●まるごと。だめ、ぜったい。 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタの顔を見回して、一つこくりと頷いた。 「とある山中にエリューションの発生を確認。速やかに処理して」 手元の資料をめくって、淡々と告げる。 「エリューションビースト、フェイズ2。原型はプラナリア。元々は水生だけど、陸上に対応して進化。大きさは全長5メートル。今のところ、単体だよ」 モニタに映し出されるプラナリアの標本写真。地面をのた打ち回るナメクジにしては平べったい、日本名ウズムシ。 高校の生物では、縦に切ると頭が二つになり、三つに切れば三匹になる。再生能力のサンプルとしておなじみだ。 画面が切り替わり、それの大きいのが周りの樹木をへし折る様は悪夢だ。なぎ倒された梢がズ……ンと音を立てて地面に倒れる。 これを人間相手にされるかと思うと、ぞっとする。 「規格外に大きいから、仮称をテラプラナリア。略称テラプラとする」 いいのか、そんな仮称で。 「粘液で体を覆っているし、体組織も単純な分頑強。体を鞭みたいにしならせて、体当たりをしてくる。単体でかなり強い。8人で何とかなるかちょっと心配。だけど、現時点でこの作戦に参加できるのはあなた達だけ。がんばって」 励ましてくれる幼女、マジエンジェル。 背後のモニターでは、怪獣がビタンビタンと暴れ狂っているが。 「このエリューションの欲望は、増殖。もともとプラナリアが持っている再生能力が更に強化されている。切断されると分割し、別の個体になる。時間が経てば同じ強さになるけど、その時間を与えないで。分割直後は全ての能力は半分になる」 「今いる歯が立たない100が一体を、何とか出来そうな50を二体にして、それでもだめなら更に半分ってことか」 リベリスタからの例示に、イヴは大きく頷いた。 「そう。基本作戦は、何体かに分割して各個撃破するのがいいと思う。ただ分割すれば相手の手数も増える。何体に分けるかとか、タイミングとか、細かい作戦はチームに任せる」 モニターには、ビーストを中心にして結構な広さの空き地が形成されている。 「戦闘に必要な空間はある。邪魔になりそうな木はもう倒されてるから、心配しなくていい」 イヴは表情を引き締めて、リベリスタに向き直った。 「強い相手。気をつけて、行ってらっしゃい」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月18日(月)00:01 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ちらっとみえた。 指定地点まで結構遠いのに、ちらっとびろびろしたものが視界に入った。 リベリスタ達は頷き合うと、山道を急ぎ始めた。 「今度はプラナリアが相手でござるか……! なんかちょっと変わった相手でござるが頑張るでござるよ!」 見た目より結構若い『自称・雷音の夫』鬼蔭虎鐵(ID:BNE000034)は、前向きだ。 筋骨隆々。広い背中が頼もしい。 「プラナリアというと、扁形動物でしたよね。イギリスで外来種が増えすぎて問題も起こす程適応力があります。少し可愛そうですが、一片たりとも残す訳にはいきませんね」 『マジメちゃん』赤羽光(ID:BNE000430)は、放置した場合の危険性を説く。 きちんと着込んだ制服。ピシッと伸びた背筋。爽やかな言動。 PTA主催「娘の彼氏にしたい好青年ランキング」でいい線いきそうだ。 「正直なところ、生け捕りにしたい気持ちもありますが……戦闘力と再生力を利用した『極めて危険な利用方法』が容易に思い浮かびますな。……ううむ、やはり始末せざるをえませんか」 若干寂しい頭部が人生の年輪を感じさせる『静かなる鉄腕』鬼ヶ島正道(ID:BNE000681)は、サラッと怖いことを言う。 『復讐者』雪白凍夜(ID:BNE000889)は、そんなことはどうでもいい。 「はっ……日頃溜まりに溜まったフラストレーション。