● 「厄落とし」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、端的にそう言った。 「馬鹿騒ぎして、大笑いして、今年一年の厄を祓うのは大事なこと」 神秘界隈に生きるリベリスタは特にね。 無用な恨みだの買ってるだろうし。 「ただ」 イヴは無表情。 「未成年も結構いる。飲酒喫煙などもってのほか。理性を失うような嗜好品も許さない。そんな中で本気で馬鹿をやるとしたら、それなりのお膳立てが必要」 モニターの全画面を贅沢に使った相撲文字。 『どき! 年末年忘れ大仮装大会。ついでに性別も変えちゃおう! ポロリはぎりぎりラインでね!』 「とりかへばやの鏡を使おうと思う」 『とりかへばやの鏡』 怪しい光線を照射し、対象の性別を反転。 本体を破壊しない限り、戦闘終了後五日間そのままという強効果。 その容姿は、本人の願望・恐れ等々を体現させ、外見年齢すら超越させる。 心に住まう人物に似通ってしまう事例まであり、あなたの心のひだお見通しになってしまうのだ。 現物は既に破壊されているが、そういうモンまで再現しました。 過去数回、VTSでの性能実験が有り、ちょっと人生変わったリベリスタがいたりいなかったり。 ドアに殺到するリベリスタ。 残念。ここは通称「要塞ブリーフィングルーム」 鍵はあかないよ。今日はお茶をこぼしたりしない。 「今回はお楽しみだから、任意。嫌ならしなくてもいい」 何だぁ。それを先に言ってよ。 「ただし、いちいち処理分けるのめんどくさいから、処理は一括でする。変化したくなければ心を強く持って」 ひどい。 「それで、みんなで同じことをして連帯感を上げるの大事だと思う。仮装投票はしょっちゅうしてるし」 仮装や性別反転が目的じゃなくて、あくまでも盛り上げ要素の一つということですね。 「そう、みんなでマイムマイムを踊る」 それは、フォークダンスのアレですか。 どっかのライブハウスで調子に乗った連中が店を破壊してから、全国のクラブで禁じられた遊びになったという。 大勢でやると、なぜか高速回転、暴徒化するという。 自分の身は自分で守らないと危険なほどの極度の興奮状態に陥ってしまうという。 「そう。前横後ろポン×4、前進×4、溜、から、前キック、後退×4、左進×4、片足ジャンプ×4、足変えてその場片足ジャンプ×4、以下繰り返し。の、マイムマイム」 旋風脚四回、移動攻撃からの斬風脚、全力離脱からの左右への空手チョップ及びローキック。という解釈でよろしいか。 「――リベリスタの良心に期待している」 まあ、VTSだし。 心に怪我はしても、死にはしない。 でも、心の傷って、回復詠唱じゃ治らないよね。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月04日(金)22:18 |
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■メイン参加者 35人■ | |||||
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● (あれ、ダンスするだけだよね…確か? だけどなんだろう、この雰囲気。まるで『簡単なお仕事』のような?) メイ、首を傾げる。 VTSでしかできないバカをこれからやろうという寸法さ。 「このところミラクルナイチンゲールとヘタレな智夫の出番ばかりでござるYO?」 今、いろいろ大変なんです。 ヨーロッパからあんな人達が来ちゃうし、地元でもみんな好き勝手絶頂だし。 逃げちゃダメなんです。だから、あなたの出番ないんです、脱走王! 「だが、ここからは拙者のターン!」 しかし、あなたには欠点がある。 絶対に脱走できない状況になってから現れる点だ! それは、まばゆい発光体。 落城の姫君の平和への祈りを込めて生み出されしモノの名残。 「え? とりかへばや……?」 とりかへばやの鏡、2012年末バージョン。 それはミラーボールのような姿をしていた。 金管楽器でのファンファーレをBGMに降りてきても違和感がない。 今それをやると、某イタリアからきた一行が想起されて、息抜きにならないので、スタッフ自重。 (噂に聞くアークの技術力。興味深いではないか) ある意味これが洗礼となるだろう伊吹、何が起こるかよく把握しないまま、降りてくる擬似アーティファクトを見上げている。 俊介は、既視感に襲われていた。 (あれって前も見た事あるような……) 「りゅーにゃん! あれやばいから逃げようぜ……ってなんで俺盾にされてん!?」 竜一は、俊介の背後にかけれてしゃがみこみ、遮蔽効果を高めている。 「俺が変化したらユーヌたんぽくなるからなあ……ユーヌたんを汚す訳にはいかない」 婉曲にのろけましたよ、この人。 「ので! 俊介を盾にする!」 「ホリメを盾にするデュラっていんの!? ねえ!!?」 「バカヤロウ! 普段、俺が盾になってんだから、今回ぐらい俺の盾になれ! さらば、しゅんすけ! ようこそ、しゅん子!」 「ちょ、やめっ、やめろや……やめてえ!」 魂のファルセット。 「一度踏み込んだからにはやり抜いてみせる! 例え其れが大事な何かを喪うことになろうとも…前に進むのだ!! 悪鬼羅刹の園を踏み越えてきた俺ならば、この程度の試練、何の事はない!!」 喜平、熱い主張。 「ええい、こんなところには居られないYO! とりかへばやりたくないという意味でっ! 拙者抜けさせて貰――」 発光。 心を保てなかったものよ、その性の転換を受け入れろ。 とりかへばやの鏡、今年も実験参加ありがとうございました。 アーク・ラボから、今年最後の馬鹿騒ぎをお届けします。 2013年も、VTSを宜しくお願い致します。 ● 「好奇心は猫をも殺す。正に今の状況を表しているな」 喜平は、鏡を覗き込む。 「やだ…これが、私……案外とイケる!!」 S気ありそうな艶やかなレディーが、鏡の前で恍惚ヤンデレのポーズ。 伊吹は今、ぺたんこ座りで手鏡を見つめていた。 鏡の中には、困惑顔の幼い少女。 心なしか、いやどう見ても幼き日の娘の姿。 「今の」出ないあたり、毎日メールの返信は三日に一度、いや、週一に減った? 心配で電話したら「死ね」ってガチャ切りされた切なさが滲んでいます。 (……親はなくとも子は育つのだな。お父さん、これからもがんばるよ) 周囲を見回すと、「娘さんですね、わかります」と、皆生暖かく頷いてくれる。 内なる記憶が、乾いた笑いを漏らす。 「黙れ、死人」 つぶやけども一人。死人は、笑わない。 杏樹は、自分の妄想力の足りなさに一声吠えた。 「なんで縮んでんだ、俺!」 金髪ショタだ。 前回のサイズに合わせたデータを用意していたので、カソック服がダブダブ。 余った分を腕まくりしつつ、杏樹は難しい顔をして首をかしげる。 (おかしい……。前はちゃんと神父っぽくなってたのに。油断したか。まぁいい。なったもんは仕方ない) 杏樹は、切り替えが早いのだ。 「ま、まずは服を準備しないと……!」 快は、前回までのそのまま女になった容姿から、マイナーチェンジを遂げていた。 年はそれほど変わらず、髪の長さは一緒だが、サラサラになっている。 キリリとした表情は、恥ずかしいっと赤面してばかりの前回までと異なり、思考回路にまで影響が出ていた。 (回避不可能な事象に対しては次善策で対応。でも女性用の服なんて咄嗟に思いつかないので、タイトスカートのアーク制服女性版) このとっさの対応。 VTSに入るまで、青くなって開ボタンを連打していたのは同じだったというのに。 「タイトで踊れるかしら」 冷静にチェックする口調に、皆が振り向いた。 おや、口調に聞き覚えがあるような。 ミーノは、感嘆符と疑問符を頭から撒き散らしている。 「ミーノ?」 手がおっきかった。動きも素早そう。 鏡よ、鏡よ、鏡さん。このピンクの狐っぽい男の子は誰ですか。 それは、ミーノです。 アンナは、開放感に浸っていた。 (ああ、それにしても肩が楽だ……) すっとんとした胸元。真下見下ろすだけで、つま先見えるよ。 常に負担をかけるものがなくなって快適なのはわからなくもないが、恵まれない人もいることを忘れないで下さい。 「……取り敢えず。身長に変化が無くて助かった」 (服はそのままでいっか。幸いっていうか、違和感なく女装? できる顔だし。……父さんの若い頃ってこんな感じだったのかな……) いえ、お父様はセーラー服女装男子を良しとはなさらなかったと思います。 