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【ラトニスの遺産】尻尾の分かれたアレキサンダー4世


 ぶみゃぁぁぁぁご。
 わっしの名前はアレキサンダー4世や。
 ご覧の通りの猫やけど、侮る無かれ。此れでもアレキサンダー四天王の一匹にしてご近所猫のボスなんよ。
 ちなみに他の四天王は1世がゾウガメ、2世がニシキヘビ、3世がセントバーナードでな、協力して御主人の家を盛り立ててきたんよ。
 種は違うても、割と気の良い奴等なん。
 今じゃアレキサンダーも12世……、何か最近他所の子が13世になったらしいけど、まあ増えて来たけど古参と言えばわっし等やね。
 御主人の息子である正太郎坊が生まれる前から家におって、坊の事はまるで弟の様に可愛がって来てんけど、……ところが最近坊が苛められとるって近所の猫達から聞いたんや。
 憎むべきは坊を苛めた『あつしくん』!
 坊が1時間かけて砂場に作ったお城を蹴り壊したり、坊のノートに落書きしたりしたそうや!
 坊がかわいそうや。絶対に許さへん。
 このうらみ、はーらーさーでーおーくーべーきーかー(机バンバン)


「さて諸君に集まって貰ったのは他でもない。諸君は以前行って貰った2度の猫探し、アレキサンダー12世と9世、そして飼い主である正太郎君を覚えているだろうか?」
 集まったリベリスタ達の顔ぶれを見渡し、『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)が問う。
 逆貫の言う猫探しとは、ある付与術師『ラトニス』の遺産である失敗作のアーティファクトを着けた猫を追い掛け回した任務の話だろう。
「二度ある事は三度ある。昔の人は良く言ったものだな。……さて、もう御分かり戴けただろうが、次は4世が居なくなった」
 嗚呼。
「4世は比較的外での活動が多いらしいが、念の為にと私が予知した所、また彼のラトニスの遺作『NEKOMATA』を着けている姿を捉える事が出来た」
 このおっさん、もうフォーチュナとしての力を猫探しに使った事を隠そうともしねえ。
 NEKOMATA、猫又。長く生きた猫の尻尾が二つに分かれ、妖力を持つに至ったと言う妖怪である。外国人であるラトニスが作ったにしては、また随分な名前をつけたものだ。
「このアーティファクトはラトニスが渡航した日本人から聞いた話しに影響を受けて作った作品らしくてな。なんでも本人は単に二又尻尾の猫と言うデザインに心惹かれただけらしいが……」
 この言い方だと、今回のラトニスの遺作にも矢張り欠点があるらしい。
「聞いた話に影響を受けたのだろう。……着けた猫が飼い主を好いていた場合、飼い主を害した者に復讐しようとするのだよ。例え飼い主が然程気にしてないような事でもな」


 資料
『NEKOMATA』
 とある付与術師が作成した尻尾型アーティファクト。
 この尻尾を猫の尻尾の根元に近づけるとくっつき、色、長さも変化してまるで其の猫の尻尾が二又に分かれたような見た目になる。
 此れを装着した猫は擬似的な革醒状態になりフェーズ0の擬似E・ビーストして知能と身体能力の強化される他、少し不思議な力も使える様になるという。
 アーティファクトが外された場合はこの擬似的な革醒状態は解除され、知能も失われてしまう。
 アーティファクトを外すには、アーティファクトである尻尾を見分け、3度引っ張れば外れる。
 このアーティファクトはとある付与術師が日本人から聞いた民間伝承に感化されて作成した物だが、一つの欠点がある。
 其の欠点とは、このアーティファクトを装着された猫が主人に好意的であった場合、主人に対して不利益を成した者に、主人の意思とは無関係に復讐を行なおうと暴走してしまう事


