●最後の小隊 彼らがこの世界に来たのは、単なる偶然だった。 彼らにとって、この世界に迷い込んだことは運がよかったのか、それとも運が悪かったのか……それは分からない。 彼らはこれから、戦争に行く所だった。 第21小隊。それが彼らに付けられた名前だ。 戦車が2台に、歩兵が30人。たったそれだけの部隊である彼らに与えられたのは、実に倍以上の数を誇る敵軍の足止めであった。足止め……つまり、勝つ必要はないということだ。 時間稼ぎの為の、捨て駒である。 それでも、彼らはその任務を全うするつもりでいた。 その為の行軍。決死の進軍。その時、巻き込まれた砂嵐と、突如として開いたDホールによって、彼らはこの世界に迷い込んだのである。 「ここは何処だ……?」 小隊の隊長らしき人物が、そう呟いた。 返ってきた返事は、無言。 彼らの視線に映るのは、巨大な鉄の壁だった。 遥か上空に天井が見える。 他にも、巨大な椅子や本もある。どこかの誰かが壁に落書きした「NO future」の文字。 一か所に固まったまま、辺りの様子を確認した彼らは、あることに気付く。 「これは、教室かなにかのようだ」 「周りの物が巨大なのではない……」 「我々が、小さいのだ……」 冷や汗を垂らす隊長。別の世界へ来てしまったことに彼らは気付いた。銃を構え、彼らは決める。 なんとしてでも、生きて元の世界へと帰る……。 どうせ死ぬのなら、自分の故郷の為に、戦って死ぬのだと……。 ●戦の為に……。 「彼らは(小隊)という1個の群として行動し、死ぬつもりだった。だけど、彼らは不運な事故でこの世界に来てしまった」 なんて、モニターを見ながら『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が呟いた。 モニターに映るのは、夜の高校。その教室のどこかに、小隊は陣地を作って待機しているらしい。隊員達の大きさは、全員15~20センチほどの実に小さなものである。 彼らの乗っている戦車だって、サッカーボールくらいのサイズしかない。 「だけど、油断は出来ない。小さい割に、彼らの持っている武器は強力。恐らく、科学技術がこちらの何倍も発達しているのだと思うけど……」 弾が小さいから、ダメージも低い……なんてことはないようだ。 「ディメンションホールは、彼らが陣地を作っている教室の、もう一1つ隣の教室にある。それが何か分からないから、現在彼らはホールから離れた場所に移動したみたい。ホールの破壊も任務の1つね」 忘れないで、とイヴは付けくわえた。 敵の数は30人、+戦車が2台。 彼らの持つ戦車には、飛行能力もあるようだ。 「隊員達は、銃火器、接近戦、隠密奇襲などに優れるみたい。一方、戦車は射撃がメインね」 特に、戦車の火力は隊員異常に協力だ。 その分、隠密性に欠けるものの、飛行能力による奇襲などは要注意だろう。 「タイムリミットは朝まで。小隊の生死は問わない。送り返すなり、殲滅するなり、あなた達に任せるから……」 くれぐれも、気を抜かないで。 そう付けくわえ、イヴはモニターを切り替える。 そこには、銃を構えたおもちゃの兵隊サイズの人間達が、隊列を組んで立っていた……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月16日(水)23:24 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●真夜中の戦争 暗闇の中に、小さな足音が響く。明りもない校舎の中を、月明りのみを頼りに駆けまわる彼らは、小さな人であった。それも迷彩服を着込み、銃火器で武装した兵隊である。 それがなぜ、このような場所で布陣を展開しているのか。 何故、このように慌ただしく駆けまわっているのか……。 