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What’s the justice?

●遼子と誠也
「遼子おねえちゃん、早く寝ないと明日また起きれないよ」
「もう少しだけー。こいつを倒したら寝るからー」
「二時間前にも同じ事言ったよ」
「だいじょーぶ。いざとなったらかわいいMY弟の誠也が起こしてくれるもん」
「……だって、おねえちゃんが起きないと後で怖いし。仕方なく起こすんだからね」
「にゅふふー。お姉ちゃんにかわいいっていわれて照れる誠也萌えー」
「わぁ、抱きつかないでよおねえちゃん!」
「ゲームよりも布団で寝ることよりもよりも、かわいい弟を愛でるのがお姉ちゃんの一番の癒しなのだー」
「うう……。しょうがないなぁ、もう」

 それは多少行き過ぎたところもあるかも知れないが、仲の良い姉と妹の日常だった。姉弟の二人暮し。親はなくとも、子供はまっすぐに育っていた。
 戯れながらも日常はまわる。明日も明後日も同じように。
 そう信じていたのに――

「あ……! がはぁ!」
「知ってるか、ガキ? お前『ノーフェイス』って言うんだぜぇ」
「覚醒したけどフェイスを持たないハミダシ者。崩界の要因でゴザル」
「だから、貴様は死ぬしかないんだぁ。わざわざ説明してやるオレ様、やさしぃねぇ!」
 それは突然の出来事だった。
 誠也が真夜中に何か音がしたと思って起きれば、目の前には見知らぬ二人。誰、と問いかける間もなく日本刀が胸に刺さり、そのまま壁に縫い付けられたのだ。
 そのままもう一人の男が持っていた金属を肩に押し当てられる。それが何かを知っている。銃だ。だけどなんで? 銃なんて無縁な生活をしていたのにどうして?
 疑問に思う間もなく肩に衝撃が走る。苦痛で暴れまわれば、自らを縫いとめる日本刀でさらに傷が深くなる。
 普通の人間なら致命傷だろう。……なのに、ボクは生きている……?
「へっ! 頑丈なガキだぜぇ。だがそのほうが楽しめるってものさぁ」
「首をはねれば楽に死ねる。せめてもの情けでゴザルよ。如何にする?」
 二人の言葉が耳に入るも、物理的なものとと自らの常識を超えた情報による二重の衝撃でまともに答えることができない。
 だが、そんな混乱を吹き飛ばす声が響いた。
「せ、いや……? やだ、何これ……? あなたたち、誰!?」
 姉。遼子の声。
 家の中で大きな音を立てていたのだ。家の人が来るのは当然の流れ。
「お姉ちゃん! 来ちゃダメ!」
「あ? 目撃者か。見られたからにはしょうがないよなぁ」
「お姉ちゃんに手を出すな!」
「は! 俺たちは世界を護る『リベリスタ』だぜぇ。覚醒していない人間を殺すまねはしねぇよ。
 まぁ、殺さないだけなんだがなぁ」
「ノーフェイスはその存在自体が罪でゴザル。故に親しい人が傷つけられるのも、当然でゴザルよ」
「きゃああ! 誠也ぁ! 誠也ぁ!」
「お姉ちゃん! やめろぉ! やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」

