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☆<迎春2013>はつひので。

●一年の始まりに……
 特別な初日の出を見たいと思う人間は少なくない。
 特別な誰かと――例えば友人と、例えば恋人と。一年の始まりを祝したいと思う人間が居るのは当然の事であろう。
 時刻は、十二月三十一日――大晦日、年の瀬もクライマックスを迎えた深夜に遡る。六時間続くバラエティをぶち抜いて、取り敢えず今年も指差して笑い、準備を万端に整えた『清廉漆黒』桃子・エインズワース (nBNE000014)は実に機嫌良くリベリスタに声を掛けたものだった。

「――よし、これから皆さんはももこさんと初日の出なのですよ!」

 誘いは突然で、全く前触れの無いものだったが――
 やる気満々といった風で霊峰を指差した桃子は何時もの通り酷いマイペースそのものだった。
「やれやれ」と誰かが溜息を吐いたか知らない。
「やれやれ」と誰かが肩を竦めたのは何時もの事だろう。
 2012年も終わりを迎え、やがて2013年がやって来る。
 ニコニコと笑う桃子はまるで「今年も自由に生きる」と宣言しているようではないか――
「ところで」
「はい?」
「登山なのに、その格好なの?」
「折角のチャンス、晴れ姿を使わないでか!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月19日(土)00:13
 YAMIDEITEIです。新年あけましておめでとうございます。
 1/1に一本目。前回好評を頂いたピンナップシナリオ、第二弾は新春企画です。
 若干特殊なシナリオとなっておりますので、説明を御確認下さい。
 以下詳細。

●ピンナップについて
 当シナリオは『ピンナップシナリオ(β版)』です。リプレイ返却後、その内容に沿う形で
 担当の『希助』VCにより参加者+NPC全員の登場する大きなピンナップが作成されます。
 ピンナップの納品時期はリプレイ返却後一ヶ月程が目安になります。
 ※バストアップが無いキャラクターは描写されませんのでご注意下さい。
また服装にこだわりがある場合は必ずプレイングに明記してください。

●任務達成条件
 ・富士山の山頂から初日の出を見る事

●富士山
 言わずと知れた日本の霊峰。
 普通の登山客の皆さんも居るかも知れませんが、桃子がセレクトしたのは基本人の通らない(通れないとも言う)全力踏破ルートなので険しいです。
 ぶっちゃけ山登れば皆さんでも疲れます。
 心地良い疲労と共に登山を楽しみ、一年の始まりを祝しましょう。

●桃子・エインズワース
 とんでもない格好で山登りする女。
 しかし彼女の着物はアシュレイによる防護魔術が施されており、破れず、汚れず、傷みません。実働には裏取引があったようですが詳細不明。アシュレイが全力でカニを頬張りまくっていたという情報もありますが不明。
 兎に角、彼女は話の都合上――1/1の午前中には三高平市に戻るんだ!
 基本的に構えば動きます。興味が無ければ放っておいて下さい。
 但し、放っておいても勝手に或る程度は動きます。


 やみからのお年玉、滅多やらない六人シナリオです。
 宜しければご参加下さいませませ。
参加NPC
桃子・エインズワース (nBNE000014)
 


■メイン参加者 6人■
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
ホーリーメイガス
大石・きなこ(BNE001812)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
マグメイガス
ティオ・ココナ(BNE002829)
ダークナイト
朝町 美伊奈(BNE003548)