解消してやるから覚悟しやがれ……!」 口走る台詞が剣呑極まりない。完全に八つ当たりである。本人も自覚している。 わくわくしているのは、謎の中国人もどき。『肉恋い蝙蝠』李・灰蝠(IDBNE001880) (ああんもう! 5mのプラナリアちゃんなんておっちゃんはじめてね!! ドキがムネムネでたっまんねぇアル……っ! うっかりヨダレ出ちゃいそね……♪ みんなで行くのも遠足みたいでなつかし楽しみアル~♪) すっごく楽しそうなひげのおっちゃん、走りながら身もだえせんばかりだ。踊りだしても不思議ではない。 銀髪金瞳、クールな外見の従僕『獣猟犬』セオ・ドゥーグ( ID:BNE002004) は、テラプラを見た。 (とてもでかい、寄り目のなめくじ。しかも切ると増える。無限に。どこまでも。……がんばろう) なんだか素朴だ。ご近所の奥さん方にノッポさんと可愛く呼ばれているのもわかる。 最年少の女子小学6年生『斧槍狂』小崎・岬(ID:BNE002119)は、ちょっとドキドキ。 (ついにボクとこいつも実戦デビューだねー。むー、意外と緊張してるのかなー。全然カッコ良い感じのセリフとか思いつかないよー、ルビないと読みようがない感じの!) 岬もいつか知るだろう。そんな台詞をすらすら思いつくのは少数派だということを。 『任侠魔拳士』ルチア・プルート(ID:BNE002197) も、ガントレットを嵌め、準備万端。 ゴングが鳴るのを待っている。この上り坂が、リングへの花道だ。 まもなく平坦なところに出る。 そこが、戦場だ。 ●大切断! 遠近感がおかしい。 視界を埋め尽くす、原生生物のつるんとした腹。 全長5メートル。仮称テラプラナリア。略してテラプラ。 べとーんべとーんと、地響きを立てて暴れまくっている。 辺りにはなぎ倒された木々が、ばきばきに粉砕されている。 邪魔なものがない分戦いやすいが、あの体当たりをやられたら、リベリスタでもただではすまないことは、一目瞭然。 「って、デカ!」 思わず、岬は素っ頓狂な声を上げた。あんぐり開きかけた口元をきりっと引き締める。 (お、落ち着け、餅つくんだ。アークのリベリスタはうろたえない。逆に考えるんだ、『あれだけ大きければ分断しやすいZE』 って考えるんだよー) 「100分断しても再生すると言う話も聞きますな」 もっともらしく正道が言う。 「……」 数瞬の空白。 「他意は御座いません。お仕事前の軽い雑談です。ええ」 目的が殲滅なのは、初めからわかっていたことだ。完遂するしかない。 「やはりこのサイズでも寄り目なんだろうか……」 セオの呟きに、皆なんとなくテラプラの顔を見る。 (うん、やっぱり寄り目) なんだか場が和んだ。さすがご近所でノッポさんと(以下略)。 リベリスタたちは事前の打ち合わせどおり、注意深くテラプラの射程距離外に陣取った。 セオと岬は、集中行動に入った。 正道は、コンセントレーション。 テラプラは、全長5mの今が一番能力が高い。回避される危険性も高いのだ。攻撃力が高い内に一発もらうのは、避けたい。 「さて…戦闘準備を今のうちに整えるでござる!」 ハイスピードで体のギアを上げる虎鐵と光。 灰蝠は、マナサイクルで魔力を活性化させる。 凍夜は気配遮断でテラプラの死角に潜み、目算で遠距離攻撃の射程を測る事に今の内に慣れておく。 一手間かかるが、命中率を上げるためには仕方がない。 攻撃を避けるために開けた距離も、脅威の移動力で目前に迫るテラプラにみるみる詰められる。 ぎりぎり届かぬ位置にいるとはいえ、のた打ち回る全長五メートルの生きている鞭が自分達めがけて突っ込んでくるのだ。 一同の緊張も極限まで高まる。 「さーて、そんじゃま行くとしますか。一番槍、雪白凍夜推して参る」 ソードエアリアル。高速で跳躍した凍夜の姿が空に吸い込まれる。 テラプラに向かって急降下。硬いテラプラにザクザクザクザクと剣風が跳び、どうにか両断した。 「っとと。ま、こんなもんだろ」 見る間に、切り口がぶくぶくと泡立つように膨れ上がり、元の形に再生する。