下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






<迎春2013>さんしょくおもちつき!

●あけましておめでとうございます
 こたつに入ってミカンを食べながら、テレビのチャンネルを回す。
 特番ばかりのテレビは、いつにも増して華やかで騒々しい。
 どのチャンネルでも、『謹賀新年』やら『新春』、『賀正』なんて言葉を掲げていた。
 そう、お正月である。去年も色々と忙しない一年だった。
 お正月くらい、ゆっくり過ごすのもいいかもしれない。
 そんなことを考えて、うとうとと舟を漕ぎ始めたそんな時だった。
 どこかのリベリスタのアクセス・ファンタズムが鳴る。
 『緊急事態発生!新年早々事件です。今すぐアークに集合して下さい!』

 ………、……嗚呼。『ゆっくり過ごすお正月』は、どこへ。
 でも『アーク』のリベリスタである以上、仕方がないことかもしれない。

●新年早々、エリューション退治をよろしくお願いします
「……どうして年末年始って、こんなに美味しいものが多いんでしょう。そうは思いませんか?」
「本当ヨ! 選り取り見取りで困るアル!」
 アーク本部の入り口で、そんな他愛もない会話をしているのは、『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)と、『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011)。リベリスタに気付くと、美楼がにんまり笑う。
「新年好! 今日はめでたい正月ネ。今年もよろしく頼むアルゥ!」
「明けましておめでとうございます。今年も色々あると思いますが、よろしくお願い致しますね」
 美楼に続いて新年の挨拶を終えた和泉が、真面目な顔つきでリベリスタたちを見る。
「いきなり呼びつけて申し訳ありませんが、新年早々お仕事です。
 ええと、アークの皆さんでお正月にお餅つきをしようと思って、杵と臼を用意をしておいたのですが」
 察しの良いリベリスタの皆さんは、もうお気づきだろう。
「保管する場所が悪かったようです……。アーティファクトの影響を受けたようで、杵と臼が革醒しました」
 察しが悪いリベリスタの皆さんも、もうお気づきだろう。
「この杵と臼を使ってついたお餅は増えます。食べ尽くすまで、際限なく」
 大体察していた事実が告げられる。黙り込むリベリスタたち。
 どうして来てしまったんだろう。どうして呼び出されるのが自分だったんだろう。
 だがしかし、来てしまった以上もう逃げられない。だって和泉の真剣な眼差しが怖いから。

「………そんなにお餅を食べたらどうなるか分かりますか。体重計に乗る時の恐怖が分かりますか。
 スカートのホックをひとつ緩める時のあの! あの気持ちが! 分かりますか!」
 複数名が頷いた。他のメンバーは何も言い返せないので、とりあえず俯いておく。
 どうやら、革醒現象に気が付いたのはもち米を蒸かした後だったようで、新しい杵と臼を準備することが間に合わなかったらしい。
「折角ですので、もちつきを楽しんだら如何ですか? 皆で搗いたお餅は、きっと美味しいですよ」
 優しく微笑む和泉だったが、素直に喜べない。先ほどからそわそわしている、ひとりを除いて。
「準備はいいアルか? お餅つきして三食おもち付きネ! にふふー!」
 笑顔が眩しい。というより何も知らないその笑顔が羨ましい。
 美楼。君はアーク恒例増殖する食べ物現象に立ち会ったことがないから、そんな顔が出来るんだ。
 でも、確かに道連れ、もとい協力者は一人でも多い方がいい。ちらりと横目で和泉を見やる。
「和泉さんも一緒に食べる?」
「いえ、私は遠慮しておきます」
 あ、はい。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あまのいろは  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月13日(日)22:54
 謹賀新年。皆様にとって良い一年でありますように。あまのです。
 さて!新年早々お腹いっぱい味わって頂きましょう!
 すこし特殊なシナリオですので、是非下記情報に目を通して下されば幸いです。