●リベリスタ
「――この後、弟クンは姉を目の前で傷つけられ、そのあと殺される。
 姉のほうはかろうじて生きてはいるものの、病院に送られてしまう。見舞う家族もなく、肉体と精神に大きな傷を残してしまう」
 ふう、と吐いた息はため息なのだろうか? 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は見てしまった未来に陰鬱な気分を隠せないでいた。
「クールにいこう。まず誠也。彼はノーフェイスだ。覚醒して間もなく、常人より頑丈という程度のエリューションだ。戦闘力はないだろう。
 そしてその姉の遼子。一般人だ。急いでいけばギリギリこの悲劇に巻き込まずにすむかもしれない。多少荒っぽいことをしないといけないが」
 遼子からすれば見知らぬ存在のリベリスタたちの言葉など、まず聞いてくれないだろう。説得は不可能。止めるなら強引な手段でないと悲劇の舞台に巻き込まれる。
「そして先に潜入している二人組だが、アークに所属しないフリーのリベリスタだ。チーム名は『ペネトレイト』……バスケットボール用語でドリブルを使ってディフィンスを振り切ってゴールに切り込んでいくことだ。蛇足だったかな。
 ノーフェイスを中心にエリューションを狩っているチームなのだが、目撃者を『殺さずに』口封じすることが多いと言う情報がある。どうも意図して周りを巻き込んでいる節がある」
 証拠はないけどね。肩をすくめる伸暁。
「依頼内容は、ノーフェイスの撃破だ。これは『ペネトレイト』が先に達成しても問題ない。それを確認すればいい」
 アークとして重要な部分はその一点である。
「『ペネトレイト』との接触は危険といっておくよ。実力よりもその残虐性が、だ。
 クールにいくなら、ハイド&サーチでエスケイプ。これに尽きる」
 フォーチュナとして、危険なことはさせられない。だが――
「だけどあえて問うよ? What’s the justice?」
 黒猫は問う。フォーチュナではなくただ一人の人間として。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:どくどく  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月21日(火)22:18
 どくどくです。
 正義の味方をお届けします。

 行動によっては難易度はEASYになるかもしれません。とはいえ、経験点が変わるわけではないのですが。条件はOPを呼んで推察を。
 ノーフェイスを倒し、崩界を防ぐ為戦う者達。彼らは『リベリスタ』です。ただその強引な手段の為、多少周りを巻き込むことがあるだけで。
 彼らには『世界を護る』という正義があります。その正義こそが、一番の難敵かも知れません。

◆成功条件 ノーフェイス『誠也』の死亡を確認すること。『ペネトレイト』の行為を見ているだけでも、成功します。
 遼子、および『ペネトレイト』の生死は無関係です。
◆敵情報
 ノーフェイス『誠也』
 フェイズ1。到着時にはかなり弱っているので、殺すつもりで攻撃すればすぐに死ぬでしょう。
『ペネトレイト』
 二人のリベリスタチームです。
 基本的にアークにはむかう気はありませんが、ノーフェイスを殺す邪魔すれば襲い掛かってきます。

1:小林・勇(ジーニアス×デュランダル)
 日本刀を持った三十代のオジサンです。語尾にゴザルをつけます。
 正義を刃にするリベリスタです。ノーフェイスを倒すことを正義と信じ、そのために刃を振るいます。
「爆砕戦気」「疾風居合い斬り」を使います。
【喋るであろうセリフ】
「ノーフェイスは罪人。人の扱いをしてはいけないのでゴザル」
「やつらは外道の存在。ならば情をもって接するなど愚の骨頂でゴザルよ」

2:瀬戸口。文哉(ビーストハーフ×スターサジタリ)
 二丁拳銃のビーストハーフ(サメ)です。二十五才、男。
 正義を盾にするリベリスタです。正義を理由に暴力を振るい、殺戮に酔います。ただし一般人は殺そうとはしません。殺さないだけなのですが。
「アーリースナイプ」「ハニーコムガトリング」を使います。
【喋るであろうセリフ】
「俺たちは『正義の味方』なんだよぉ! ノーフェイスを狩る邪魔をするんじゃねぇ!」
「お前達だってコイツを殺しに来たんだろうがぁ。えらそうにするんじゃねぇよ!」

◆場所情報
 二階建ての一軒屋。扉は開いています。
 遼子は二階で誠也は一階で寝ており、『ペネトレイト』と誠也は一階にいます。
 急いで駆けつければ、『ペネトレイト』の一人が誠也を壁に磔にした場面に間に合います。遼子はその2ターン後に誠也の部屋に入ってきます。
 部屋は広いため、戦闘には支障はありません。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
ソードミラージュ
早瀬 莉那(BNE000598)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
デュランダル
愛咲 巡(BNE001049)
覇界闘士
蜜花 天火(BNE002058)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
デュランダル
蜂須賀 冴(BNE002536)