白髪が似合う長身ナイスミドルがいらした。 上半身も顕に、みなぎる大胸筋がたまりません。 「ふむ、またこの姿になるとはね」 還暦Wピース、レイラインおじ様。こちらに目線お願いします。 「だが悪い気分ではない、むしろ開放的な気分だ……物理的にもだがね」 ああ、以前のデータより、素敵大胸筋にビルトアップなさったのですね。 「こんな簡単に弾け飛んでしまうとは、もう少し丈夫な物を買った方がいいのだろうか……まあ、上半身だけなら特に注意もされないだろう。少々肌寒いがね」 笑顔が眩しいです。スタッフ大原がしあわせます。 「わしが、メイ・リィ・ルゥじゃー!」 ごっつい兄貴……を通り越して、一見親父。 無精ひげのワイルド系。 だが、メイは性別不詳なので、胸板は厚いが筋肉なのか脂肪なのか、判別がつかない。 見ようによっては『漢女』 だ。まつげ長いし。お肌トゥルトゥルだし。 顔の剛毛も、漢女標準装備の金剛産毛の可能性がある。 服装は普段着のゴスロリが破けて上は胸元隠すだけ、下はミニスカ状態。 はっきり言おう。未曾有の大事故。 スタッフ狭山が喜びます。 「前に龍治と入れ替わった時も思ったけど、高い視点は楽しいな!」 「ま、またこの様な格好に……っ。」 細身のシャツに緑のネクタイ。 スラリとした細身の長身に変貌を遂げた木蓮は、龍治の高い声に何気なく振り返り、慌てて口元を押さえた。 (かっ、可愛…!?) 木蓮から頭一つ分下。 緑のタートルネックニットワンピに、濃灰のオーバーニーソ。 紫色のパンプスのヒールは高め。 スカートの裾をも下に引っ張りつつ、よろよろする巨乳眼帯スカーフェイス女子はお好きですか。 龍治は気がついていないが、ニットワンピって、下に引っ張れば、その分おぱいが密着真空パックである。むにゅ。 (やばい、俺様そのケはないけど十分いけるぞこれは……) 木蓮は神妙な顔をして、手を伸ばした。 いつもの調子で、ぺたぺた触り。 「この姿で義衛郎も違和感があるから、クリスとお呼びなさいな」 「では僕のことはレイジと呼んでくださいね」 腰までのロングヘアに前髪ぱっつん。 フリルやレースいっぱいのブラウスにジャンパースカート。ハイソックスにヒール高めのおでこ靴。 ショート丈のマントとミニハットで武装したお嬢さんと。 ライトグレーの三つ揃いに黒いシャツ、赤いネクタイ、赤いソフト帽。やや長い髪をリボンで一つ結び。 お嬢さんとキスするのにちょうどいい高さのお兄さん。 「――な?こうなったろ!?」 強固に盾を信じた竜一は、男キープ。盾にされたと思い込んだ俊介、 「見てみろよ! 俺、女だぜ? 貧乳族だぜ!? マジ不公平!! りゅーにゃんも女になればいいじゃんか!!」 「まあまあ、ほら、男同士のスキンシップをしようじゃないか」 全年齢向けです。支障のない部位であることを申し上げます。具体的には、どこだって? 言わせるなよ。 想像力の翼は無限だぜ。 「あ、ちょ、触んないでください、男同士だからこそ触んなや!」 俺には、猛禽類な彼女が! 「そもそも依頼で、ちゅーし合った仲じゃないか。大丈夫大丈夫、かわいいかわいい」 女の形なら、すけしゅんでもいいのか。 「せ、セクハラァッ!! 何処触ってんだよ、お前にはユーヌがいんだろうやめえええい!!」 見た目はほとんど変わらずで、髪だけあの人と同じ黒髪に。 那雪は、しばし色の変わった髪をまじまじと見ていたが。 「あぁ、いけない…使命を忘れる所だった」 眼鏡をちゃきーん。覚醒モードです。おまたせしました。 ふわふわ金髪ウェーブを腰まで垂らし、そばかすのある愛らしいお顔。 ダブダブになったボーダーラインの制服のなかに埋もれるようにして悠里ちゃんは、ポロポロと涙をこぼしていました。 「うわーん! また女性になっちゃったよー!」 違う。女性になってない、まだ少女や。 ビクッと背筋をはね上げる悪寒。 「今回は髪を編みこみしてフリルのワンピも用意してみた。似合うと思うだが、どうだろう」 珍しく満面の笑顔の那雪青年。 「あ、編みこみは兎も角、フリフリワンピは嫌ぁぁぁぁああ!!」 だって、心は男の子だもん! しかし、ぎりぎり腰パンで止まっている制服やサイズの合わないブーツで、逃走経路を瞬時に計算するプロアデプトから逃げられるだろうか無理ふははどこに逃げようというのだねー。 