●深夜のファミレスからの洒落にならない夜 ぴろぴろーん。 「いらっしゃいませー。何名様ですかー」 そんなバイトの声もダルそうな、深夜零時。 とあるファミリーレストランのボックス席で、暇そうに山盛りポテトを弄る若い男女。 ピアスだらけで覇気のない顔の茶髪男と、煙草をふかす黒い革ジャンのソフトモヒカン金髪男に、ジャージ姿に健康サンダルの金髪女と、セーラー服を崩しまくった茶髪の女。 見るからに不良である。 彼らは、そこでのくだらない駄弁りの末、ファミリーレストランから車で三十分ほどの廃墟遊園地へと、肝試しに出かけることになる。 その遊園地は、遊園地というよりは公園レベルの広さだ。 小さな敷地に、メリーゴーランド、ゴンドラが五つほど吊られた観覧車、コーヒーカップと、ミニコースターがある。どの遊具も百貨店の屋上レベルの規模ではあるが、定番は外していないから、遊園地といっていいだろう。 バブルの頃に土地を転がして金持ちになった好事家が、気まぐれに作り上げた小さな遊興施設。 しかし、バブルがはじけ、好事家も凋落し、遊園地は廃業。そのまま朽ちるに任せられた。 そんな特に曰くがあるわけでもない場所ではあるが、その不気味さ故に、いろいろな怪談や都市伝説が作られて、その地域では少し有名な心霊スポットと化していた。 とはいえ、私有地。本来ならば、無断で入ってはいけないのだが、そんなもの不良が守るわけもなく。 「んだよ、ユーレーだかなんだかしらねぇけどよぉ、出るならとっとと出ろっつんだよ!」 ガシャーンと遊具を仕切る錆びきった柵を蹴り飛ばし、革ジャンの男が叫んだ。 威嚇は恐怖の裏返しである。 「やだぁ、ヤマちゃんちょーイキってんじゃぁん」 ジャージの女が手を叩いてはしゃぐ。 「マジしょべぇし。ちょーちょろいし」 ピアスの男がところかまわず唾を吐く。 「ねぇねぇ、なんか映ったりしてねえ。写メしまくる?」 セーラー女がスマートフォンのカメラを起動した。 その時。 ぺーぺーぽーぺーぺーぽぱー。 「え? なに、なんか聞こえるし……」 歩行者用信号機が青信号の時のメロディが聞こえる。 ぺーぺぽぺーぺぽぺぺぽぽぺー。 「なっ、なんっだコルァ! やんのかコルァ! 出てきやがれコルァ! 殺すぞコルァ! コルァコルァア!」 コルァしか言ってない革ジャン達の前に現れたのは……。 「ちょ、なに、あれ、ガキんとき見たことある……」 いわゆる『ぬいぐるみ型バッテリーカー』である。 四つん這いの一メートル程度の高さがある、動物型の乗り物だ。ワンコイン入れて、進むと止まるのボタンとハンドルで動かすアレである。 「やっ、ちょ、なんか乗ってるしぃいい。ぎゃー! はえええしいいい」 懐中電灯に照らされる、バッテリーカー群の真ん中を進むパンダの上に、ピンクのうさぎの着ぐるみが乗っている。 その他のバッテリーカーは四台あるが、騎乗者は居ない。 しかも、あの類はゆっくり進むはずなのに、めちゃくちゃ速い。 足がすくんで動けない一同の前に降り立つ、ピンクのうさぎ。 「廃墟っていうのはねぇ……誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだヨ。独りで静かで……」 と廃墟論をぶちながら、ピンクのうさぎはぐらんぐらんと頭を不安定に揺らしながら不良どもへと近づいていく。暗闇なのに足どりはしっかりしている。 なお、手には釘バット。 「ひぃい、やんのかゴルァアアア」 声が裏返るピアス男。 「殺るよ?」 釘バット一閃。ごしゃあっとピアス男の頭がふっとぶ。 全員の大きな悲鳴が巻き上がる。 「廃墟を乱すドキュソには僕ちゃん容赦無いよ」 「やっ、やべっ、やべーよ、やべーよ、ちょーやべーよ、やっやややべーよ」 「やべーよ、しか言えないのかよ」 今度は縦に釘バットがフルスイング。めきいっと、革ジャンの首が胴体へめり込む。 バッテリーカーが、電撃を放ち、セーラー服女はスマートフォンを握ったまま黒焦げになった。 