それは、とある8人の侵入者たちを警戒しているからに他ならない。 「運がないというか、なんというか……」 玄関を開け放ち、校舎内に足を踏み入れる『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)が、そう呟く。靴箱の上に身を潜め、1人の兵隊が、それをじっと、観察していた。 ●小隊との攻防 「運が良いな。帰れる選択肢がある辺り。それを選ぶかは知らないが、無意味な喜劇は面倒だ」 やれやれ、とばかりに首を振って『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)がそう言った。懐中電灯をくるくると回しながら、廊下を進む。兵隊たちに、こちらの接近を伝えているのだ。 普段は、荒事の多い彼女たちの仕事だが、今回は出来ることなら戦闘を行いたくないと、そう考えている。その為、わざと堂々とした態度で敵陣に踏み込んだのである。 「聞こえてる? こちらに交戦の意思は無いわ。こっちも仕事で来ているの」 両手を頭の横に上げそう宣言する『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の視線が、階段の上へと向けられる。その辺りに、人の気配があることを直感で感じ取ったのだ。 暫しの沈黙。 しかし……。 次の瞬間、突然暗闇の中に火花が散った。一拍遅れて、エナーシアの体に無数の銃弾が食い込む。弾のサイズが小さい割には、威力は高いようでエナーシアの体が床に転がる。 「くっ……。話しを聞いてくれ。話し合いに来ただけなんだ!」 防火扉の影に隠れ『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が叫ぶが、どうやら向こうに会話の意思はないようだ。弾幕を張って、リベリスタ達が近づいてこれないようにしている。 「銃弾の数発程度は、挨拶と受け取ろう」 エナーシアに回復を施しながら『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は苦笑い。上階へと続く階段を守っているところから、小隊の本陣は二階以降のフロアに存在するのだろうと予測される。 「聞け! ここは異世界である! ホールを通れば元の世界に戻れる! 我々は諸君の任務を邪魔するつもりはないし、我々と戦っても故郷の為にはならない!」 銃声に掻き消されないよう、目一杯に声を張り上げ叫ぶ『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)だが、銃弾の雨は止まらない。ディフェンサードクトリンで防御を強化しているとはいえ、こうも攻撃が絶えないと、身動きが取れない。 小さな兵隊たちからすれば、こちらは巨人のように見えている筈だ。一瞬の油断が死に繋がる体格差。そう簡単には、心を許してくれないだろう。 「ちっ……。鬱陶しいっすね」 舌打ちと共に『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)が、防火扉の影から飛び出した。反対側の壁を蹴って跳び、銃弾の下を潜り抜ける。一足飛びに階段を駆けあがって、兵隊の前に着地。 「御機嫌よう、異界の小隊。武器を納めて、まずはうち等の話しを聞いてくれないっすかね?」 なんて、うっすら笑顔を浮かべてそう告げるのだが。 「…………」 兵隊は、無言でライフルの引き金を引いた。銃弾が、フラウの頬を掠めて背後の壁に穴を空ける。冷や汗と、血を一筋流し、フラウは階段を転がるようにして降りる。 しかし、弾切れか、それとも戦力的撤退か。 追撃はしてこないまま、兵は階段を駆けあがっていった。どうやら、本陣へと戻っていったようだ。もともと、1人か2人の斥候だったのだろう。 