●骨伝導の音楽 車椅子に乗った老人が郊外にあるショッピングモールの中でラッパを吹いていた。 優しげな表情を浮かべ、白い髭を蓄えたこの老紳士風の男性に子供たちとショッピングモールの客は興味を惹かれ近寄って来る。老人の奏でる優しい音楽はいつしかその場に小さなコンサートホールのような様相を作り上げていた。 やがて、演奏が終わり人々の拍手喝采が老紳士を迎える。老紳士はそれを受け取って少しはにかむと、口を開いて観客たちに向ってこう言った。 「知っているかね。音楽は耳以外にも骨を通して聞こえてくるものなのだと」 「……骨伝導、でしたっけ」 観客の一人がそう言うと、老紳士は頷いて続ける。 「骨とは不思議なもの。人の基盤となり、人を構成する大事な大事なカルシウム。死んでも尚、それは残る。……つまり、人は死んでも骨から音楽を聴くことができるのだ」 「……」 難しい話だな、と観客たちが首を捻ってその言葉の意味を探っていると……老紳士はその答えを待たずに口を開いて次の話題を始めた。 「……知っているかね。この地は昔、墓地であったと」 「はい?」 老紳士の意味深な言葉に、観客の一人が思わず声を出す。 そういえばこのショッピングモールは昔共同墓地があった場所であると、観客の一人が指摘した。その答えに老紳士は満足気な笑みを浮かべて。 「死者への敬意を怠ってはならんぞ……。ふぉふぉふぉ……」 軽快な笑みを浮かべてから車椅子を使って移動をし始めた。周りの観客たちは老紳士の言動を不思議がったが、それを深く追求する気にはならなかった。 その次の日からである。このショッピングモール内を夜な夜な人骨が歩いているという噂が流れ始めたのは。 警備員が夜のショッピングモールを巡回していた。もちろん、そういう仕事だからだ。 「それにしても、不気味なところだ……」 昼間は人が行き交うショッピングモールでも、夜中になってしまえば暗くて広い不気味な場所へと早変わりする。特に骨が歩きまわるという噂を聞いているから、警備員は少しブルっと震えた。 「何も出ませんように……」 だけれども、ちゃんと職務は遂行しなければならない。勇気を振り絞って、警備員は歩く。 しばらく見て回って、それらしいものは見つからなかった。 「……なんだ、噂はただの噂か」 安心して、ほっと胸をなで下ろす。 その次の瞬間、後方からコツンと小さな音が聞こえた。 「……ん?」 そちらの方向に、警備員は振り向く。そこに居たのは――、 「わぁぁぁぁ!! 骨ぇぇぇぇ!!」 噂通り、歩く人骨。骨格標本のような骨だけの体が歩いている……! しかも、手元には鋭利な刃物が持たされている! 危険だ! ケラケラケラ。顎を鳴らして笑っているようにも思えた。 「は、はやく助けを……!」 自分の役割を確認しつつ守衛室に向かおうと駆け出す警備員は、この場所に合わない人物を見つける。車椅子に乗った老紳士の男性だ。その男性は笑いながらラッパを手にしており、まともじゃないことはひと目で見て取れた。 それでも、警備員は声をかけたくなった。相手が老人だから救わねばならないという使命感に駆られたのか、それとも誰でもいいから助けて欲しかったのか。 「おじいさん! こんなところにいたら危ないですよ!」 手をつかもうとするが、それは空を切る。……代わりに、おぞましいものを見てしまう。 それは、大量の人骨。 「まあ、せっかくだから聞いていきなさい。『楽団』奏者の『ラッパのオムザック』が奏でるテーマは安らぎなのだから――」 「う、うわぁぁぁぁぁ!!」 ラッパの音に合わせて、人骨たちは踊る。踊りながら、警備員の元へと近付いてきた。聞こえてくるラッパの音色は素晴らしく、それが逆に恐ろしいと警備員は思う。 「お主の骨も、さぞかしいい素体になるだろうなあ」 人骨たちが警備員の両手を掴んで、完全に捕える。警備員の目には、絶望だけが映っていた。 「骨は素晴らしい。そう思わんかね?」 人骨たちに捕まった警備員が槍によってぐちゃぐちゃに解体されているところを見ながら、老紳士――オムザックは人当たりのいい笑みを浮かべるのであった。それを見ているものは人骨しかいなかったが。 ●解体ショーを止めるには 人を解体する人骨の群れと、その中心でラッパを吹く老人を映すモニターはまるでスプラッター映画の一場面のようでもある。 だが、これはカレイドシステムが示した未来だ。 「ラッパのオムザック。