなんて出来ない玲、靴下を脱ごうと片足ぴょこん。 その玲の足を、おじさんの手がそっと止めた。 「いけない。そんなことをしてはいけないよ」 良識ある大人の言い方だ。 「よく誤解されるけど、けっしてロリコンではないんだよ。だから、お嬢さん達に踏まれて喜んだりしないんだよ。むしろ、そういうのは悲しくて涙が止まらなくなるんだよ」 痛くないように、LKK団のおじさんは玲の足をそっと地面に着地させた。 「なぜって、おじさん達は、女の子たちが明るく元気に楽しく健全に日々を暮らすのを見るのが何より嬉しいからなんだよ。人を踏みつけるようなお行儀の悪いことをするオンナノコを見ると胸が潰れる思いがするよ」 LKK団は、派閥ごとに主張の異なる雲母のような組織であり、だがしかし、たった一つ共通しているのは、「幼女や少女に性的欲望を一切持っていない」という点である。 あくまで、見守るおじさん兄さんスタイルだ。 ただ見守って、手助けしちゃう対象が、フィクサードやら、ノーフェイスやら、アンデッドやら、アザーバイドに及び、場合によってはちょっと世界にヒビが、がっつり入っちゃうケースがちょっと少し時々目に余るだけだ。 「だから、おじさんは一生懸命生きていく君達に似た外見になったのをいいことに、本来する訳がない、はしたない格好や物言いをして、ちゃっかり男の人を騙して甘い汁を吸おうとするおばさん達がどうしても許せないんだ」 憂い顔のゴリマッチョがこぶしを握り締めて、空を見上げる。 「さあえらんで……わたしをめでるか……おばあちゃんをコノヤロするか……二者択一だ……」 空から、オンナノコが降ってきた――空気の妖精と化した梨音だ。 (派閥の違いはあれどLKK団はろりこんの集まり……殲滅派とは言えロリババア憎しは本論ではないと見た……だって誰かをコノヤロするよりロリを愛でた方が幸せでしょう……?) 梨音がかつて接触したのは、『執事派』。 ロリを愛でることでは最高峰の派閥だった。いうなれば、LKK団の癒し系ポジション。 しかし、あえて『殲滅派』と名乗る彼らは、いうなれば、LKK団のダメージディーラーポジション。 ロリ――いやさ、幼女を実際愛でることより、幼女が健やかに過ごせる環境を作り出すためならば、自らを灰にしても構わない漢の集まり! 「いけない。君たちは毒されている」 どうどうと流れる涙を力に変えよう。 「君達の純粋無垢な言動を歪めてしまう、魔女共がわるいのだ。そんなあざといこと、大人が教えなければ、幼女がするわけなかろう。悪い大人に鉄槌を! 声高らかに我等は宣言する――」 前途ある若者を騙して盾にするいけないロリババアを倒すためなら、格闘家の誇りも、少女の誘惑も脇に置き、アーティファクトの助けも借りよう。 「イエス・アリス、ノー・ロリータ。パニッシュメント・イン・ロリババア! 二者択一というならば、われわれは会えて茨の道を突き進む! ロリババア殲滅のため、推して参る!」 割とまじめなのはわかったんですけど、LKK団なので残念なことは否めません。 夜中なので、もう少し静かにお願いします。 「そうか。お兄様方は、妾の願い事も聞いてやれぬ愚か者なのかや? 妾は、戦わずに済ませられればいいと思っておったのじゃが……」 「……残念な人達」 梨音のナイフが氷を帯びて睦月に叩き込まれ、如月の頭に玲の黒い光が叩き込まれた。 ● そんな、ちょっとまともそうだったけど、全然そうでもなかったおじちゃん達の背後に回りこもうとしている影。 『Lawful Chaotic』黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)。 闇にまぎれて迂回していたのだ。 (背後から香水壜を持った敵を強襲してナーシサスを奪おうとします。