●登山道沿いの憂鬱
「いらっしゃいませ。あけましておめでとーございますー」
 新年早々些か覇気の無い声がその一団を出迎えた。
 富士登山道沿いのコンビニ、年も明けようとする頃にはこの場所は『ある種』の客で混み合うのが常だった。
 つまり、彼等は『登山客』である。
 まさにピンポイントで新年早々かような労務に身を浸した経験のある俺は知っている。全く俺には年明け早々酔狂にも山に登りたいという人間の気持ちは分からなかったし、「こちとら正月から働いてるのに道聞きに来るんじゃねぇ、コンビニは交番じゃねぇんだよ」等と呪いの波動を放った若気の至りが無かった訳では無いのだが。こと、日本の真ん中辺りに位置するこの静岡県という土地において雄大なる存在感を誇らし気に披露する富士山という山は格別の意味を持っていた。山梨とどちらが正当な富士山の継承者か冷戦を続ける事、然り。そんな脱線は置いておいても、一年の始まりを日本最高峰から眺めたい……と思う誰かが居るのはそりゃそうであろうというお約束の鉄板ルートそれそのもので……閑話休題。新年明けて早々実に迷惑な連中(主観怨み唄)の是非はさて置いて。
 露骨にやる気の無さそうなバイトの青年は頭をぼりぼりと掻いて――掻いてから目を丸くしていた。
「……あ、あれ?」
 挨拶に同じように返礼を返した一行は七人。
 ああだこうだと言い合いながら商品棚を物色し始めた彼等は女子六人、男子一人の集団だ。
 一行こそ――改めて言うまでも無い事ではあるが――リベリスタ御一行様。『清廉漆黒』桃子・エインズワース (nBNE000014)の呼びかけに何となく集まって何となく富士山頂を目指す、実におめでたい初日の出ハンター達なのである。
 しかし、店員の青年が一瞬絶句した理由は当然悪しき神秘に立ち向かうリベリスタ達の正体を看破したからでは無い。
「やっまのっぼり~♪ はっつひっので~♪
 富士山に登るのは初めてだから楽しみだよ! 写真とおんなじでてっぺんは白くなっているのかな? ワクワクするねー」
「富士山! 一度は登ってみたいと思ってました!
 ましてや新年の初日の出をその山頂から眺める……なんて。素晴らしいシチュエーションですね!」
「頑張って登って、それで皆で見る初日の出……きっと綺麗でしょうね。うん、私頑張ります!」
 ……楽しい気分を隠す事無い『ものまね大好きっ娘』ティオ・ココナ(BNE002829)、何時に無く華やいだ調子の『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)、そして瞳を輝かせ、ぐっと拳を握った――幻視で隠れた羽に頼らない心算の――の『小石の塔』朝町 美伊奈(BNE003548)の声を聞けば、彼女等が富士登山と初日の出を合わせて望んでいる一団である事はすぐに分かる事だ。店員が目を疑ったのはその『やけに見目麗しい一団』の女性陣の大半が『とてもこれから登山をするとは思えない格好をしているから』だった。
(……えーと……)
 要するに振袖である。
 店員の視界の中の女子達の多くは実に華やかなる着物で着飾っていた。
 上下に緑から黒のグラデーション。
 柄には多種多様の誕生花――サボテンの花をあしらい。
 帯は歌舞伎『浮世柄比翼稲妻』の不破伴左衛門の着付けの刺繍『雲に雷』。
「初詣とか、御節とか、そういうのここ何年もやってない気がしたし。たまには正月らしい事をしてみるのも良いものかもね」
「桃子さんが着物で登山するなら私達も負けていられませんね!」