●姉『遼子』
 ――虫の知らせ。
 遼子が目を覚ましたのはそういった理由だ。今起きなければいけない。眠っちゃいけない。説明できない衝動に動かされて眠れずにいると……階下で何者かが暴れる音が聞こえてくる。
 それを危険とは思わなかった。上着を羽織り、部屋を出る。そこには。
「……アナタ、誰!?」
 赤茶髪の少女を前に、遼子の足はとまる。少女は言葉なく遼子に近寄ると、みぞおちに拳を叩きつけて気絶させた。崩れ落ちる遼子をロープで縛り上げる少女。そのまま部屋に戻し、ベットに寝かせた。
「これでよし」
 赤茶髪の少女――『がさつな復讐者』早瀬 莉那(BNE000598)は遼子がしばらく起きないだろう事を確認して、階段を降りていく。
 これから先の戦いに、莉那は乗り気ではなかった。
 もちろん任務は達成させる。ノーフェイスは滅ぼす。
 だけどその障害になるであろう存在。『ペネトレイト』と呼ばれるリベリスタ。
 どのような理由があれど、彼女はリベリスタを殺すつもりはなかった。
「始まったか」
 階下が騒がしくなる。リベリスタ同志の戦闘が始まろうとしていた。

●ノーフェイス『誠也』
「あ……! がはぁ!」
 それは未来予知された光景。
 壁に日本刀で縫いとめられ苦しむノーフェイスと、『ペネトレイト』と呼ばれる二人のリベリスタ。
「――だれだ!?」
『ペネトレイト』の一人、瀬戸口が叫ぶ。サメの嗅覚がやってくるリベリスタたちの気配を察したのだ。銃を構えると同時に開かれる扉。
「これ以上の冒涜は許しませんですよ」
 入室するや否や、『クレセントムーン』蜜花 天火(BNE002058)が鋭い足の動きでカマイタチを放つ。狙いはノーフェイスを壁に縫いとめているペネトレイトの小林の足元。彼は難なくそれを避けるが、ノーフェイスとの間に空間ができてしまう。
 その空間に割って入るように『アイと正義の味方』愛咲 巡(BNE001049)が大太刀を振るう。ノーフェイスごと壁に刺さっていた日本刀で受け止めるも、その力に押される形で後ろの吹き飛ばされた。
「ごめん、なんて言わない。許して、も言わない。これが、私の信じた正義だから」
 巡はノーフェイスのほうを見ずに言葉を放つ。その言葉が空気に消えるタイミングで『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)の一撃がノーフェイスに入る。虚実を混ぜた攻撃がノーフェイスの命を奪った。それはただの骸となって重力に従い地面に崩れ落ちる。
「だれだぁ、てめらは!」
「ご同業よ、ただし首輪付きのね」
 惨劇に似合わぬ甘い口調で『Krylʹya angela』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)がいう。その口調とは裏腹にエレオノーラの機嫌は悪かった。
「アークか」
 その言葉で察したのか、小林は日本刀を鞘に納める。しかしその瞳から警戒の色は消えていない。
「同業者か。お前たちもノーフェイスを狩りに来たってかぁ?」
「勘違いするな。俺は誠也を殺しに来たんじゃない。救いに、来た」
 瀬戸口の言葉に『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)が否定の言葉を放つ。暗殺針を構え、射抜くような瞳で瀬戸口を見る。
「怖い顔するなよ。同じ『正義の味方』じゃねぇか」
「戯れるな、外道ども。貴様らに正義を語る資格はない」
 茶化すように肩をすくめる瀬戸口を許さないとばかりに『斬人斬魔』蜂須賀 冴(BNE002536)が愛刀『数珠丸』を手にして言う。天下五剣の名を借りた刀が、外道は許さないと言うように鋭く光る。
「外道とは心外でゴザルな。それはそこに転がるノーフェイスに使う言葉。
 世界を護ろうとする行為を外道と罵られてはこちらも引けぬよ」
「……それがお前たちの正義か。だが、そんな弱い正義は要らない」
『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)は自分より弱い相手を殺し、正義と語るその様に意を発した。自分より下を見ないと成り立たないような、そんな正義は必要ないと銀の籠手を装着する。それは彼の幻想纏い。戦闘に移行する為の準備。
「けっ。ノーフェイスもその姉も出てこないみたいだし。いろいろ興が削げちまったぜ。
 商売敵に挨拶、って言うのも悪かねぇか!」
『ペネトレイト』の二人もそれぞれの武器を構え、アークのリベリスタに相対する。
 遼子を抑えにいった莉那が戻ってくる足音が近づいてくる。
 足音の主が部屋に入ってきたと同時に、リベリスタたちは動き始めた。