「教室が分かって、戦車や銃を持ってて……。何だろうね。ここと似た感じの世界から来たっぽい? まぁ、歓迎している場合じゃなさそーだな」 フラウに手を貸して引っ張り起こしながら『住所不定』斎藤・和人(BNE004070)が、頭を掻いた。はぁ、と溜め息を1つ。視線は、上階へと向けられていた。 所変わって、小隊の本陣。 戻って来た斥候の報告を聞いて、隊長は顎に手を当て、考える。 向こうに、戦闘の意思はないらしい。だが、それを信じていいものだろうか、と。 嘘を吐いている、という可能性も十分にある。むしろ、その可能性の方が高いだろう。歴戦の兵士である彼は、今まで何度も戦場へ出て、なんとか生きのびて来た。 そうした経験の末、彼が辿り着いた結論。戦場で生き残るのは、いつも臆病な奴と、疑り深い奴、それから卑怯な手段も辞さない奴ばかりだ。 「まだ、ダメだ。我々は、こんな場所で死ぬわけにはいかない。戦車を出せ。歩兵は戦車の援護だ。やつらを追いかえす」 状況開始! と、隊長が叫ぶと同時に、数十名の兵たちは一斉に持ち場へと散っていった。 訓練された、無駄のない動き。 それを満足そうに眺め、隊長は思う。 出来ることなら……。 彼ら全員を、生きて故郷に帰してやりたい、と。 「やっぱり、そう簡単には信用できないかしら?」 困ったような顔をして、エナーシアがそう言った。二階に上がった彼女達が目にしたのは、廊下に並ぶ無数の机と椅子。どうやらバリケードとして利用しているようだ。 一瞬、武装を取り出そうかどうか迷うが、止めておいた。まだ説得の余地はある、と判断したからだ。 「上位世界の軍人さんか。できれば元の世界に戻って、任務を果たしてほしいものだが」 どうも話し合いは難航しそうだ、と義衛郎が溜め息を吐いた。 「死ぬ覚悟を固めた連中を、こんな場所に送りこむとは、運命って奴の無慈悲さは、どの世界も一緒って事なんだなぁ」 やりきれない、と喜平は呟く。周囲には、無数の気配を感じているものの、敵の姿は見当たらない。隠れて、こちらの様子を窺っているようだ。 バリケードを前に、足を止めた一向。集音装置で強化された聴覚で、ユーヌが敵の動きを探るため、目を閉じ耳を澄ました。 と、次の瞬間、8人の足元に何かが転がってくる。BB弾サイズのそれは、よく見ると小さな手榴弾のようだ。 「ちっ」 舌打ちを零し、ユーヌが背後へと下がる。そんな彼女の足元に、迫る影が1つ。小さなナイフが懐中電灯の明りを反射し、光る。ナイフが、ユーヌの足首を切り裂いていった。存外、切れ味鋭く、血が飛び散った。一瞬にして、ユーヌの顔色が悪くなる。ナイフに塗られていた毒によるものだ。 「精々故郷で火線の下を這いずり回れ」 パチン、とユーヌが指を鳴らす。同時に彼女の足元を中心に呪印が展開される。呪印に縛られ、ナイフを持った兵がその場で動きを封じ込められた。 しかし……。 「多少のダメージくらいは、そのまま耐え抜けるが……」 複数の手榴弾の爆発となると、そうはいかないかもしれない。そう判断し、エルヴィンが手榴弾を蹴り返す。転がっていった手榴弾が爆発し、閃光と爆風が吹き荒れる。爆発の際、消火器を巻き込んだらしく、廊下に白い煙が飛び散った。 消火器が散布される音に混じって、無数の足音。ユーヌが捕らえた兵も、いつのまにかどこかへ消えている。他の仲間が、その身を回収していったのだろう。 「任務を持つ者の気持ちは分かるつもりだ。攻撃を辞めてくれ!」 ベルカが煙の中に向かってそう叫ぶ。両手を広げ、敵意が無いことをアピールするものの、消火剤に塞がれた視界では、伝わっているかも定かではない。 その時、バラバラ、と奇妙な音がベルカの耳に届く。その音を聞いた瞬間、ベルカの顔色がサっと青ざめた。咄嗟に床を転がって、消火剤の煙の中から飛び出した。 煙から飛び出した瞬間、ベルカの頭上で何かが爆発。