■ピンナップについて
 当シナリオは『ピンナップシナリオ(β版)』です。リプレイ返却後、その内容に沿う形で
 担当の『十五月五月』VCにより参加者+NPC全員の登場する大きなピンナップが作成されます。
 ピンナップの納品時期はリプレイ返却後一ヶ月程が目安になります。
 ※バストアップが無いキャラクターは描写されませんのでご注意下さい。
また服装にこだわりがある場合は必ずプレイングに明記してください。

担当VC都合によりピンナップは貼付無しとなりました。
ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。

●成功条件
 エリューション化した搗き餅の完食
 皆で楽しいお正月の思い出を作る

●補足
 まずは皆さんでぺったんぺったんお餅つきをして下さい。
 搗いたお餅はみんなで残さず食べちゃいましょう。
 搗きたてお餅は弱いので、増殖速度はあまり早くありません。
 ですが、油断していると手に負えなくなるかもしれませんので、お気を付け下さい。
 お醤油と海苔、きなこ、ごまや餡子などのポピュラーな具材と、
 甘酒と日本酒が用意してあるようです。アークからの差し入れ。
 お皿や箸、紙コップなどの備品もしっかり用意してあるそうなので、そちらの心配もいりません。
 甘酒は未成年も飲んで大丈夫ですが、飲酒喫煙はダメダメです。
 その他の食材や飲み物の持ち込み等々ご自由にどうぞ。
 お餅つきは外で行われます。寒いと思いますので、防寒対策をお忘れなく!

●同行者
 李 美楼 (nBNE000011)が同行します。
 餅搗き中に特にお声が掛からなければ、餅搗きしている傍でうろうろそわそわしています。
 おもちが出来たら兎に角食べます。もちもち食べます。
 いちばん好きなお餅はきなこです。でも出されれば皿以外はなんでも食べます。

 情報は以上となります。それでは、皆様が良いお正月を過ごせますように。
参加NPC
李 美楼 (nBNE000011)
 


■メイン参加者 6人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
覇界闘士
ティセ・パルミエ(BNE000151)
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
クリミナルスタア
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
レイザータクト
ユイト・ウィン・オルランド(BNE003784)
ソードミラージュ
ヘキサ・ティリテス(BNE003891)

●まずは新年のご挨拶
 門松が飾られたアーク本部の入口にて。
 いつもとはすこし違う装いに身を包んだリベリスタたちが、ほこほこおいしそうに上る湯気を見つめていた。
「蒸したてのもち米の匂いって気持ちいよね。もうとっても美味しそうな感じ……」
 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151) の猫耳尻尾がうっとりと揺れる。
 ちょっとぐらいこのまま食べても、と伸びた手を『マグミラージュ』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329) がめっ!と制止。ふわりと巻かれ、結い上げられたポニーテールを揺らして笑む。
 ティセはすこし残念そうに、指を咥えて揺れるポニーテールを見つめてからくるりと周りを見渡す。
 晴れ着に身を包んだ姿の、なんときらびやかなことか。
 ソラも晴れ着を着ていたし、ティセも淡いピンク色の晴れ着に身を包んでいた。結い上げるほど髪が長くないティセだったが、ゆるく分けた前髪にぴしりとヘアピンを留めて、ちょっとしたお洒落も忘れない。
 藍色の晴れ着を着た『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は、黒い和装コートまできっちり着込み、耳には純白ヒロイン(自称)な天使からの贈り物のイヤーマフ。もこもこ暖かそうである。
「お姉様方、とってもとっても綺麗です」
「あら。ティセさんも晴れ着、似合っているのだわ」
「お正月と言えば晴れ着! 着物ね!」
「やっぱり正月だし、日本伝統の晴れ着だな!」
 きゃっきゃと花咲くガールズトーク。だがしかしお分かり頂けただろうか。
 そのなかにひとり、男性が紛れ込んでいることに。
 紛れ込んだひとり。それは『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891) 。彼が違和感なく紛れ込んでいたのは幼く中性的な顔立ちとやや低い身長のせい、……だけでは無かった。
 白地に満開に咲き誇る桜が美しいそれ。店員さんに似合うものを選んで貰ったヘキサだったが、どうやら性別を勘違いされたらしく、彼に手渡されたのは女物の振袖。その事実に彼は未だ気付いていない。
「気に入ってっけど、男でもこんな派手なの着るンだなー」
 とは言え、ヘキサは気に入ったと言っているのだから、彼に真実を告げなくてもいいだろう。
 ほら、知らぬが仏とか、言わぬが花って言葉もあるじゃないか!
 それに、真実を知ったヘキサが店員さんを蹴っ飛ばしにいったりしたら、新年早々大惨事である。
「なんかヒラヒラして落ち着かねー」
 そう言いながらひらひら袂を揺らせば、ベレー帽からひょこりと飛び出る兎耳の飾りも一緒に揺れた。
「お餅を食べて世界を守る。まことに平和で良い事です。正直、世の中これくらい平和だと良いのですが」
 ぱちり、手にした扇子を閉じて。『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)が、笑った。ヘキサと同じように中性的な顔立ちをしているアラストールだったが、紋付き袴を着込んだアラストールはヘキサとは対照的に、なんとも凛々しい。
 どこから借りてきたのか、忍者服の『フェイトストラーダ』ユイト・ウィン・オルランド(BNE003784)。
 えへんと胸を張って、これが和服の正装でござる!と言わんばかりのドヤ顔。まったく忍べていない。
「ユイト殿は随分変わった出で立ちですね」
「え? アラストール殿の格好も変わっているでござるよ! なんていう服でござるか?」
 和気藹々と語らっているところへ、杵を担いだ『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011)が駆けてきた。
 臼も用意され準備は万端。さて、餅つき開始である。