●正義の刃を交える者
『ペネトレイト』が動く。日本刀を持つ小林が一歩前に。銃を持つ瀬戸口が一歩後ろに。
 数で勝るアークのリベリスタはそれぞれの相手に標準を定め、攻撃を敢行する。
 キィン!
 縦と横。十字に重なり合う居合い切り。抜き放たれた小林の日本刀と、巡の大太刀が打ち合わされた。巡は鋭く、小林は冷たく、互いの刀越しに睨み合う。
「……いったいどこで、『世界を護る』という意思が刃と化したのかしら」
「『護る』ということは敵を退けることでゴザル。力なき理想では何も護れぬ」
「それでも!」
 力で刀を振り切り、巡は小林を押し返す。
 自分が正しいとは言わない。だけど認めない。認められない。自らの掲げる小さな正義が彼らを許すなと。その意思を込めて巡は小林を押し返したのだ。
「それでもあなたたちの行動は認めない。あなたが正義を語るなら、私は『正義の敵』として、あなた達の掲げる『正義』を破壊する!」
 大太刀を鞘に納め、居合いの構えをとりながら巡はいう。
 未だ正しい道など見えない。胸を張って『正義の味方』を名乗れるようになるには程遠い。だがその瞳に揺らぎはなく、振るわれる刃に迷いはなかった。
 巡の攻撃でできた隙を突いて、天火が迫る。その手に炎を宿らせて、一気呵成に攻め始める。加減などない。彼女は殺すつもりで襲い掛かっていた。
「殺すつもりか? だが運命が拙者を救うでゴザルよ」
「はい。アナタにはフェイトを使い切ってもらいます。
 フェイトを失えば行き着く先は死かノーフェイス。何度でも何度でも何度でも追いかけて邪魔して追い詰めて、蔑み虐げてきた存在と同じにするです」
「拙者らの行動を受け入れられないのはわかる。だがそこまでの行動は解せぬ話。何が汝の琴線に触れた?」
「正義と悪は紙一重。世界を護りながら人としての倫を見失ったあなたは、とっくの昔に道を踏み外してるです」
 言って微笑む天火。小林の攻撃に血を流しながら、相打つ覚悟で攻撃する。天火の亡き主はこの行為をどう思うだろうか? よくやったと褒めてくれるだろうか? 無謀だと蔑むだろうか? 故人は何も答えない。故に答えなどあるはずがない。
 それでも、主に恥じる行為ではないと信じてる。
「……ペネトレイトの行動は、間違いじゃない」
 二本のナイフを構え、自らの速度を上げた鷲祐も小林に接近する。小林を盾に瀬戸口の死角になるように位置取りながら、その速度を生かして切りかかる。
「だが、ノーフェイスを狩るだけで何が変わる? 仮にもリベリスタなら何故それらが生まれるか、知らないわけではあるまい」
 ノーフェイスに限らずエリューションは上位世界からの侵食因子により覚醒する。周知の事実だ。
「上位世界に殴り込みをかけろというでゴザルか?」
「世界を護る、というのならその大本を断つ。それが最善手だ。貴様等はただ留まっているだけに過ぎない」
 上はいくらでもいる。例え今は敵わなくとも、
「俺はいずれその全てを狩り切る。全てな。それが俺の、世界を護る意志だ。
 さぁ『ペネトレイト』。お前たちの正義は、俺より強いか?」
 鷲祐の瞳に迷いはない。それを無謀と哂うものを黙殺させるだけの気迫がそこにあった。
 押される小林に飛ぶエレオノーラの糸。小林の腕に絡みつき、その動きを封じる。
 エレオノーラにとって、彼らの掲げる正義が正しいかはどうでもよかった。自分たちもノーフェイスを倒すことには変わりない。だが、
「運命に選ばれなかった事が罪なのかしら。愛されぬ事が罪だとでも?」
「然り」
「あたし達も1つ違えば同じ運命を辿ったというのに?」
「然り。されどその『1つ』が大きな差でゴザル。世界を滅ぼしかねない存在と、世界を護る存在。紙一重なれど、それが罪でゴザル」
「人なくば世界為らず。守るべき者を傷付けるような存在は、エレーナはフィクサードと大差無いと思うのだけれど、ね」
「運命に選ばれなかったノーフェイスを、守るべき存在と?」
「守る、という定義の違いね。エレーナもノーフェイスは倒す。
 運命に愛されないなら、エレーナは死ぬまで彼らの事を覚えてるわ」
 例えその命救えなくても、けして忘れない。それがエレオノーラにとって『守る』ということ。彼女が貫く正義。
「理想を語るだけでは何もかわらぬ。現実は非常で残酷でゴザルよ」
 誰にではなく言い、小林は刀を構えなおす。彼にもまた揺るがぬ意志がある。

