● ふわり、ふわりと白雪が舞う。 大地には雪が積もり、辺り一面はもう銀世界。 『くすくす……くすくす……』 そんな銀世界の中を、笑みを浮かべながら妖精達が踊る。 彼女達の羽ばたきによって起こる風に、降る雪もさらにその降雪量を増していく。 否――。 雪は空から降っているのではなく、舞踊る妖精達が降らせていた。 さながら、全てを雪で包み込むかのように。草も、木も。そして、そこに生きる動物でさえも! 『くすくす……あはは……♪』 それは、この場所を訪れた人間とて例外ではなかった。 ふっと吐き出された妖精の吐息は、全てを凍らせる吹雪となり――、 「う、ぁ……!?」 その息を受けた男性が今、氷の像と化した。 彼が何をしに、この場所を訪れたのかは定かではない。 妖精達が雪を降り積もらせる姿を、遠巻きに見て興味本位で近づいたのだろうか。周囲を見渡せば、彼女達が踊っているこの場所にだけ、雪が積もっている。 降ってもいないはずの雪が、とある一部分にだけ積もっていたら、それは確かに興味を引く事柄であるだろう。 『くすくす……ふふふ……』 『あははは……♪』 楽しそうに、妖精達は舞う。 ● 「銀世界って、綺麗ですよね」 何時もの制服から、普段着に着替えた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は、少し微笑みながら言う。 彼女が垣間見たのは、少しだけ未来の話。今から向かえば、誰も被害に遭うことはないらしい。 「現れたのは、雪の妖精の姿をとったエリューション・エレメントです」 雪原を舞い踊るスノーホワイト達は10体。そして彼女達を統率するかのように、フェーズ2の、言うなれば『スノークィーン』が中央に鎮座しているようだ。 スノーホワイト達は作り上げた雪原でばらばらに動きながら、ひたすらに踊り続けている。 「その吐息は吹雪となり、羽ばたけば小さな氷柱が相手に襲い掛かる、冷たい攻撃なんですよね」 特に吹雪をまともに受けてしまえば氷の像と化すため、注意する必要があるだろう。 雪原の広さは現時点でおよそ30m四方、これからどんどん広がっていく事となるが、踊る妖精達はどれか1体でもが攻撃を受けない限り、吹雪を放つことは無い。 そして妖精達は雪原が広がらない限り、雪原の中だけで行動する。 「これだけ聞けば、なら雪原に入らなければ準備は整え放題とも思えるのですが……」 和泉は言う。妖精達は周囲の生物をしっかりと見極めて動くため、ある程度視界に入ればその動きにあわせて向こうも態勢を整えるのだと。 となると、じっくりと準備を整えれば整えるだけ、相手も準備を整える、と言う事か。 「迅速に、確実に攻め立てることが重要となります。吹雪への対策も、可能なら忘れずにいってくださいね」 ただ、自分の住みやすい環境を作ろうとしているだけのエリューション。しかし広がれば碌な事にならないため、止めなければならない。 リベリスタ達に去り際「防寒対策も、してくださいね」と告げ、和泉はリベリスタ達を見送るのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月06日(日)22:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●妖精達は雪原で踊る 寒い。劇的に寒い、空気が痛い。 温度計があったとしたなら、下手をすると氷点下を指しているのではないだろうかと言うほどに、寒い。 「さ……寒いね……。結構着込んできたけど……あんまり長居したくないかも……」 ガタガタ震える『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)は、早く目標を見つけ、倒し、帰りたいという気持ちに駆られているようだ。 家でのんびりとゲームをしている事が出来たら、どれほど幸せだっただろうかと思うものの、仕事は仕事。きっちりとエリューション達を倒さなければならないと、彼女の視線はあちらこちらを映していく。 リベリスタ達の戦いは、まず先に寒さとの戦いとなっていた。 「流石にこの環境で肌を晒すのは避けたいですね。