●ソラとエナーシアの、呑兵衛ペアの場合
 増えるお餅に対抗すべく、リベリスタたちはペアを三組作ってお餅に挑む。
「呑兵衛組は一番最初だって言われたわ」
「お酒は二十歳になってから、だよね? ……え、ソラさんはいいの?」
 不思議そうに首を傾げるティセ。見た目はそうは見えないソラだが、きちんと成人済みである。
 コートを脱いで襷を掛けたエナーシアが、ぎゅっぎゅともち米を潰していく。
「さて、そろそろかしら」
 臼の側では、既に徳利とお猪口を準備したソラがスタンバイ。
 人に合わせるのは慣れたから掛け声は無くても大丈夫だけれど折角だから、と。
「Cheerio!」
 エナーシアの掛け声と共に餅搗きが始まった。ぺったんぺったん。テンポよく搗かれるお餅。
 既に増えたりはしていないかと、エナーシアがお餅を搗きながら臼を覗き込む。すると、そこには。

 お猪口でお酒を飲みながら、餅を返すソラの姿が!

「ソラ先生、何をしているの!」
「ふふふ。私のダブルアクションこの時の為に取得したと言っても過言ではない!
 そう、私はエナーシアが1度餅をつく間に餅を一度返し、お酒を一口飲むことができるのよ!!」
「ずるいわ! 私も飲みたいのだわ!」
「酔拳使いの生まれ変わりだったりするかもしれないの。それにしてもこのお酒美味しいわね」
「新田酒店から貰ってきたお酒だもの、美味しいに決まっているのだわ!」
 ぺったんぺったん。そんな言い合いをしつつ変わらぬテンポで餅搗きを続けるふたり。
 だが、少しずつソラの餅を返す手が鈍くなってきた。どうやら、いい具合にお酒が回り始めたようである。
 動くとお酒は回りやすいのだから、そうなるのも仕方がない。
(それにしても、この角度から見る餅をつく女性ってなんかいいわね)
 ちびりちびりと酒を飲み続けながら、餅を搗くエナーシアを見つめるソラ。
「……掛け声、一生懸命餅をつく姿、飛び散る汗……エロいわ。眼福、眼福……」
「? 何か言ったのだわ?」
「はっ。邪心なんて一切な……!?」
 その時。直撃はしなかったものの、杵がソラの手を掠めた。餅を返す手も搗く手も止まる。
 いくら手を掠めただけとは言え、思い切り振り下ろされた杵が掠ったのだから痛いに決まっている。
 右手を抑えて悶絶するソラ。心配そうに覗き込むエナーシア。ソラは暫くして手をふーふー吹いて。
「……危ないから泥酔状態で餅つきとかしちゃだめよ! 先生との約束だぞっ!」
 びっと人差し指を立ててどこぞに向かってサムズアップ。説得力皆無である。