●正義の盾を貫く者
 六尺七寸――約2メートルの斬馬刀が瀬戸口に振るわれる。冴の一撃は瀬戸口の足を凪いだ。鮮血が床を濡らし、痛みで瀬戸口が冴をにらむ。
「イテェなぁ! 同じノーフェイスを狩る『正義の味方』同士だろう? 手加減ぐらいしてくれてもよくねぇか?」
「お前達の行動は断じて正義ではない」
 ノーフェイスとはいえ元は人間である。それをいたぶるっていい理由などどこにある?
「お前達は正義を盾に邪悪な欲望を叶えている」
 渾身の一刀。それ毎に己の思いを込めて冴は刀を振るう。正義の為に生まれ、正義の為に生き、正義の為に死ぬ。研鑽を重ねた一閃は、まさに正義を成す為にある。
「邪悪と言ったか!? 世界を壊しかねないノーフェイスを狩ることを邪悪と!
 なら今のお前はどうなんだぁ! 今俺を追い詰めている『正義』に悪がないと言い切れるか! リベリスタである俺を追い詰めるその刀は同士を打つ邪悪じゃないのか!」
「お前達はリベリスタではない! ただの卑怯で臆病なフィクサードだ!」
 悪を倒し正義を為す。冴の心にあるのはただそれだけ。彼女は瀬戸口の言葉では揺るがない。その刀で悪を絶つことに何の躊躇もなかった。
「言ってくれるなヒヨッコが! ぶっ殺してやる!」
 怒りに任せて瀬戸口は銃を乱射する。狙いを定めない全方位の乱射。部屋の中を飛び交う黒の蜂が、アークのリベリスタたちを傷つけていく。
「させるか、よっ!」
 エレオノーラに迫る弾丸を莉那がかばう。莉那は戦いに参加せず、あくまで仲間を守るだけの立ち居地にいるようだ。
「どこの世界に殺しに来た、などと高らかに叫ぶ正義の味方がいると言うんだ」
 両手に暗殺針を持ったレンが迫る。生み出される気の糸で締め付け、瀬戸口の動きを拘束する。
「はっ! お前達だってコイツを殺しに来たんだろうがぁ!」
 瀬戸口の言葉は事実だ。アークのリベリスタの任務は『ノーフェイスの打破』である。その任務を彼らは最優先事項に行動してきた。
「そうさ。俺たちは誠也を殺しに来た。やっていることは同じだ。でも――信念が違う!」
「信念、だと?」
 レンは思う。ヴァンパイアである事自体が住人の恐怖を煽り、騒動になった時。生まれ故郷を出て行く時に自らの力を振るうこともできた。恐怖と力で町の不安を押さえ込むこともできた。
 しかしレンはそれをしなかった。
「力にあぐらをかいて、ノーフェイスを狩るような輩、俺は正義の味方などとは認めない」
 それはただの暴力だ。力を振るうことは悲劇を生む。だからこそ、信念が必要なのだ。生まれ故郷を守るように。誠也を救うように。
 奇麗事と呼ばれようと、それだけは欠かしてはいけないことなのだ。
「目の前の蠅を潰すのに、君達は『正義』だのと大層な理由が必要なのかい?」
 拘束され、動きの制限された瀬戸口にりりすが迫る。時に高速に、時に静かに。緩急重ねた動きで相手を翻弄しながら、瀬戸口を傷つけていく。
「ああ、必要だね。殺しても歓迎される理由。殺人の正当化。そんな理由がな!」
「生きたいと願う者を殺す事が正義だと言うならば。僕は悪で構わない」
 りりすは静かに言い放つ。
「ノーフェイスを殺さなければ、世界は終わるんだ! 貴様それでいいのかぁ?」
「僕に正義を説くとはね。話を聞いてくれる友達とかいないのかな。
 世界がどうなろうが。ならなかろうが――」
『僕』以外の存在が自分の劣等感を卑しさを醜悪さを、何時も何時でも何時だって思い知らしたとしても。
「――僕は『僕』であり続けるだけさ」
 大切なのは『僕』の有り様。『僕』以外の存在など、どれほどの意味を持とうか。その結果が悪ならば、僕は悪で構わない。大切なのは正義という理由ではなく、『僕』なのだ。
「はっ、そろいもそろって大口叩くんじゃねぇ!」
 瀬戸口は吼える。反論はない。ただ銃声をもって彼らに答える。