 粋に振袖を身に纏うのは成人式以来――些か薹が立った『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)、それに応えた『鉄壁の艶乙女』大石・きなこ(BNE001812)も色気が匂い立つような黒で纏めた着物を身に纏っている。
「折角の趣向で日本なのだし、桃子さんの用意したものには遠く及びませんが……」
 上に長羽織を羽織ったリセリアも薄い白地に青色が淡い振袖を身に纏い、
「皆綺麗ですよ。グッドです!」
 桃地の着物を翻し、親指を立てた桃子は言うまでも無く――ここまででも実に奇妙奇天烈な空気を醸し出している。
 加えて――
(……………えーと……)
 その中でも異彩を放つのは間違いなく何故か赤い紐の水着を来たティオの存在である。
 深夜のコンビニに他の客は居ない。もし居たらばちょっとした騒ぎになったのかも知れない。
 子供は風の子でも凍り付きそうなとんでもない装備は常夏の島でバカンスでも楽しもうとするが如きである。
 何れもとてもこれから冬の雪山に登ろうとする格好では無いのだが……
 困惑する店員に構わずパーティは相変わらず緩く歓談の様である。
「まぁ、言ってみるものよねぇ」
「傾向と対策がハッキリしてたからな」
 暖かいお茶を手に取りしみじみと呟いた杏に黒一点の『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)が応えた。
「おかげさまでこのまま登っても大丈夫になりましたしねぇ」
「魔女の協力が得られたのは――予想外でしたが――僥倖でした」
「ま、お富さんの弁当は抜群の効果だった……ってな」
 きなこにリセリアが相槌を打ち――リセリアがそう言ったからか猛は少し誇らし気に胸を張った。
 振袖で山に登ると元々言い出したのは発起人の桃子である。当然、そんな格好で山に登れば――リベリスタで無ければ遭難は必至で――少なくとも一張羅が台無しになるのは間違いない未来ではあるのだが。そこはそれ強かな彼女の事、無理を通れば道理は引っ込むとばかりに『塔の魔女』アシュレイを買収するという力技に出たのであった。かくて山盛りのカニでてこでも働かない魔女を動かした彼女は自身の衣装に防護魔術を掛けさせる事を承諾させたのである。さりとてそんな桃子に、
「でも、これで今月もカレー生活ね……」
「フグを十人前は随分張り込んでしまいました……」
 杏が、きなこが――リセリアの援護をした――猛が続いたのは全く予想外の出来事であった。かくて魔女の棲家にはカニやらフグやらカキやら特製の豪華お弁当やらが山と積まれ、一行はその代わりにとんでもない衣装で霊峰に挑戦する権利を得たという訳だ。
「はい、お願いします」
 ニコニコと笑って千円札を差し出した美伊奈に「あ、はい」と店員が頷いた。
 一行が買ったのは腹が減っては戦は出来ぬ――ちょっとした軽食と暖かいお茶を人数分である。
(結構、大変そうですから……)
 道無き道を踏破する桃子という女の性格を考える程に今日という日が簡単に終わるとは思えない美伊奈なのだった。
 大きなリュックには絆創膏と湿布、包帯と予備のタオル……
 青色の登山服を着込んだ猛とこの美伊奈だけはきちんとした登山用の装備を身につけている。
「さあ、行きましょう!」
「ありがとうございましたー……」
 狐につままれたような顔をした店員は開いた自動ドアから吹き込んできた冷たい風に目を擦り、何だか『有り得ない集団』を呆然と見送っていた。

