●最近よく、口の中を噛みます 町内の小さな公園。遊具らしい遊具もないただの広場。人が存在するのもまれな場所。 その日遊びに来た二人の子供も、今時の子供らしくカードゲームを片手にスペースを求めて来たわけだったが―― 「あーなんだこれ! こんなのあったっけ!」 彼らの目を引いたもの。それは何もなかったはずの公園の中心に、忽然と姿を現した井戸であった。 こんなものが一晩で出来るはずもない。が、子供たちはそんなことを気にすることもなく井戸に近づいていった。 井戸の周りをぐるぐる回る。中を覗いても深く真っ暗で何も見えなかった。 「q!」 「q!」 身近の不思議に興奮して騒ぎ立てていた彼らは、深さを調べようと足元の石ころを投げ込んでみた。 ――っ。 ずいぶん間を空けてから音が聞こえた気がした。どれだけこの底は深いんだろう。 もう一度石を拾い、少しでもよく聞こうと身を乗り出す。その時、石を投げ込む前に今度はもっとはっきりと音が――いや、声が聞こえた。 ――シャース!! シャァアース!! オヤスシャース!! 「わぁっ!?」 驚いた理由として声はもちろんだが、何よりもその声がすごい速度で近づいていることだ。 慌てて顔を引っ込める――より早く、腕が何かに掴まれた。すごい力で引きずり込まれる。 「手を伸ばせー」 もう一人が引っ張られる友達の身体を抑え……二人の姿は一瞬で井戸に消えていった。 ●落ちていたダンベルによって足の小指が死にました 「チルドレンは井戸の底で気絶していマース。二人を助けてアゲてくだサーイ」 内容のわりにのんびりした口調で『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)が言う。 「井戸の底は別のチャンネルと繋がった不思議空間。飛び降りても怪我はしまセーン」 呼吸の出来る水の中って感じデースねとウィンク。 二人を引きずりこんだのはアザーバイド。それも友好的なアザーバイドだという。 映った姿は人間の女性に近い。やや等身が低くて白い翼を生やした愛らしい少女に見える。よくよく見るとところどころ変な部分があるが。足がダンベルだし。 「引きずり込んだのは種の習性といいマースか。このアザーバイド、不思議な力があるのデースよ」 それはなんと……相手の願いを叶える力なのだという! 異世界を旅して回り、その世界で十人の願いを叶えると満足して帰っていく。そんな習性を持つアザーバイドなのだとか。 「崩界の影響上居座られると困りマースが、願いを叶えて満足するならわざわざ友好的なアザーバイドを倒す必要はありまセーン」 存分に好きに願っちゃってくださいとロイヤーが笑った。 楽な任務でしかも願いが叶う――何を願うかと雑談しながらブリーフィングルームを出ようとしたリベリスタの足がふと止まった。 「子供たちはなんで気絶しているんだ?」 「願った結果デースよ」 ――なんで。 気絶を願うとかどんなマゾだと口を開く前にロイヤーが続ける。 「このアザーバイド。ちょっと耳が遠いのか、それともスゴクうっかりなのか。よく願いを勘違いして叶えマース」 曰く、子供たちは『金!』と願ったらしい。最近の子供はまったく。 「で、結果がこれデース」 モニター拡大。気絶している子供の横に転がるそれが映る。 キラキラ輝く大きな物体。それは―― ――『金ダライ』であった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月04日(金)21:50 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●おおっと井戸の外だ! ――今、生活費を求めて歩いている僕はいいとこ生まれのごく一般的なリベリスタ。強いて違うところをあげるとすれば労働に興味がないってことかナ――名前は遠藤ネイル。 開幕テロップを掲げて人気のない公園にやってきたのは『アルケニート』ネイル・E・E・テトラツィーニ(BNE004191)。人の願いを叶えるという『ウッカリウッカゲ』を求めてやって来たリベリスタの一人だ。 働かないがモットーのネイル。楽そうな依頼があったと参加してみたのだが。 ――まず、なのなのを監禁し、飢餓状態に置く。