恥ずかしいとか以前に、死ぬ、いやマジで死ぬ」 と言いながら白い息を吐く『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)の言葉が、この場の寒さを最も端的に現しているだろう。 もっともこの言葉は、つい先日買ってしまった水着を服の下に着込んでいるから出た言葉であるようだが、別に肌を晒さなくても寒いものは寒い。 「銃使いとして、指先の感覚が鈍ることは死活問題であるからな」 この寒さに対してちゃんと対策を練っていなければ、戦いに支障が出る可能性もある。そう考えた『黒太子』カイン・ブラッドストーン(BNE003445)は手袋をはめた手で愛銃にそっと触れる。 普段は黒い軍服を着用している彼も、この時ばかりは白い防寒具に身を包んでいた。 「我は勝利を手にするためには、驕らぬ」 彼は決して敵を見くびってはいない。負けないという自信を胸に秘めてはいるが、だからこそ入念に準備をしてきたのである。 白い雪が、しんしんと舞い散る山。 その山の寒さに耐えながら雪の妖精を探すリベリスタ達の服装も、また白に準じたモノが多い。 「……折角の可愛い服に、ミスマッチも良いところだわ」 自分の服装に軽くため息をついた 『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)のケープコートは、少し温かみを感じさせるミルク色。 近くを歩く『住所不定』斎藤・和人(BNE004070)のコートは茶色で、『続・人間失格』紅涙・いりす(BNE004136)に至ってはボディスーツに仮面といういでたちではあるが、戦場はファッションショーではないのだから、寒さを凌げれば良い。 「ルー、サムイノ、ダイスキ!」 楽しそうに雪原を走るルー・ガルー(BNE003931)だけは普段着の上に毛皮を纏っただけの姿であるが、北欧生まれの彼女にとって、これくらいの寒さはどうということもないのだろう。 「あそこじゃないかしら?」 しばらくそうこうして進んでいた中、『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)が何かを見つけたように、ある場所を指差す。 雪は降っているものの、まだ積もるほどではない。 だがその場所だけは、雪合戦でも出来そうなほどの雪原と化している。 さらに近寄ってみれば、小さな妖精達が舞い踊る姿を遠巻きに確認する事が出来た。その場所が、戦場だ。 『くすくす……あはは……♪』 『ふふふ……♪』 楽しそうに踊る妖精達は、女王であるスノークイーンを中心に据え、空から降る雪が霞んで見えるほどの雪を降らせ続けている。 ある妖精は2体で社交ダンスを踊るかのように、また別の妖精はフィギュアスケートでもしているかのように。 それがただの踊りであるならばまだしも、その羽ばたきが雪を降らせる要因となっているのだ。 「雪の女王に妖精って、話に聞くだけなら絵になる光景だよな」 「景色に見合っていて、とっても素敵なのにね」 御伽噺や絵本の世界ではありがちな光景で、実際に見ても神秘的な美しいと和人は感じ、であるが故に「勿体無いにも程があるわ」と残念そうに呟く焔。 だがその神秘的な光景は、本の中の世界だけで十分だ。 ●妖精達は全てを凍らせる 「自身の住みやすい環境に作り替えるとか、自然界でもいないわけでもないが。面倒な事だね。まぁ、いいさ。お仕事だ」 素早く近くの木々に身を隠しながら、いりすがエリューション達の作る雪原へと近づいていく。 出来うる限り近くへと、多くの敵を視認出来る位置へと進むいりすは、どうやら自身が納得出来る場所に陣取る事が出来たのだろう。身を隠したまま、他の仲間達が配置につくのを静かに待つ。 『ふわふわ、ふわふわ~♪』 『きれい、きれい』 いりすがそうしている間にも妖精達は雪を降らせ、また少し雪原がその広さを増した。 「こっちは配置につけたけど、他の皆はどうかしら?」 妖精達の雪に巻き込まれないように気をつけながら、寒さにまだ震えているアーリィを伴い配置につく焔。 「――大丈夫?」 