着ぐるみの顔は常に見開いた瞳のまま笑っている。中の人の表情を隠しながら。 「ビッチも嫌いなんだよねえ」 「ぐぎええええ」 バッテリーカーが、骨や内臓を押し潰しながらジャージ女を轢き殺した――。 ●ひどいうさちゃん 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタに、怪談話めいた今回の事件について説明を始めた。 「そのフィクサードは、廃墟オタクみたいね。えてして、廃墟って、不良の度胸試しに使われちゃって、荒らされてしまうことが多いのだけど、それが耐え切れなかったみたい」 オタクと不良は水と油。鬱々と不良への恨みつらみを煮えくり返している最中、彼はフィクサードとなってしまったらしい。 「その力で、大好きな廃墟を荒らす不良を殺すの」 不良とはいえ、前途のある若者だから、なるべく人命は大事にして欲しい、とイヴは言う。 「ファミリーレストランで止めるのもいいし、道中でなんとかして追い返すのもいいと思うよ」 とはいえ、反抗期の不良だ。優しく諭したくらいでいうことを聞くようなら、不良なんてしていないだろうことは、容易に想定できる。 「その人たちの車は、黒いミニバンだよ。運転しているのは革ジャンの人。どうするかは、任せるね」 フィクサードはピンクのうさぎの着ぐるみ姿で、装備は釘バット一本だ。怪力であり、クリーンヒットすると圧倒されてしまうだろう。 「えっと、バッテリーカーは、パンダと犬、ライオンと豚とくまさんの五台だよ。廃墟を荒らされるのはあの子たちも嫌なんだろうね。うさぎさんに従って廃墟を荒らす人を襲うの。電気で攻撃したり、轢いたりするから気をつけてね」 廃墟で暴れれば、簡単におびき寄せられるに違いない。 廃墟は真っ暗で人気がない。不良さえ何とかすれば、結界なしでも誰にも事件を目撃されることもない。 「……見た目は、カワイイ、はずなんだけどね……」 イヴは自分のうさちゃんポシェットを見つめるように、悲しげにうなだれた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月03日(木)23:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●うる☆さい パーン、パパーン、スパパパーン!! 弾ける爆竹! 上がる花火(フェミリー用)! ズンズンチャッ、ズンズンチャッ、テレレーテレーテレーテテテレー。 そして腹に響くほどの大音量で鳴らされるユーロビート! ガシャーンガシャーン! 鉄柵をぶっ叩く耳障りな音! 「あっはっは! ちょーさいこー!」 ぶっ叩きながら、高らかに笑っているのは、白塗りの肌に赤目カラコンを入れた『奔放さてぃすふぁくしょん』千賀 サイケデリ子(BNE004150)だ。 なお、花火や爆竹を中華街の旧正月かと思うくらいにぶちかましているのは、『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)であり、ユーロビートを奏でているのは、ラジカセである。 いや、ラジカセに電力を供給しているのは、『Steam dynamo Ⅸ』シルキィ・スチーマー(BNE001706)である。 「ははは! どうだ騒がしいか! 来いよフィクサード」 シルキィが叫ぶものの、ユーロビートと爆竹がうるさすぎてあまり聞こえない。 「おお、シルキィ殿からLOVEが流れこんでくるでございます! 愛音、愛の一文字を持って抑えましょう! LOVE!」 シルキィは叫びつつも、『愛の一文字』一万吉・愛音(BNE003975)にインスタントチャージを送っていた。 なお、同調しているのは『LOVE(大人の)』である。 『さあ愛音、扉を開くんだぜ……!』 とシルキィは心のなかで囁くものの、愛に邁進する愛音は、 『愛を持って道を説き、愛を持って打倒せよ。愛なき行動は愛なき結果しか生み出さない。故に愛せよ。