「正太郎君とクラスメイトの風香君が、前回の猫探しの件で急に仲良くなった事に嫉妬した子がいてな。正太郎君に地味な嫌がらせをしたらしい。今現在その子、篤志君がアレキサンダー4世の復讐のターゲットとなっている」
 とは言えアレキサンダー4世も所詮猫である為、大した復讐は出来ないだろうが、それでもアーティファクトの絡む事件を放ってはおけない。
「アレキサンダー4世はわざと篤志君の前で2本の尻尾を見せ、興味を惹かれて捕まえようとする彼を廃工場、……中は既に近所の猫達が勢揃いする猫のお化け屋敷と化しているが、其処に誘き寄せて怖がらせる心算のようだ」
 りべリスタ達が到着する頃には、篤志君も工場の中へと入ってしまっている。
 ボス猫アレキサンダー4世とご近所の猫達、無論この子等を傷つける事も駄目だろう。
「まあ諸君等に頼むのも心苦しくはあるのだが、アレキサンダー4世のやろうとする事は子供の喧嘩に兄弟が出て行くような物だからな。……まあ何とか上手く纏めてくれ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月15日(火)22:22
 ラトニスの遺産第三話、登場猫はボス猫アレキサンダー4世。雑種の雪の様に真っ白な猫です。
 今までの猫と違い、ボスになるまでの戦いの傷跡とかもあったりして一寸強そうな見た目です。まあ所詮猫ですが。
 ミッション目的はアレキサンダー4世からアーティファクトの尻尾を引っぺがすことです。
 リベリスタが本気になったら割りと一瞬で片付く案件ですので、適当に遊んでくれると嬉しいです。


 正太郎君は 『ラトニスの遺産』ぼくのアレキサンダー12世をさがしてください と 『ラトニスの遺産』長靴を履いたアレキサンダー9世 に。
 風香ちゃんは 『ラトニスの遺産』長靴を履いたアレキサンダー9世 に登場しています。

 篤志君は風香ちゃんの事を密かに想っているおませさんでしたが、『ラトニスの遺産』長靴を履いたアレキサンダー9世の時にリベリスタ達の協力で正太郎君と風香ちゃんが急に仲良くなった事に嫉妬してしまった事が今回の事件の発端です。


 ではまあそんな感じで、お気が向かれましたら遊んでください。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
クロスイージス
ステイシー・スペイシー(BNE001776)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
プロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
ホーリーメイガス
宇賀神・遥紀(BNE003750)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)


 夢か現か幻か。
 薄ぼんやりとした意識の中、聞こえて来るは少女の声。
「―――様の話は本当に面白いわ。お爺様聞いた? 日本の猫はランプの油を舐めるんですって。アレキサンダーも舐めるかしら?」
 いきなり何を言うのだろうか。
 好奇心に輝く少女の瞳に、厄介に巻き込まれまいと主の懐へ潜り込む。
 優しく暖かな匂いが鼻孔をくすぐる。嗚呼、お日様の匂いだ。
「まあ、アレキサンダーったら臆病ね。貴方ももう10年以上生きてるんだから、尻尾増えたら面白いのに」
 少女は頬を少し膨らました後、しかしこちらへの興味を失った様に、傍らの黒髪の青年と再び談笑を始める。
 僅かに朱の差した頬は、少女の気持ちを如実に表していた。
 思えば、この少女と出会ってから、或いは主と出会ってから何年になるのだろう。
 少女は成長して年頃となったが、自分は老いた。
 主も自分と同じく老いてはいるが、……彼等と自分は時の流れが大分違うらしい。
 穏やかな日々。この匂いに包まれて、自分は後どれ位彼等と過ごせるのだろうか。
 ふと自分に注がれる視線に気付けば、主が自分を覗き込んでいた。何時も優しい瞳が、心配そうに曇っている。
 大丈夫。心配は要らない。自分は、とても幸せだから。
 ………………。

 ――――――――――――ぶみっ!?
 一の子分、近所の喜兵衛さんちの麿に鼻面を突かれ飛び起きる。麿の名前の由来はその眉毛っぽい額の体毛らしい。
 どうにもいけない。近頃直ぐに眠くなる。
 でも良い夢だった。優しい、暖かい夢。
 ……坊と同じ匂いやった。
 あんな風に年を重ねた正太郎を見る事は恐らく叶わないだろうけど、それでも赤子から成長をずっと見守って来たのだ。
 夢の中のアレキサンダーの気持ちは判る。
 ぶるぶると体を震わせ、眠気を払う。
 そうや、坊の為や。
 正太郎と同じ年頃の子を脅かすのはホンの少し心が痛むけれど、
 いくんよ皆の衆、わっしに力を貸してぇや!

 う゛み゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ー!!!