「大丈夫、安心して任せてほしい」 笑顔で通せんぼ。 (そして、いつもに輪をかけて気弱で臆病になっている私は為すがままにされるのでした……) 堕ちていく。 フリルとレースとリボンの世界へ。 ピンタックも? 了解。 フリルとピンタックは、少女のためのもとと限定されてる訳ではない。 (本物のとりかへばやにトドメを刺した身として……懐かしいわね) はいはい、資料室の戦闘記録再生数殿堂入り。 ナポレオンコートのミュゼーヌ王子様はこちらが最新版ですよ。 (さぁ、あの時の続きと行きましょう。中世的で中性的な王子様化よ) 「喜多川・旭君と口説きあいだよ。勿論、勝敗は君に任せるよ、アガサ君」 全田奈が感涙にむせんだ。おっと、メタ。 対する旭は、短く刈られた頭から首へのナイーヴな曲線が貴族的だ。 (ミュゼーヌさんとお耽美勝負。こあくま系でがんばるまけない) お互い恋人がいるのだから冗談で済む、耽美ごっこ。 「君の無邪気な笑顔を、僕だけの物にしたいんだ……ダメかい?」 それは、王子様と公爵令息の逢瀬。 どこともしれぬ異空間に花が生まれて降りしきる。 年末も頑張るアークスタッフに励ましのお便りを。 「今日は独占出来るって、そう思ってもいいんだよね。うれしいなぁ」 微笑む笑顔に蠱惑の影。 旭の大事な人はこの顔を拝ませてもらったのだろうか。 「いつもの貴方はどんな花よりも素敵だけど、そういう姿も似合うね……すごく綺麗」 お互いの頬を滑る指。 ああ、触れるのは指だけなのに、どうして胸が高鳴るのだろう。 「こんなにも目が離せないなんて、どんな魔法を使ったの?ねえ、余所見なんて赦さないよ」 少年らしい独占欲。 「ボクの事だけ見ててくれなきゃ、他の花の所へ飛んでっちゃうかも……あは、冗談。焦った?」 王子様は、旭の短い髪に指を入れてなで上げる。 「……あぁ、君のペースに振り回されてみるのも悪くない」 余裕の微笑み、手の甲への接吻は儀礼だ。 「ダイジョーブだよ。ボクだって貴方を攫われたらと思うと、目を離す暇なんて一秒もないんだから」 (あ、これたのしーかも) そう頭の中でつぶやいたのは、「旭」か「公爵令息」か。 銀の長髪を束ねたフリル付き黒スーツの少年。 時間が少年を大人にする。 (3度目だから慣れたもの。前より背も高くなったし、イケてるんじゃないかな?) もう、迫られていたばかりの糾華くんじゃないよ。さ、お姫様を迎えに行こう 「お嬢様、僕と踊ってくれませんか?」 お嬢様――リンシードは、変わらぬ姿で待っていた。 (私は性別変換しませんよ……糾華お姉様泣いちゃいますからね……) リンシードは、とりかへばやると本人の内的理想の具現化により、雄叫び標準装備の戦闘民族――青白いバイデンみたいになるのだ。 美少年と野獣(野獣受)。新ジャンル。需要に疑問。却下。 「あ、糾華おね……いや……あ、糾華様! とてもカッコイイのです……素敵です」 銀と蒼の小さなカップル。 膝をつき屈んで、自分の手を取る糾華に、リンシードは感嘆の声しか出ない。 「踊るのがマイムマイムじゃあまり格好つかないけどね」 「え、えと、踊りましょうか……」 ぽうっと朱が登る頬。 フォークダンスくらいでちょうどいいかも。 円舞の渦に飲まれたら、本当に酔ってしまいそう。 ● 「えーっと、サイドステップ、クロスステップ、前に出てパン、回って回って……踊ったのなんて随分前だから、すっかり忘れちゃったわよ」 生真面目におさらいする快。 ――あれ、口調が。でも、突っ込んだら、負けな気がする。 「ほう、舞夢舞武? 多人数での格闘舞踏、といった所かな。経験はないが折角の舞台だ、全力で舞わせて貰おう」 どなたか、レイライン様に民明書房ではないフォークダンス教本を! 「少々手荒になるが……恨まないでくれたまえ」 思い直して、おじいちゃま! いや、おばあちゃまだったかな。 というわけで、一部勘違いした人を含めたマイムマイムが無事に終わるわけがない。 「畜生、この悔しさをウィリアムおじさんとバルベッテにぶつけるっ」 いや、来てないから。そんなアバター用意してないから。次は何か考えとくね。 智夫、とりゃさーと何もない空間にキック。なんか、へにょい。 