世界を制すは……LOVE!』 と、家に伝わる信条でいっぱいなので、聞こえていなかった。 だが、効果はちゃんと現れていたため、愛音の影人の増殖には貢献している。 うようよ増える影人。 耳が痛くなりそうな喧騒だ。 故に、彼らは気づいていなかった。遠くから聞こえてくるあの音を。 ぺーぺーぽーぺーぺぽぱー……。 いや、一人だけ、集音装置で微かな音を捉えていた女がいる。 女の名前は、『モンマルトルの白猫』セシル・クロード・カミュ(BNE004055)。 施設を殴り壊す手を止め、セシルは呟く。 「来たわね」 不良がやってくるよりもずっと早い時間から一同は騒ぎを起こして、フィクサードを呼び寄せようとしている。 だから、彼女に課せられているのは必達目標のみ。つまり、フィクサードとE・ゴーレムの退治だけである。 「必要無い義理を果たすつもりも無いわ。そう考えれば、都合はいいわね」 オートマティックのFive-seveNを見下ろし、ゆっくりとセシルはスライドを引いて、セーフティーを外した。 そんなほぼカオスな喧騒から少し離れた場所に、幼女『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)は潜んでいた。 「わー、すごい……」 と圧倒されている彼女の暗視能力が、遠くにうごめく影を察知する。 「え? き、来た?」 それは、猛スピードで近づいてくる五台のファンシーなバッテリーカー、そしてその一台に跨るうさぎの着ぐるみ男。 ●どきゅん! 「う、る、さ、い、んじゃワレーーーー!!」 そのうさぎ、ぶちキレ。 ゴウゥウウとバッテリーカーにあるまじきドリフトで近づいてきて、一発釘バットアタックをぶちかました。 「うわあっ」 見事にクリーンヒット。派手にぶちかまされたサイケデリ子は、ずしゃあと地面にガーリーな服を擦った。 サイケデリ子は後衛であるが、うさぎがリベリスタの布陣が完了するまでにつっこんできてしまったので、殴打の憂き目にあってしまった。 「ちょ、ウサだってじゅーぶん、DQNじゃないですかー!」 サイケデリ子が叫ぶ。叫びながら、魔力を活性化させる。 そんな彼女の前にゆぅらりと立つは、灰色の髪、浅黒い肌、そして桃色の瞳を持ち、顔の半分に蜥蜴の鱗を見せる女、『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)、ちなみに日課は寝る前に恰好いいポーズを考える事。 「廃墟、いいですね。その廃墟に流れる時間と、己の体感する時間、その裂け目に、高揚を得るのでしょうか。しかし、ウサさんを放置するわけにはいかず」 闇に混じる暗黒の瘴気をバッテリーカーにまとわりつかせつつ、なにやら厨二病患者が聞くと痺れるようなカッコイイセリフを言っていたが以下略。 その間に、とらは急いでアシュレイの秘儀を発動した。 先を越されてしまったが、逆に言えば敵陣深く飛び込ませたのも同然だ。 これでフィクサードもゴーレムも逃げられぬ。 サイケデリ子へ天使の歌が届く。離れた場所で、アーリィが歌っているのだ。 愛音がバッテリーカー(くま)に張り付いた。 「量産型愛音! 敵をお味方に近づけることなし! 遂行せよでございます!」 叫べば、影人が全てのバッテリーカーに各自張り付く。 とはいえ、まだ影人は四体。 「むむ、目標たる七体までまだまだでございます」 愛音はさらなる影人量産に勤しむべく、式符を作成し、それをシルキィが支援する。 それが気に食わないか、バチバチィッと全てのバッテリーカーから電撃が放たれ、シルキィと愛音が感電する。 「年の瀬の忙しい時期だと言うのに、やれやれ。とはいえ、今回はアシュレイの秘儀で、余計なことを考えずに戦えるのはありがたいことですね」 言いながら、男は日本刀をずらりと引きぬいた。 「値六百貫の人斬り包丁、大般若の切れ味やいかに」 言うなり、『必殺特殊清掃人』鹿毛・E・ロウ(BNE004035)は消えた。 いや、天高く跳躍したのだ。 