全長2.5mの1/2テラプラが二体になった。 のろのろやっていると、これがまた5mに育つのだ。 戦闘服姿の小柄なルチアが手をポキポキ鳴らし、プラナリアを見据え大きく脚を振りかぶる。 「ルチア・プルート選手、試合開始のゴングを鳴らしたぁッ!」 高らかに宣言すると、一体に向かって斬風脚を放った。 しぱっとかまいたちが走り、テラプラの腹が裂けて、観音開きのようにめくりあがる。 そこから、ぐにぐにと肉瘤が盛り上がり、頭がもう一つ生えた。 さらに、セオがハルバートを手に続く。 クリーンヒットとは行かないが、その伸び掛けの頭を切り飛ばした。 これで、1/2テラプラ一体、1/4テラプラ二体。 分断されていなかった1/2テラプラの振り上げられた頭部が、正道に叩きつけられる。 体半分こそげそうな衝撃が走る。一瞬目の前が暗くなった。 「正道ちゃーん! ふぁいおーアルよ~♪」 灰蝠から、らぶ投げキッス★ という名の天使の息が飛び、受けたダメージのほとんどが治癒した。 熱感知も併用し、今日の怪我人は全て治すと気合の入りまくった灰蝠の活躍は始まったばかりだ。 「切断するので、片割れをお願いします」 我慢の集中を重ねていた光が、見事な太刀筋で正道に襲い掛かった1/2を分断した。 これで、1/4テラプラが4体。 「このデカブツが拙者の相手でござるか……いざ、尋常に! 時間がたってしまうと再生してしまうそうでござるからずっと攻撃を続けるでござる!」 その声を受けて、虎鐵は今再生を始めた一体に駆け寄った。 構えは、オーララッシュ。 彼の不退転の戦いが始まろうとしていた。 ●とにかく切り刻め! 1/4テラプラ×4は、手強かった。 リベリスタたちの当初の予定は、1/4を一体。1/8を6体になるまで分断して対応するというものだった。 目標まで、分断三回分。そのたった三回がなかなか成功しない。 的が小さくなって当たりにくくなった上、1/4にしても、リベリスタ一人より能力が上なのだ。 歯噛みするような数十秒が続いた。 みな一、二発は、いいのを食らっている。土に転がり、ひどい打撲と裂傷で血がにじみ、青あざが出来、泥にまみれていた。 それでも戦線が瓦解しなかったのは、灰蝠の献身的な、らぶ投げキッス★ という名の(以下略)によるものと、誰か一人に集中攻撃されてはならないと、リベリスタたちは互いの様子に注意を払い合っていたためだ。 我慢の甲斐あってか、少しづつリベリスタに向かって運命の風が吹き始めた。 先ほど業炎撃で炎上させたテラプラが炎に身を捩じらせているところに、ルチアは更に斬風脚で出血を強いる。 ルチアは、状態異常によって、テラプラの体力をじわじわ削ぐことに専念して戦っていた。 「オーララッシュ!」 今度こそと岬が斧槍を振り上げ、炎上中のテラプラを1/8二体に切断する。 「あとは、ガッツンガッツンだよー」 「おォらッ! 人様の領域に勝手に踏み入ろうとしてんじゃねェぞ!!」 この二体は、岬とルチアの獲物になった。 前に出ていたため、かなり1/4テラプラに集中攻撃されたセオは、自らに天使の息を使った。 「あいにく、負けられないんでな!」 目の前の1/4テラプラを睨みつける。 再びセオに叩きつけるため頭部をめぐらせた1/4テラプラ。 突然ギクシャクと不可解な痙攣を起こし、正道に方向を変えた。 正道がセオを援護するため、ピンポイントを使って、1/4テラプラのたった今再生したばかりのデリケートな所を狙い撃ちしたのだ。 原始的な怒りに任せてビタンビタンと身をくねらせて、正道に飛び掛る。 正道が衝撃に耐える脇をすり抜け、光がセオに声をかけた。 「片割れをお願いします」 ひらめくカタール。繰り出された太刀筋が二本なのは、放った本人しかわからない。 目にも留まらぬツインストライク。 怒りに囚われた1/4テラプラは、1/8になった。 「悪いな、ガチでやり合える程強く無くてよ。弱者の知恵って奴だ、精々味わってくれよなっ!」 凍夜のソードエアリアル。これで、リベリスタの目標は達せられた。 