 ギ、ギ、ギ、ギ、バタン。
 半開きだった重い鉄の扉が、篤志の背後で音を立てて閉じる。
 大きな音にびくりと背を震わせ、慌てて振り返るも既に退路は断たれていた。
 風で閉まるような軽い扉では無いにも関わらずだ。
 無論其れはアーティファクトを装着する事で特殊能力を得たアレキサンダー4世の仕業なのだが、篤志には知る由も無い。
 理解の出来ない事象と言うのは恐怖である。
 赤子は世界の殆どが理解出来ぬ故に常に泣き喚く。篤志とて赤子とは言わぬまでも、まだ幼稚園に通う幼児だ。怖くない訳が無い。
 けれど、篤志は少し涙目になりながらも床に転がっていた細い棒を拾い、廃工場の奥を睨みつける。
 まだ幼いが、篤志の性向は劇場版ガキ大将の其れに近い。
 割れた窓壁の裂け目から僅かな光が差し込むばかりの薄闇に、光る目、目、目、目、目。
 好奇心猫を殺すと言うが、今回好奇心に狩られるのは篤志である。
 如何に強気な性格でも、例え棒切れを持とうとも、あと少しばかり強く脅かせばこの幼児は泣き出すだろう。
 アレキサンダー4世の目的は、正太郎を苛めた篤志への復讐だ。
 けれど其の復讐は間違って……、或いはやり過ぎである。
 意中の女の子である風香と、急に仲良くなった正太郎に嫉妬した篤志。
 恐らく彼は其れが妬心からだとは気付いても居ないだろうけど、正太郎に些細な嫌がらせを行なった。
 アレキサンダー4世は其れに怒りを覚えたのだが、ぶっちゃけ当の正太郎は然程気にもしていないし、そもそも子供同士の諍いに保護者(気取りの猫)が出て行くのも決して良い事では無い。
 其れに何より、其の行いはアーティファクトが原因で行なわれているのだから尚更だ。
 故にリベリスタ達はその子供達の、本当なら口を挟むまでも無い微笑ましい諍いに介入する。

 無数の何かが近寄る気配に、篤志の肩がビクリと震え……、しかし其の時だった。
「よいしょーっ……って、あらん?」
 閉じたまま開かぬ鉄の扉に苛立ち、割りと本気で蹴り開けた 『肉混じりのメタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)が吹き飛んでしまったドアに思わずやっちゃった顔になり、物音に驚いた猫達の気配が一斉に遠のく。
 とは言え、細かな事をあまり気にしないステイシーが其れを引き摺る事は無く、驚愕に涙を零した篤志の前に回りこみ、取り出したハンカチで其の目元を拭いてやる。
 幾ら意地悪をして仕舞ったとは言え、強気な性格をしているとは言え、矢張り子供は可愛い物だ。
「お、おばちゃん誰?」
 不用意な一言さえなければ。
 幼稚園児や、小学校の低学年位から見れば、残念な事に20代は前半でも割りとおじさんおばさんの域である。
 母親が居れば慌てて咎めるであろうけれど、篤志の母親はPTAの集まりでちょっと良いお食事をしている最中だ。
 悪気無く繰り出される其の一言は割と心に突き刺さり、一瞬猫達にこの餓鬼を差し出したい衝動に駆られるが、其れはいけない。

 ぶみゃあーご!
 ボス猫の一鳴きに、戦意を取り戻した猫達が再び包囲の輪を縮める。
 大人と言う異分子が乱入した以上、驚かして泣かせると言う手はもう使えない。
 子供にとって大人の存在はそれだけで支えとなるからだ。
 そうなれば猫達が取る手は唯一つ、実力行使。
 一斉に飛び掛る第一陣の猫達の前に、けれども最速で割り込んだ『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)。
 隠す気0で広げられた亘の翼が篤志の身体を包み込み、猫達は一斉に其の手羽先に齧り付く。バリムシャア!