『楽団』を名乗ったことからも間違いなくケイオスの関係者ね。恐らくはその一派――部下のような立ち位置なのだと思うわ」 やはり楽団を名乗るだけあって楽器を使うのだろう。『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)はそう推測する。 「死者が蘇る事件と何らかの関係があるのは確かね。まだ詳しく分からないけれど、これを放っておけば被害は出続けるでしょうし、蘇った死者は何をするか分からないわ。事件を止めて頂戴」 乃亜は簡潔に事件とリベリスタの目的について話して、託す。 「資料に書いておいたけど、どうもおかしな事件が始まっているみたいね。みんなも気をつけて」 顎に手をやって考えるポーズを続ける乃亜に対してリベリスタたちは何とも言えないまま、それぞれの準備を始めた。 何が起こっているのかはまだ不透明だが、少なくとも奪われるはずの命は救わねば。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月19日(水)22:52 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●骨とピザ 死んでしまえば、人は肉と骨の塊だ。 「ふぅむ……」 それを信条とするラッパ吹きは、ショッピングモール内の匂いが変わったことを感じていた。鼻を動かし、奇妙な匂いに関心を寄せられながらも、蓄えられた髭を撫でてラッパを吹き続ける。 闇の中で響くラッパの音は不思議と安らぐもので、このショッピングモール内を安らかな雰囲気に変えていった。 一方で、リベリスタたちはチーズとパンが焼けるいい匂いをしていた。 というのもリベリスタたちは、ピザとコーラを手に守衛室の前に来ていたからだ。まずはこの警備員や警備システムを抑えて、自分たちが動きやすいようにするためである。 そのために、コスプレもしていた。調達してきたピザ屋の制服だ。 「とりあえず、これで十分だね」 自身のスキルを生かしてセキュリティに介入しつつ、守衛室に向かう仲間たちを見送りながら、『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は帽子を手で抑えて口の端を上げて小さな苦笑している。少し、シュールな光景だからだ。 「失礼。神は気紛れな数学者、全てはその掌の上に……」 しかし、そこは冷静沈着なキリエだ。すぐに表情を戻してその経過を見守ることにした。趣味の人間観察も兼ねているから、一石二鳥とも言える。 そんな風に観察している中でも、くねくねと体をゆらして動く『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)は奇妙だ。胸元を気にしているようだが……。 「普通サイズだった私が、巨乳だなんて……」 いわゆる寄せてあげるタイプなのだろう、そこには見事な欺瞞体型が! それはともかく、今回の警備員は巨乳好きということなので、この様に用意していたのである。 ともあれ、暗いショッピングモールの中で、くねくねと踊る金髪のイスタルテはまるで揺れる火の玉のようでもある。 それに共鳴したように、ガタンと音が鳴る。驚いてビクリとイスタルテは背筋を伸ばした。 「幽霊ではないのが救いですけど……。歩く人骨って怖いですよう、やーん」 涙を眼鏡越しに流しながら、いやんいやんとやはりくねくねと動く。 「面白いね」 キリエはそんな姿を見て、微笑んだ。 「サイズ大きいはずなんですけど……ちょっと窮屈ですね」 その隣で、制服の胸元がきついと指で確認しているのが『空中楼閣』緋桐 芙蓉(BNE003782)だ。小学生並の身長なので、それに合わせたサイズなのだが……胸だけはどうにもなっていないようだ。横で喜んでいるイスタルテとは違う悩みだ。 「……大丈夫ですよね?」 サイズ……小学生並のそれに不安を覚えつつも、横を見る。イスタルテと小学生の『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787)。ちょっと不安になる。 「んー? どうしたー?」 歳相応に無垢な顔を向けてくるリファールを見て、その胸元を見る。隠し切れないほどの幼児の体型で、ぺたんとしている。もう少し不安になったが。 「いくべし!」 