自分がナーシサスをかけられても、元より他者支援スキルはないので関係なしです) ソードミラージュ、どっちかっていうと、「俺の速さに酔いな!」 とか 「くくく……、私を見て。美しい私を見て……」的傾向が高い、アーティスティックな職種なので、問題ないです。 「ナーシサスを奪います。それが私の仕事です」 「邪魔をしないで貰おうか」 飛び込んでくる紗理を待ち構えていた、無駄にしぶい直衣スタイル。 舞い飛ぶ呪い札。16歳を攻撃するのは問題ないLKK団クオリティ。 LKK団・殲滅派、ちょっと年齢基準が厳格だ。幼女以外には厳しいぜ。 というか、紗理は子供に見られたくないって、大人っぽくしているのが尊重された結果らしい。いや、そういう行き届き方とかいらないから。 LKK団相手にエプロンドレスとか着てこなかった紗理の高潔さに敬礼! 無数の鴉に群がられて紗理の姿がリベリスタの視界から消える。 こみ上げてくる吐き気が、体が何かに蝕まれたことを紗理に知らせる。 「いけない……っ」 風見 七花(BNE003013)の唇が回復詠唱をつむぐ。 紗理にからす。更に紗理にからす。 更に、舞い乱れるインヤンの符。 回復一発鼻血を吹く威力の七花の回復を以ってしても、集中攻撃のダメージはいかんともし難い。 これ以上、やられたら紗理が倒れる。しかし、かばう要員が誰もいない! 最後の鴉の群れは、七花の元に飛んできた。 殲滅派の中でも、攻撃対象、見た目重視派と年齢重視派では意見が分かれるらしい。 だよね。もう、お姉さんだもん。17歳だもん。LKK団にかわいかわいされるお年じゃないんだもん春から高校三年生だもん。 回避してみせるんだから! ばっちこーい! 「後生大事にそんな気色の悪いアーティファクトを抱えて……正気ですかあなたたち? ……気持ち悪い」 カラスについばまれて全身を朱に染めた紗理が、両の手のカトラスから金色の飛沫を飛ばす。 辛くも直撃を防いだ者の傷を負わされた葉月が、ここが使いどころと、ナーシサス・ダークネスをぶっぱした。 ようこそ。 自分だけがかわいい、どこまでもかわいい、他人? なにそれ、おいしいの? な、完全スタンドアローンの世界へ。 ● 「……特に支援しない香夏子は影響無い様です」 なんか背後の香夏子のテラーオブシャドウがそりゃあもう張りきりまくっているのは、香水の影響かもしれない。 本体かわいいよフスフス。 「でも、ルメ子さんよりカレーが大事なのでカレーの平和の為に戦います!」 あああ、他人への愛より自分の欲望優先になってる! 自分の愛するカレーを思って放出される赤い偽りの月は、ほんのりスパイス臭。 カワイイ私に仇なすものは、皆不運になってしまえ。 「――人を成すのは齢だけ?」 水仙の香りを浴びてしまった奈々子さん、本職さんも顔負けの仁義を切る。 「清濁併せ飲み込んで、愛する事こそ筋ってものよ。貴様のこいが恋に非ざる濃いなれば、義と情けにてここで討つ!」 かっくいい! 「仁義切る私、最高!」 ナーシサス・ダークネスの効果です! 「くちゃい」 『もぞもそ』荒苦那・まお(BNE003202)のマスク越しにも臭ってくる混合臭。 おじさんの体臭と水仙の香水の香りが混じると、くちゃい。 面接着効果で、べっと~っとインヤンマスターの背中に張り付く。 「こんばんわ。あぶない香水を使っちゃだめです。なんだかくちゃいとまおは思います。めっ」 蜘蛛の子からあふれる呪縛の糸。 「キャハハハハ♪」 輪の目から、ハイライトが消えていた。 (ただでさえわがままな性格がさらに自己中に。邪悪ロリも増して、目からハイライトが消えて……) 自己分析の結果―― (いつも通りでした) 邪悪ロリは、自分が一番。 「ちなみに……大人しく言う事聞いてくれたら……私が本部まで連行してあげるよ……? アークから……楽団対策で……保護命令出てるし……」 葉月に対象を絞って投降を促す梨音。