そのうえでカレーを少量ずつ与えるようにすれば、カレーを求めるように…… ――つまりお兄ちゃんを監禁して少しずつ私と接するようにすれば私を求めるように…… 「何言ってるの!? この人達何言ってるの!?」 不穏なキーワードが響き渡れば井戸に木霊する『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)の悲鳴。 「ご覧の有様だよ」 ネイルは楽なはずの依頼で仲間を見渡せば。願いに思いを馳せにたにた笑う連中もいればぶつぶつ呟く連中もいる。 「アーク超怖いわ……」 嗚呼早く家に帰ってこたつと仲良くなりたい。 「キタ! 願い来た! これで勝つるのじゃ!」 今日の素直に荒ぶってる人代表、『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)。さてさて抱える願いはどんなものだろう。 ――言葉が正確に伝わる様タワーオブバベルをセット! 井戸に落ちて転落死しないよう落下制御も追加! 更に更にアザーバイドは黒ストッキングが好きと聞けば履いていき、好物の畑で採れたてのお芋と口内炎に効くビタミンBサプリを添えて―― ……本当にどんだけ必死な願いなの。 「『q!』って、たぶん『あ!』って言いたかったのかな?」 ルーメリアさん、それは飲むを連打……まあいいや。 「ウッカリさんは一度翻訳を挟まないといけないの。いやんマスターとか、毛糸使用とか、えっ! ってなる誤字は多いの」 もう許してやれよ。フェイト四郎とかさ。 さあリベリスターズ、願いを叫ぶ心の準備はOK? ――いざっ! ●おおっと井戸の中だ! 井戸の中は壁が見えぬほど広く、その中でリベリスタ達はふわふわと漂う。まるで温水の中にいるようだ。 あたりは真っ暗で、けれども仲間達の姿ははっきり見えた。常識の通じぬ世界、なるほど確かに異次元である。 意識のない子供達の身体を用意した寝袋に包み、『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は二つのプロネブクロを脇に寄せた。 ――これから始まる大惨事、犠牲は少ない方が良い。 皮肉めいた視線をそちらに向ける。視線の先に漂う翼持つ少女、アザーバイド『ウッカリウッカゲ』……その周囲には。 「願いが何でも叶うとかステキです! 黒スト持ってきたので存分に破いてください」 「ルメの黒ストだよ!? 破きたいの……? じ、じゃあ、はい、どうぞ……」 えろい。じゃなかった、『第30話:Xディズ』宮部・香夏子(BNE003035)とルーメリアが下から攻めれば。 「芋が好きだとか。ちょうど季節は冬、焼き芋のシーズンだしな」 「これで願いも確実じゃて。ふ、完璧過ぎて自分が怖いわい……」 焼き芋特有のほこほこの匂いを漂わせ、ハイディ・アレンス(BNE000603)とレイラインが上から攻める。 ――物欲センサーも真っ青だった。 ――いけないのだわこの流れ、この感じ。このままでは爆発オチが待っているのだわ! 良識ある一般人枠として。メンバー最年長の責任者として(物欲最前線の合法ロリ還暦除く)そうはさせないとエナーシアの瞳に決意が宿る。 ――ならば、私の願うことは只一つ―― ●case1.エナーシア・ガトリングの願い エナーシア・ガトリングはドジっ娘である。 というと誤解を受けてしまうので訂正すると、周囲からドジっ娘のレッテルを貼られている。 事実としてどうかと言えば、受勲を受けたアークバナナの皮勲章やらE・M・P(エナーシア・マジ・プリティ!)が物語っている気がしないでもないがこの際置いておくと、本人としてはあくまで納得のいく称号ではないらしい。 だけど。だけどだ。 「こんな私でも貴女がどう扱われるかは判るのだわ」 エナーシアがウッカリウッカゲの瞳を覗き込む。つぶらな瞳をきょとんと動かせば、その肩をエナーシアが強く強く強く揺り動かした! 「うっかりのまま! 歴史に! 残ってしまうのですよ!」 がくがくがくがくと前後に振られて、真っ黒な瞳が白黒してる。 ――私は濡れ衣なのでこの先で払拭されていくのだけど、貴女は今を逃せば機会はないのだわ―― だから願おう。これはウッカリウッカゲのためであり、仲間のためでもある。