パンダバッテリーカーめがけて刃が落ちる。 複数のバッテリーカーへ、弾丸がめり込む。射手はセシルだ。 ●廃墟好きすぎ問題 「あーもう。なんでこんなうるさくするの? あのね、廃墟ってのはね、大勢でぞろぞろ来るところじゃないの。一人で、しんみりと廃墟の歴史やら在りし日について思いを馳せたり、朽ちていくロマンに浸ったり、そういう場所なの! 騒ぐなら海でも行ってくれる?!」 うさぎの着ぐるみフィクサードは、リベリスタを見回して、疲れきったように言った。 「廃墟ってのは、静かで虚ろで、だからこそ人を惹きつけてやまない求心力がある。それはわかる」 シルキィはうんうんと染み入るように頷いた。 「わかるよね」 じゃあ、どっか行ってくれるかな、ラジカセ女ァアと言いたいフィクサードであるが、シルキィは続けてしまった。 「それはわかるけど」 「え?」 不穏な受け答えに、うさぎフィクサードは、うろたえる。 「あたいはもっと激しくてファンキーなのが好きなんだぜヒャッハー!」 ビガーッ! シルキィの体が赤と緑のめまぐるしい光を放つ。 「ギャー! わかってねえじゃねえかぁああ」 うさぎの叫びに呼応するように、バッテリーカーが電撃を飛ばして、シルキィを襲う。 「あぁん、シビレるぅうーんっ」 なお、その間にもバッテリーカーとリベリスタの熾烈な戦いは続いている。 サイケデリ子とアーリィが、どんどん仲間の負傷を癒すため、さほど戦況は苦しくない。 「人と、廃墟――不干渉であるべき、そうは思いませんか。廃墟、その景色――そこに、我々生者は、一滴の色も垂らしてはならない。ここに在って、しかし、存在しない――その神秘的なアンビバレンツ。それが廃墟だと……」 生佐目が暗黒を発動しながら、廃墟を語ってみるが、あんまりフィクサードにはピンとこなかったらしい。 ブンブンと手を横に高速で振られた。 「いやいやいやいやいやっっ、違うよ。廃墟っていうのはさ、人間が創りだして、そして放置された結果に出来るものじゃん。自然の洞窟とか森とかと違ってさ、人間の手が加わってこその廃墟であり、そして人間に放置されつつも、人間が来ることを望んでいる施設が廃墟だと、僕ちゃんは思うわけさ。なんつーのかな、廃墟ってさ、ツンデレじゃね? 来ないで! って感じに態度取りつつも、寂しがってて、ウソ……来て……って思ってる感じ! ツンデレ! 萌え! あーわっかるかなぁコレー!」 めちゃめちゃ長く喋った。オタクというものは、得てして好きなモノに関して語るとき、周りが見えないレベルで高揚するものである。 フィクサードは一人で高揚しながら喋りつつ、殴った。 「……わかりません」 すんでのところで回避しつつ、わかってたまるか、と生佐目は思った。分かったら、危ない気がする。すごく。 「あのさ、廃墟の雰囲気って俺も嫌いじゃないけど……何ていうか、ほらE・ゴーレム達にも心があるみたいに遊園地にも心があるなら、きっと今でもたくさんの人の笑顔を夢見ていると思うよ?」 とらも赤い月を生みつつ、言ってみるものの、 「うん、でもさ、その笑顔って施設でバカ騒ぎする笑顔じゃないと思わね? あ、でも、こうなんつーの? 清純なロリがこう、朽ちていく遊園地で一人あそぶっていうシチュエーションは、こー儚くっていいよね。幻想的っての? うん。不思議ロリとツンデレ……ハッ! 百合?! ロリ×廃墟の百合だコレ!!」 『わぁ、変態だ……』 一人、妄想に耽るフィクサードを見て、リベリスタは全員、同調したように思った。 「まぁ、ビッチがお嫌いみたいですからね。特有の潔癖ってやつでしょうかねえ、僕も清い体なんでアレですが……そう言うのってますますこじらせちゃいますからね。いや、こじらせきってるから、こんなんなのでしょうかね」 ロウはバッテリーカーを完膚なきまでに破壊し、可哀想なものを見る目でフィクサードを見た。 影人が目標値に届き、愛音はほっとしつつも、まだまだとばかりに影人召喚を続ける。 