無数の鉛玉をばら撒いた。それを追うようにして、プロペラの付いた戦車が飛び出してくる。その数、2機。戦車の砲身がベルカを捕らえる。射出されたのは、先の尖った細長い弾丸だ。 手近にあった椅子を掲げ、それを防ぐベルカ。だが、弾丸は椅子を貫通し、ベルカの肩を撃ち抜いた。ベルカの体が床を転がる。 追いうちを駆けるように迫る戦車の前に、フラウが躍り出た。 「改めて名乗ろう。うち等はアーク。あんた達みたいな連中の対処をする為にうち等は居る。帰る手段も知っているから、話しを聞くっす!」 戦車の騎手に向け、そう告げるフラウ。 戦車に向け、手を伸ばす……。だが、その時、フラウの耳元でガチャンという硬質な音が響く。視線を横に動かすと、いつの間に取付かれたのか、そこには銃を構えた兵士が1人。 「……っぐ!?」 床に転がることで、兵士を振り払う。めちゃくちゃに放たれた弾丸の嵐が、フラウとベルカの体を撃ち抜いていく。 「囲まれてるっ! しゃーねー、ちっと痛い目見て貰うぜ?」 盾と銃を取り出し、和人が唸る。弾丸の雨を盾で防ぎ、魔力銃で応戦。戦車以外の兵は、皆消火剤の中に紛れ、こちらを攻撃しているようだ。 向こうからしてみれば、リベリスタ達は絶好の的でしかない。撃てば当たる、とそう言うものだ。このままでは、一方的にやられるだけだと判断し、喜平が愛用の巨銃を抜いた。 振り回し、窓ガラスを数枚纏めて砕く。開いた窓から、消火剤が窓の外へと吸い出されていった。 「貴官らが祖国を思うのと同じ様に我々もこの世界を想っている……」 巨大な銃口から放たれた漆黒の光が渦を巻きながら、廊下を突き進む。バリケードを巻き込み、粉砕する。兵達のほとんどは回避に成功したようだが、巻き込まれた何名かが床に倒れている。 「学校は戦争をする処ではないのだわ!」 盾を構えて、後衛に下がるエナーシア。追ってくる兵に向け、威嚇射撃を繰り返す。このままでは、ただの戦争だ、と頭を悩ませるものの、しかし相手に会話の意思がない以上、どうすることもできない。 「落ち着くんだ。君達は元の世界に戻る事が出来る!」 兵の密集している空間に跳び込む、義衛郎は説得を続ける。仲間に倣い武器を取り出しはしたものの、防御に使うばかりで、攻撃に移ることは躊躇っているようだ。時折刀を振るって、兵を後ろへと追いたてる。 「そのまま抑えていろ」 義衛郎の後ろを、ユーヌが駆け抜けて行った。向かった先には、2機の戦車。ベルカとフラウを攻撃している戦車に迫る。防御用マントを広げ、兵たちからの射撃を阻み、ユーヌは戦車に肉薄した。 だが……。 「上だ! ユーヌ!」 仲間の回復役を担っているエルヴィンが、ワンド片手にそう叫ぶ。彼の位置からは、ユーヌに向かって天井から手榴弾を投げつける兵の姿が見えていたのだ。戦車とユーヌの間で、手榴弾が爆ぜる。戦車はそのまま床に着地。ユーヌは爆風に押され、弾かれる。 ユーヌに駆け寄ったエルヴィンが、治療を施す。淡い燐光がユーヌの体を包み込み、その傷を癒す。 「……場合によっては、この回復技、教えないこともないぜ?」 なんて、近くにいた兵に向け、そう声をかける。兵は無言で、銃口をエルヴィンに向けた。 「お前らが帰らねぇなら、全部潰すしかなくなるんだが」 エルヴィンを庇う様に前に出た和人が、兵に向けて力一杯盾を叩きつけた。衝撃で兵の体が浮き上がる。気を失った兵を見降ろし、大きく和人は大きく溜め息を吐いた。 ●さよなら、異界の小隊 「無駄弾なんて撃ち合っている場合ではないのだわ。此処よりも命を賭けるべき場所があるのじゃないかしら?」 廊下の端に、盾を構えたエナーシア、エルヴィン、和人が並ぶ。その後ろには他の仲間達。一方、廊下の向こうには、十数名の兵士たちの姿。床に一機、空中に一機、戦車が並んでいる。 ここ数分は、こうして膠着状態が続いている。 