さあエナーシアの願いは―― 「私の願いは『ウッカゲさんが正しく願いを叶える』ことなのだわ!」 暫しの沈黙。無表情ながらも考え込むように頭を動かしていたアザーバイド。 突如腕を突き出して――サムズアップ! 心なしかドヤ顔であった。そのまま腕を大きく振り上げて願いの呪文を唱えていく! 『うっかりうっかりうっかげ!』 満足げに頷き、エナーシアは仲間を振り返る。 「ウッカゲさんはもう大丈夫。さあ願うといいのだわ!」 ●case2.遠藤ネイルの願い ――えーとなんだっけ。願い、願いね。 金は聞き間違えられる事がわかっている。スキル……あっても私戦わないし。 ベッドもこたつもあるからいらないし外に出ないから――すごい、私物欲ない。 しばし悩んでいたネイルはじゃあと口を開いた。 「私の願いは『日本の平和』だ」 ……白々しい空気が流れた。 しかし願った本人には偽りない気持ちなのかもしれない。 (うん、これを願うことで自分より他人を思いやれる善人だと思われるし大成功で報酬は増えるしカオスゲージは+に傾くしの完璧な作戦だ) 本当に白々しかった。 一つ頷いて――ウッカリウッカゲが腕を振る! 『うっかりうっかりうっかげ!』 ――ぼとぼとぼとぼと! 小さい物がいっぱい落ちてきた! リベリスタ達がそれを回収し並べていく。さて、出来上がったものは―― │二│二│一│二│三│四│伍│七│七│ハ│八│九│九│|六| │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│|萬| 「……麻雀の牌に見えるね」 ネイルが呟いた。これが2セット分ある。考え込んでいたエナーシアが信じがたいという表情で口を開く。 「これはピンフ……そう、麻雀の役の一つ、平和(ピンフ)なのだわ!」 なんだってー! 大げさな表情の香夏子とルーメリア。彼女達がその判定を求めた。 「エナーシアさん! どうなんですか!」 「二本の平和……これは認めざるを得ない……セーフなのだわ!」 判決は下された! かくしてネイルはその願いにより麻雀牌を持ち帰ることになったのだった―― 「しかもこれ中途半端な数しか牌がないんだけど」 買えば? ●case3.結城 竜一の願い ――俺が願うべきは世界平和。この世の中から争いをなくしてくれとそう願う。 だがそれは、誰かに与えられる願いなんかじゃない。俺たち自身で手にしなければいけない願いなんだ。 人は望む限り夢を目指すことが出来る。一歩であれ、前に進むことが出来る。 結果しか見ない者は、その一歩の価値を知ることが無い。そういう人間に俺はなりたくない。 俺は俺の手で何かを掴み取りたい。それは誇りであり、わがままだ。 健全な精神を持ち、自らの行為に責任を持つ。それが、正しい人の姿であると俺は―― 「願うな! 勝ち取れ! それが俺の矜持だ!」 荒々しく口上を述べた『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)のその強き意思! その眼! 彼はそのままウッカリウッカゲへと向かう。びくびくするウッカゲに――その強い意志のまま、彼は願いを唱えるのだ。 「『俺が叶えてもらえる願いを三つに増やしてくれ!』」 ひゃっはー! 予想通りだー! 「エナーシアさん! どうなんですか!」 彼女達がその判定を求めた。 「願う回数の増加はこの手の話で絶対のタブー……私にはわからないのだわ……」 暫し考え込むアザーバイド。判決は――サムズアップ! 『うっかりうっかりうっかげ!』 「うっひょおおおお! これで俺3回願えるんだろ! じゃあまずは仲間の今穿いてる――」 しかしここでアザーバイドが竜一を制止する。身振り手振りで仲間の後ろに回れと言っているらしい。 「あ、一回叶えたんだから順番守れってことね。いいよいいよ、楽しみは後でぐふふふふ」 まともな人間があげてはいけない笑い声を残し飄々と後ろに回る竜一。 「今竜一さんが言いかけた願いは――」 その後姿を、ハイディは物言いたげに見つめていた―― ●case4.ルーメリア・ブラン・リュミエールの願い? やはりアザーバイド。タワーオブバベルの力も別世界の理解には繋がらない。 それでも、なんか死んでる脚の小指を吐息で癒し。ビタミン不足をみかんで補って。