●そして富士
 ざくざくと雪を踏みしめる音が連続する。
「……に、荷物が重い……」
 その背に大いなる責任を背負う美伊奈は思わず白い息と共にそんな声を漏らしていた。
 真冬の富士はその危険さから正規の登山道が閉ざされる事もある難所である。
 何だかんだで山を登る者は絶えず、初日の出のスポットとして有名な場所には違いないのだが――一般人の体力を大きく上回るリベリスタと言えども、これは甘く見れるものではない。増してや桃子が『変なルート』を選んでいる以上、これは尚の事であった。
「荷物くらいなら、持ってやるからヘバった奴は途中で言えよ?」
「いや、だ、大丈夫!自分で持てます! 大丈夫です行けます。私行けます! ふぅ、……ぅふぅ……」
 見かねて声を掛けた猛に派手に呼吸を乱す美伊奈が何とかそう答えた。
 雪混ざりの風に吹き付けられた一行は年の始まりの酔狂な冒険をある意味で満喫していると言えた。
 望むにせよ望まぬにせよ山はそこに聳えている。
 偉い人はかつて言った。「そこに山があるから登るのだ」と。
 時村沙織もかつて言った。「そこに美少女(やま)があるから登るのだ」と。どうでもいいけど。
「ええい、飛ぼうにも羽がかじかむわよ」
 登るのは面倒だ飛んでいく、と公言していた杏も臍を噛む。山から吹き降りる風は冷たく、勢いは強い。「強風? 望むところよぉ、かかってきなさいよぉ!」と気合を入れた彼女ではあったが――それが却って非効率になるならばその両足を使うという事だ。否――
「それでもアタシは諦めない!」
 ――言葉通りそれでも時折空にはばたく杏ではあるが、大体この辺りは徒労であった。
「……それは兎も角」
 薄い唇が白い溜息を吐き出した。
「何でこのルートにしたんでしょう、桃子さん。登山ルートが既にルートと呼ぶ代物では無い気がするのですけど……」
「流石、桃子さんのチョイスです……!」
 リセリアの心からの呟きにきなこが相槌を打った。
 雪の積もる足場、凍りつくような風。足を滑らせればこれは確かに危険である。
 きなこの中に予めあった予感はある意味で当たっていたという事だ。念の為用意した回復スキルと翼の加護は万全に万全を重ねた備えである。桃子という女が真冬の富士をプロデュースしたならばそれが怪物になる事はある意味で早晩知れていた。
「この方が面白いじゃないですか! 雪如きではこのももこさんを阻む事など叶わない!」
「……どのももこさんを阻もうとしてるか知らねぇけど、一般人なら数回死んでるぞ」
 何故か笑顔で突き進む桃子に少し疲れた調子で猛が突っ込みを入れた。
「それにしても流石アシュレイさんと言うべきなのでしょうか……」
 白い息を弾ませたきなこはそれでも自身の黒い着物が十分な保温効果を持っている事に気が付いた。
 強烈な寒気と困難を極める状況にも関わらずとんでもない格好をした皆さんの衣装は元の形を保ったままだった。
 しかし、まぁ……
「てっぺんについたらやっぱりヤッホーって叫ばないとだめだよね。山登りと言えばヤッホーだしねー元気よく叫ぶよ!」
 ……如何ともし難くどうしようもなく寒そうなティオの場合は最早そういう問題に留まらない。
「みかんを持っていったら冷凍にならないかな?」なんて嘯いた彼女の体温は下がりに下がって下がっている。
「あぅ……」
「危ない!」
 フラーッと傾いたティオを間一髪でリセリアが救援した。
 着物も大概だが水着にいたっては殆ど自殺行為である。加えて彼女には何だか言いように使われたアシュレイの防護魔術なる雑でテキトーなチートが施されていない。それでも運命は青く燃える。燃え上がりまだ見ぬ山頂を夢見ていた。
「……何だかとてつもなく無駄なHPの使い方をしてる気がするぜ……」
「ええ……」
 ざくざくと足元が鳴る。
 息を弾ませた猛にリセリアが応えた。
 二人は顔を見合わせて少し笑い、自然に彼は彼女の手を取った。
 握った手は手袋越しでも心を温めてくれる。体は冷え切っても、力が沸くのはどうしてか――
「青春ですねー。プレイングに書いてないのに盛ってますねー」
「兎に角、こんな所で立ち止まっている訳には行かないわ。止まってたら凍死するし」
 桃子は笑っていたが、いい加減この期に及べばこのルートがちょっと洒落にならない事は杏にも分かっていた。
 ペースを上げ始めるリベリスタ達。ホーリーメイガス(物理)は兎も角、パーティは軽く遭難しかかっている。
「ど、どこかに山小屋がある筈です。そこまで行けばちょっと休憩が……」
「ぜえはあ」と派手な呼吸音を立てる美伊奈がやや前傾姿勢になったまま呟いた。
「……あ……」
 彼女はそこまで言って――とある現実に気が付いた。
「……………ここ、正規のルートから外れ過ぎててそんなのありませんでした……」
「楽しい! 楽しい! やまのぼり!」
 ……ホーリーメイガス(物理)は兎も角、そろそろ皆遭難の危険が近付いていた。