突撃するように進み始めたリファールに続き、キリエの指示に従って守衛室に三人は突入する。手にはコーラと、宅配ピザ。 「ご注文のピザはこちらでよろしいでしょうかあ」 「すいません、此方にピザを運んでくださいと頼まれてたんですけど……」 にこやかに笑う眼鏡のイスタルテはわざとらしく胸元を強調するポーズを取っており、芙蓉はもじもじとしながら配りに走った。個性が出るものなのだな、とキリエは思う。 その結果小学生な体型の芙蓉が怪しまれ、怪しげなイスタルテの胸元にも目線が行ったが……、 「あ、すみません……。私、宅配の手伝いしてて……場所がわかりにくいので、先輩や友達と一緒に……」 「アメフトの中継が始まると言われたので、超特急でお届けですよう♪」 このふたつのセリフと芙蓉の胸の大きさによって事なきを得て、時間を稼ぐことができた。 「今日、お前は休みの日だ。そしてとても眠い。着替える時間も惜しいぐらいだ。だから1秒でも早く帰宅してベッドで寝るんだ。帰り道はこのルートを通って帰れ。幽霊いたら逃げろ。それと、ピザを食いすぎて太って来てるから、明日から毎朝ジョギングな」 そこに、リファールの魔眼だ。それの効果もあって、無事に警備員を逃がすことに成功した。 これからの戦いに巻き込む訳にはいかないからだ。 「しかしアメフトコーラピザ巨乳とはどういう属性で……まぁ良いが」 それをじっくりと眺めていた『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)はなんとも言えない顔をしていたのであった。 ショッピングモール内の照明が付けられて、リベリスタたちはとりあえず安堵する。ここまで奇襲されることもなく、無事に事を運べた。 「つまらないことにはならなかったか」 暗視ゴーグル片手に警戒をしていた『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)は一息を付いて、手元にタバコを持っていく。 「死体相手はこの短期間でいくらもやったが、今度は骨か」 煙を作りながら、今回の敵と死体との戦いを想う。骨との戦いは珍しい。 「連中にしてみれば、それぞれ個人の“音”に自慢もあるのかもしれんが、俺はこういうのには疎くてな。どれもこれも、耳障りな雑音にしか聞こえんよ。 それを心が貧しいとでもいうのなら、貧乏なままで結構だ」 楽団を名乗る敵、音楽と共に現れるというがその音楽というのも鉅にとっては敵の利用する力に過ぎない。 「やれやれ……厄介事が多過ぎる」 何より、倒すことには変わりない。無愛想な瞳がサングラス越しにダルさを見せた。 「……さて、やるか」 ともかくタバコを消してから安物のコーヒーを飲んで、準備は完了。 「また楽団、ね……ゾンビの次は骨か。死体なら何でも有りだな、実に厄介極まりない」 オッドアイの瞳をショッピングモール内に向けて、『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)は呟いている。言葉は闇に消えていくが、ゾンビと戦った記憶は頭の中に残っている。 死体を使うというのは厄介なものだ。何度でも戦わされる。 「これ以上連中の戦力が増えるのも面倒だ。被害が出る前にさっさと人骨を解体して終わらせるぞ」 ならば、と首を振って思考を整える。冷静沈着な櫻霞の頭は人を救い、敵を倒すにはその戦力を削って事件を解決することを考えた。楽団とやらが相手でも、まずはそこからだ。 「ショッピングモールで解体ショーだなんて……。悪趣味にも程があるのですっ」 そんな櫻霞を気遣うように目配せをしてから、『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)は憤る。ゆるさゆえに、その言葉もどこか優しげな響きを持っていた。 しかし、芯はしっかりとしている。キッチリとこの事件を止めて見せようという意志をそのオッドアイの瞳から感じられる。 「安心してデート……ではなくて、お買い物が出来るようにしましょうね」 そして、恋人である櫻霞と楽しみたいという意志も感じられる。にこやかに笑っているのも、そのせいだろう。 少し照れたように頬を染めているのも、そういう事情があるのだろう。それを汲み取ってか、櫻霞は一瞬だけ表情を変えた。 それを受け取って、櫻子は胸に手を置いて進む。 「……さぁ、参りましょう」 音楽が聞こえてくる。