ホモォの話に花を咲かせて―― ルーメリアの努力はウッカゲのため? いやいや、決していやいやいや。 彼女には願いがある。叶って欲しい願いがある! それじゃあそろそろいくよ――息を大きく吸って、ルーメリアが叫ぶ! 『ルメの応援してる球団を今年こそは優勝させて欲しいの!』 『ルメ子さんを素直にカレー好きにして欲しい』 …… 「なんでかぶせたのおおおお!?」 「香夏子はルメ子さんにカレー好きになって欲しいと考えてたので……ルメ子さんが喋ってたらつい……」 香夏子、今は反省しているのポーズ。 「いやでもですね。ルメ子さんは本当はカレーが好きでマンションをカレー屋にしてメイド服まで着てしまうくらいカレー好きなのに、カレーを否定することばかり言ってしまうツンデレさんです」 言い切った。 「もっと素直にカレーを楽しんで欲しい……香夏子はいつも思ってました。この機会にルメ子さん改Mk-Ⅱとして生まれ変わって欲しいです」 やっぱり反省はしてないかもしれない。と、ここで―― 『うっかりうっかりうっかげ!』 なんと! 願いは叶ってしまったようだ! 両手を突き出しダブルサムズアップ! 二人分の願いは消耗したようだが、慌ててルーメリアが自分の願いを繰り返せば『何ソレ?』という表情。 「どんな願いが叶ったの!?」 「ここは落ち着いて他の人に聞くのです」 というわけで、離れていたレイラインに聞いたところ―― 「聞き取れたのは『ルメ子の応援してるカレー好きを今年こそは優勝させて欲しいの!』じゃったのぅ……」 …… 「香夏子ちゃん……何に優勝するつもり?」 震えた声で不穏な空気を漂わせるルーメリアに、香夏子は小さく頷いた。 「落ちていたカードデッキケースで足の小指の皮が切れました」 「誤魔化しにもなってないよ!?」 つまりcase5.宮部・香夏子の願いでもあったという話。 ●case6.結城・ハマリエル・虎美の願い 映像付きマスターテレパスでブレラヴァ発動! 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)の狂気劇場(偽)をご覧ください。 「お兄ちゃんが欲しい愛してるお兄ちゃんぺろぺろしたい大好きお兄ちゃんをぎゅってしたいお兄ちゃんにぎゅってして欲しい いちゃいちゃしたい愛シテル遊びたい結婚する大好キ私はお兄ちゃんがいればそれで良い お兄ちゃんになでなでして欲しいお兄ちゃんに構って欲しいお兄ちゃんに褒められたい笑って欲しい笑顔見たいお兄ちゃんに私だけを見て欲しい お兄ちゃんは私と一緒にいるべき拉致監禁して大好きお世話したいお兄ちゃんは私がいれば良いのあいつはいらない お兄ちゃん今日も優しくてきもちいいぐらい超かっこいいお兄ちゃんだから結婚しようオニイチャン 愛してる大好きぺろぺろ私この全体が終わったら結婚するんだ勿論お兄ちゃんとお兄ちゃんペロペロお兄ちゃん ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺぺろぺろぺろ 願 い を 叶 え る な ら お 兄 ち ゃ ん よ こ せ よ ォ ッ ! ミ ス っ た ら ぶ ち 殺 す ぞ ッ ! ア ザ ー バ イ ド !」 「エナーシアさん! どうなんですか!」 彼女達がその判定を求める。 「ウッカゲさん逃げてなのだわ!」 正しい。 だがその瞬間、眩い光が井戸を照らした! 『うっかりうっかりうっかげ!』 呪文を唱え終わった時、眩い光が途切れ周囲を見渡せるようになる。そこには―― 「……え?」 竜一がぽかんと立っている。さっきまで後ろにいたはずの彼が、今は妹の虎美の前に移っているわけで。さすがに周囲もざわついたのだが。 「つまり、少しワープしただけということだな」 ハイディは先ほどまで自分の後ろにいた竜一の姿がないことを確認し報告した。様子からしても分裂したわけではなくまごうことなき本人だろう。せいぜい5m程度位置が動いただけの話。 「お兄ちゃんをよこせと言われて近くに寄せたのだな。なるほど、意味のない結果だったな」 そう結論がついた――はずだったのだが。 目の前に現れた兄に対し、目を見開いて小刻みに身体を震わせていた妹。虎美が感極まって叫ぶ! 「お兄ちゃん、とうとう――とうとう私だけのものになったんだね!」 