●アラストールとユイトの、シュールなペアの場合
 ソラの手が使いものにならなくなる前に、二番手に交代。
 二人が並ぶと、まるで殿とそれに仕える忍びのようで、すこしシュール。
「全力で餅を突くので、手のほう気をつけてください」
「お、おう! 頼もしいでござるな!」
 袖を捲り気合い十分なその姿が、頼もしくもちょっと怖い、そう思ったのは心のなかに秘めて。
 先ほどのソラの様子を見て痛いことなんて認識済みである。全力で手を搗かれたら、一体どうなってしまうのだろう。フェイトを燃やすだろうか。ユイトが小さく震えた。
 手を搗かれまいとタクティクスアイを発動。きっとこれで大丈夫と、こっそり握りこぶしを作る。
 ぺったんぺったん。ユイトの策が功を制したのかは分からないが、ふたりの餅搗きは順調である。
「ユイト殿、お餅が増えてきているような気がしませんか」
「ん? そうでござるか?」
 自分の手を搗かれないことに気を取られていて気付かなかったが、言われてみれば成程確かに。
 臼からこぼれそうなほど、とまではいかないが、最初より量が増えているように見える。
 エナーシアがエネミースキャンで確認すると、確かに少しずつ増殖しているようである。
「少し食べてもらいましょうか」
 餅を搗く手を止める。取り分けられたお餅を、美楼がすかさず受け取った。
 一組目が搗く間に、食べる準備もばっちり終えている。もはや餅を待つだけだったリベリスタたち。
 味付けはポピュラーな、砂糖醤油にきなこ、黒蜜やゴマにあんこ。
 ちょっと変わった、シナモンや納豆、明太子やチョコレートまで用意されている。
「お先に頂くアルよー!」
 一口サイズに千切ったお餅を、好きな食材に付けて食べ始めたリベリスタたち。
 搗きたてのお餅はやはり美味しい。搗いているふたりのことを忘れたように、お餅を食べ始めた。
「……僕たち、忘れられているでござるか……?」
「そうかもしれませんね」
 ふたりがぺったんぺったん餅を搗く音が、虚しく響く。
「美楼殿、美味しいですか? どんどん食べてください」
 口いっぱいにお餅を頬張っていた美楼は、ごくんとお餅を飲み込むと満面の笑みでアラストールを見た。
「美味しいアル! たっくさん頂くネ。謝謝!」
「……でも、私もお餅を食べたいと言う事をどうか忘れないで欲しい」
 ぴたり。アラストールの言葉に美楼が次の餅へ伸ばしていた手が止まる。
「………、……どうか、忘れないで欲しい」
「………」
 沈黙の後、美楼がこくりと頷いた。
「……アラストール殿、もしかしてお腹が空いているでござるか?」
「そうですね、いい香りもしますし」
 万年腹ペコ騎士様の限界が来る前に、最後のふたりに交代である。

●ティセとヘキサの、にゃんことうさぎペアの場合
「ウサギのオレが杵で搗く役なッ! 手まで巻き込まねーように気ィつけろよ?」
「猫だし、動いてるものをぺしってやるのは得意だよ!」
 和やかで可愛らしい会話を繰り広げたふたりが、ぺったんぺったん餅搗きを始める。
「よっ!はっ! コンビネーションがッ! 大事ッ! だぜッ!」
 ヘキサが勢いよく餅を搗くが、お互い気を使いあっているふたりは怪我をすることもなさそうだ。
 ぺたんとお餅を搗いた杵をヘキサが思い切り持ち上げる。杵にくっついたお餅が、みょいーんと伸びた。
「おらァ! 伸びろーーーッ!!」
「わっ、わっ。ヘキサくんすごい!」
 ヘキサの思惑通り、まるでマンガのようにお餅が伸びた。ティセはまあるい瞳をきらきらさせている。
 自身の身長より高く高く杵を持ち上げようとしたものだから、ヘキサのバランスがぐらりと崩れた。
 気慣れぬ晴れ着、しかも振袖を着ているのだから、ヘキサの反応が送れるのも無理はない。
「ヘキサくん危ないっ!」
 ティセが慌てて手を伸ばすも届かない。どしんとヘキサが尻餅を着く。
「いってェー……」
 ずれたベレー帽を被り直す。駆けつけたリベリスタたちがヘキサに手を貸して立たせてやった。
「大丈夫?」
「これくらい全ッ然問題ないぜ! だってオレはウサギだからなッ!」
 尻餅をついたことすらなんのその。ヘキサは胸を張って笑ってみせるともう一度杵を構えた。
 ぺったんぺったん、今度は無理の無い程度で。先ほどのようにお餅を伸ばしたりしながらお餅を搗く。