「ふぃなーれだ!」
 リングを翳された腰のベルトがやけにテンションの高いコールを叫ぶ。
 足元に発生した魔法陣より炎の魔力を右足に纏い(今はどうやらフレイムスタイルという設定らしい)、宙を舞う正太郎の身体。1/4程身体を捻る側方倒立回転飛びで威力を増幅し、更に空中反転(一体どうやったのかはリベリスタの目を持ってしても見切れない)からの飛び蹴りが『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)に炸裂する。
 日曜日の度にパパを練習台に特訓した必殺技の威力に夏栖斗の身体がキリモミしながら宙を飛び、綺麗に公園の砂場へと突き刺さった。……まあ夏栖斗が自分で飛んだのだけれど。
「……ぶはっ、そろそろ気が済んだ?」
 砂場から顔を引き抜いて砂を払い、問う夏栖斗。彼がこんな事をしているのにも理由はちゃんとある。
 妹である『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)の名前や逆貫の名前を出し、付いて来てくれる様にと頼んだ夏栖斗だったが、正太郎はママに知らない人について行ってはいけないと躾けられていた。
 とは言え、知り合い2人の名前を出された事により悩む正太郎。夏栖斗自身も人の良さそうな顔をしているし、断るのも申し訳ないが、でもやっぱりママは怖いのだ。
 しかしそこで正太郎の脳裏に電流が走る。知らない人についていっちゃ駄目だから、知り合いになってしまえば良いのだと。
 実に何時か誘拐されてしまいそうな結論ではあるけれど、難問に答えを出した正太郎は笑顔で夏栖斗に先ずは自分と遊ぶ事を要求する。
 普段はヒーローである事を望んで振舞う夏栖斗が敵である怪人役と言うのも皮肉だが、まあ子供相手では仕方が無い。
「もういっかい!」
 oh……。

 手羽先がぶがぶ。凄く痛い。
 しかし亘は猫達に噛み付かれたまま笑顔を……、何処か至福そうな表情を浮かべ、篤志に向き直る。
「ふふ、安心して。怖い事はしません。ただ、ちょっと男同士お話しませんか」
 いや怖いから。
 恭しく一礼をする亘だが、羽にぶら下げたままの猫達が非常にシュールだ。
 とは言え猫達はまだまだ数が居る。何せご近所中の猫が集まっているのだ。
 数十匹にも及ぶ猫達を、流石の亘も一人で受け切るのは難しい。リベリスタとしての力を奮うなら兎も角、相手は特に罪も無い、そして大した考えもない猫なのだから。
 にゃあ!
 しかし其の時、猛る猫達の前に進み出て咎める様に鳴き声を発したのは一匹の雌猫、Sleepy。
 飼い主である『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)と雷音の二人から煮干を報酬に、猫達の説得を任された彼女。
『ちょっと貴方達やめなさいよ』『なんやねん姉ちゃん邪魔すると怪我するで』『小さな子供相手に大勢で寄って集ってなんて卑怯じゃないの』『しゃあないやん。脅かすだけやったけどなんや大人が出てきたんやから。わし等かてしんどいわ』
 アレキサンダー4世に統制されては居ても、否、だからこそ一定以上の猫としてのモラルは保つ猫の集団。人間相手なら兎も角同種であるSleepyの言葉には一応の耳は傾ける。
 とは言え、流石に行き成り現れた余所者とボスの言葉では重みが違う。
 けれどそんなボスの言葉より更に優先されるのが、……食欲だ。
 不意に猫達の鼻孔が、蹴り破られた扉から流れ込む食い気を誘う匂いを捉える。これは……、そう炙られた鰹の匂いだ!


「ぱぱさんそれ美味しそ……」
 パキリと小気味の良い音を立て、缶詰を開いて中身を紙皿に移す『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)。
 其の視線は匂いの元、『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)が炙る鰹に釘付けになっている。
 とは言え、のんびりしている暇などありはしない。廃倉庫から匂いに誘き寄せられた猫が次から次へと飛び出して来るのだ。
 火をつけてしまった彼等の食欲を満たさねば、一体何をされるかわかった物では無い。
 飢えた獣、ご近所のお猫様+Sleepyの20を上回る数の猫達。
 餌にあぶれた猫が早くしろと言わんばかりに旭の足を肉球でぺちぺち叩き、缶詰開けを催促してくる。
 遥紀が鼻先に鰹を差し出してやれば、指ごと噛み千切らん勢いで食いつかれてしまう。
 にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー。
 何を言ってるのかは全く判らないが、兎に角喧しい。
 あまりの猫の数に遥紀が癒し手である事を放棄して動物会話の力を習得するか悩み始めたりもしたが……、其れはさて置き、倉庫内のほぼ全ての猫は此処に誘き寄せられた。
 飼い主であるロッテの意向を忘れ去ったSleepyまでもが此処に居るのだ。残る例外は唯一匹。