いや、ワープしただけ―― 「お兄ちゃん大好き朝から晩までお兄ちゃん一緒にお兄ちゃん愛してる大好きお兄ちゃんお兄ちゃんお兄チャンはよ」 「ウッカゲー! 無責任なことするなウッカゲー!」 竜一の絶叫が井戸の中に響き渡ったとか。 ●case7.レイライン・エレアニックの願い レイラインは困っていた。 「うーむ、いざとなると、何を願えばいいんじゃろうか」 最近イケメンの彼氏が出来てリア充なので。 「最近よれよれになって来たぱんつとか……いやいや待て落ち着け」 本当に落ち着け。 で、悩んだ末の結論。 「現状で満足してる部分が多い訳じゃし、現状の更なる発展を願おうかのう」 具体的には彼氏ともっと進展したい! ――よし、決めた! 「わらわの願いは『彼氏が悩殺されるような衣装』じゃ!」 服のセンスはからきしの自分。可愛くもせくしーな衣装で喜ばしたい、悩殺したい! ウッカリウッカゲをじっと見つめ、レイラインは両手を握って祈り続ける。 呟く祈りは彼氏の名前。その笑顔を想像して―― 『うっかりうっかりうっかげ!』 「おお――」 手に載せられた確かな感触。これが、悩殺の――! ……金属の筒? 「え、えーと?」 見ても何かわかんにゃい。 「あ、私知ってるよ」 知っているのかネイル! こうやって使うんだよと示していく。筒の先が尖っている。それをやおら振り上げて――頭のてっぺんにぶすっ。 …… 「悩刺すで悩殺だねっ」 「いるかー! う、うにゃあぁぁん!」 投げ捨てて泣き出したー! 彼氏を喜ばせたかっただけなのに……さめざめなくレイラインに、近づいたアザーバイド。 レイラインが見上げた先でウッカリウッカゲは口を開き…… ――ガーガ、ピー! 口から紙出したー!? ひらりひらりと舞い降りた紙。その内容。 『えーと、もふもふコートに胸元が広く開いたオサレスタイリッシュでエロリッシュなスーツ。もちミニスカ。脚はタイツ。下着は赤のフリフリで(´▽`)b』 「……これは、まさか」 はい。このために私……某GNMSTに彼氏の好みを聞き込みしておいたのでございます。文章そのままコピペな。 「お、おお――」 紙をしっかり胸に抱いて、レイラインの願いはある意味叶ったのかな。 ●case8.ハイディ・アレンスの願い ――願いを叶える友好的なアザーバイド。けれど崩壊を招く以上、願いを頼みお帰りいただくほかない。 そして大きな問題は起こらなかったので、ハイディが考えていた『事態収拾』を願う必要はない。 ならば、ならばだ。 自分の思いつく願いは唯一つ。やってみたかった、試してみたかったお約束。 ハイディは大きく大きく息を吸い込んだ。願いは一つ――っ! 『ギャルのパンティおくれーーーっ!!』 そして――世界をパンツが包み込んだ。 ●結局爆発オチ 「好奇心に負けてやってしまった、正直すまなかった」 「こうなるとは予想してたのだわ」 「ルメ子さん、パンツに溺れるとか変態ですか」 「本当の意味で溺れてるだけなの!」 「お兄ちゃんどこ……? 見えないよお兄ちゃん――」 「ほら、やっぱり外に出ると悪いことが起きるんだよ」 「よれよれのパンツと交換……いやいやいや」 予測できていただろうか。リベリスタ達は井戸の中に敷き詰められたおパンツの海で全員溺れていた。 「自分達が穿いてたのも消えちゃって――探しようがないなこれでは」 「あ、この縞パンは誰の?」 「あ、それ俺の」 「竜一の!?」 カオスの狭間でふと光を感じれば、アザーバイド『ウッカリウッカゲ』が満足げに世界を飛び立つところだった。 「帰るのね――ウッカゲさん、貴方は立派にやったのだわ」 「おー、って待てええええ! 俺の後3回の願いは!」 「ああ……たぶん10回の願いを終えたんで満足しちゃったんですね」 「たぶん次があれば3回願いを叶えてくれますよ」 「待てるかああああ! さ、詐欺だ!」 叫ぼうとも翼は止まらず。ウッカリウッカゲは次の目的地を求め旅立ちましたとさ。 めでたしめでたし。 子供達を忘れず回収してね! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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