●はつひので。
 どれ位の時間が経っただろうか。
 精も魂も絞りに絞って――『楽しい登山ルート』を踏破する事数時間。
 気付けば雪は止んでいた。気付けば風は止んでいた。
 一歩一歩踏みしめた最後の勾配を登り切り、開けた場所に顔を出すとそこは――待ちに待った目的地だった。
「……着いた……?」
 何処か茫とした調子でリセリアが呟いた。
「頂上……」
 繰り返された逆境にもめげずここまで敢闘してきた美伊奈の目にも感動が宿っている。
「や、やりました……! ……凄い達成感。私感動です。頑張ってよかった……!」
「ぁー……漸く頂上か。結構疲れたな……全員、生きてるかー?」
「う、薄着勝負は……ボクの勝ちだね!」
 猛は冗句めいて言い、何度か冷凍されかけては解凍された――ティオがどうしてか桃子に勝ち誇っていた。
「初日の出はこれからなのです」
 山頂の地を踏みしめた桃子は額に浮かんだ冷たい汗を手の甲で拭い遠い稜線に目をやった。
 未だ夜明けを迎えぬ薄暗い世界は果たして――最高の達成感に包まれていた。
「道とは呼べないルートの踏破……つまりは、富士そのものを征服したようなもの……」
 リセリアも満足そうであった。
 無意味に至難なるルートも通り過ぎてしまえば今更。クリアしてしまえば喉元過ぎて熱さを忘れるのも良いではないか。
 富士山頂の高く澄んだ空気を胸一杯に吸い込んで後僅かな時間(とき)を待つのはまさに格別の時間である。
 用意してきた飲み物が配られた。温かかった飲み物も流石に冷えていたけれど、これで人心地。
「いいじゃない。悪く無いわよ」
 杏が笑った。
「ああ。そろそろ――日が昇る!」
 同じように柔らかい表情を見せた猛の視線の先――彼方の山々が赤く光の輪郭を浮かび上がらせていた。
 嘘のような光景。作り物のように圧倒的な――現実。
 近くて遠い太陽が富士より背の低い山の頂からゆっくりと――顔を出す。
「……綺麗……眩しい、な……」
 茫と呟いたのは美伊奈だった。
「……高嶺から見る初日の出は、普通とはやっぱ違う。また一つ、思い出が出来たな。リセリア」
「ええ。今年も――宜しくお願いします、猛さん」
 並んでお互いの存在感を噛み締める猛とリセリアも真っ直ぐに日の出を見つめていた。
 ティオも、頭を掻いた杏も、ニコニコと笑う桃子も。
「今年もみんなが笑顔でいられる一年になりますように……」
 手を合わせて祈るようにそう言ったきなこも。
 皆が皆、待ち望んだ時間の訪れに――年の始まりのこの一瞬に身と心を浸しているようであった。
 呆気無い程に日は昇る。心を打つには十分なだけの光景を目に焼きつけて日は昇る。
 大きく伸びをして少し気恥ずかしい空気を追い払う。
 年は明けた。日は昇り、山を降りればまた新たな一年が『当たり前のように』やって来る。
 幻想めいた時間に言葉を失ったのは暫し。
 ややあって、明るい声で切り出したのは『山頂でちゃっかり可愛いパンツルックに着替えた』美伊奈だ。
「そうだ。折角皆さん特別な衣装を着たんですし……
 ファッションショー……って程じゃないですけど。
 桃子さん、皆さんの衣装にコメントでもつけて貰えませんか?」
「まあ、アタシの着てる物なんてたいした事無いわよ。細部まで指定して気合なんて入って無いわよ!」
「審査員ですか!」
 杏の言葉は語るに落ちて、応えた桃子が一同の衣装をぐるりと見回す。
「それもいいけどよ。記念撮影とかしておこうぜ!」
 名案を切り出した猛が歓声を受けてカメラのタイマーをセットする。
「じゃ、アタシがセットしてあげる。いい? 笑顔よ。いい笑顔を忘れないでね」
 杏の声に合わせて並んだ面々。『いい笑顔』を上手く張り付けて――
「ああ――ッ!?」
 タイマーをセット。急いで列に加わりかけた杏が躓いて宙を泳いだ。
 残されたのは整列した六人が転んだ杏に驚く写真。
 何処か忙しないその写真は確かに一月一日の時間を切り取る思い出だった。
 青く高い空に杏の声が木霊する。

 ――ちょっと、今のはやり直しを要求するわ――

 そうして2013年が、始まった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIっす。
 六人シナリオです。描写たっぷり出来ました。
 後はそう――希助VCによるGJをお待ち下さい。

 シナリオ、お疲れ様でした。

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レアドロップ:『集合写真!(ふじさん)』
カテゴリ:アクセサリー
取得者:雲野 杏(BNE000582)
大石・きなこ(BNE001812)
葛木 猛(BNE002455)
リセリア・フォルン(BNE002511)
ティオ・ココナ(BNE002829)
朝町 美伊奈(BNE003548)