「動けば多分温まりますよ……」 流石に心配する焔ではあったが、激しい運動――もとい戦っていれば、自然と体は温まるだろうとアーリィが答えて。 「頑張って。他の皆もOKみたいだし、行くわよ」 ならばと軽くエールを送った焔が周囲を見渡せば、仲間達も何時でも飛び出せる位置についたようだ。 ここでもし誰かが何かしら妙な動きを起こしていたら妖精達に気付かれたかもしれないが、流石はアークのリベリスタと言う事か。気付かれない程の最低限の動きで、すぐに攻撃を仕掛けられる位置に誰もが陣取っていた。 「では、行くとしようか」 月明りを反射する白い雪すらも飲み込まんとする、いりすの漆黒のオーラ。 真っ先に飛び出した彼女の不意の一撃に、妖精達も虚を突かれたのだろう。1匹、また1匹と常闇に包み込まれた妖精が、それまでの楽しそうな表情を一気に苦痛のソレへと歪めていく。 「私も私の役目を果たすから、ソッチも頼むわよ?」 「わかってるよ、任せて!」 他方ではアーリィを庇う事を『自身の役目』と言った焔が彼女の前に立ち、当のアーリィは行動に無駄が無いようにと戦いの流れを見守る構えを見せ、 「アオーン! イッパイ、ヨウセイ、タオス!」 彼女達の眼前では今、ルーが勢い良く飛び出して手近な妖精を氷を纏った拳で殴りつける。 「あーあー、元気なこった。じゃあ、行こーか」 「そうですね、少しうらやましいですが……」 その後を追った和人と生佐目はルーの元気さ加減に感嘆の声を上げつつ、彼女の殴りつけた妖精にさらに攻撃を叩き込みにかかっていた。 「見てる分には『わー綺麗ーっ』て感じだが、叩くとなると素早くて厄介だな、おい」 とは言え体格が小さく、素早い妖精に直撃を与える事は容易な話ではない。すんでのところで振り下ろした刃を避けられた和人は、「くそ、逃げんな!」と無茶な注文を付けている。 『怒った、怒った』 『あははは、凍らせないと』 対する妖精達は虚を突かれ不意打ちを受けた格好だが、現れた冷凍希望(?)の侵入者達への対応はシンプルに『凍らせる事』だけである。 『ふぅ……っ!』 ある妖精は吹雪を伴った吐息を。 『踊りましょう?』 またある妖精は、氷柱を降らせるダンスで、リベリスタ達をおもてなし。 様子を眺めるスノークイーンは、真っ先に目に付いたらしい生佐目を目掛けて吹雪の息を浴びせかける。 (寒っ! これは寒っ!?) あまりに冷たすぎる攻撃を受け、運悪く凍りつく 。 しかし彼女の身を包み込む氷を溶かすのは、 「……さあ、いきましょう。女の子は優雅に。御伽噺の住人は書物に棲む存在であるように」 少し遅れて飛び出した淑子の役目だ。『お父様、お母様。どうかわたしを護って』と両親に祈る彼女によって、極寒の冷凍状態から生佐目が解き放たれていく。 「さて妖精だか、羽虫だか知らぬが。我が視界に入る痴れ者は、悉く排除して見せよう」 「ここからがお仕事ですね、行きます!」 そして数体かの妖精を暗黒で包み込んだカインが妖精の1体を倒す中、リベリスタ達の受けた傷はアーリィの歌声で癒されていった。 「良い流れだな。このままいけるか?」 さらに多くの妖精をを巻き込める位置を探し、いりすはこのまま押し切れないかと考える。 当然だろう、布陣もここまでの展開も、理想に近い形ではあるのだから。 「あぁ、行けるだろう。問題は少ない」 多少の不安要素はあるものの、瓦解する程の事はないとカインが言うように、流れはリベリスタ達に傾いてはいる。 「俺がいるし問題はねーよ」 その不安要素とは、氷を溶かす役目を担う淑子の経験的な問題と体力的な問題ではあるが、例え彼女が倒れても自分がいるからと和人は豪語する。 加えて、妖精は雪原から出る事は無い。 逆に言えば、囲んで殴り倒すには丁度良い形で展開してくれているのだ。 「攻城戦のような雰囲気ですね。城壁が無いので、攻め放題ですが」 「ゲームだと結構難しいんですけどね、攻城戦って」 どれほど回避に優れていようとも、苛烈な攻撃を全て避けきれるわけもなく、『攻城戦のよう』と評した生佐目によってさらに1体の妖精がパシャリと水音を立てて消えていった。 「タタカウ、タオス、ショウリ!」 「そーゆー事だ、行くぞ」 さらにルーと和人が弱った2体にトドメを刺せば、残る妖精はクイーンを含め7体。 