リベリスタたちには、それが戦いの音色だと感じられた。 「死者への敬意を怠るな、か。その死者を叩き起こす連中が面白い事を言うな」 その音色を聞いて皮肉げな表情を浮かべるシビリズは、体の底から沸き上がる戦いへの高ぶりを感じる。 「犠牲者は増やさせんよ。さっさと帰るが良い」 これ以上の犠牲者を出さず、この音楽も止めさせる。その為に戦いをするしかないだろう。……だが、シビリズはその戦闘こそが楽しみであり、熱くなる性質だ。 「……」 口元が笑っているのが、何よりの証拠だ。 ●戦いのラッパ オムザックと彼を守る骨の軍団、それらの対象を確認してからリベリスタたちはそれぞれ動き出した。おびき寄せて、うまく戦う為にだ。 「よう、ラッパ吹き。せっかくだから俺らの演奏も聞いていけよ」 「お若い方が来てくれるとは、嬉しいねえ」 その為にも真っ先に攻撃を仕掛けに行ったのはラヴィアンだ。作戦通り後方に付きながら、葬操曲・黒の攻撃でとにかく攻める。挑発気味なのは作戦関係なく本人の気質だ。 「行くぜ! 滅びのブラックチェイン・ストリーム!」 黒の鎖が骨の軍団を縛り上げて、ダメージと同時にその骨の体を締め付けていく。 縛り上げられた骨は抜き取られて、その動きを阻害することに成功! 「俺はさあ、悪人でも前線で自分自身の体使って戦う奴なら好感持てるんだよ。てめーは駄目だな。できるのは骨を操るのとラッパだけの三下だ」 腕を大きく振り上げて、オムザックに向けてラヴィアンは語る。悪党なら悪党で誇りを持てという持論からの言葉だ。 「……」 その言葉に対して、オムザックはラッパを吹いて攻撃を不可思議な攻撃を繰り出した。それが答えだと言わんばかりに。 音によって発せられた一撃はラヴィアンに直撃し、その体力の殆どを削りとってしまう。 「……ッ! その演奏、俺の魔法で骨ごとぶっつぶしてやんよ!」 しかし、それでもラヴィアンは拳を握って立ち向かう姿勢を止めはしない。 だが、その攻撃に合わせるように骨たちは動き、それぞれの獲物を持って攻撃を始める! 「……まったく、少しは動きを止めてもらいたいものだな」 攻撃に合わせて、デッドリー・ギャロップを使って1体の動きを止めてみせるのは鉅だ。厄介事の多さに難儀するような表情を浮かべているが、それでも仲間を助けるためにやるべきことをやっている。 「させんよ。ここは通さん。物理攻撃の威力が高かろうが知らんな。工具類が何だと言うのだ」 この攻撃は前に出たシビリズが受けに行く。交差させた腕がチェーンソーを受けて出血するも、彼の顔には狂気と喜びが張り付く。 「死に近付けば近付く程に生を感じる……この感覚は真に至上だ」 血が出て追い詰められている自分に興奮しているのか、普段からは想像できないような荒々しい表情を見せて槍を握る。 「痛みとは生きている証。死者よ、私の耐久を超えれるかな?」 そして重たい槍を振り回し、骨の群れを接近させないように務めた。 「――最早、騒音の領域ですね」 「あわわ、血ですー! お助けしますよーう!」 そんなシビリズの状態を見て天使の歌を使って回復をしていくイスタルテと櫻子。櫻子はこうして人を傷つける音楽に嫌悪感を抱いていた。 それにシビリズは感謝をしつつ、しかし連続攻撃を前にダメージを蓄積させていく。 「こちらも敵を引きつけよう。彼ばかりに負担はかけられないからね」 そこで、前に出てきたのはキリエだ。ピンポイント・スペシャリティを使って骨の集団とオムザックを攻撃しつつ、攻撃を分散させようとしたのである。 「貴方は何故ケイオスに従うの? どんな音楽も、受け取る側に心がなければ、無価値でしょう? フォールダウン後の無秩序なんて、五線に並べる価値もないよ」 キリエもまた攻撃をしながら問いかける。何故この老人が動いたのかが気になるのだろう。 「……フォフォフォ。楽団の皆はよい音を奏でるからのう」 それに曖昧な笑みと返事を返して、オムザックは糸による攻撃を受けていく。 「生命の刻む音を否定して、物言わぬ死体を手に入れて……貴方はそれで満足? 死者に敬意を払え、という貴方の言い分は正しい。けれど生者を蹂躙し、死者を道具として使い捨てる貴方に、それを言う権利はない」 「気持ちでは敬意を払ってるとしても、死者を起こして戦闘に使うというのは、やはり罰当たりですよね。