「そこの重傷二日目包帯名誉女子ぃ、飛び蹴りアウトぉー。パンツ見えるぞぉ」 七緒が、かったるそうにメガホンで義務を果たす。 「イエナンデモナイデス――っ!?」 こういう時、足の横から着地するのが、脱走王クオリティ。 (女子と手をつなぐのは避ける。なんか照れるだろ) 杏樹にもそんなことを考えていた時期がありました。 しかし、顔面から地面に突っ込むのを見過ごしていいのか。否。 知らない人でもないし、咄嗟に抱きかかえる。 「一歩踏み込んじまえばいいんだよ」 「悔しいっ。でも拙者、今、智子なのっ」 見た目がこれっぽっちも変わってない。 その分、ドジっ娘属性と、凶運属性が不幸と不運を背負ってついてくるの! ――それ、どこの「友達の友達」? 「身体が動けば緊張もほぐれるだろ。すぐに楽しくなってくる」 うええと、涙目の智夫の手を杏樹が取る。 「なっ」と笑顔で。 「たまには、こうして身体動かすのも良いもんだな」 うんっと頷く智夫が、無駄に可憐だった。 レイジとクリス(仮称)。 フランステイストのおしゃれ映画から飛び出してきたような二人が、フォークダンスだ。 レイジ、テンションアゲアゲ。 いきなり、クリスの膝裏すくい上げて、お姫様抱っこしたまま踊りだした。 「クリスはちっちゃくて軽くて可愛くてマジお姫様ですねー!」 ほっぺつんつん。更には頬擦り。 (パッと見は○リコンの犯罪者っぽいかもしれませんが、彼女のほうが年上です。セーフセーフ) 脳内理論武装、完了。 「ちょっと、頬擦りされるとくすぐったいわ。みんながレイジを生温かく見守ってるわよ」 でも、そのまま抱っこされてるんですね、義衛――クリスは。 ごめん。フェイトでは、社会的死は回避できない。 画面的に、おまわりさん、こっちです。 画面的にやばいといえば、こっちもやばい。 「彼女より胸おっきい!! ひゃっほう巨乳! 揺れるなぁ。ゆっさゆっさだなぁ~」 夏栖斗、語尾にハートマークがつく勢いだ。 (じゃなくて! やだもう! 僕が女の子になっても誰得じゃんか!) とりあえず、君の語尾にハートマークがつく程度の多幸感をプレゼント。 ところで、なんで視線が落ち着かないの? 今日は彼――彼女は来てないでしょ? 実を言えば、夏栖斗、腹に爆弾を抱えてる。 (はやく! もどって! トイレいけない!!!) VTS中だもん。それは気のせい。 しかし、認識してしまったらもうVTSでは現実だ。 実際、もうダメェってなことにはならない。夏栖斗がそう思い込まなければ。 気を紛らわせるためのマイムマイムも、腹に響く。 が、じっとしてると、我慢してるのバレちゃうし。 夏栖斗の静かなる闘いがどうなったかは、また別のお話。 「まーいまーいまーいまーいまいむべっかっこ!」 ミーノ、違う。 「ベッサッソン!」 ベルカ、正解。 「べっかっこ!」 「ベッサッソン!」 しばしのにらみ合い。 ピンク系ショタと男性らしいマッチョでマッシヴボディ(剛毛付)のにらみ合い。 ベルカ、赤いレスラーパンツ一丁にブーツ。 『どうしてモヒカンじゃないんだ。――みたいなのに』の略で、「DZ」をミドルネームにねじ込みたくなる。 「ミーノのかろやかなすってぷをみるといいの~♪」 きつねはーふてきなかろやかすってぷ、きつねみみしっぽぴこぴこ。そみら。 「ベルカ・ヤーコヴレヴィチ・パブロフ(男性形)である! うおお、この単調作業……燃えてきたーっ!」 (もっと! もっと速くっ! ダヴァイッ!!) レイザータクトによる加速指示。 さあ、ついてこれるか? ● 踊りの輪を外れた一角。 「今回の注目はエレオノーラさんよね。普段も名誉美少女だけど、今回は正真正銘だし。きっと美人さんなんだろうな。妬けちゃうな」 激戦の度にトレードマークが破壊される彼女の口調が顕在化した快に評された三高平名誉女子一号は、困惑の表情を浮かべていた。 「おかしい」 (確か前回は女子高生で今回は完全に大人になってる……。何でとりかへばやくらうと徐々に成長してるのよ) ご本人の脳内妄想の具現化ですので、お汲み取りください。 「じーちゃんは性別変わってないね。もとから「少女」だったから。なんか成長してる気がするけど」 白衣にスーツのイケメンダメ教師。弟の生き写しみたいだけど、これはソラせん。 