『凍りなさい』 「ルー、コオラナイ、ダイジョウブ!」 負けじとクイーンがルーへと吹雪を放つが、絶対者であるルーが凍りつく事は絶対にありえない。 こうなれば、いかに全てを凍らせる猛烈な吹雪であっても、ただの冷たいだけの息へと成り下がってしまっている。 『……壁がある』 一方では吹き荒ぶ吹雪や舞い散る氷柱からアーリィを庇い、焔は文字通りの盾となっていた。燃え上がる闘志を胸に秘めた彼女は、妖精達の氷を受けても早々凍る事はない。 「そう簡単にはやられないわよ、私の炎を消したいなら、もっと強く吹雪かせなさい!」 それでも何度目かの氷柱舞によって流石に凍りつく焔ではあるが、 「美しい花に棘、可愛らしい妖精さんには氷の息吹。そうと相場が決まっているように、わたしにも持ち合わせがあるの」 彼女を包む氷は淑子が先程の生佐目と同じように融かしていく。 どう頑張っても凍らないルーの存在。 そして他のリベリスタを凍らせたとしても、淑子によって融かされていく現実。 「傷の治療は任せてよ!」 凍らせる事が出来なくとも手傷は与えているのだが、その傷も与えた傍からアーリィが癒しにかかり、決定打にまでは至らない。 『どうする、どうする?』 『落ち着きなさい』 楽しそうに踊り続けていた妖精達も、ここに来てようやく『大変だ』と慌てる素振りを見せ始めた。 指揮を執るクイーンに至っては打開策を見出すだけの戦術は持ち合わせておらず、落ち着けという言葉を発するのが精一杯である。 それが、実力で劣っても作戦でそれを覆すリベリスタ達と、そうでないエリューションの違い。 「身の程を知らぬ雪の女王を降すのも、また貴族の役目」 スノークイーンは強くはあれど、『身の程を知らぬ』とカインが言い放つ程に、女王らしき聡明さを持ち合わせてはいないのだ。 「踊りたいのならば、我が闇にて囃してやろう。とくと聴け、我らが闇の重奏を」 女王としての格は知れた。確かに強いが、ただそれだけだ。 妖精達を暗黒のステージに包み込んだカインによって、楽しそうな声が次第に恐怖の声へと変わっていく。 『楽しく踊りたい!』 『綺麗な雪を降らせてるだけなのに!』 などと言う妖精達ではあるが、彼女達はエリューション。倒さなければならない、敵。 「神秘は秘匿されるべし。……少なくともこの世界のルールはそうなっているの」 何度も氷柱をその身に受け、傷だらけの淑子が妖精達に言う。ここは貴方達の存在するべき場所ではない――と。 ●雪の女王の終焉 『あぁ、私の可愛い妖精達……』 傷つきながらも、凍らされながらも、リベリスタ達は10体のスノーホワイトを倒す事には成功した。 それでも身を包む氷を淑子が、受けた傷はアーリィが癒してはいるが、傷は決して浅くはない。 「一気に勝負をつけたいところだが……」 と言いつつ、チラリと淑子を見るカイン。目に映る彼女の傷は深く、立っているだけでもやっとと言ったところか。 ここは一気に攻め立てるか、少し態勢を立て直すか。冷静であるが故に逡巡する彼に、後方から声がかかる。 「だからこそ一気に行くべきよ」 壁としてアーリィを守り続けた焔だ。 下手に態勢を立て直して時間をかけるより、一気に行った方がどちらかといえば安全だと彼女は判断したのだろう。 「おーけー、行こうか。その方が手っ取り早いしな!」 ならばさっさと倒してしまおうと刃を振る和人を皮切りに、一斉に攻勢に出るリベリスタ達。 「――コッチの方がやっぱり私に合ってるわ。ねぇ、貴女クイーンなんでしょ? だったら名前に恥じぬ戦いを最後まで魅せてみなさいよ!」 ようやく壁の役目が終わった焔にとって、それは待ちに待った瞬間でもあった。 全力を持って叩き込む炎を纏った拳は、心なしか何時も以上に燃えているようにすら見える。 『凍れ……何もかも』 能面。そう形容するに相応しい程に表情を変えないスノークイーンの吹雪が、焔の拳を受けながらも淑子へと飛ぶ。 「ルー、ナカマ、マモル!」 「ありがとうゴザイマス、ルーさん!」 もしも当たっていれば淑子は倒れていただろう。だが、咄嗟に庇ったルーがそれを許さなかった。 