「故郷が危ねーのにここで油売ってる暇あんの?」 盾の影から顔を出し、和人は言う。そんな和人の頬を掠め、一発の弾丸が通過していった。苦笑いで、和人が顔を引っ込める。 「あーもー、軍人なら冷静に状況を把握しろ!」 エルヴィンがそう叫ぶが、聞く耳持たない兵達からはなんの返事もない。どうしようか、と頭を掻くエルヴィン。 「仕方ないな。向こうが攻撃を止めないことには……」 やれやれだ、と立ち上がる義衛郎。それに続き、喜平も巨銃片手に腰を上げた。なにする気だ? と、訊ねるエナーシアに向かって、苦笑いを返す義衛郎。 「……幸運を祈る」 そう呟いて、喜平が銃の引き金を引いた。漆黒の光が、螺旋を描きながら廊下を進む。兵たちが廊下の左右に広がり、それを回避。その隙に、盾を跳び超え義衛郎が駆けだした。両手に刀を携え、戦車の横を通り抜ける。兵士たちの前に立ち塞がると、彼らに向かって切っ先を突きつける。無数の銃口が義衛郎を捕らえた。 次の瞬間、廊下の闇を強い閃光が覆い尽くす。閃光弾が爆ぜたのだ。それを放ったのは、牙を剥き出しにして笑うベルカだった。 「諸君らの弾丸は、こんな所で浪費していいものではない!」 ベルカが告げる。閃光に巻かれ、戦車がよろける。騎手が混乱しているのか、それぞれ拡散弾を無数に撃ち出す戦車。空中でばら撒かれた弾丸は、仲間の兵士たちにも襲いかかる。それを刀の腹で受け止め、義衛郎が「危ないな」と呟いた。 「こんなとこで無駄に戦って、役割を果たせなくしてんじゃないっすよ!」 「無駄に消費して溝に捨てるのも自由だが、そんなに安い命でもないだろう」 壁を蹴って戦車に跳びかかるフラウと、床を滑るようにして前に出るユーヌ。フラウの剣が、戦車の砲身に突き刺さる。動きの止まった戦車を、フラウが掴んで床に押し付けた。 一方、ユーヌが展開したのは相手の身動きを封じる呪印。床にいた戦車がピタリとその動きを止める。戦車の捕獲が完了したのを見て、義衛郎は言う。 「主戦力を失うのは惜しいでしょう? 話し、聞いて貰えるか?」 兵士たちがざわつき始める。混乱し、判断に迷う兵士たち。 その時……。 「全隊! 止まれ!」 奥の部屋から、怒号が響く。それを聞くなり、兵士たちはその動きを止め、直立不動の姿勢をとった。数秒の後、奥の部屋から1人の兵士がやってくる。他の兵達よりも、いくらか歳をとっているように見える。恐らく、彼がこの小隊の隊長だろう。 「戦車は惜しい。これ以上、被害を拡大させるのも好ましくない。話しを聞こう」 そう告げる隊長の目は、歴戦の兵士のそれだった……。 「迷惑をかけたようだ……。申しわけない」 兵士たちと戦車が、Dホールを潜ったのを確認し隊長が深く頭を下げる。 事情を説明してから、解決は早かった。こちらに戦意はないこと、彼らを元の世界に返す事が可能だと言う事を説明すると、隊長は早速元の世界へと帰る用意を始めた。僅か30分ほどで撤退の用意を整え、異世界の小隊は元の世界に帰っていった。 「傷の手当てまでしてもらい、感謝の言葉しかない」 「いいよ。それじゃあな、貴方達の武運を祈るぜ」 そう言って、エルヴィンが小さく手を振る。敬礼を返し、隊長はホールに飛び込んで、消えた。敬礼でそれを見送り、ベルカはDホールを破壊する。 廊下は消火剤で真っ白、壁には無数の穴が空いている。窓ガラスもいくつか砕けて無くなっている。しかし、それだけだ。1つの命すら失うことなく、異世界の小隊は帰っていった。 兵士は戦場へ。 命を散らすために、帰っていく。 これでいいのか、とそういう疑問は尽きないが。 それを決めるのは、戦う彼ら自身だ……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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