変わってるわよ。と、エレオノーラ爺ちゃん、一応突っ込む。 はい、今年最後の復習だ。誤植じゃないよ。じいちゃんだよ。 「もっとこう、現実にフィードバックしていいのよ? 成長度だけ」 えレオノーラ、無意識に服の衿元を引っ張る。 (胸が何だかきつい。でも、ボタンを開けたら色々と負けな気がする) 「世の胸が大きい女性はこんな葛藤と戦っていたのね……」 ふらふら歩いている今日の盛り上げ役に声をかける。 「ね、七緒ちゃん。と、言っても七緒ちゃんは今は違うのね」 「ま、ねえぇ」 ポニーテイルに細身の三つ揃いというお耽美な造型は、衣装の相談をした某フォーチュナの趣味だ。 いつもどおりの間延びした口調も吐息混じりの低音だと、また意味合いが変わってくる。 「ロシアだと、カムィシンスカヤになんの? 女だと?」 撮って、い? と、エレオノーラに尋ねるようすは、いけない図に見えるが、間違えてはいけない。 中身は、じいちゃんと孫だ。 「写真撮るなら別に撮ってもいいけど、後で面白おかしい他の子の写真があったらくれないかしら」 「興味がおありでぇ?」 「ほら、酒の肴にしたいし」 「悪いな、この人ぉ」 にひっと笑い合う七緒の背中に、アーク女子制服の美少女が突っ込んだ。 タイトスカートから伸びる美脚が眩しい。 「鴉魔ぁ? あれぇ? 目が両方あるぅ……?」 「あ、ボク、両目とも健常だよ☆ オサレ眼帯、制服に死ぬほどに合わないから」 これ、豆知識☆ と、可愛くウィンク。 「そんなことより、七緒さん! きゃっ☆ 超イケメン!」 がしっと七緒の腕をホールド。 「ぼーっとしてないで一緒に踊ろう☆ 写真も良いけど、踊る阿呆に見る阿呆なら踊らなきゃ損だよ☆」 「あの高速回転斬風脚と虚空の中に?」 年末です。あれとかこれとか、まだリベリスタは知りません。 厄落とし厄落とし。と、押しの強いアーク女子職員、七緒を引きずっていく。 「いってらっしゃい?」 エレオノーラが小さく手を振った。 「うっわ、二十歳でそれなら、熟女になったらどうなるのぉ?」 エレオノーラ、笑う。艶麗。 ● 踊りの輪は混迷を深めている。 「がはははは!」 深く考えるのを放棄したメイの高笑いがこだまする。 怪我人出ても、器物損壊しても、スーパーエンドレスでマイムマイムは続く。 「ほら、俺のマイムがお前のマイムにマイムマイム」 「いやぁぁあ! マイムだけは嫌ァァ!!」 この後、俊介はマイムマイムの音楽が聞こえると絶叫を上げながら耳を塞ぐ奇行に走るようになるが、それはまた別のお話。 終は、踊りの輪の中に加わりつつ、ちょっと不安になった。 (七緒さんはぶきっちょさん……うっかり足踏まれたり、蹴られたり、しない……かな……?) 「あ~、暴れ大蛇みたいなもんかぁ」 言ってることが、クリスタだし。 「マイムマイムは少し抵抗あるが、折角の機会だから参加しよう」 「こ、こんな状況で踊れるはずが……!」 「な、いいだろ?」 木蓮、にっこり笑いつつ、龍治の頭わしわし。 はい、無抵抗は同意とみなす。 木蓮は気がついているだろうか。 落としにそのテクを使うということは、木蓮にとって効果覿面であると露呈しているってことを。 「んむ、それなりにこの体にも慣れ……っちょおぉ!?」 龍治が、ハイヒールの横重心移動に失敗して横からこけた。 それに木蓮が巻き込まれた。 尻餅。ミニスカート。中見え……っ! 「は、早く立っ……いかん、こりゃ動く練習が必要だ……!」 龍治、木蓮の目線で事態を把握。 それでなくとも羞恥と焦りにテンパってたのに、混乱の極みで動けない! ここは、木蓮頑張る。 赤面しつつも、龍治を抱え離脱しようとし―― 「ひゃあっ!?」 「う、うわぁスマン!」 おしっぽの付け根掴んじゃった! えっと、ここはとにかく退場! 糾華とリンシードも踊りの輪から一時離脱。 「大丈夫? 僕がこんな格好だから慣れないのかな?」 リンシードは、ブンブンと首を横に振る。 糾華は、リンシードのおでこに手を当て、首をかしげる。 「ひゃっ、はっ……ふぅっ……!?」 変な声が出るリンシード。 お熱急上昇だ。 「調子悪かったら言うんだよ?」 