 うにゃー! うにゃー!
 後ろ足で立ち、眼前の木箱にバンバンと前足を叩きつけて憤るアレキサンダー4世。
 もう少しで復讐を果たせる所だったのに次から次へと現れる邪魔者達。更には邪魔者達の用意した餌に釣られて自軍が崩壊してしまったのだから、流石の4世にも打つ手はもう無い。寧ろ子分達に混じって餌を貪りに行きたい衝動を抑えるので精一杯だ。
 しかし、苛立ちを籠めた木箱バンバンが不意にスカる。急に宙へと浮き上がった自分の身体に驚いた4世が思わず身を捩って暴れようとした其の時、彼をひょいっ、とつまみ挙げた其の犯人、『蒙昧主義のケファ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)が4世の顔を覗き込んだ。
「貴方、正太郎ちゃんの所のアレキサンダー4世でしょ?」
 ぎくり。エレオノーラの言葉に、体を大きく震わせて抵抗をやめる4世。
 ……正体がばれている。エレオノーラの視線を避ける様にプイと顔を逸らす4世だが、其れも無駄であろう。
 何故ならエレオノーラは飼い主の名前を知り、数多いアレキサンダーの中から自分が4世である事も見分けて見せたのだ。今更誤魔化し様が無い。
 どうしよう。怒られる。そう言えば、人間の見分けとかはあまりつかないけれど、この特徴的な人間は前に一度家に来て9世と遊んでいるのを見たような気がする……? 多分、そう言えば他の邪魔者の多くも其の時一緒に居たような……。
 パパも正太郎も甘いが、ママだけはいけない。彼女は非常に簡単にお仕置きとして夕飯を抜きにして来るのだ。其れだけはどうあっても避けねばならない。 
 再びじたじたと暴れ始めた4世を、けれどもエレオノーラは其の腕に抱え直し、
「ほら、良いから大人しくしなさい。そろそろクライマックスよ」
 木箱に腰をかける。その彼の視線の先には、壊れた扉を驚きに目を丸くしながら潜る、正太郎の姿があった。


 廃工場に辿り着いた正太郎が、先ず最初に驚いたのは雷音の格好であった。
 猫耳+付け尻尾を身に付け、ちょっと猫を意識して体を捩る彼女。知り合いのお姉さんの恥ずかしい姿に……、けれども正太郎は笑顔で見なかった事にする。
 正太郎は知っていた。例えばママがちょっと際どい下着を着て鏡の前に居る時は声を掛けてはいけないのだと。ましてやポーズを取ってたりした事はパパにも秘密にしないといけない事を。
 まあ其れはどうでも良いのだけれど、空腹を満たした猫にストッキングで遊ばれるステイシーや、給仕に疲れ果てて猫に埋もれてぐったりしている旭に遥紀、Sleepyが言う事を聞いてくれない事に動物会話で抗議するも、逆にやり込められて地面に突っ伏すロッテ。
 非常にカオスな状況だ。
 しかしそんな中、
「ほら」
 男同士の話合いを終えた亘が、勇気付けるように篤志の背中を押す。
 ほんの少し躊躇いながらも、正太郎に向かって近寄っていく篤志。
「あれ、あつしくん?」
 不思議そうに首を傾げる正太郎。何故、此処に幼稚園の同じ組の子が居るのだろう。

 うにゃー。
 一声鳴く4世。また正太郎が篤志に苛められるのでは無いか、或いは喧嘩が始まりはしないだろうかと心配したのだ。
「優しい子だからきっと大丈夫よ」
 宥める様にエレオノーラは4世の背を撫でる。
 無論心配する気持ちはエレオノーラとて同じなのだけど、子供達の関係に必要以上に大人が介入すべきではないし、其れに何より篤志も正太郎も疑いようも無く良い子であるのだから。
 ……ただ信じて見守るのみだ。



「あぁ、そうか。了解した。お疲れ様だ。ありがとう」
 短く労いと感謝の言葉を伝え、逆貫は携帯の通話をオフにする。
 同時に送られてきたメールに添付されている画像を開くと、其処には大勢の猫に囲まれて写真に写る、リベリスタ達と篤志に正太郎、そして尻尾を外されてエレオノーラに抱えられた4世の姿。
 僅かに目尻を下げながら、逆貫は事件の報告書作成に取り掛かった。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 参加有難う御座いました。
 ラトニスの遺産3話目終了です。
 如何でしょうか? 御気に召したら幸いです。

 家捜しすれば他にも出て来るんじゃないのとの予想ですが、まあそう思いますよね。
 ラトニスの遺産のお話は次回がラストになります。
 今までとは多少毛色の違う話になりますが、もし良ければお待ち下さい。