●正義とは何か?
 2対8。莉那が戦いに参加しないとはいえ、純粋に数の差は戦力に影響する。回復担当のいない構成なら、なおのことだ。
 個々の戦闘力では『ペネトレイト』の二人が勝っていても、総合ではアークのリベリスタに軍配が上がる。自前の回復をもっていた天火や頑丈な巡はともかく、地力で劣る冴は『ペネトレイト』の猛攻に膝をついた。が、それまでだった。
「……無念」「がはぁ!」
 力尽き果てる『ペネトレイト』の二人。ともに命はある。
 運命を燃やし気を失うことを避けた冴がトドメを刺そうと愛刀を振り上げる。その胸に一丁の銃が突きつけられた。今まで戦闘に参加しなかった莉那だ。
「どいてください。貴方はフィクサードを庇うのですか?」
「どんな奴でもリベリスタは殺さないし、殺させないって決めてるんだ」
「彼らはリベリスタではありません!」
 引かぬ銃と斬馬刀。交差する莉那と冴の視線。引いたのは――激戦で疲弊した冴のほうだった。莉那を吹き飛ばすだけの力はもう残っていない。
 その間に他のリベリスタたちはそれぞれ誠也に弔いをしたり、『ペネトレイト』を捕縛したりと、撤退の準備をしていた。
「もう一仕事してくるよ」
 もう大丈夫と見た莉那は、撤退準備をするリベリスタに背を向け、遼子の眠る2階に足を運ぶ。

 目を覚ました遼子が最初に見たのは、自分の気を失わせた赤茶色の髪の少女だ。
「おまえの大事な弟は死んだ。誰が殺したなんてのは言うまでもないよな」
 莉那の言葉にショックを受ける遼子。嘘だ、と現実を否定しながらしかしそれを否定できないのも事実である。縛られたまま遼子は莉那をにらむ。許さない、と言う強い意志を莉那は感じた。
 それでいい、と莉那は思う。喪失感で心が耐え切れなくなるよりは、例え嘘でも憎む相手がいるほうが。自分もそうだったのだから。

 ここで幕は下りる。ただ、もう一度問いかけよう。
 What’s the justice?
 答えはそれぞれの心の中に。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 どくどくです。
 皆様の熱いプレイングを受け取り、嬉しい悲鳴を上げておりました。

 戦闘描写をざっくり削り、主義のぶつけ合いをメインに持ってきました。そのほうがこのシナリオらしいと言う判断と……文字数の理由です。

『正義』というものに答えはありません――あるいは答えは無限にあります。
 そんなテーマにお付き合いいただき、まこと有難うございます。各PC様の熱い思いと、PL様のプレイングがあったからこその、このシナリオです。STも熱くこみ上げるものがありました。
 
 要望と私のスケジュールに余裕があれば、こういうシナリオも出していこうかと思います。
 それではまた三高平市で。