 先ほどのように取り分け食べながら餅を搗いて、気づけばばっちりお餅が出来あがっている。
「そろそろ終わりかなっ? ねえヘキサくん、あたしにも最後に一回ぺったんてさせて!」
「おう、もちろんだぜッ!」
 ヘキサがティセへと杵を手渡す。
 が。重い杵を持ったティセはふらふら。ひとりで杵を振らせるのは、危ないかもしれない。
 困った顔をしているティセに、ヘキサが手を添えてやった。
「えへへ。じゃあいくよーっ。よいしょ~!」
 ぺったん。こうしてリベリスタたちが協力して作った、お餅が完成したのである。
 そうだ、と。アラストールの言葉から控え目にお餅を食べていた美楼に、エナーシアが声を掛ける。
「皆で思い出を作るのも目的だったわよね?
 手持ちぶたさんな美楼さんもどうかしら? 返し手は私がするのだわ」
「いいアルか。ワタシもぺったんってしてみたいネ! じゃあ、搗かせてもらうアルよ! アイヤー!」
 最後の仕上げに、ぺったん!

●搗きたてお餅をいただきます!
 お餅は思ったより増えてはいなかったが、搗いている間にも食べたことを考えると、結構な量である。
 さあ、一汗かいたのだから、後は楽しく食べるだけだ。日本酒や甘酒を掲げて、乾杯。
「では新年あけましておめでとう、Prosit!」
「新年明けましたおめでた! 甘酒、あちちち……」
「甘酒は面白い味でござるなー」
 甘酒を飲んだティセが、舌を出した。猫舌の彼女には熱かったのだろう。甘酒もお餅も初めてのユイトは、どちらにも興味津津。甘酒を飲むと、お餅に手を伸ばす。
「お餅は勿論楽しみでござるが、本当の戦いはここからでござる」
 お餅が初めての、ユイトの餅知識。
 もちもちしてて噛み切りにくくて、ちゃんと噛んで食べないと喉に詰まって、油断すると餅が喉に詰まって重傷とか、アークの報告書に乗せられちゃう恐ろしい強敵。以上。
「……おお、伸びる伸びる。これが餅……すごいでござる!」
 だがしかし、ぱくりと一口食べれば警戒心もどこかへ飛んでいってしまう。
「すっぴんのお餅も美味しいですよ。味の無い物ですが、もちもちの食感だけを楽しむのも良い。
 お砂糖だけとか、お味噌汁にぶち込んでちょっと溶けかけのを食べるのも良い物ですよ」
「オレは砂糖醤油にシナモン! 鼻に抜けるシナモンの甘い香りが好きなんだよなー」
「お餅の食べ方もイロイロあるのね。『こんな食べ方はあり得ない』なんて言ってる暇があるなら、
 イロイロ試してより自分に合った食べ方を探求すべきよ。私はまずはあんこから!」
 リベリスタたちはエリューションであることも忘れて、搗きたてお餅を堪能する。
「甘辛醤油、黄粉、こしあんとさんしょく。綺麗なのだわ。
 体重等と些細なことを気にして不参加とは和泉さんも勿体無いわね。こんなに美味しいのに」
「あ、あんこはつぶあん派! こしあんとか邪道だよ!」
「むふー……あァ、幸せだぜェ……」
 譲れない食べ方もあったり、変わった食べ方もあったり。リベリスタたちはお餅を食べていく。