「な、なんだかこれ、普通にデートみたい、ですね……」 「デート……うん、そうかもしれないね」 「こんな時間がずっと続けばいいのに……シンデレラはこんな気持ちだったんでしょうか……」 とろける目をしたリンシードに、糾華は尋ねる。 「じゃあ、シンデレラ。一つ質問ね――僕が男であったほうが、君は良かったのかな?」 「いいえ!」 即答。 あまりの速さに糾華は目を瞬かせる。 「い、いえ……私は、糾華……様、本人が好きなので……どちらでも構わないのですっ」 リンシードの瞳の熱に偽りはない。 「……ありがとう、リンシード。じゃ、時間まで遊ぼうか」 再び手を取り合い、円舞の中へ。 アイリは、こざっぱりとした青年に変貌を遂げていた。 (マイムマイムのあと、適当なタイミングで女の子を口説きにゆこう。……いや、男の子でも全然構わんがな) 口元に浮かぶ笑み。 (ほんの短い間の、儚き幻想。ならば、それをこそ存分に楽しもうではないか) 赤いミニ丈の着物を着た少女。 長い黒髪と大きな瞳がチャーミング。 「なぁ、俺が相手じゃダメかい?俺は君の事、結構気にしてるんだけど」 後ろから両肩に触れ、耳元で囁く。 (適度なスキンシップは大切だね。それに、甘い言葉よりも積極的な姿勢。少し無責任なくらいがちょうどいいさ) 少女は振り向く。 「ですぞ?」 誰知ろう。九十九、この変身は二回目、どころか、本体も変身を遂げたパイオニアである。 (またこれしか喋れませんか) 九十九は用意していたスケッチブックを取り出すと、サラサラと書き込んだ。 歓談するのはやぶさかではない。 『わたしは、カレーが好きですぞ 』 うっかり、『し』を『そ』と書いて訂正したのはご愛嬌。 アイリは、なるほど。と、頷いた。 ●ハーレムゾーンだよ。それ以外、言い様がないよ。 うさぎは、既に一汗かいている。 君は無表情で、踊るシヴァ神のごとく高らかに足を上げて踊る人間の怖さを知っているか。 無表情でマイムマイムと叫びながら突進してくる人間は、無表情でカバディを繰り返されるくらい怖い。 傍目には変化はない。いや、いつも以上のハイテンション無表情だ。 「まあ、私のことはどうでもよろしい」 うさぎの視線の先。 本日の目玉が、へたりこんでいる。 風斗は、空に向かってひよひよと文句を言っていた。 「ちくしょう……ちくしょおおおおおおお!!!」 腹に力が入っていない。 女子は可憐であるべきだという風斗特有の夢見がちな妄想が、風子を無駄にか弱くしている事実を直視しないあたり、屈折している。 か弱いのが嫌なら、霊長類最強女子とでも祈念すればよかったのだ。 (もう二度と女になんてならんと誓ったのに! どうしてこうなった! どうしてこうなった!?) 「ええいくそ、なんて頼りない体だ! 服はだぼだぼのくせに胸元だけはやたらきつい! 動きにくくて仕方ない!」 よぉし、世間のお嬢さんの三割に喧嘩売ったな。 (と、とにかくこんなところを知り合いに見られるわけにはいかない。どこかに身を潜めねば……げっ、あいつらは……た、他人のふり他人のふり!) 「わ、わたし風子! 楠神なんて人は知らないわっ」 2013年は、隠ぴ系の非戦スキルをとることをお勧めする。 風子といった時点で、君の命運尽き果てた。 「あっち行け! シッ! シッ!」 そんなんでいなくなるリベリスタがいたら、お目にかかりたい。 「なら、風子ちゃんを愛でる会場はここだな?」 明奈の意志は固かった。 ヒーロー&ヒロインなアイドル様に、男体化などというギミックは必要ない! 「裏切りの白石!」 クワッと目を見開き、豪語する。 「あえて女子のままで楽しむ!」 男前だ! 「笑ったり泣いたりできなくなるまで撫でたり揉んだりするよ。え? 女性同士だろ? こんなの普通普通。それともお前普通じゃないって言えんの? 元々男の癖に? ほーらほらこんなの友達同士なら普通だぜウヒヒぺろぺろ」 明奈は有言実行である。男前だ! 「いつも格好つけてるのに、こんなに可愛くなっちゃって。どうだい? 先生とイケナイコトしないかい?」 高校教師そらせん、生徒に手を出しちゃいけません。 腰に手を回し、耳元で囁く。 「……楽しもうじゃないか。いやだいやだも好きのうちってね♪ ほら、恥ずかしがらずに。正直になれよ」 甘やかな容姿の少年に変貌し、戸惑い気味の美伊奈の目が風子を写す。 