「生憎と小生は敵でないモノに興味が無い。塵も残さず消滅させてやろう」 「配下をやられた裸の女王よ。配下を無為に散らした責を取れ。痛みを知らぬものは、人の上には立てぬのだ」 ルーが淑子を庇ってくれるのならば、後顧の憂いはない。後は消滅させるのみとスノークイーンを常闇に包むいりすに合わせ、カインは自身の受けた痛みを武器にクイーンを攻めていく。 最早、いりすにとってはクイーンですらも敵だと感じられないほどに矮小な存在――と言う事か。 確かに10体の妖精という城壁を失った女王は、リベリスタ達を倒す決定打が完全に欠けてしまっている。 「まーまー、キツイこと言いなさんなって。つー訳で、ダンスでも如何?」 そうしている中、クイーンに対して手を差し伸べ誘いの言葉をかける和人。もちろんこれはただのポーズに過ぎないのだが、『良いお誘いね』とクイーンが言う辺り、下手をすると2人でダンスも始めかねない。 「人とエリューションの、禁断の恋っ……!?」 いやいや、それは少々薄い本を読みすぎです、生佐目さん。 「ゲームではありがちだけど、まさか現実に見られるなんて!」 こっちはこっちでゲームのしすぎです、アーリィさん。 などと一部が多少脱線し始めたリベリスタ達ではあるが、その攻撃には決して悪ふざけを含んではいない。 「貴女が全てを雪に染め上げようと言うのなら、私が貴女ごと緋色に染め上げてあげるわっ!」 何度目かの攻撃の後、焔の拳がクイーンの動きを止める。 燃えはしない。 ただ、融けて消え行くのみ。それが、クイーンの終焉の時――。 ●雪融けの時 「ルー、ヨウセイ、タオシタ!」 最後に残ったスノークイーンの消滅を見て、ルーが天に向けて大きく吼える。 配下とも侍女とも呼べる妖精達を倒されていては、いかな女王といえど8人のリベリスタには色々な面で負けていたのである。 「お友達になれるなら、還送出来るなら良かったのだけれど……ごめんなさいね」 もし、この妖精達がエリューションではなくアザーバイドだったならば、友達になれただろうか。また会える存在だっただろうか。 ぽつりと謝罪の言葉を口にした淑子の顔は、少し寂しそうにも見えた。 戦いの後に残ったのは、妖精達が作り上げた雪原だけ。 この雪原も、しばらくすれば融けて跡形もなくなっていく事だろう。 「残念だな。何か他に残っていれば良かったんだが」 「まぁ……良いんじゃねーの? 月に照らされる雪ってのも綺麗なもんだ」 妖精達の置き土産である雪原を眺め、そんな会話を交わすいりすと和人。 2人の目の前では、後で使おうとしているのか、生佐目がせっせと水筒に雪の綺麗な部分を詰め込んでいく姿も見える。 「カキ氷とか、ドリンク用の氷になれば良いかな」 という生佐目ではあるが、果たしてエリューションの降らせた雪は飲食に適しているのか? しかも先程まで寒さに震えていたはずだが、カキ氷を食べようとも言っている。 「寒い時に食べるアイスは美味しい、ってあれかしら?」 なるほどと頷いた焔の言葉が、生佐目の気持ちを端的に言い表していると言えるだろう。 確かに寒い時期に食べるアイスは、暖房で火照った体を冷やしてくれるから――とかそんな話はさておき。 「おかげであまり怪我せずに済みました。ありがとうです……。あ、どこか痛むなら言ってくださいね?」 「ううん、私は大丈夫よ。それより、雪だるまでも作らない?」 庇い続けてくれた礼を述べるアーリィに対し、そう提案する焔。 その提案はもちろん断る必要の無い提案であり、他のリベリスタ達にとっても面白そうな提案ではあった。 あぁ、ならば皆で作ろうじゃないか。記念の雪だるまを。 「実際珍しい光景だしね、記念に撮っておくのは悪くないでしょ」 そして完成した雪だるまを背に、焔のデジカメが今の瞬間をデータに収めていく。 儚く消えていった妖精達の、置き土産。 それは戦った相手であるリベリスタの勝利を祝福する、プレゼントだったのかもしれない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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