 食べ進めて、暫くして。だんだんとお餅がお腹に溜まってきた頃。
「………思ったより多いでござるな……」
 ユイトが経験した小龍包のように争奪戦にはならないが、その逆の事が起きようとしている、気がする。
「ありとあらゆる食べ方を試したけれども、そろそろ無くなりそうね」
 リベリスタたちの箸の進みが鈍くなってきている、気がする。
 このままではリベリスタの箸が止まってしまったら、増殖したお餅を食べきれず失敗、とか報告書に乗せられてしまう。それは断じて阻止せねば!
「武士は苦しい時でも強敵に挑むものでござる。
 ……と、言うわけで誰が一番多く餅を食べるか勝負しないでござるか?」
 暫くの、間が合って。ユイトの戦闘指揮がこんなところで作用したかどうかは、定かではない。
「……いいわ。未文明世界を彷徨って培った食溜め技術を見せてやるのだわ!」
「オレだってもちもち食うぜ!美楼には負けねーッ!」
「わっ、ワタシだって負けないネ!」
 俄然やる気を取り戻したリベリスタたち。心が折れそうになったものの、再度お餅へ挑む。
「ここからが勝負! 先手必勝!」
 たくさん食べられる自信は無かったけれど、問答無用で勝負が始まってしまった以上、流れで勝負に乗ってしまったティセ。
 だがしかし、現実は非情である。
「う、うー、もうダメかも。後は任せたのです……」
 猫耳尻尾が力なく項垂れる。今までもお餅を食べていた少女にとっては、厳しすぎる勝負だった。
「食べるときにも役に立つダブルアクション! 素早く餅を食べることが出来るわ! ……んぐっ!?」
 詰まりそうになった餅を日本酒で流し込む。げほげほと咳込むソラは、ちょっと涙目だった。
「絶対喉に詰まらせるわ、コレ。 良い子は話絶対に真似しちゃだめ! フェイト消費しちゃうぞ!」
 お餅の早食いもお酒の一気飲みも危険行為です。良い子も悪い子も絶対にやめて下さい。

 急遽開催されたお餅大食い大会が終わりを迎える時がきた。
 餅怖いと呟き虚ろな目をしたユイトを始め、すっかり箸の動きが止まったリベリスタ多数。
 持ち前の底力でなんとか倒れることを踏み止まったヘキサと、万年腹ペコな為か涼しい顔のままのアラストール、自他共に認める大食漢の美楼がなんとか餅を食べて、残った餅はあとひとつ。
「美楼には、負けたくねェけど……」
「……もうお腹いっぱいネー」
「では、私が」
 その細い体のどこにそれほどの餅が入るのだろうか。最後のひとつをぱくりと、アラストールが食べた。
「御馳走様でした」

 それからたっぷり休んで、元気になってきたリベリスタたち。エナーシアが一丸レフを取り出した。
「そう云えばこんな晴れ着で集まるのも珍しいし何枚か撮って置きませうか」
 反対するひとなどおらず、皆で並んでカメラに向かってピース。だけど。
「はいチー…… ひっく」
 エナーシアのしゃっくりと共に光るフラッシュ。ブレた。今絶対ブレた。
「……、ぜんぜん酔ってなんてないのですよ?」
 エナーシアさん、頬が赤いですよ。
「さういえば美楼さんって一月後に再度正月を祝うのでせうか?」
 誤魔化すように美楼に問いかければ、美楼はんーっと首を傾げて、それから。
「それもいいかもしれないアル! またお餅、食べるアルか?」
 にっこり笑って言う美楼だったが、その言葉に賛成したリベリスタは、ひとりもいなかったそうな。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 このような結果となりましたが、如何でしたでしょうか。
 新年の計は元旦にあり、と言いますので、
 きっと今年も食べ物と深く関わることになるかもしれません。応援しています。

 楽しんで頂ければ幸いです。少しでもお気に召しますよう。
 ご参加ありがとうございました。