「……何だか、男の人になったら何時もと気持ちも思う事も違う感じで……まるで私が私じゃないみたい……風斗お兄さんはどうなっ――」 瞳孔が開き、やばい光を放つ。 「か、可愛っ!?」 そみらじゃないのにハイスピードアタック!? 「あああああ駄目! 駄目よ可憐よ可愛らし過ぎるわ反則よああ鼻血が……い、いけないわ私落ち着いて怯えてるじゃないそんな事しちゃいけないわ落ち着くのよ無理ー!」 コンマ1秒で挫折したよ!? 「べ、べ別に悪い事をする訳じゃないのよ? ほ、ほほ……ほら、怖がらないで? 大丈夫、だ、大丈夫、何もしないから。ね? ね? ねっ!?」 お目目ぐるぐるで鼻血垂らしながら言うセリフじゃないよな! 「え、この可愛い子が楠神部員!? ……凄いね、とりかへばやの鏡って。掛け値なしの美少女じゃないか。いやいやそんな恥ずかしがらないで。照れてる所も可憐だけどさ。折角そんなに花みたいに愛らしい顔をしてるんだ。笑った方がずっと似合うと思うな」 チビ少年が、風子の顔横に正座する。 状況読まないところが美月の美月たる所以。 風子にとっては、えっちっちにたかられてるようなもんだぞ。察してやれよ、エキスパート。 ちなみに、美月にはこのあと白石部員による「もう百合だなんて言わせない! いやそもそも百合じゃねえけど。フレンドシップだよ? そんな邪な見方をする奴がいけねえのさ! フヒヒヒヒ」な目に遭わされてて、ぢゅー!? と、鳴かされることになるが、それはまた別のお話。 声もなく、人垣に沈んでいく風子。 「…すげえなおい何か変なフェロモンでも出してんのかあの人。あー、頭だの背中だの首筋だの撫でられてるし、揉まれてるし。おお、涙目。これは眼福ですね、ゲヘヘ……」 え~、うさぎさん、放置でいいんですか~? 親友として。 チラチラ見える、うりゅうりゅお目目が助けてくれと叫んでいるようですが。 「うん、正直出遅れましたし、折角だから今回はジックリねっとり温かく見守りましょう。ガン見で――ん? そこな少年卜部さん、何してんすか?」 黒髪おかっぱ少年兵――在りし日の姿を再生した冬路が唸っていたのだ。 「う、うーむ。男になり、男の気持ちを知れば、もっと風斗と気軽に構えずに話せるかと思ったんじゃが……これはこれで何というか気恥ずかしくてのう。中々声が掛けられぬ……」 「そっかー。ショーガイナイナー」 おっと、棒読み。 「とか言っとる間にあれよあれよと人が集まって。え、えっと……どうしよう。こ、これでは埒が明かぬ!」 うさぎは、冬路の背後に回り込んだ。 「知るか! とっとと混ざれ!!」 襟首掴んで渦の中に捻じ入れる。 「って押すでない! や、やめ、やめーい! ダメェ!恥ずかしいから!恥ずかしいからーーーー!!」 今日のうさぎさんは、ハイテンションなんだってば。見た目変わらないけど。 「まあまあ、風子さんは可愛いですし、皆さんのお気持ちは分かりますが。流石に少しお疲れの様子です。休ませて上げては?」 触る白石あれば、止める黒石あり。 息も絶え絶え、目はうるみっぱなし、声も枯れ果て、足の指先が伸びきるのも時間の問題だった風子ちゃんには、女装男子アンナは、救いの神だ。 「「「「なるほど」」」」 いきなり始まる10カウント。はいはい、お水。はいはい、酸素。 ――はーち、くーぅ、とーお! 「1ターン経過。 休憩終わり!」 「~~お前ら、集中してたろ! してただろおっ!?」 第二R、スタート! ● 体は疲れなくとも、脳は疲労する。 名残は惜しいけど、その前に、「厄払い」は、盛況のうちに幕を閉じた。 ● 「あ、足痛くない。よかった☆」 さんざんVTS内で蹴られまくった人あり。 「いい汗をかいた…素晴らしい一時だったよ。さて、この後はテリーの元へ行くとしよう。覚えた舞踏も披露したいしね」 このあと、デートの人あり。 「僕は……私は……あの子に……」 考え込む人あり。 とりかへばやの鏡は、人の心のひだをちょこっとめくる。 どうぞ、みなさん、有意義な2013年をお過ごし下さい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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