「見ていて非常に滑稽で哀れになるわ」 セシルはため息を吐く。そして撃ち、バッテリーカーを一掃した。 ●栄光をもう一度 ロウは、ようやくオヒキを失ったフィクサードを見て、言う。 「とりあえず、廃墟に一家言あるのはかまいませんけど、神秘の力を濫用して貰っちゃ困るんですよねえ……」 「いや、僕ちゃんだってさ、別に殺生がしたいわけじゃないのよ。ただね、僕ちゃんが愛する廃墟をね、アホが汚すからさ。それを駆除してるだけなのさ……ってあわわ?!」 ロウは聞いちゃいなかった。無言で殺到して澱みない連続攻撃をかます。 自分に酔いながら語っていたフィクサードに見事に全段命中し、ウサギ男は麻痺してしまった。 「フールボッコチャーンス!」 シルキィが叫び、彼女の赤と緑の眩しいブレイクフィアーで、全員の感電や圧倒状態が解除される。 「殺しちゃ駄目だからなー」 とらが朗らかに言い、リベリスタは全員で手加減しつつも殴った。 ずっと遠くで控えていたアーリィもやってきて、着ぐるみを剥いでいる。 「あ、ちょ、なんで脱がすの? らめえ!」 「ちょっとかわいそうだけど……でもお仕事のためだもんね……」 「え、何のお仕事? 中の人などいない! 中の人などいませんん!! アッー!!」 生佐目が淡々とアーリィを手伝い、見事に着ぐるみが剥がれる。 果たして中の人は、ダサめのシャツを着た特徴のないアラサー男であった。 最後はとらの気糸が、グルングルンにアラサー男を縛って確保完了。 「……他の皆がどうしようが自由だけれど、もう眠いし私は先に帰らせてもらうわよ?」 セシルは、しょんぼりしているフィクサードを見下ろしてから、仲間にそう言うと、さっさと廃墟を後にした。 彼女を見送り、とらは、フィクサードの目を見て優しく諭す。 「遊園地は人を楽しませるために作られたんだよ。少なくとも、そんな釘バットで殺しをされて、心霊スポットにされたいなんて思ってないはずだよ」 「心霊スポットになりそうなくらいの雰囲気こそ廃墟の魅力だと思うんだけど。いや、僕ちゃんはね、ただ静かな廃墟をだね……」 「護りたいお心は見事。それを広げるだけでございます。アークへ一緒に参りませんか?」 「なにそれ、アーク?」 「アークというものはですね……」 と、愛音がフィクサードを勧誘する。 フィクサードを説得している間に、シルキィはなにやらごそごそやっていた。 「何か遊園地で遊ぶようなら、付き合いますよ♪」 ロウがシルキィに声をかける。 「いやいや、もう準備は万端整ったぜ。あとは……」 シルキィは振り向く。 キャスケットを脱ぎ、ピンク髪をぐしゃぐしゃに乱したサイケデリ子が、人影に向かって何やら言っていた。 「こんばんは……アタシ達と一緒に……遊びませんか? 丁度メリーゴーランドも動く所ですよぅ……キシシシシッ!」 瞬間、サイケデリ子の背後から網膜を焼きそうな光が溢れだし、楽しげな音楽とともに、小さなメリーゴーランドが回りだした。 「ぎゃーーーーっ」 叫んで、こけつまろびつ逃走していく人影は、きっと被害者になる予定だった不良達であろう。 ビビる中での、急な光と音はいかに楽しげなものでも、極限まで高まった彼らの恐怖心を爆発させるには十分だったようだ。 「な、明るい廃墟ってのもなかなか乙だろ。あんたも取ってみないか、ヒューマンダイナモってスキルをさ……!」 シルキィは、呆然とするフィクサードに、ドヤ顔をしてみせる。 「折角ですし、写真でも撮りましょうか」 生佐目が言い、アーリィがはにかみつつも、ちょこちょことメリーゴーランドによじ登って、ピースサインをする。 他の面々も思い思いにファインダーに収まり……。 「はい、チーズ!」 廃墟のメリーゴーランドが栄光を取り戻した姿を、レンズが切り取った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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