飴を振りまきつつ――。 「今なら……時村の誇るおロリ様……イヴちゃんの美声も付けなくもない……」 鞭たる音速の刃を振るうことを止めない。 そんな嗜虐系ロリ。 ● (あうう~。ここからじゃ魔法うてないの~) こちら車の陰で体操座りのルーメリア。 車の下からのぞいたりしてるんだけど、透視で視線は確保されても、効果的な魔法の拡散が出来ませんよ? 殲滅派、だあだあ泣きながら「悪い子をごっつんこするのは、大人の義務!」と、応戦したりしてるし。 予想外に戦闘は長引いている。 ギャンブルに身を投じる自分サイコー状態に陥っている陽子の振り回す大鎌が、周りを巻き込むことも厭わずに振り回されるため、リベリスタは近接で覇界闘士達に技を叩き込む事が出来ずにいるのだ。 鴉の撒き散らす不運と毒。 覇界闘士から飛ばされる蹴り風の刃に流れ落ちる血で、じりじりと削られていく体力。 もとより覚悟の挑発行為とはいえ、紅蓮の炎に飲まれた奈々子は、自らの恩寵を代償に再び地面を踏みしめている。 「こんな酷い光景見たくない」 小さく吐き出される言葉に偽りはない。 「タマ獲ったるけんのおおっ!!」 それでも、このままではジリ貧だ。 七花も、香水の影響下にある今、皆を癒せるのはルーメリアしかいない。 (いけないのっ! このままではベンチウォーマーなの) ルーメリアはやおら立ち上がり、隠れていた車の前に出る。 「あっ、後でお医者さんごっこしてあげようと思ってたんだけど、香水かけられたら……それもできないよね?」 「あああ、あざといっ! そんなの、そんなこと言っちゃだめだあ!」 LKK団は、小さなオンナノコの無垢性を愛しています。 「と、とにかく! みんなを怪我させて! ルメ、怒っているのよ!」 渾身の力で神の息吹呼ぶ呪文を詠唱する。 私に連なる全ての仲間の不調を打ち払いたまえ。 身を鈍らせる者の全てから開放されたリベリスタ達は、微笑を浮かべた パーフェクトな私、サイコー。 自己愛に満ち溢れたリベリスタは、諸悪の元凶――ナーシサス・ダークネスを所持する葉月に集中攻撃。 そして、墜ちる葉月。転がる香水瓶。 それを拾い上げるインヤンマスター、文月―― 「遅い」 伸ばされる手を払いのける左手に握られた逆手のカトラス。 血まみれの紗理が、香水瓶を拾い上げる。 「まだ、戦いますか。こんなもの、ゴキブリ未満のあなた方には高級すぎます」 冗談や挑発ではなく本気でそう思っている冴え冴えとした蔑みの視線が、LKK団の心をえぐりたてる。 雌雄は、すぐに決した。 ● 「ルメ子さん。香夏子は、ルメ子さんが香水被りそうなら……させません! と、庇いに入る予定だったのです。それでポイント稼げば、カレー食べてても許されるチャンスだったのです!」 実際かぶらなかったのは、ルーメリアだけだった。 「ほら、でも、かぶらなくても済んだのは、香夏子ちゃんが隠してくれたからだから……」 「では、カレーを食べても問題ないですね!?」 「い、いいと思うの……」 なのはな荘の住人は、以下略。 「ちょっと使ってみたいかなーとは思っちゃったりしたけど――」 輪は邪悪ロリなので、そんなに変わらないのだ。 でも、普段そうじゃない人が自己中になるのは見てて面白かった。 「ちゃんと回収して、アークに返しますよ」 その方が、面白そうだから。 くひひひひ♪ 輪の笑い声に、殲滅派も気がつくといい。 邪悪ロリが邪悪なのは、悪いロリババアの影響では決してないのだ。 邪悪ロリに、光あれ。 それが、底辺世界に設定された定理なのだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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