「さて、てめえが俺の担当分な。じゃ、楽しく殺り合おうじゃねえか」 凍夜が目の前の1/8テラプラに笑いかけた。 ●堅忍 仲間が1/4テラプラを1/8テラプラにする間、虎鐵は、1/4テラプラの前に立ちはだかり続けた。 回復役の灰蝠を自由にしておくため、反射神経に優れ頑丈な虎鐵がこの大物を引き受けたのだ。 仲間の誰かが1/8テラプラを片付けて加勢に来るまで、倒れることも、1/4テラプラを分断することも許されない。 灰蝠もとりわけ虎鐵に気を配り、1/4テラプラに攻撃したいと思っているのだが、とにかく回復が先だ。 一手ずれたら、大惨事の予感がした。 「虎鐵ちゃーん! ふぁいおーアルよ~♪」 声援をこめて、灰蝠、らぶ投げキッス★ という(以下略)。虎鐵の顔の傷に上書きされていたうっ血が消えていく。 「本当に心強いでござるよ!」 虎鐵は、大太刀の柄を握りなおした。 「おぬしの再生力と拙者の耐久力…どっちが強いか勝負でござる!」 目の前の1/4テラプラに向かって一声上げると、輝く光と共にオーララッシュを叩き込んだ。 ●殲滅し尽くすまでがお仕事です。 フィニッシュは、パンチで打ち上げてヘッドバットシュート。 「悪しき怪獣は、俺が成敗したッ……!」 ルチアは、自然と勝ちポーズを決め、すぐに虎鐵の加勢に走り出す。 「こいつがラスボスだな」 「こっちの分は終わりだ。フォロー入るぜ!」 「お待たせしました!」 セオ、凍夜、光……。続々と、1/8テラプラを倒した加勢が、虎鐵の横に並んだ。 「助太刀をするよー」 走りこんできた岬が、1/4テラプラを分断した。 後は、みなで分断して片付ける手筈になっていた。 ……最後の一匹を除いて。それが、当初からの申し合わせだった。 「くっくっ、ほらほら、抵抗してみろよ。減るぜえ、体積も力も今より更に減っちまうぜえ? くっくっく」 凍夜は、疲れた体に鞭打って、せっせとテラプラを分断し続けていた。 1/8が1/16、1/16が1/32……。 テラプラを分断しては倒して分断しては倒してを繰り返している。 チームの了承を得ているとはいえ、日頃のストレス具合が心配になる。 「後で息を吹き返して事後処理班がやられては目も当てられません。名残惜しいですが確実に滅却しておきましょう 」 正道が横に並び、動かなくなった個体の生死を確認して、疑わしきものには止めをさしている。 「生きた断片が悪意のある者の手に落ちたならば、深刻な被害が発生しそうですからね」 それとは別に、楽しみとしてプラナリアの再生過程を心行くまで見守っていた。 「妙な手触りだ、キモい、あーキモい……」 直接テラプラに触らざるを得なかったルチアがうめく。 「それより早く帰ってシャワー浴びたいよー。べ、別に初めての実戦だったからってチビってなんてないんだよー」 乙女として問題発言をかます岬。後半をツンデレ言語的に解釈したら、非常に問題だ。 「うへー流石にもうへとへとで動けないでござるよー」 そのまま倒れこむように休憩をする虎鐵。すでに精も根も尽き果てた。 灰蝠は、すごくがんばった彼に、らぶ投げキッス★ (以下略)を送った。 更に、自分で傷を治しきれなかったルチアの要請を受けて、らぶ投げキッス★ (以下略)。 更に更に、斬っては倒してを続けている凍夜と、それに付き合っている正道にも、遠距離から了承取らずに問答無用で(以下略)。 そして、光、セオ、岬の方を振り返る。 「改めてみんなをちゃんと手当てしたいアル♪ 中途半端なキズ残したまんま帰したら、アタシがよっきゅーふまんになちゃうもの~♪」 ひげのおっちゃん、すごくいい笑顔。おててわきわき。お口はチューの口。 まだ怪我をしていてEPすっからかんの三人が、おとなしく(以下略)を頂戴したかどうかは、アークの記録には残っていない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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