確かに魂はそこにはもうありませんし、忘れられた遺骨なんでしょうけど…それでも、戦闘に使って良い理由にはなりません」 続いてオムザックへの主張を言葉にして紡ぎながら、芙蓉はキリエに続いて攻撃を始める。チェイスカッターによって骨の中でもダメージの少ないものを狙っていきつつ、瀕死まで追い込む。 「……面倒だ、貴様諸共切り刻むとしよう」 そして、弱った骨とオムザックを巻き込むように櫻霞のピンポイント・スペシャリティが放たれて糸の旋風が骨たちを切り裂く。これによって4体がバラバラになったが……。 「死者は死者らしく踊ってもらうぞ、無論死の舞踏をな」 2体は骨を組み直して再生をし、再び武器を構えた。 「やるのう。……そして、覚えたぞお主らの顔を。音色を」 その光景を見て、オムザックは車椅子を高速で動かして撤退をしていく。それに対して、リベリスタたちは下手に動かなかった。今は骨たちを埋葬するのが先だ。 「しっかり倒して、安らかに眠ってもらいましょう」 一瞬だけオムザックの撤退を目線で見送るリベリスタたちだが、芙蓉の言葉と共に、リベリスタたちは再び骨との戦いに戻る。 ●決着への道程 オムザックが撤退した後、骨たちは突撃を敢行し戦場は乱戦状態となった。その為、攻撃は分散し……。 「そう。これは中々……強力だね」 キリエの体が切り裂かれ、フェイトを使って復活しなければならないほどであった。 「だけど、まだ諦めるのは速い……かな」 しかしそれでもピンポイント・スペシャリティを使って反撃をし、骨たちを削っていく。自由自在に動く糸は数体ほどなぎ倒していくものの、倒せれたのは2体のみで復活する個体も見える。しぶといものだと思う。 「感謝する、お前も無理はするな」 「櫻子の役目ですから……櫻霞様も無理はしないで下さいね」 恋人同士、二人はそれぞれ頷き合ってインスタントチャージとピンポイント・スペシャリティを併せて使う。再び糸の旋風に巻き込まれた骨の軍団はその身を次々に砕かれていく! 再生もあって倒したのは一体のみであったが、これによって骨の集団は攻撃の手が緩くなり、突撃してきた骨の軍団をブロックしていたシビリズが動けるようになる。 「朽ち果てろ人骨共! もう一度しかと眠りに就くが良い!」 リーガルブレードによって叩きつけられた重槍の一撃は凄まじい音を立て、骨は跡形もなく砕かれた。 再び槍を振りなおし、次に立ち向かって来るのは誰だと骨を睨みつける。その口元はやはり笑っており、この乱戦を楽しんでいるのが見て取れた。 「……助かるが、あれも厄介事、か」 デッドリー・ギャロップで近場に居た骨を砕きつつ、そんなシビリズの動きを鉅は皮肉げに笑うのであった。 「こっちはメガネビーム……じゃないですよう」 「……? ともかく、合わせます」 不思議な事を言いながらヘッドショットキルを使うイスタルテと共に芙蓉のチェイスカッターが飛んでいく。二種の技が組み合わさった攻撃は骨の体に直撃し、見事砕いた! 八体目故にこれで最後……と、思われたが、その瞬間骨は再び立ち上がる。 「追加ターンだ! うりゃりゃー!」 そこに、ラヴィアンの鎖が絡み付いて……再び砕く! 再生はなかった。 戦闘が終わっても緊張した雰囲気がリベリスタたちを包んでいた。先程まで再生する敵と戦っていたのだから無理もない。 「悪趣味な解体ショーは阻止出来ましたね♪」 そんな雰囲気の中で、ふにゃりと櫻子が一言。物騒な単語だが、優しげな声である。 「でもでも、やっぱりショッピングモールは昼間デートで来たいですぅ……」 「そうだな次はデートでもするか」 そして、元の姿を取り戻したショッピングモールを眺めて櫻霞と言葉をかわす。櫻霞はぶっきらぼうだが、その思いには答えるつもりだ。 「……ふふ、面白いね」 「そうですね!」 それを見ていたキリエとイスタルテは笑い、鉅はタバコに火を付けた。 「んー?」 「微笑ましいな」 ラヴィアンはクエスチョンマークを浮かべて首を傾げ、シビリズは人当たりの良い笑顔を浮かべたという。 「その前に、遺骨を埋葬しましょうか?」 全員がそうやって安心した後、芙蓉の提案によって砕かれた骨は埋葬されることになった。 死者に敬意を払う。 「それは間違っていない。だからこそ、奴らの好きにはさせんさ」 骨から伝わる声なき声を感じながら、リベリスタたちは撤収作業を進める。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|